楽しく逝こうゼ?   作:piguzam]

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おい!!逃げるんじゃねぇ!!

第7話~おい!逃げるんじゃねぇ!!

 

 

「おっしゃ!!前も綺麗になった事だし、クロノ!!俺と一緒にブッコミ役を頼むぜ!」

 

近寄ってきた傀儡兵を一掃した俺はシャボン・ランチャーの威力に口をあんぐりと開けているクロノに声を掛ける。

まぁ、呆けるのも仕方ねえよな、只のシャボン玉だと思ってたら爆発して敵がバラバラになっちまったんだし。

 

「ハァ…わかった。君にはいつも驚かされてばかりだな…」

 

溜息をついているのはとりま放置して、なのは達には後ろを着いて来てもらいますか。

俺は振り向いて後ろの皆にも声をかけておく。

 

「残りは俺とクロノで引き受けるからお前らは後ろからついてきな。ババアをぶっ飛ばすのに魔力を温存しとけ」

 

そのまま返事を聞かず、俺はジョイ君を装備して青緑(ターコイズブルー)の波紋を身体に纏い駆け出す。

クロノもS2Uを握り締めて後ろから同じように走ってついてくる。

 

「オラオラいくぜーーッ!!」

 

さあ、クソッタレ共!!道を開けてもらうぜぇ!!

シャボン・ランチャーを走りながら生み出し、進路上の傀儡兵たちを爆発させて潰していく。

さっきの爆発を見て傀儡兵もシャボンを避けようとするが、うまくシャボンを避けても…

 

「スティンガー・スナイプッ!!」

 

俺の後ろから追走しているクロノに撃ち抜かれていく。

漂うシャボンに飛来する槍の絨毯爆撃!!

手数の多いクロノと応用力のある波紋の使い手の俺達だからできるコンビプレイだぜッ!!

 

「ついてこいよッ!?クロノ!!」

 

「君こそ、途中でへばるなよ!?ゼン!!」

 

傀儡兵を潰して突っ走りながら俺達は声を掛け合う。

俺もクロノも口元が上がっていくのを抑えられねぇ!!やっぱ頼りになんぜ!!

そして『コイツ』もな!!

 

『ドララララララララララララララララララララララララララララララララララララララァッ!!!!!』

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

俺の真正面はクロノも撃てないので『クレイジーダイヤモンド』のラッシュで片付けている。

馬鹿正直に突撃してきた傀儡兵はそのままバラバラになってジャンクヤード行き決定ってな具合だ。

そのままの陣形で俺達は傀儡兵を喰い潰しながら屋敷まで一直線に進んでいく。

すると屋敷の入り口の前に大きな魔法陣が現われてきた。

 

『gooooooo!!!』

 

魔法陣から現われたのは、さっきまでとは比べ物にならないぐれえ巨大な傀儡兵だ。

屋敷の入り口の前でぶっとい棘付きの棍棒を携えたまま仁王立ちして俺達を見据えてる。

さしずめ門番ってわけかよ、あんなのがいりゃあセキュリティ会社いらねんだろぉなぁ……けどよ。

 

「凄い魔力だッ!!二人共ッ!!一度さがっ………」

 

ユーノが何か言ってるが、只そんな図体がでかいだけのモンじゃあ『俺たちは』止めれねぇぞ!!

 

そうなるのが当たり前といわんばかりの動きで、俺とクロノは同時にスピードを上げて並んで突っ走る。

俺の隣に並んだクロノはS2Uを顔と水平に構え、俺は生み出したシャボンを両の掌で挟み込む。

そのまま傀儡兵(デカブツ)の足めがけて俺達は得物を振りぬく!!

 

「スティンガー・レイッ!!」

 

「シャボンカッター・グライディンッ!!」

 

クロノのS2Uから放たれる青色の魔力弾と俺の青緑(ターコイズブルー)の波紋を纏わせたシャボンは真っ直ぐに傀儡兵(デカブツ)の足を射抜く。

シャボンカッター・グライディンは波紋カッターの応用技でシャボンを薄っぺらに潰して、滑走させる技だッ!!

たかがシャボンと侮っちゃいけねえ、コイツの切れ味は波紋カッターと並ぶ程に鋭いからな。

両足を潰され、バランスが崩れて前向きに倒れこむ傀儡兵(デカブツ)の顔面に俺とクロノは飛び掛る。

 

「「うおぉぉぉおぉぉぉおぉおおッ!!!」」

 

クロノは右手でS2Uを後ろ手に振りかぶり俺の青緑(ターコイズブルー)の波紋に近い青色の魔力をS2Uに纏わせる。

俺はジョイ君をしまって、ジャケットから取り出した『得物』に波紋を纏わせ、両手で握り締める。

だが、纏わせる波紋の色はいつもの青緑(ターコイズブルー)ではなく、輝く銀色(メタルシルバー)の波紋ッ!!

 

「ブレイク・インパルスッ!!」

 

その言葉と共にクロノはS2Uを打突のように傀儡兵(デカブツ)の顔面の右半分に撃ち込む。

 

銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライヴ)ッ!!」

 

俺も『得物』を両手で握り締めてバットと同じ要領で横薙ぎに振りぬく。

狙い撃つヒットポイントは傀儡兵(デカブツ)の顔面左半分だ。

俺とクロノの攻撃が途中で交わり、俺の波紋とクロノの魔力が混ざって大きな『一撃』に変貌していく。

俺達二人の魔力打と波紋打による会心の一撃ッ!!安直かも知れねぇが、あえて名づけるならッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「衝撃の波紋疾走(インパルス・オーバードライヴ)ッ!!!」」

 

グワシャッ!!

 

ゴオォォオオンッ!!

 

俺たちの『一撃』を顔面に受けて、傀儡兵(デカブツ)は屋敷の入り口にブッ飛んでいく。

そのまま屋敷の入り口にぶつかるが、入り口を支えにもたれ掛かってその場に踏みとどまった。

生憎とまだこれだけで終わりじゃねえぞ、デカブツッ!!

俺とクロノは間髪いれず接近して、もう一度傀儡兵の顔面に飛び掛る。

 

「おまけだッ!!」

 

『Blaze Cannon』

 

「釣りはいらねえからとっとけ、コラァッ!!」

 

『ドラアッ!!』

 

バガァアアァァァァアッ!!!

 

ゼロ距離からの砲撃魔法『ブレイズ・キャノン』と超パワー型スタンド『クレイジーダイヤモンド』の一撃ッ!!

さすがに耐え切れなくなった傀儡兵(デカブツ)は入り口を粉砕し、中で俺達が来るのを待ち受けていた傀儡兵(ザコ)を巻き込んでブッ飛んでいく。

ハデにブッ飛んだデカブツは二枚目の扉を粉砕したとこで止まり、動かなくなった。

俺とクロノは屋敷の入り口だった瓦礫の上に着地して息を整える。

 

「ふぅ……なるほど…君の『波紋』と僕の『魔力』の相乗打撃、か……かなり強力だな」

 

「だな。お前の魔力はなぜか波調的に合わせやすいからな。それもあるんだろ。」

 

実際の所、俺の波紋にはまだそこまでの破壊力は無い。

修練を積みゃまだ威力は上がるが今回はクロノの魔力っていうブーストがあったからあそこまでの破壊力に化けただけであって今の所役に立つのは波紋カッターなんかの切断系のみだ。

現状じゃ俺の最大の一撃は大型のトレーラーを真正面からでもガードできる『スタープラチナ』のガードを弾き飛ばせるパワーを持った『クレイジーダイヤモンド』に頼りきりだ。

まだ『クレイジーダイヤモンド』も全力で殴ったわけじゃないが、スタンドの力以外にも必殺の威力が欲しいところだね。

そんな会話をしていると、デカブツがいた場所から、呆然としていた四人が走ってくる。

まったく何を呆けてんだよお前等?

