IS学園から少し離れた場所。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァン!
大きな轟音と共に、複数の黒い怪人が吹き飛ばされた。
怪人たちの名はダスタード。ホロスコープスが呼び出す戦闘員のようなものである。
そして、そのダスタードを吹き飛ばしたのは…。
「はあああああああぁっ!」
以前、リブラと接触した仮面ライダー龍騎である。
「あゆ!SOLUは見つかった!?」
「だめ!隕石落下地点に行ったけど、なかったよ!」
近くに現れたあゆにSOLUの消息を聞いたが、まだ判明していないようだ。
「わかった!早めにこの戦いを切り上げる!」
<STRIKE VENT>
龍騎の右腕にドラグクローが装備され、辺りを彼の契約モンスターのドラグレッダーが舞う。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!」
「はああああああああぁ…だあぁっ!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオォ!
ドラグレッダーと共に放つドラグクローファイヤーで、ダスタードを殲滅する。その力はかつての数年前の冬の頃と比べても全く衰えていない。
龍騎が変身を解くと、そこには20代程の男性が現れた。名は龍崎竜也。
彼にあゆが声をかける。
「竜也くん。SOLUは、ゾディアーツが沢山出てくる学校に向かってるんだよね?」
「聞いた話だと、コズミックエナジーが集中している場所に向かいやすいらしいから…。行こうか」
そう言って、竜也はカードデッキを翳してスクーターをドラゴンサイクルに変形させ、あゆを乗せて、共にその場を走り去った。
残された場所にいたのは…。
「龍騎も邪魔をするようだね…」
恨めしいように呟くリブラだけであった。
シャルルが仮面ライダー部に入部して、一週間後のことである。
「えっと…今日はまた皆さんに、新しいお友達を紹介します!」
連続の転校生。山田の報告で、流石にクラスがざわつき始める。
「また…?」「不自然よね…」
「では、どうぞ」
山田に促されて入ってきたのは…。
左目に眼帯をつけ、右目は冷たい視線を送る一人の少女だった。
彼女はスカートを穿いておらず、軍隊のようなズボンを着用している。
「自己紹介しろ」
「はい教官」
千冬の促しに、背筋を伸ばしはっきりと答える少女。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
静かだったが、力強い声で言い放つ。クラスも理雄を除いて、その迫力に押されている。
ふと、ラウラが一人の生徒を睨む。その相手は一夏。明らかに敵意がある。
ツカツカと軍靴を響かせながら、一夏に近付き…。
「な、なんだよ…?」
バシッ!
「っ!?」
いきなり叩かれる。理由が分からず、唖然としながらラウラを見ると、彼女は嫌悪感を隠さないような表情で言う。
「認めない…おまえがあの人の弟など…!」
放課後…。
「なんだろ、あの転校生…」
宇月はラウラが居なくなってから、腕を組んで唸っていた。
「一夏を千冬さんの弟と認めたくないと言っていたが…」
彼女の言葉を聞いていた箒も、不思議そうに呟く。
「参ったよ…いきなり殴られるなんてな…」
完全な被害者の一夏。痛くはないが殴られた頬をさすっている。
そこに紫苑がやってきた。
「なにか…心当たりはないの?」
彼は一夏とラウラに何か因縁のようなものがあるのかと思い、一夏に聞いてみた。
「あるかよ、そんなもの!」
「だ、だよね…ごめん…」
ただ、一夏には全く覚えがない。強く否定したところ、紫苑は縮こまって謝る。
「紫苑、そうやって、すぐに「ごめん」っていわない!」
シャルルが頬を膨らませて、紫苑を指差して注意する。
「あ…ごめん…」
「また!もぉ、悪循環だよ?」
「あぁっ…。…えっと…その…」
紫苑は頭をさすりながら戸惑っていると、シャルルはニッコリ笑って肩に手を置く。
「謝るときは、本当に悪い事をしたときだよ?じゃないと、紫苑の「ごめん」が安っぽくなっちゃうからね」
「う…うん…」
その様子を見ていたセシリアは、軽く笑う。