 

「ヘイヘイ、遅かったじゃねぇか」

 

「まったく。立ち止まってる時間は無いぞ?」

 

俺とクロノはやや息切れしているなのは達に呆れ気味に注意するがそれを聞いたユーノが凄い剣膜で詰め寄ってきた。

 

「なんでそんなに平然としてるんだッ!?これだけ思いっきり暴れておいて言うことはそれだけなのかッ!!?」

 

ユーノはそう言って叫んでくるけど俺にはよく解らなかった。

何言ってんだ、コイツ?向こうが喧嘩売ってきたんだからだから別によくねえか?

って良く見りゃ他の3人も頷いてるし。

 

「大体ッ!ゼンッ!君の持ってる『ソレ』は一体なんなんだいッ!?」

 

さっきから凄い勢いで取り乱してるユーノは先ほど俺が使った『武器』を指して叫びだす。

クロノ達も視線はコレに向いてるし……そんなに驚く程のモンか?

別にこんなもんそこら辺にある普通の得物だろ?

俺が持っているのはグリップと打撃部の内側(・・)がソリッドブラックで塗装され、外側は中心部から円形にステンレスコーティングを施し、円の淵をワインレッドで彩った俺専用の得物だ。

 

 

 

 

 

俺が数々の強敵と闘った時、いつも俺を助け、支えてくれた相棒、そうッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フライパンですが何か?」

 

ゾウさん印のフライパンです☆

 

「なんで「こいつ何言ってんの?」みたいな顔をするんだぁぁあッ!!!?」

 

俺の返答に頭を抱えて叫びだすユーノ君がそこにはいた。

「俺だから(笑)」と言ってみたら殴られました。解せぬ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

そして中に入って通路を進んでいくと、いたるところに虹色と黒色の穴が開いていた。

何だコリャ?

 

「なあ、この虹色の穴は何だ?」

 

俺は横を一緒に走るクロノに聞いてみる。どっかに繋がってんのかね? ファンタジーな世界とか。

 

「その穴は虚数空間……魔法が一切発動できない空間だ。次元航行艦ですら、あれに落ちたら重力の底まで真っ逆さまだよ… 飛行魔法もデリートされ、もしも落ちたら重力の底まで落下する…ようは『絶対に戻れない空間』さ。」

 

訂正。行き先はすっごく……危ない空間ですた。

まんま地獄への片道切符じゃねえか…落ちない様に気おつけよ…

そのまま危ない空間を避けて通路をしばらく行くとまた傀儡兵が襲い掛かってきた。

コイツ等しつこいね、ホント。

まだ傀儡兵達と距離が空いてるので先頭に立ってる俺とクロノ、アルフの三人は構えて奴等を待ち構える。

なのはとフェイトは後方で待機してもらってる。

正直、この二人の魔力は温存してもらった方が有難いからな。

 

「……ゼンッ!!君に…どうしても聞いておきたいことがあるんだッ!!」

 

だが、傀儡兵を待ち構えてるといきなりユーノが真剣な顔で俺を見つめて問いかけてきた。

そんな目で見詰められたら…萌えちゃうじゃ、ゲフンッ!!ゲフンッ!!

や、やめよ…かなり真剣な話しみてえだし……でもなんなんだよ、一体?

 

「なんだよ?いきなり」

 

「おい、フェレットもどき!!この状況で何を言い出すんだ!?」

 

クロノもワケが解らないのか、ちょいとキツめの声で横から会話に入ってきた。

おいおい、気が立ってて怒鳴るのはわかんねえでもねえけど、そんなキツイ言い方……

 

「クロノは黙っていてくれ!!」

 

だが、何時もの弱気っぽい雰囲気は感じられないぐらいの強い声でユーノはクロノに叫んで反論した。

これにはさすがに驚いた俺達全員がユーノに視線を向ける。

だが、その視線を一切無視してユーノは真剣な顔で俺を見詰めていた。

 

「…ゼン……君はバリアジャケットも、魔力ももたない普通の人間だ…なのに何故、そんなに堂々と戦えるんだ!?一歩間違えば大怪我を負うかもしれないのにッ!!何故、恐れないんだ!?」

 

「………あぁ?」

 

ユーノ……お前ほんとにいきなりどうしたんだよ?

 

「君のその『強さ』は……どこから出てくるんだッ!?」

 

いきなりの質問に面食らっているがそれは俺だけじゃなく、クロノ、フェイト、アルフも俺と同じような顔をしてた。

だが、なぜかなのはだけはユーノを心配そうな顔で見ている。

俺を見やるユーノの表情は辛いとか苦しいとか……なんか、そんな感情がごっちゃ混ぜになったような……そんな顔だ。

 

「僕は…なのはを巻き込んだこと後悔している…それに、もしかしたら僕が巻き込んだせいでなのはが死ぬんじゃないか……自分も死ぬんじゃないかって…怖くて……怖くて仕方ないんだ……君は、僕らと違って魔力が無いのに…本当の意味で『命がけ』で戦っているのに…教えてくれ…なんで君はそんなに強いんだ?…一体なんのためにあの傀儡兵に恐怖せずに命を賭けて戦えるんだい?…」

 

「……ユーノ君」

 

「情けないのは解ってるしこの場で聞くような事じゃないのも解ってる……でも、どうしても知りたいんだ…教えてくれ」

 

そう言ってユーノは辛そうな顔を浮かべたまま俯いてしまう。

……こりゃ、相当参ってるな…なのはを巻き込んだことを後悔している、か……仕方ねえ。

『あの男』の名ゼリフ、借りますか。

 

「……俺が恐かねぇのはな、守りたいモンのために戦うからだ…その守りたいモンのことを考えるとよ、自然と『勇気』が沸いてくんのさ……俺は『勇気』があるから戦えんだ!!」

 

俺が恐怖しない理由を語り始めるとユーノの顔が少しづつ上がってまた俺を見詰める形になった。

 

「……………『勇気』…」

 

ユーノは小さく、でもしっかりとした声で俺の言葉を反復する。

自分の中にしっかりと刻み付けるように……

 

「そうさ…『勇気』だよ……そして『勇気』ってのは誰にでもある……それが俺達人間が生まれたときに絶対にもってる『人間らしさ』だからだ!!」

 

「ッ!?」

 

驚くユーノに俺は口元を吊り上げて笑いかけて、迫り来る傀儡兵一体の元に駆け出す。

 

しっかり観て、聴いて、そんで刻み込めッ!!

 

「人間讃歌は“勇気”の讃歌ッ!!人間の素晴らしさは勇気の素晴らしさ!!いくら強くてもこいつら傀儡兵は“勇気”を知らねぇ!」

 

剣の射程距離内に俺が接近した傀儡兵は得物の剣を横薙ぎに振るい俺を真っ二つにせんと迫ってくる。

 

「ッ!?ゼンッ!!」

 

だが、剣を振るい終わると其処には俺の存在は無い。

剣が当たる直前に波紋を込めた両足でジャンプして奴の無防備な頭上に回避したからだ。

 

「そんな奴らぁ……」

 

俺はそこで一旦言葉を切って近づいた傀儡兵の真上に飛び上がり波紋を込めた回転蹴りをドリルの様に回転しながらド頭に叩き込む!!

 

「ノミと同類だぁあッ!!!波紋乱渦疾走(トルネディーオーバードライヴ)ッ!!!」

 

ズガガガガッ!!

 

俺は傀儡兵の残骸に着地して波紋乱渦疾走(トルネディーオーバードライヴ)の回転の勢いを止める。

そのまま呆けてるユーノに向けてサムズアップしてやるとユーノも憑き物が落ちた顔で笑ってた。

やれやれ、こーゆうシリアスなのは俺のキャラじゃねぇんだけどなぁ……俺は断然シリアル派です(笑)

そうして、虚数空間を避け、傀儡兵を駆除してどんどん奥へ進むと、俺達は分かれ道まで来たので一度立ち止まった。

 

「とりあえず、ここから二手に分かれて進もう。やることは二つ。プレシアの逮捕とこの庭園の駆動炉の停止だ。こんな大掛かりな妨害だ。恐らく、エネルギーは駆動炉から供給されているはず。駆動炉を停めれば仕掛けも停止するはずだ」

 

ここでクロノから今後の方針が提案されるが『プレシアの逮捕』という言葉にフェイトが複雑な顔をしている。

プレシアに、母親に対しての親子の情がそうさせてるんだろうな。

クロノもそれが判っていてあえてそう言った感じだ。

やれやれ、そこまで憎まれ役にならなくてもいいだろうに……仕方ない。

 

「ヘイヘイヘ~イ。クロノ、『逮捕』じゃなくて『確保』の間違いだろ?」

 

「え?」

 

「ッな!?ゼンッ!!」

 

「わざわざ憎まれ役にならなくていいんだよ。まったく、立場のせいかもしれねえけどそこまでしなくていいんだっつの」

 

俺とクロノの話には誰もついてこれないようで首を傾げている。

まぁ、今回のことを知ってんのは俺とエイミィさんにリンディさんだけだからな。

俺は首を傾げてるフェイトに向き直る。

 

「心配すんな。全部終わったらちゃんと話してやんよ。だから今は目の前のことに集中しとけ」

 

「………うん。わかった。」

 

よしよし、納得したとこで話を戻しますか。

正直、ココでいつまでも時間食うわけにゃいかねえしな。

 

「んじゃあ、ババアのとこには誰がいくよ?俺的にはあのババアをボッコボコのけっちょんけちょんにしたいからそっちがいいんだが?」

 

具体的にはボコして、治して、ボコして、治して、ボコして……以下エンドレスぐらいに☆

 

「…さすがに、僕は…」

 

「にゃはは……」

 

「あんまりやりすぎると君を逮捕しなくてはならないんだが…」

 

「ゼ、ゼン…あんまり、母さんにひどく…しないで欲しい…な…」

 

「あたしはもう大賛成だよッ!!一緒にあの鬼ババをボコボコにしてやろうよ、ゼン!!」

 

俺の考えに共感してくれたのはアルフだけだった。ちくせう

しかしあんだけ酷いこと言われたのにフェイトは優しいなぁ、オイ。

 

「…では、僕とゼン、フェイトにアルフで行こう…君達二人はプレシアに向き合わなくてはならないし、僕はゼンの暴走を止めないといけない……駆動炉にはなのはとフェレットもどきしかいけないが…なのは、大丈夫か?」

 

俺がフェイトの優しさに感動している内にクロノが面子を決めた。

つうか、テメエ、俺の暴走ってなんだっつうの。

 

「うん!!任せて!!」

 

「誰がフェレットもどきだッ!?」

 

ユーノとなのはは元気に?返事をして階段に向けて歩いていく。

二人共殺る気?は充分だな。とにかくチーム分けは決まったし、そんじゃまっ!!

ユーノにはいっちょ俺からグレートな餞別を渡しておきますか。

俺はポケットから一枚のカードを出す。

 

「ユーノ!!」

 

俺はユーノが振り向くか、振り向かないかの内に取り出したカードを投げる。

 

「?なんだい?ぜn…うわッ!?」

 

振り向いたユーノは俺が投げ渡したカードをギリギリ受け取った。

んで、俺が投げ渡したカードは何かっつうと……

 

「『The Chariot(チャリオッツ)』!!ラッキーセブン、戦車のカードだ。お守りとしての意味は『常勝と勇気』…気休め程度だがよ、持ってけや……しっかりと、なのはを守れよ!!」

 

そう、投げ渡したのは俺のお気に入りのタロットカードだ。

俺は呆けてるユーノに拳を突き出して笑いかける。

俺からの粋な餞別を受け取ったユーノはしばしチャリオッツのカードを眺めてからポケットにしまった。

 

「ありがとう。ゼン……絶対になのはを守るよ」

 

ユーノは顔を引き締めて、俺と拳をぶつけるとそのままなのはと一緒に階段の奥を目指して走っていった。

 

「では……僕達も行こう」

 

ユーノとなのはが完全に通路の奥へ行ったのを見計らってクロノが俺達に号令をかける。

クロノの言葉を合図に、俺達は気を引き締め最下層に向けて再び、走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「サンダー・レイジー!!」

 

フェイトのバルディッシュから金色の雷が放たれ、雷を受けた傀儡兵達は爆発し黒焦げのジャンクに変わっていく。

もはやリサイクル対象外の再利用不可な可燃ごみでしかねえな。

 

「スティンガー・スナイプ!!」

 

クロノのS2Uから、青い閃光が放たれ、奔る閃光は立ち塞がる傀儡兵達を無慈悲に貫いていく。

貫かれた傀儡兵達は胴体に大穴を開けられ上半身と下半身がサヨナラバイバイ状態で倒れて動かなくなった。

 

「はぁあああ!!おりゃあぁぁあああッ!!」

 

アルフも自慢の鋭い爪で並み居る傀儡兵をぶつ切り、膾切り、真っ二つ、ざく切りといった様々な切り方で次々と奇怪なオブジェに変えていく。

まぁ、ぶっちゃけ切り方なんざアルフのその時の気分次第だろうけどな。

そーゆうの狙ってやるのとかできるように見えねえし。

時にはフィンガーグローブに包まれた拳にオレンジ色の魔力を纏わせて傀儡兵の顔面や胴体を穿ち、ぐしゃりとへこんだ出来損ないのおもちゃを生産してる。

 

「どぅおりゃあッ!!銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライヴ)ッ!!」

 

俺も銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライヴ)を纏わせたフライパンで、並居る傀儡兵をぶちのめしていく。

フライパンの円形の面打撃を受けた傀儡兵はフライパンの形に殴られた部分がへこんで倒れていった。

銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライヴ)の波紋を纏わせ全体的なステータスがアップアップしてるフライパンは正に軽い・頑丈・炎耐性と三セットのお得能力を備えた立派な武器だぜ。

そのままザコを蹴散らして(蹂躙して?)しばらく走っていくと今までよりも豪華で大きな扉の前に着いた。

お~お~、雰囲気出てるねぇ。

 

「フェイト、此処か?」

 

「うん、多分だけど……母さんがいる!」

 

扉をジッと見つめるフェイトの目は真剣そのものだ。

んじゃ、とっととご対面といきますかね。

 

「だけどさ…」

 

フェイトの傍に立つアルフがおもむろに扉に触れると、なにやら見えない障壁に阻まれる。

バリヤかよ……益々ラスボスの間って感じじゃねえか……フェイト達が苦い顔をしてるのを見るとどうやら強度はかなりのモンみてえだな。

 

「この扉以外の道は無いのか?込められた魔力量から見るに、相当固いぞ」

 

「あたしたちが知ってるのは、此処だけさ」

 

ようするに迂回路は無いと……あ゛ーッ!!じれってぇな、おいッ!!

 

「オーライ……ちょいと離れてな」

 

俺は無造作に扉に近づいていく。

扉がここしかねえんなら………ブチ壊せばよくね?

 

「ゼン、なにをするの?」

 

俺の行動の真意がわからねえのか、可愛らしく首を傾げるフェイトたん。

 

「ハァ~……なぁベイビー?俺達はお上品にお茶しにきたんじゃねぇんだぜ?殴り込みにゃそれなりの挨拶ってぇモンがあんだろ?」

 

ニヤリと笑う俺の後ろから『クレイジーダイヤモンド』がその巨体を具現する。

そのまま『クレイジーダイヤモンド』は大きく体を後ろにしならせ、右腕にあらん限りの力を篭めてギチギチと音を上げながら引き絞られていく。

丸太のような両足は大きく開かれどっしりと大地に根付き、引き絞った拳と反対向きに腰は限界まで捻られていく。

その『構え』はスリングショットを限界まで引いたかのような形で、引き絞られた右腕の『拳』は『弾丸』そのものである。

 

まぁ、装填された弾はかなり、かなーーり『大型』だけどな…

 

キュイィィィィィィンッ!!