「な、なにかな?」
「いえ、シャルルさんが紫苑さんのお母様に見えて…。男の子ですのにね…」
「お母さん!?」
シャルルはセシリアの言葉で顔を真っ赤にして両手と首を振りながら否定する。
「ぼ、ボクは男の子だよ!?そ、そんなわけないじゃないか…!」
「ですね、ごめんなさい」
その後ろでは…。
「だから来るな、ノロマ!」「いいじゃ~ん」
本音と礼の追いかけっこが、未だに続いている。
「つっち~。今日の夕飯、一緒に食べよ~」「ふざけるな!誰がおまえなんかと!」
本音から距離を置いた礼は、宇月にこそこそと呟く。
「…20番の調整が終わりそうだ。あと…」
そういいながら、宇月にフォーゼドライバーと似たベルトを渡す。
だが…。
「つっち~」「その呼び方はやめろ、おれは辻永礼だ!」
十分な説明が出来ずに、再び追いかけっこが始まった。
「じゃあ、れっち~」「馬鹿にしてるのか!?」
今日はラビットハッチに礼が居ない。理由は本音だ。結局、あのあと夕食につき合わされている。
あのあと礼は、ある条件で箒のみをラビットハッチ内に入室する事を許した。
「箒!」
宇月が箒を呼ぶ。
「な、なんだ…?」
「実はな、おまえに頼みがあるんだ…」
そう言って先程、礼から渡されたフォーゼドライバーに似たベルトを箒に手渡す。
「これは…?」
「女性版フォーゼだ。ま、フォーゼの試作品だけどな。名前は「なでしこ」って言うんだ」
そう、ラビットハッチにあるコズミックエナジーを介したスーツはフォーゼだけではない。
フォーゼよりも先に女性用を見越したスーツがあったのだ。
「これを箒に使って欲しい」
「わ、私に!?」
箒は驚く。言ってしまえば、フォーゼとほぼ同等の力をもつことになる。
「何故…?」
「これはなでしこって名前どおり、日本人しか扱えない。仮面ライダー部の女子最古参はおまえだろ?一夏、セシリア、シャルルは全員、専用機持ち。鈴音は専用機とパワーダイザー。礼はスイッチ調整。適役はおまえしかいないってことだ」
改めて、なでしこドライバーを突き出す宇月。箒は戸惑いつつもそれを受け取った。
「やってみよう…」
「おう!」
丁度そのころ…。
ラウラはアリーナで一人、夜空を見ていた。
「澄みきった夜空の星座は、素晴らしく美しい…」
「誰だ?」
ラウラが呼びかけると、暗がりからスコーピオンが現れた。
「初めまして。誇り高きドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒよ」
その姿はラウラにとっては異形の怪物そのもの。未知の脅威に対する、攻撃心が生まれた。
「バケモノっ!」
「落ち着きたまえ。私は君に力を与えにきたのだよ」
スコーピオンは手で制するが、ラウラは聞く耳を持たず、自身の専用機IS「シュヴァルツェア・レーゲン」を展開する。
「気性が荒いようだな。さて、困ったものだ」
「くらえ!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアァン!
ラウラはスコーピオンに対して、持てる全ての技を放つ。
だが…。
「IS如きでは、神聖なるホロスコープスを超える事は出来ぬ!」
そう聞こえた瞬間、爆風の中から凄まじい速度でスコーピオンが現れ、ラウラと間合いを詰める。
「うっ…!?」
とっさにシュヴァルツェア・レーゲンにある機能「AIC」を起動させようとするが、スコーピオンの動きが早すぎて追いつかない。
ズッ…!
だがラウラには攻撃せず、彼女のシュヴァルツェア・レーゲンに自身の尾を突き刺す。
「なにを…?」
「君のISにある障害物を取り除いたのだよ。ヴァルキリー・トレースシステム」
彼女もそれには聞き覚えがあった。あらゆる国家・企業で開発が禁止されたシステム。
スコーピオンはそれに気付き、そのシステムを彼の持つ、負のコズミックエナジーで機能停止させたのだ。
「こんなものに頼らなければ、君は強く在れないのかな?それとも、このシステムの搭載を知らなかったのかな?…どちらにしても、こんなものを搭載したISを使う君は弱い」
「貴様…っ!」
スコーピオンの言葉に激昂したラウラは右肩のレールカノンを発射する。
ズドオオオオオオオオオオオォ!