 

引き絞られた右腕の拳にスタンドの破壊のエネルギーヴィジョンが青緑(ターコイズブルー)の光を放ちながら集まっていく。

ぶっちゃけ『スタープラチナ』の最強の一撃必殺技にあった『スターブレイカー』にそっくりだ。

でも『クレイジーダイヤモンド』でそれをブチかますわけだから……『クレイジーブレイカー』?『ダイヤモンドブレイカー』?……いやむしろ『プッツンブレイカー』かね?

とりあえず後ろで疑問顔になってる3人に説明しとかねえとな。

 

「『クレイジーダイヤモンド』のパワーってさぁ……大型トレーラーのスピードの乗った突撃でも真っ正面から弾き返せんのよ」

 

俺が語る間にも『クレイジーダイヤモンド』のパワーは『溜め』によりグングン上がっていく。

後ろにいた3人も意味がわかったのか、顔が少々引きつっている。

 

「パンチのスピードもよぉ……計ったことはねぇけど、拳の射程距離なら300~400キロはでるんじゃねぇかな?」

 

もはや、反対方向をむいて背中越しに淡々と語る俺の姿は、恐怖以外の何者ではないだろう。

もう『クレイジーダイヤモンド』の拳に纏われてる青緑(ターコイズブルー)のエネルギーは最初と比べると二回りほど大きくなってる。

 

「そんなパワーとスピードを溜めに溜めて……一つの『拳』からブッ放ったらよぉ……」

 

俺はディ・モールト(非常に!!)イイ笑顔で3人に振り向いた。

 

「スゲェぞ?まじで」

 

俺の言葉の途中で3人は反対を向いて、地面に飛び込みながら頭の上に手を組んだ状態で伏せる。

 

イクぞッ☆

 

「『クゥレイジィィィィィイ!!!ダァアイィヤァァモオォォオンドォォォォォォォオオォォオ!!!!』」

 

『ドオオォォラアァァァアァァァアアァァァァアアアァァァァアァッ!!!』

 

俺がトリガーを引き、撃鉄が落ちた瞬間、轟音が響き光が視界を覆った。

 

 

 

ズウゥゥッゥウドオッォォォッォオォゴゴォォオッォオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

 

『クレイジーダイヤモンド』が放った全壊パンチ……『プッツンブレイカー』は扉と結界の破壊に終わらず、その先40m程の地面を抉り取っていた。

扉?ありましたっけ?そんなの?っていう具合になってるぜ。

 

「おっ邪魔しまーーーーす!?」

 

初めての全力パンチをカマして気分爽快になった俺は語尾を延ばしながら扉の先へ飛び込む。

そして地面がブッ飛び、結界と扉が消え去った視界の先にはババアと妖精の羽みたいなのを生やしたリンディさんがいた。

庭園の端に立ってるババアの傍にはアリシアのポッドも置いてある。

……やっと会えたなッ!?クソババァがッ!!

なにやら二人共唖然とした顔をしているが、俺には関係ねえ。

目の前にいる二人を無視して、俺はラスボスの前に来たのにまだ起きない3人にモーニングコールをかける。

 

「おい3人とも!!いつまで寝てんだ!?もうラスボスの前だぞ!?とっとと起きろよ!!huury!!huury!!huuuryy!!!」

 

こんなクライマックスで燃える場面で寝てんじゃねえよッ!ったくッ!

 

「「「君(アンタ)(ゼン)のせいだぁあぁああ(だよ)ッ!!!」」」

 

俺の言葉に絶叫しながら煙の中から起き上がった3人はところどころ煤けております。

悪い。反省も後悔もしてねぇや(笑)

汚れた服の煤を払って起き上がったフェイトは気を取り直しそのままプレシアに近づき、向き合う。

俺達も自然と気が引き締まる。

すぐにでもプレシアを殴り倒してえ気持ちが燻るが、なんとか気持ちを押さえ込む。

今はフェイトがプレシアに想いを伝えて向き合う時なんだ。

俺が出しゃばって台無しにはできねえ。

 

「……母さん」

 

「…まだ私の事をそう呼ぶのね。ここへ一体何をしに来たのかしら」

 

「あなたに言いたい事があって来ました……」

 

フェイトは俺達から一歩前に踏み出し、プレシアに近づく。

 

「私は話をしに来ました、貴女の娘……フェイト・テスタロッサとして…私はアリシア・テスタロッサじゃあり

ません。貴女が作ったただの人形なのかもしれません」

 

フェイトは悲しそうに、だけどその事実を受け止め、噛み締めるように呟いていく。

 

「だけど私は、フェイト・テスタロッサはあなたに生み出してもらって、育ててもらったあなたの娘です」

 

プレシアはフェイトが一言話すたびに、悲しそうに顔を歪めていく。

 

「……だから何だというの?今更あなたの事を娘と思えというの?」

 

「あなたがそれを望むなら、私は世界中の誰からもどんな出来事からもあなたを守る。私があなたの娘だからじゃない。あなたが私の母さんだからッ!!」

 

フェイトは自分の気持ちを伝えた。

それを聞いたプレシアの表情は、誰が見ても判るほどの『悲しみ』と『喜び』という葛藤の表情を浮かべている。

だが、その表情はすぐに引っ込む。

 

「私は娘を…アリシアを取り戻す。その為に、アルハザードに行くのよ!」

 

プレシアは自分に言い聞かせるかの如く叫んでフェイトに杖を向け、魔力を込める。

 

「母さん……!」

 

『Photon Burest』

 

紫の魔力砲撃がフェイトに向けて放たれる。

フェイトは戸惑い、動けずそれを喰らいそうになる。

 

「フェイトォッ!!!」

 

「避けろぉッ!!フェイト!」

 

クロノとアルフが必死に叫ぶがフェイトは動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、俺が割り込んだ。

 

ズガアァァァァァァァァァアアアンッ!!!

 

鼓膜を震わせ、眩い閃光と共にその稲妻は俺へと叩きつけられた。

 

「ぐっ……が…ぁ…ッ!!?」

 

「……え?」

 

砲撃を撃った張本人のプレシアが戸惑う声を上げる。

 

「「ゼンッ!!?」」

 

「ッ!?ゼンッ!!」

 

俺は余りの激痛に立っていられず膝をついて膝立ちの状態になった。

そのまま地面に倒れそうになったがアルフ達が駆け寄って俺を左右から支えてくれる。

雷の直撃を受けた俺の体からは肉の焼けた嫌な匂いが上がってバチバチと音が鳴っていやがる。

…あ~…痛てえな…クソッ……

 

「馬鹿野郎ッ!!バリアジャケットも展開して無いのに何を考えているんだッ!?」

 

俺の傍へ駆け寄ったクロノから罵声がくる。

正直、馬鹿野郎はひどくね?

 

「ゼンッ!?ゼンッ!?しっかりしておくれよぉッ!!」

 

アルフは俺を横から支えながら両の瞳から大粒の涙を零してる。

あ~あ~アルフ…そんなに泣いちゃって…でもまぁ、心配してくれんのは嬉しいねぇ。

フェイトも涙がポロポロ出てるし。

 

「ゼンッ!!早く『クレイジーダイヤモンド』をッ!!」

 

………んあ?……あ~、そういやアルフ達には言ってないんだっけ?

 

「悪ぃ…俺の『クレイジーダイヤモンド』は『自分の傷は治せない』んだよ…世の中…都合のイイ事ばかりじゃねぇってなぁ……」

 

俺の言葉の意味を理解した二人の顔はドンドンと真っ青になっていく。

 

「そ、そんなッ!?」

 

「う、嘘ッ!?どうしてッ!?なんで自分の傷が治せないのにこんなことしたのッ!?い、嫌だよッ!?死んじゃ嫌ぁッ!!」

 

手足が痺れ、地面へと膝を着いている俺を支えながら二人は涙を流して叫ぶ。

…心配してくれんのは嬉しいがな、こんぐらいの傷じゃ俺は死にゃしねえよ…

俺は傍で涙を流してるフェイトの問いを無視して両足を踏ん張って立ち上がる。

くっそぅ!!やっぱり半端じゃネェよな!!?このオバハン!!