だが、それすらもスコーピオンには効果がなかった。彼は動きが早すぎて命中する事ができないのだ。
そして…。
「…良い加減、自分の弱さを自覚したらどうかな?」
スコーピオンの星座を模した水晶から凄まじい量の光弾がラウラを襲う。
AICを起動させて防御に徹したが…。
ダダダダダダダダダダ!
「うわあああああああああああああぁ!」
この弱点は一方向にしか防御が出来ない。つまり、多方向からの攻撃には弱いのだ。
ISにあるシールドエネルギーの残量は、フルの状態から一気に10をきった。
「…安心したまえ、君は強くなれる。ISなどに頼らずとも…織斑千冬さえも越えた最強の存在も夢ではない」
「教官を…?」
その言葉にラウラは揺り動かされた。
スコーピオンはゾディアーツスイッチを彼女に渡す。
「君の揺ぎ無い最強への扉を開く鍵だ。さぁ…星に願いを…」
ラビットハッチ内。
箒は調整室の隣にあるスイッチやフォーゼの試運転用ルームに居る。宇月はスイッチ調整室で、彼女をモニター越しに指示している。
「よし箒、ドライバーを腰に装着して。基本的にはフォーゼと変わりない変身行程だからな」
「あぁ」
言われるまま、なでしこドライバーを腰に装着する。
「次にこれだ。ロケットとレーダーのアストロスイッチ。一応、フォーゼのコピー品だけど、性能は変わらないはず。試作品だから、それ以外のスイッチは、今のところ起動できない。これだけで頼む」
ロケットとレーダーのスイッチを受け取り、ドライバーに挿入して、赤いスイッチを起動させ、宇月と同じ構えを取り…。
「変身!」
だが…。
「…あれ?」
なにも変化が起こらない。
「おかしいな…。起動できるはずなのに…反応なしか?」
そのまま、試運転ルームに入り、ドライバーをペタペタと触る。
「わたしじゃ…ダメなのだろうか…?」
少し、声のトーンを低くして箒が言う。
彼女は専用機を持っておらず、戦闘においてもバガミールでの分析のみ。それすら礼に取り上げられたのだから、これ以上、彼女は役割が思いつかなかった。
このままでは、箒は仮面ライダー部の足手纏いになると、自責の念に駆られていたのだ。
「多分、なでしこは試作品だから不安定なんだ。もう一回、調整してみよう」
そう言って、箒の腰からなでしこドライバーを外したとき…。
ラビットハッチに一夏が現れる。
「宇月、箒、早く来い!」
「ゾディアーツか!?」
「違う!とにかく早くしろ!」
一夏に促されるまま、ラビットハッチを飛び出した。
向かった先は保健室…。
「一夏、この娘は誰だ?」
箒が見る先には、一人の少女が居た。茶髪の髪型に黒い瞳。制服などは着ていないところから、IS学園の生徒ではないらしい。2人の姿を見て、首をかしげている。
「こいつ…空から落ちてきたんだ」
一夏の説明に、耳を疑う。
「空?」
「夜、鈴音と歩いているとな…急に落っこちてきたんだよ。なんとかキャッチしたんだけど…」
一夏が視線をやった先には…。鈴音が頬を膨らませてイジけている。
彼女の目の前で、好きな男が別の少女をお姫様抱っこしたのだ。
つまりは嫉妬。
「ぐぬぬ…」
「鈴、なんで怒るんだよ?」
「知らない!」
プイッとそっぽを向き、不機嫌さを惜しみなく表出している。
「とりあえず…君は誰だ?」
宇月は2人をスルーし、少女に名前を聞く。
「わた…し…?」
かなりたどたどしい口調だった。外国人のような発音が違うものではない、発語自体が上手くできていないようであった。
「わ…たしは…ゆ…りこ」
「ゆりこ?」
ゆりこと名乗った少女は、宇月の顔の目の前まで近付き、目を閉じる。
「な…なんだ?」「…おん…なじだ…!」
急に満面の笑顔になったと思うと、突如、宇月を抱きしめる。
「どぉっ!?」「…いっしょだ…よ!」
宇月には、こんな経験はない。年齢の近い女子から好感を持たれた上で抱きつかれた事など。
そんな経験をはじめて味わった宇月は…。
「か、かわいい…!」
あっさりと、恋に落ちてしまったのだ。
宇月にとって、ゆりこが誰よりも可愛く見えてしまった。