……体ん中に建物の破片が入って痛てぇ~~~

 

「……分からない…何故、何故!?無関係のボウヤがその【人形】の為にそこまでするの!?………」

 

オバハンがなぁ~んか言っちゃってるし……フザケンナヨこのアマ!!!

俺は体に波紋を流して、痛みを和らげて立ち上がる。

 

「…ッ!?…ハッァア!!…友達(ダチ)が泣いてたら一緒に泣かした奴をぶん殴ってやるのが普通でしょうが?違いますかい?オ・バ・ハ・ン?アンタ歳食いすぎて脳細胞まっちろですかぁ~?(笑)」

 

舌を出しながら中指をブッ立てて、思いっきり馬鹿にした顔で俺はプレシアを睨む。

俺はダチを、フェイト・テスタロッサって女の子を守りたいからやってんだよ!!ばぁ~かッ!!

 

「…ゼン……ぐすっ…」

 

「…………」ビキッ

 

俺の言葉を聞いて二人の表情は対照的に変わっていく……ん?『二人』?

あれ?……もしや俺今、フェイトを守りたい云々を口に出しちゃった?うっわ!?恥ずぃっ!!

……フェイトさんや?そのプリチィーなお顔がトマトみてえに真っ赤なのは、なして?…涙も出てるし…フラグタテタオボエナイヨ?ホントダヨ?

…そしてプレシアさんや?額の青筋が大変なことになってますよ?

あっ!!ちょ!?やめて!!バチバチいってるぅーー!!?

 

「…もうこれ以上は容赦はしない!!私はアリシアを…娘を取り戻すのッ!!」

 

そういってプレシアは砲撃を俺達に撃ってくる。

俺達は散開してそれを避け続ける。

 

「ウォラッ!!波紋カッター!!」

 

こちらも負けじと攻撃を繰り出すが、どれも強いシールドに阻まれてしまう。

シールドに阻まれた波紋入りのトランプはジュッと音を立てて無くなっちまった。

 

「クソッ!!どんだけ硬えんだよッ!?あのシールドッ!!」

 

俺は、さっきの砲撃のダメージで強い波紋を練ることができない。

今の俺じゃあ単体でのシールド突破はまず無理だ。

波紋で痛みを和らげちゃいるが、それはあくまで痛み止めの効果しかねえ。

『クレイジーダイヤモンド』は近距離でこそほぼ無敵を誇るが、近づけないことには打つ手がない。

……このままじゃジリ貧じゃねえか!?

 

「くそっ!!スナイプ・ショットッ!!」

 

「こんのおぉぉぉッ!!わッ!?うわわわわッ!!?」

 

クロノの攻撃も止められ、アルフは俺と同じで雷撃のせいで近づくことすらできずにいた。

有効な攻撃を放っているのは誰もいない。

フェイトは……まだプレシアを攻撃するのに迷いがあるみたいで、攻撃は避けても、反撃はできずにいる。

リンディさんも次元震を抑える魔法の制御で手一杯のため戦闘には参加できない。

駆動炉を止めにいったなのはとユーノもまだこっちには来れないだろう。

……こりゃマジに万事休すか?

 

「だあーッ!!もうッ!これじゃ鬼ババをブン殴れないじゃないかッ!!こうなったら無理矢理にでも突っ込んで……」

 

アルフはそう言ってプレシアの周りに飛び交う雷の嵐に突撃しようとする。

いやいやいやッ!?待て待て待て待てぃッ!?

 

「アルフ、お前バカかよッ!?あんな嵐ん中に無理矢理突っ込んでみろッ!!さっきの俺みたいにローストされちまうぞッ!?」

 

決死の特攻をカマそうとするアルフに俺は怒鳴って注意する。

こんがり焼きあがったアルフなんて見たくないからねッ!?そんなん誰得だよッ!?

 

「で、でもこのままじゃ……うひゃあッ!?」

 

なんて話してる間にも雷は俺達にランダムな方向から降り注いでくる。

くっそう、話してる時ぐれえ狙うなっつのッ!!

 

「ボンヤリするなッ!!余所見してると丸焦げだぞッ!!」

 

「わかってるっつのッ!!アルフッ!!無茶すんなよッ!!」

 

「わ、わかったよッ!!」

 

クロノの声を引き金に俺とアルフはもう一度バラけて攻撃を避け、攻撃のチャンスを待つ。

 

だが……

 

「……グッ!!…ッ!?ゴハッ!!」

 

全員が万事休すかと思ったのに、唐突にプレシアの魔法が止んだ。

何事かと思いみんながプレシアの方をみると、プレシアが胸を抑えながら咳き込みだして、吐血を起こした。

もしかして『病的』じゃ無くて本当に『病気』だったのかよッ!?

 

「母さん!」

 

血を吐いて苦しむプレシアに真っ先に駆け寄ったのはフェイトだった。

それに続いて、俺たちもプレシアに駆け寄る。

なのはとユーノも今、着いた様で、プレシアの吐血を見て、目を丸くしている。

フェイトは必死にプレシアの介抱をするが吐血は止まらない。

俺は『クレイジーダイヤモンド』を呼び出そうとしたが……

 

「ぐっ、ごほっ!!、ごほっ!!」

 

「母さん!!」

 

プレシアが血を吐き苦しむ横でフェイトが必死に叫んでいる。

 

「…もう限界ね……ねぇ、フェイト?」 

 

「?か、母さん?」

 

吐血が収まるとプレシアは自嘲するような笑顔を浮かべてフェイトに声を掛けた。

だが、フェイトに語りかけるその声音は今までのような憎しみの声じゃなくて、優しく、慈しむような声音だった。

 

「……ごめんなさいね」

 

その言葉に、俺の思考が止まっていく。

周りの皆もプレシアの言葉に驚きの表情を浮かべていた。

 

「えっ?」

 

「…怖かったの。あなたがアリシアの記憶を持っていないとわかった時、私は狂気に身を委ねた…そんな私でもあなたは母さんと言って、慕ってくれた。だからかしらね、いつの間にかあなたを好きになっていたわ」

 

フェイトは何も言わず、プレシアの言葉に耳を傾ける……

 

「……」

 

「けどそれを認めてしまうとアリシアの愛を忘れてしまいそうで、狂っていた私はそう考えて、あなたへの想いを消そうとした。…でも、無理だった。そこからはもう想いがせめぎあって、もう何が何やらだったわ…」

 

「母さん…」

 

…俺はプレシアに何も言えない…俺には……惜しみない愛情を注いでくれたオヤジとオフクロ…爺ちゃんがいるから……だから、死んでも気持ちがわかるなんて口にだしちゃいけねぇ…

そしてプレシアは崩れそうになる体に鞭を打ち、傍のフェイトを押し退け立ち上がる。

ゆっくりと、のっそりと歩く先にはアリシアの眠る生体ポッド。そして虚数空間を覗かせる大穴。

 

「母さん…何…を…?」

 

フェイトもプレシアの行動がわからないようで戸惑っている。

 

「フェイト…私のもう一人の娘…そしてアリシア…あなたにも…謝らないと…」

 

…謝る?…おいまさか!?

 

「フェイト、母さんはあなたの幸せを祈るわ…」

 

「ッ!?母さんッ!!待って!!」

 

目を見開いたフェイトはプレシアに駆け出す。

 

「さようなら…私の愛しいもう一人の娘…」

 

 プレシアは最後にフェイトへと微笑みかけ、アリシアと共に虚数空間へと身を投げる。

フェイトは手を伸ばしながら、その光景に涙を流す………落ちていく母に目を奪われて……

フェイトはプレシアを追いかけて飛び込もうとするが、傍に居たアルフに慌てて腕を掴まれる。

 

「離して、離してよ!アルフッ!母さんがッ!」

 

「ダ、ダメだよッ!!落ちたらフェイトも死んじゃうよッ!!」

 

泣きながら懇願するフェイトにアルフは悲しげに首を振って拒否する。

フェイトを悲しませたくは無いが、虚数空間に飛び込めば命は無い。

自分はフェイトの命を守る使い魔だから……だから、例えフェイトのお願いでも手は離せなかった。

 

 

「母さあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

フェイトの涙ながらの絶叫が、時の庭園に響き渡っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……その場にいた人間は誰もが虚数空間に落ちていくプレシアに視線を奪われていた……だから、一人の優しすぎる大馬鹿野郎のブッ飛んだ行動を誰も止める事ができなかった…………

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

「……ごめんなさいね、アリシア……」

 

私は愛しい娘の入った生命ポットを抱えて虚数空間を落ちていく……

生命ポットの中にいる自分の愛娘であるアリシアは、永遠に瞼を開ける事は無い。

……だが、これで良い。

私がここで全てを被って死ぬ事で、フェイトは管理局から罪に問われる事は無いだろう。

今まであの子にしてきた事を差し引いても、本当に悪い母親だったと思う。

でも、これから先、あの子の未来に私が存在してはならない。

例えあの子が私を想っていてくれても、フェイトの傍にはあの子を任せられる存在が居た。

 

「……確か…ゼン君……だったかしら?」

 

魔導師で無いにも拘らず、フェイトのために我が身を傷つけて戦う少年の名を朧げに思い出す。

管理局が管理できない魔法外文化世界の住人であるにも拘らず、とても不思議な術と存在でフェイトのために戦いを挑んできた少年。

咄嗟に自分の体を楯にしてフェイトを守ってくれたあの子なら……この先もフェイトをあらゆる障害から助けてくれる。

……彼自身とは少ししか話していないけど、そんな確証の無い奇妙な実感が湧いているのだから不思議だ。

 

「フェイトを頼んだわ。禅君……」

 

もう思い残すことは無い……本当は、娘であるフェイトの晴れ姿を見れるまでは生きたかったけど、この身体ではそれも叶わないでしょう。

ならばいっその事ここで朽ち果てるのがお似合いの最期だ。

このままアルハザードへ辿り着けなくとも、それが私自身の罪だというのなら喜んで受け入れよう。

この堕ちていく感覚に自身を委ね、そのままアリシアのポッドを抱えて目を閉じようとしたとき……。

 

「………ォォォォオオ……」

 

「…え?」

 

上から木霊する声に目を開けた。

 

「ウォォォオォォオオ!!!!!!!!!」

 

私が目を開けた直ぐ先に……ゼンと呼ばれていた少年が雄たけびを上げながら私に向かって落ちてきていた。

 

「な!?」

 

目を見開いてその光景を見ていると、ゼンは私にしがみついた。

 

「ハァッ!…ハァッ!……や、やっとついた…」

 

息を切らしてこちらを見る禅に苛立ちがこみ上げてくる。

今、私は命を粗末にしたこの少年に溢れ出る文句を言わなくては気がすまなくなっている。

 

「何を考えているの!!?自ら虚数空間に飛び込むなんて!!?」

 

「あぁ!?」

 

彼の声を聞くとどうしようもなく抑えられない激情の渦が私の心を支配していく。

……よくも、よくもフェイトを一人にしたわねッ!!?あなたならフェイトを守ってくれるとッ!!

私が居なくても大丈夫だと、大事な愛娘を任せられたのにッ!!

 

「あなたが傍にいなきゃフェイトが悲しむじゃない!!なのにこんな……命を捨てるようなことをして……もう戻れないのよ!!?」

 

「……」

 

黙って私の言葉を聞いてるけど、まだまだ苛立ちは納まらない。

 

「私の……私の最愛の娘を悲しませるなんて…」

 

怒りに任せて更に罵声を浴びせようとしたけれど…………

 

「じゃぁてめぇは何で逃げたんだよ!!?」

 

彼が放ったその言葉に私は二の句が出なかった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「じゃぁてめぇは何で逃げたんだよ!!?」

 

俺は怒りを込めてプレシアに言い放つ。

 

「!?」

 

俺の叫びを間近で聞いたプレシアは、驚愕に顔を歪めて言葉を飲み込んだ。

ビックリしてやがるが言いたい事はまだ山ほどあんぞコラ!!

 

「逃げんじゃネェよ!!罪を償えよ!?そんで、償いが終わったらフェイトと一緒にやり直せよ!!命ある限り!!……家で飯の支度をして、学校から帰ってきたフェイトに『おかえり』って笑いかけて、一緒の布団で寝て!!…そんなフェイトの『普通』の夢を叶えてやれよ!!!それが『親』ってもんだろうがぁ!!!!」

 

ご大層に『幸せを祈ってる』なんて言ってるが、ようは只の逃げじゃねえかッ!!

本当にフェイトの事を大事だと想ってるってんなら傍で見守り続けろってんだよッ!!

俺のそんな思いを聞いたプレシアは悔しそうに顔を歪めて、俺の胸ぐらを掴んで吼えた。

 

「だけど!…だけど!…もう無理なのよ…ここでは一切の魔法は使えない!!私の命も……もう長くはないの!!もう、もうあの子には償えないのよ!!!」

 

プレシアはもうどうしようもない現実に涙を流していやがる……泣く位ならこんなことすんじゃねえっつの。

確かにこの空間じゃ魔法は使えねぇ……テメエ等の魔法(・・)はな?

でもそれは『魔導師』のアンタ等にとっての話しだろーが。

 

 

「へっ!!ところがどっこい!!こちとら魔法使いなんてメルヘンチックなモンじゃねぇ!!……俺は…」

 

泣いているプレシアに俺は獰猛な笑みを浮かべて言ってやる。

 

そうさ、俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『スタンド使い』だ!!!」

 

『スタンド使い』なんだぜぇ!?

俺はアリシアのポッドのもち手とプレシアの手を両手を使って握り締める。

その形は傍から見れば運動会とかでやる組体操の扇みてえな形で俺が真ん中で二人の手を支える位置になってる。

さあてッ!!いっちょ馬鹿なことやりますかぁッ!!

 

「しっかり捕まってろよぉ!!?『クレイジーダイヤモンド』!!」

 

周囲に低音が木霊して俺のスタンド『クレイジーダイヤモンド』が俺の目の前に現われる。

俺は今からやる馬鹿なことに覚悟を決めて、残りの波紋を腹に目一杯篭めて強化してから『クレイジーダイヤモンド』を操作する。

俺の意志に従って『クレイジーダイヤモンド』は俺に向かい合い、右腕を引き絞る。

 

「ッ!?あなた!?何をっ!?」

 

横でプレシアが騒いでるが知ったことじゃネェ!!!

さあ、覚悟は決まったぜッ!!キャモォーーーーーーーーーンッ!!!

 

『ドォラァアッ!!』

 

気合一喝。

雄たけびを挙げた『クレイジーダイヤモンド』は引き絞った右腕を解放する。

 

「……『コレ』だけはよぉ、やりたくなかったんだぜぇ……モロによォ」

 

『クレイジーダイヤモンド』が拳を…豪腕から繰り出す『パンチ』を……

 

 

 

 

 

 

 

自分(テメー)のスタンドに殴られる、なんてよぉ……」

 

俺の腹にブチ込む!!

 

ズドォッ!!!

 

「ぶぐっ!!!」

 

そのブッ飛んだ行動を間近で見てるプレシアの顔は血の気が引いて真っ青になってる。

まぁ普通はそうだよな……マジ痛え。

 

「み、見ろ。やはりよ………き、『効く』!!」

 

『クレイジーダイヤモンド』が俺の体にブチこんだヘビーパンチの反動で俺たちは虚数空間の出口までスッ飛ぶ!!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「あぁっ!!?」

 

時の庭園のフェイト達は禅が『クレイジーダイヤモンド』に殴られた反動でこちらに向かってくるのを見ている。

フェイトはその凄惨な光景に目を手で覆うが、震えながらも手を胸の前で組みなおし、しっかりとゼンを見詰める。

…今まで、何度も窮地から救ってくれた……母の言葉に傷ついた自分を『人形』じゃないと…『人間』だと言ってくれた……母やアルフに抱く思いとは違う意味で、とても『大切な人』の無事を祈って見詰めている。

 

(母さん……ゼン……アリシア……無事に戻ってきて……お願いッ!!)