「宇月に…恋の季節…!?」
鈴音が彼の様子の変化にいち早く気付いた。
「そうか…宇月もついに…」
一夏は感慨深く、うんうんと頷いている。
「一夏って…ときどき、おじいさんっぽくなるわよね」
「そ、そんなことねぇよ!」
2人のケンカが始まっている一方…。
「あははは~、いっしょ~!」
ゆりこは、宇月の頬に自分の頬を摺り寄せてきた。
「ちょ…ちょっと、ゆりこ…!」
宇月の心臓は破裂しそうなほどドキドキしており、とにかくその状況を何とかするべく、ゆりこを引き離す。
「さみし…い…。いや…がらない…で…うぇぇ…」
そうすると、ゆりこは泣き出しそうな表情に急変する。
「わ、わかった!わかったから!」
「ほん…と…?」
宇月が慌てて彼女に言うと、涙を拭ったゆりこはまた笑顔を取り戻して、宇月に抱きつく。
その様子を見ていた箒は、埒が明かないと思い、ゆりこに質問をしてみた。
「…どこから来たんだ?」
「ど…こ…?…そら!」
ゆりこは天井を指差しながら答える。天井と言うよりはその先になる空を指しているのだろう。
「いや、住んでる場所なんだが…」
「すんで…る…?…う…ちゅう!」
箒の質問に、やはり天井を指差すゆりこ。
「宇宙から来たというのか…?」
意味が分からず聞き返す箒だが、ゆりこは満面の笑みを浮かべたまま頷く。どうやら嘘を言っているようではないらしい。
そのとき…。
ゆりこの表情が突如、険しいものに変わり、宇月を連れて走り去る。
「こっち…!」「どわっ!お、おいっ!」
一夏達もそれに数秒だけ遅れて、追いかけ始めた。
「宇月、ゆりこ!」「どこにいくんだ!」「まちなさいよ!」
その途中、近くの廊下をセシリアが歩いていた。
「あら皆さん、どちらへ…?」
「おまえも来い!」
箒が彼女の姿を見た途端、その腕を掴み、強引に引っ張った。
「きゃあっ!?ちょ、ちょっと!おやめください!」
シャルルと紫苑。
一緒に食事を取り、自室へ戻ろうとしていたとき。
「おい、根性なし」
「え…?」
そこへ、苛立った表情の理雄がやって来た。
理雄に呼ばれた紫苑は、明らかに怯えた様子を見せた。
「テメェ、なんか賑やかになったみたいで浮かれてるみたいだな?」
「そ、そんなこと…」
「ムカつくんだよ!」
ゴッ!
「ぐっ…!」
突如、紫苑は腹を蹴り上げられ、地面に突っ伏した。
「テメェはビビリなんだからよ、教室の端っこで大人しくしてろっての」
「理雄っ!」
理雄の身勝手な言い分に、シャルルは詰め寄った。
「紫苑が何をしようが、紫苑の勝手だよ!」
「おぉ、怖い怖い。さすが…」
「デュノア社の隠し子は気迫が違うな」
「え…!?」
理雄の言葉に、シャルルは動揺した。
「どうして…それを…?」
「さぁて、どうしてだろうな。例えば…そこのビビリが洩らしたとか?」
シャルルは紫苑を見る。
「そ、そんな…!?僕、言ってないよ!」
「そう…だよね…。紫苑はボクを守ってくれた!君になんか騙されない!」
紫苑を信じているシャルルの言葉に対して、理雄は鼻でフンと笑い…。
「さて、どっちが…どこまで騙してるんだろうなァ…?」
ニヤリと笑ったまま、帰っていった。
シャルルが紫苑を見つめていると、彼は震えながら弁解を始める。
「し、信じてよ…僕は…」
「大丈夫、信じてるよ」
だが、シャルルは紫苑を微塵も疑っていない。
その直後…。
「ゆ、ゆりこ~!」
宇月とゆりこが走り去っていくところを目撃する。
「あれ…宇月だよね?」「どうしたんだろう…?」
その後ろを、一夏、箒、セシリア、鈴音が追いかけていた。
「おい、シャルル!おまえも来い!」
「へ?わぁっ!?」
一夏の手を引かれ、シャルルは連れて行かれた。
取り残された紫苑…。
「仮面ライダー部も…大変そうだね」
そう言いながら、右肩を左手で握り締めていた。
まるで、痛みをこらえているように見える…。
「ここ!」
ゆりこが宇月を連れて行った先には…。
「ムゥゥ…」
「あれは…!ダスタード!?」
ダスタードが10体前後、蠢いていた。
「なんだ、あの忍者!」「ゾディアーツか!?」