 

フェイトは、3人の『大切な人』の無事を祈りながら虚数空間の大穴の前で彼等の帰還を待つ。

 

「う、うそでしょ…」

 

リンディは口元を押さえて驚愕していた……まだ9歳前後の少年がたったいま自分の目の前でやってのけた蛮勇に……

ゼンの持つ不思議な存在『スタンド』と呼んでいた能力……彼の持つ『スタンド』である『クレイジーダイヤモンド』のパワーは竜巻のジュエルシードをモニターしている時に見て把握している。

それに先程、目の前で盛大に、かつ荒々しく、豪快に扉と結界、そしてその先の地面をまとめて破壊しつくしたのを目の当たりにしたばかりだ。

手加減していたとしても、あれだけのスピードでこちらへ上がってくるパワーで殴られる……考えただけでゾッとしてしまう。自分では絶対にできない。

……そんな蛮行を何のためらいも無くやってのけるゼンに、リンディは開いた口が塞がらなかった。

 

「…なんて無茶苦茶なことをするんだ!?あの大馬鹿野郎は!!?」

 

アースラで友となり戦場で背中を預けるほど信頼している、馬鹿野郎にクロノは苦い顔をする。

ゼンの無茶苦茶さは今まで一緒に行動して、言葉を交わして充分理解したつもりだった。

だが、所詮「だった」だけ……まさしくゼンは、生粋のとんでもない『大馬鹿野郎』だったことを、今になってやっと理解できた。

魔導師でなくとも普通はポッカリ空いた先の見えない程の穴に平然と飛び込みむなんてことはしない。

まるで正気の沙汰じゃない。そんなのは先程のフェイトのように心中する覚悟があるか、頭がイってないとできないことだ……

だが、アイツ(・・・)は……あの『大馬鹿野郎』は!!

フェイトを慰める『安全』よりも、フェイトが泣く原因を助ける『危険』を選んだ。

平然と自分の命をチップにして賭けて泣いている少女の……友達の母親を助けに飛び込みやがった!!

それがどれだけの人間を心配させてるかも知らずに。

 

(文句の一つも言えずに終わるのはゴメンだからなッ!!……無事に戻って来いッ!!ゼンッ!!)

 

ブッ飛びすぎてる『相棒』にクロノは心中で身を案じ、帰りを待つ。

 

「す、すごいの………」

 

なのはは自分と歳の変わらない少年の『勇気ある行動』に感嘆していた。

いつも陽気で、すぐ自分をからかってくるちょっと意地悪な男の子……でも、いざというときは友達のために平気で自分を傷つけて闘う『勇気』に心が震えた……

…確かに変わった、それでいてとても『優しい』力を彼は持っているが…『自分の傷は治せない』という自分の身体を守るものではなかった。

……自分みたいに魔法の力があるわけでもない、バリアジャケットのような身を守る装備があるわけでもない。

なにかのちょっとした拍子に大怪我を負うかもしれないのに……それでも諦めない、退かない『不屈』の魂に感動を覚えた。

 

「……あんな!!……あんな無茶苦茶なこと!!一体どんな『覚悟』があったらできるのさ!!?」

 

ユーノはゼンの『覚悟』に羨望を抱いている。

先程、ゼンから人の持つ『勇気』の力を聞き、自分にもその『勇気』があるということを教えられたが、ゼンほどの『覚悟』は持てなかった。

……正しく、只純粋にユーノは『憧れた』…いつか自分もあんな風に…自分の命を賭けて、体を張って大事な者を守れる男になりたいと……

 

「…ゼン…ぐずっ…うぅう……」

 

アルフは、フェイトの幸せと夢のために自身を省みないブッ飛んだ行動をするゼンに感謝の気持ちで涙が止まらなかった。

ゼンといるとフェイトとの精神リンクで感じる感情はいつも嬉しさでいっぱいだった。

フェイトだけじゃなく、アルフ自身もいつもゼンに助けられ、心を暖かくしてもらっていた。

今では例え精神リンクが無くともアルフ自身もフェイトと同じようにゼンのことを『大切な人』と言える。

いつも自分達の窮地に駆けつけて助けてくれる……暖かい料理を持って、疲れた心を癒してくれる。

自分やフェイトにとって、正しくゼンは『ヒーロー』であり『大切な人』なんだと……

 

(アタシもフェイトもアンタと居るだけで暖かい気持ちになれるんだ…それを失くしたくないから……だから……早く帰ってきておくれよ、ゼンッ!!)

 

彼らは、思い思いに、こちらに飛んでくる優しすぎる少年…『橘禅』を見守る。

只、ゼンの帰還を待ち望みながら…

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「うぉおおぉぉぉおおおお!!!!!!」

 

風を斬る音を肌で感じながら俺達は時の庭園まで飛びあがっていく。

『クレイジーダイヤモンド』の暴力的なパワーから繰り出されたパンチは三人分の重量をものともせずに上へ上へと俺達を押し上げていく。

少しずつだが、今は庭園の淵にいるフェイト達が視認できる距離まで上がってきていた。

 

もう少しだ!!もう少しで………ッ!?スピードが落ちてきた!?クソッ!!こうなったらもう一発!!

 

「『クレイジーダイヤモンド』!!!」

 

飛び上がるスピードが落ちてきたのでもう一度推進力を稼ぐために『クレイジーダイヤモンド』を喚びだす。

もう一度『クレイジーダイヤモンド』は右腕を引いて構えるが、プレシアが俺の体に抱きついて『クレイジーダイヤモンド』と俺の間に入って止めてくる。

 

「ダメよ!!?それ以上は体が持たないわ!!私を打ちなさい!!!」

 

「バ、馬鹿言え!!病人のアンタじゃ耐え切れねぇよ!!?」

 

弱ってるとはいえ全力の波紋で体をしかも腹の部分を強化した俺でもとんでもない激痛が走るレベルのパンチだったんだ。

それを病気を患って身体が弱ってるプレシアが受けた日にゃあ間違いなくその一発で昇天しちまう。

わざわざ助けに来たのにそれじゃあ無駄足だ。

だが、プレシアも強情で譲らず、俺から離れてはくれない。

 

「あなただって無茶よ!?私が犠牲になればアナタだけでも……」

 

ッ!?まだわかんねぇのかよッ!!?

 

「やかましい!!!あんたも一緒じゃなきゃ、フェイトもアルフも幸せになれネェだろぉが!!!」

 

世迷言をほざくプレシアに俺は怒鳴り散らしてその先の言葉を遮る。

 

フェイトはプレシアがココに落ちた時、なりふり構わず飛び込もうとしたんだ。

多分、自分も一緒に死ぬつもりだったんだろうが……それぐらいフェイトにとっては『アンタ』が、母親が必要なんだよッ!!

 

「それに、俺は約束したんだよ!!!フェイトの家族を『治して』やるって!!そのためならパンチの一発二発くらいどぉってことねぇんだよぉ!!!」

 

あぁ、そうだッ!!

ここで体張らなくてどぉするよ『橘禅』ッ!?

女とした約束のひとつぐれえ守れなきゃ……漢じゃねぇッ!!!

 

「ゼ、ン…く、ん……」

 

「あんたも!!泣くなら嬉し涙にとっときなぁ!!……ぜってえに……あんたの『家族』の元に連れてってやらぁ!!!」

 

クソ!!どぉすりゃいい!?後50Mもあるのに!!………ッ!?これだ!!これしかねぇ!!

 

「『クレイジーダイヤモンド』!!!」

 

俺は『クレイジーダイヤモンド』の拳を軽く自分に当てる……グイィ!!!!

ッ!?来た来た来たァ!!!

『クレイジーダイヤモンド』が『能力』を発動させた瞬間、俺たちの体はさっきより速いスピードで上を目指して上がっていく。

そして、俺が『クレイジーダイヤモンド』の視力を使わなくてもはっきりとフェイトの笑顔が見えてきて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま頭上(・・)を飛び越した……

 

 

 

 

 

 

 

ゑ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「ええぇえぇぇぇぇぇぇぇぇえぇ!!!?」」」」」」

 

やばっ!?

危険を察知した俺はアリシアとプレシアを安全なところで手を離す。

二人は地面に落ちる前にフェイトとアルフが受けとめたが……

 

「アウゥブブブブブブブブブボォオバババババババ!!!!!!!!!!」

 

俺はそのまま地面を顔面で削りながら、滑っていく……20Mほど滑走して俺は止まった。

か、顔がぁぁっぁぁぁあぁッ!?摩り下ろしたて新鮮☆ってかぁぁぁあっぁああぁあッ!!?

 

「ゼ、ゼーーーーン!!?」

 

「ゼーーン!!?だ、大丈夫かい!!?」

 

フェイトとアルフが駆け寄ってくるが俺は痛みでのた打ち回っていた。

……正直滅茶苦茶痛いとです。

 

「あいてててて……」

 

少しづつ顔の痛みが引いた俺は立ち上がってみんなのほうを向く。

 

「な、なんとかなったぜ………」

 

なんとか笑いながら言い放つ。もう絶ッ対にやらないと誓ったが……

 

「まったくッ!!自分から虚数空間に飛び込む奴があるかッ!!」

 

クロノさん、仕方ないッすよ。気づいたら体が動いてたんだもん……

 

「ゼンッ!!ゼンーッ!!」

 

「バカバカバカバカッ!!このバカッ!!あんな無茶なことしないでおくれよぉッ!!グズッ!!じんばいじだんだよぉおッ!!」

 

フェイトとアルフは遂に耐え切れなくなったようで座りこんでる俺の腹目掛けて抱きつき、その体勢のまま泣き始めた。

 

おぉうッ!?アルフもフェイトも号泣してら…心配させちまったなぁ…でも、アルフさん?馬鹿を5回も言わなくてよくね?つうか、お二人とも?心配させたのは悪かったですから、抱きつく力を緩めて頂けません?こう……お腹周りが果てしなく痛いんであばばばばばばばばばばばばばばばばばばばッ!!?バ、バカなッ!?逆に強くなっただとぉッ!!?

 

「ハァ……まったく…だが、最後に起こった不自然な加速、あれは一体なんだったんだ?」

 

そんないつも通り過ぎる俺達の様子にクロノが呆れながらも聞いてくる。

まぁ、たいしたトリックじゃねえんだがな。

 

「……『クレイジーダイヤモンド』の能力……」

 

俺の言葉に皆が反応してこっちを見てくる。

 

「自分の傷は治せないけどよォ……プレシアの電撃食らったときに体にめり込んだ『建物の破片』なら…」

 

ボゴッボゴォッ

 

そう喋ってる間に肩や足、俺の体の至る所から建物の破片が何個か浮き出てくる。

そのまま建物の傷まで飛んで『治って』いった。

 

「『治して』戻るんだぜ?」

 

獰猛な笑みを浮かべて説明する禅にこの場にいる者の心中が重なった。

 

(こ、こいつのブッ飛んでる根性……まじに小学生(同い年)!!?)

 

「き、傷の中の『破片』で体を『引っ張った』のかい?……」

 

そーゆうこった。

俺の中に埋まってた破片が俺達を虚数空間から庭園の破片があった場所まで引っ張ってくれたってわけだ。

『クレイジーダイヤモンド』の治すパワーは俺達3人(一人はビン詰め容器付き)の重量を難なく押し上げるだけの力がある、それを利用して最後は飛んできたのがトリックのタネだ。

ユーノはその非常識なやり方に冷や汗を流している………

他の皆もビビッていたが仕方ない、うん仕方ない。

 

「とりあえず帰ろうぜぃ?さすがに疲れたわ……」

 

そう言って俺は、体を起こす。

そして忘れない内にプレシアに向き直って声をかける。

 

「おいプレシアさんよ」

 

「…なにかしら?」

 

「そらよっと」

 

ズギュウゥゥゥゥゥゥン

 

『クレイジーダイヤモンド』の拳で軽く触れる、するとプレシアの顔が驚愕に染まった。

いつもなら俺は茶化すところだが、今は俺も驚愕している。それは………

 

「「「「「「「わ、若返ってるーーッ!!?」」」」」」」

 

そうッ!!50代ほどに見えた顔が20代近くまで若返り、正に美女と呼ぶに相応しい姿に変貌したッ!!

リンディさんや家のお袋と並んだらナンパされること間違いなしだ。

まるで一尺玉のような大きさの『お宝』もGOODッ!!絶景だね(笑)

…多分、病気が無かったらこうなっていたんだろうなぁ……

 

「あ、あ、あああああなたッ!?なにをしたのッ!?体が凄く軽いわッ!!」

 

なんか身体のアチコチを触ったかと思えばプレシアは俺にとんでもない剣膜で詰め寄ってきた。

もしも~し?若干目が血走ってますよ?

そんな目で小学生に詰め寄らんで下さい、変態に見られちゃ、ゲフンッ!!ゲフンッ!!ゲフンッ!!

おっと失礼、盛大に流してくれ。

 

「あぁ~……あんたの身体を治したんだよ」

 

俺から出てきた言葉にプレシアは目をまん丸に見開いて驚愕した。

 

「なん…ですって……?私のリンカーコアの破壊症状はどんな医学でも治せない不治の病なのに……」

 

りんかーこあ?…なんだか知らねえけどよ、それが『ブッ壊れた物』ならな……

 

「俺の『クレイジーダイヤモンド』は破壊されたモノやエネルギーを『治す』力があるんだよ」

 

俺の『クレイジーダイヤモンド』に治せないモノはねーんだよ。

 

「………」

 

ありゃりゃ、放心しちまってら……とにかく、帰りますか。

まだ 一仕事残ってるし……

 

 

 

 

 

と、そんなことを考えていたら9個のジュエルシードが目の前で眩い光を出しながら暴走をおっ始めやがった。

近くで魔力を大量に使ったから封印が解けちまったみてえだ。

これまた予想外のアクシデントだったのか、リンディさんはかなり焦っている。

周りの皆も緊張した顔でジュエルシードに向けて武器を構えてた。

皆が緊張に顔を強張らせていく、俺はそんな状況ん中で皆とは違い……実にシンプルに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プッツンときていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いけないッ!!このままでは次元s……」

 

「『クレイジーダイヤモンドォォォォォォォオオォォオ!!!!』」

 

『ドララララララララララララララララララララララララララララララララララララララァッ!!!!!』

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

『クレイジーダイヤモンド』は今更発動したKYな宝石にありったけの拳をブチ込んでいく。

 

「そのクソッタレた宝石を封印状態まで『治す』ッ!!」

 

これ以上、仕事させんじゃねえっつのッ!!大人しく封印されてやがれ、ダボがぁッ!!

 

 

 

 

キュウウゥゥイィィィインッ!!!………カラン……コロ、コロ、コロ……

 

 

「し、ん……が?……」

 

 

 

 

 

『クレイジーダイヤモンド』がジュエルシードに拳を叩き込むとアラ不思議、荒れ狂っていた魔力の流れも暴風も綺麗サッパリ、庭園に静けさが戻った。

 

「「「「「「「「………」」」」」」」」

 

『……じ、次元震…反応がロストしました……』

 

 

静かになった時の庭園にアースラからエイミィさんの困惑した声が響く。

八つ当たりして満足した俺はゆっくりと振り向き、頬に手を当てながらイイ笑顔を浮かべると、呆然としている皆に向ける。

 

 

そして、決めのセリフ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっへっへっへっへっ、またまたやらせていただきましたァン!」

 

さぁ、とっとと帰りますかッ!!!


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