一夏達はダスタードを見るのは初めてであり、ゾディアーツと勘違いをする。
「少し違うな」
そう言って、アストロスイッチカバンを持った礼が現れる。もう片方には本音まで引き連れて。
「あれはホロスコープスの作り出す、低コズミックエナジーの塊だ。操り人形であり、中に人間はいない」
「じゃあ…」
「おそらく、スコーピオンか他のホロスコープスが作り出している」
鈴音が予想を言う前に礼は答えを述べる。
「それはそうと、早く離れろ」「うわわ~忍者だ~」
本音はこんな状況でも、驚いている様子は見せず、むしろアトラクションを見ているかのような反応だ。
「もう良い。宇月、ファイヤーだ。今回はエレキのような暴発は起こらないはずだ」
「お、サンキュー!」
アストロスイッチカバンからファイヤースイッチを取り出し、宇月に渡した。
フォーゼドライバーを装着し、赤いスイッチを起動させる。
<3><2><1>
「変身っ!」
レバーを引き、フォーゼBSに変身する。
「はぁっ!」
ダスタードはフォーゼBSを見た瞬間、持っている刀を構えて近付く。
「よし、早速…!」
フォーゼBSはソケットにファイヤースイッチを挿入し、オンにする。
<FIRE-ON>
その瞬間フォーゼBSの右腕は赤く燃え滾り、その手に消火器型の銃「ヒーハックガン」が握られる。
「…あれ?」
だが、フォーゼBSは違和感を感じた。
「コズミックエナジーをあまり感じない…。身体に循環する感じが全くない…」
右手には間違いなく変化が現れたのだが、スーツ内でのエネルギー変動をフォーゼBSは全く感じる事ができなかった。
「宇月、どうした?」
箒が聞く。
「なんか、力が感じられないんだ…」
フォーゼBSは首をかしげながら、ヒーハックガンを見つめていると…。
「うわわ!うっち~!」
「ん?」
「ヌゥン!」
ズバアァ!
「ぐわあぁ!?」
本音の声に反応したが間に合わず、ダスタードの攻撃を受けてしまった。
「こんのやろ!」
頭に血が昇ったフォーゼBSはヒーハックガンの引き金を引く。
だが…。
ボボォ…
「…へ?」
そこから噴出されたのは、ライターから出したような火だけだった。
「ムゥン!」
ドガアアアァ!
「どわぁ!」
ダスタードから再び、攻撃を許されるフォーゼBS
鈴音は怒り、礼に詰め寄った。
「礼っ!また中途半端なもの作ったの!?」
「馬鹿言うな!これは2日かけて調整したんだ。チェックも3回済ませている。間違いなく使えるはずだ!」
礼はエレキの時の失敗を考慮し、あらゆる点からチェックを済ませていた。エレキのような暴発もなければ、調整時に不備も見当たらなかった。見落としている事はまずないだろう。
「もう一回!その力を受け入れてよ!」
「い、いや!受け入れるほど、エナジーが強力じゃねぇし!」
シャルルのアイデアも今回は適応できない。
「くそ、別のスイッチで…」
礼が別のスイッチでの攻略法を考え始めた瞬間…。
「それ、おなじ!」「お、おい、ゆりこ!?」
ゆりこが箒から、なでしこドライバーを取り上げ、腰に装着した。
「な、何をするつもりですの!?」
「おなじ…!」
セシリアの言葉を無視して、スイッチを起動させる。
「へんしん!」
そして、右手を空に振り上げた瞬間…。
「な…!?」
彼女の周りにはフォーゼと同じような煙が包み…。
「よいしょ!」
それを振り払うと、銀色のスーツを纏った青い瞳のフォーゼが居た。
彼女の今の姿こそ、女性用のフォーゼ「仮面ライダーなでしこ」なのだ。
「あいつが…なでしこに!?」
「うつき~!」
なでしこはフォーゼである宇月の名を呼びながら、彼の元に走り寄る。
「うつき、いっしょにやろう!」
「な、なでしこ…!その声…ゆりこか!?」
「うん!」
先程よりも、微かに饒舌になっている。倒れていたフォーゼBSを抱き起こしたなでしこはフォーゼ同様、スイッチを押した。
<ROCKET-ON>
フォーゼと同じようにロケットモジュールが現れ、ダスタードに突進していった。
「なでしこ~ろけっとぱぁぁぁんち!」
ドガアアアアアアアアァ!
「ムオオオオォ!?」
ロケットに吹き飛ばされたダスタードは、黒い霧のようなものに変化する。倒したのだろう。
「よし、ゆりこに負けてられないな!」
<ROCKET-ON>
とりあえずファイヤースイッチをオフにして、ロケットを装備する。
「いくぜ、ライダァァァ…ロケットパァァァァンチ!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアァ!
「グオオオオォ!」
フォーゼBSもなでしこと同様、ロケットモジュールでダスタードを倒した。
「すごいな…」「仮面ライダーが2人もいると…ここまで違うのか…」
一夏も箒も、その力に圧巻されている。
2人はあっという間に、ダスタードを倒したのだ。
「うつき~やったよ~!」
「おし!…ん?」
なでしことフォーゼBSが喜んでいると、遠くから黒い影が歩いてきた。
「彼女を渡してもらいたいな」
「なに…?お、おまえは!?」
それはいつものようなゾディアーツではなかった。金の刺繍があるクロークに大きな触覚と、ディケと呼ばれる杓杖を持つ者。
礼は、その姿を見て息を呑んだ。
「天秤座…リブラ・ゾディアーツ!?」
「じゃあ、あの方もホロスコープスですの!?」
天秤座の使徒、リブラ・ゾディアーツ。スコーピオンよりも強いホロスコープスだ。
「どうだね?」
「うつき…こわい…」
リブラの姿を見て、なでしこはフォーゼBSの後に隠れる。
「大丈夫だ、ゆりこ。こいつは渡さない!絶対にな!」
「ならば…彼女と手合わせ願おうか?」
そう言って、リブラが手を振り上げると、暗がりから一人の少女が現れた。
それは…。
「あ、あいつ…今日来た転校生だ!」
ラウラ・ヴォーデヴィッヒだ。
「おまえ達を倒す。わたしの最強の座にかけて!」
そう言って、手にあったゾディアーツスイッチを押すと…。
その姿は兎座を模した「レプス・ゾディアーツ」に変化した。
「ラウラが…ゾディアーツに…!」
「さぁ来い!」
そう宣言すると共に、レプスはフォーゼBSとなでしこに襲い掛かった。
続く…。
次回!
あの娘に、なでしこを託す気か!?
恋は熱く燃え滾るぜ!
うつき…
ファイヤーステイツ…!
嘘だろ…ラウラが…!?
都市伝説の仮面ライダーだ!
おれの名は…
仮面ライダーメテオ!
第10話「隕・石・恋・炎」
青春スイッチ・オン!
キャスト
城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ
織斑一夏
篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音
辻永礼=アリエス・ゾディアーツ
布仏本音
シャルル・デュノア
白石紫苑
裾迫理雄
ラウラ・ヴォーデヴィッヒ=レプス・ゾディアーツ
ゆりこ=仮面ライダーなでしこ
織斑千冬
山田真耶
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ
???=スコーピオン・ゾディアーツ
???=リブラ・ゾディアーツ
あとがき
如何でしたか?
タイトルのわりに、ラウラが活躍しませんでしたね…(汗)。
彼女が兎座なのは簡単、黒ウサギ隊の隊長だからです。…安直過ぎましたかね(笑)。
さて、今回はいろいろ盛りだくさんになりました。ラウラ登場、ファイヤースイッチ、なでしことリブラ参戦。次回も盛りだくさんです!
予告どおり、メテオとファイヤーステイツ登場、さらに竜也を絡ませます!ラウラにもとんでもない事が…。ちなみにロケットステイツはしばらく出しません。使い時を考えておりますので!
次回もお楽しみに!