今回は前回の二倍近い文章量となっております。
うん。長いね!
聖ゲオルギウス、竜殺しの英雄でありキリスト教の聖人として名を馳せた男でもある。
彼は聖人とは呼ばれているが、そのためなのか何なのか、この男の
この男が有名になった逸話の中にもそのズレは確かに描かれている。
その昔、ゲオルギウスは旅を続けている際に一つの村にたどり着く。その村では毎日2匹ずつ羊を毒竜に生贄に捧げなければ生き残れない、という事情を聞き、ゲオルギウスはこう言う。
「では、私が助けてあげましょう。」
宣言したゲオルギウスは見事、その毒竜を撃退してみせた。だが、彼はその場でその竜を殺したりせず、村へと送り届けたのだ。
それで生命の尊さについて問いたりしたと思うだろうか?違う。この男にとって竜とは等しく悪として断じられるべきもの。
故に、この竜にゲオルギウスは別の用途を付与したのである。
村人たちはゲオルギウスが竜を討伐したと聞き、大いに喜んだ。だが、その喜びも一瞬、ゲオルギウスに感謝の念を込めた歓迎の宴を開こうと準備をしていた村人たちはゲオルギウスを見た瞬間、顔面を蒼白にした。
それはそうだろう。すでに殺しただろうと考えていた竜は殺されておらず、村人を食い殺さんとするほどの勢いで睨みつけているのである。
一通り大騒ぎした様子を見たゲオルギウスはこう言った。
「あなた方が我らの教えの信徒になると言うのならば、この竜を殺してあげましょう。」
と、実はゲオルギウスが救ったこの村は異教徒の村であり、キリスト教の信者は1人としていなかったのだ。彼としては『それではいずれ主に見放されてしまう。』と全く悪意なく考え、その村の人々に救いを与えたと考えている。そのためにどうにかして
だが、正直なところ
それでも結果として、キリスト教信者は増えて、めでたしめでたし。これがゲオルギウスの逸話の一つである。
ならば、もしも、村人たちがキリスト教に入らないといえばどうなっていたのか?
『そうですか』と言って、その場で竜を殺し、事態を収めたか。それとも、その言葉に反発し、毒竜を再び野に放ったのか?おそらく前者だろうが、それは分からない。
そして、この
『マスターがよろしいと言うのであれば、私は真名を明かしましょう。』
と言った。通常ならばこのようなことはあり得ない。真名というのは本来マスターにのみ明かすものであり、たとえ、マスターに近い間柄であろうとも迂闊に言うべきことではないのだ。
ではなぜ、ライダーがそのようなことを言ったのか?簡単なことだ。ライダーにとってマスターとは導くべきモノであり、救うべきもの。だから、彼は、マスターの身に降りかかる危険をなるべくならば取り除きたいと考えている。
ならば、真名を明かすべきではないだろう、と考えるだろうか?そう。確かに通常ならば、その通りだ。だが、ライダーの能力である守護と龍殺しの力はシンプルだが強力なもの。
間合いを重要視する能力ならばいざ知らず、彼の能力は敵が間合いに入ろうが入るまいが発動し、なおかつ、敵がその能力の正体を知ったところで防ぎようがない。
何故ならどのような状況であれ
(私が
だから、たとえ真名と能力がバレたところでほとんど支障がない。何より、ライダーの信憑性をマスターに植え付けるため、そして、自分は少なくとも敵ではないと表明するためにも真名を開示する必要があると考えていたことも事実だ。
これらのことから、ライダーは真名を開示することについてそこまでの抵抗は感じられなかった。故にライダーはそこから普通のサーヴァントとは
ゲオルギウスには《直感C》というスキルが存在する。Aランクまで行けば未来予知に近いこの能力だが、ライダーの場合、この力は防御にしか効かず、『相手が戦うべき敵か否か』を即座に判断することにしか使えないモノだ。それは本来は目視にて確認した敵にのみ扱うスキルだが、
これで分かるだろうか?そう。あの時、ライダーはあろうことか、『真名を公開する』などという通常ではあり得ない方法で
(私はあなた方を信じたい。どうか、その心の内を見せてください。)
ライダーはそう、暗に心の中で呟いたのだ。たとえ、盗聴し、その場にいない相手であったとしてもその相手に対する直感が働き、
サーヴァントの真名とはそれだけ価値があることもライダーは認識している。故にもしも、あの場でほんの少しでも
(申し訳ございません。マスター…)
その時の彼の胸中は罪悪感でいっぱいだった。
だが、このような考えをしているのには流石のライダーにも理由がある。
ライダーは人の身で神に近づいたことからも聖人として敬われている。そして、そんな彼だからこそ、自分と同じ波動をわずかに纏ったある
(あのような状態を放置する組織…そんなものを易々と信用することはできない。)
それ故、正確に言うのならば、あの場にてライダーはその
あの船にて少女達以外の視線も感じたライダーならではの宣誓と言っていいだろう。
結果的にいうのならば、ついで感覚で少女達も試したことも確かだが、彼としては少女達に対してはそこまで悪い印象を抱いていない。失礼ながら、南宮那月はともかく、その周りにいる少女に関していうのならば、彼の直感を鈍らせるほど敵意を隠せるかどうか疑問が残るからだ。
このライダーは聖人だ。故に望みはなく、普段は非常に温厚であり滅ぼした敵に対しても祈りを捧げる敬虔な信徒だ。
だが、そんな彼だからこそなのか一種危うさを感じさせるズレを持ち合わせている。
その『ズレ』とは、彼独特の善悪における価値観に他ならない。彼はいいと思うこと、悪いと思うことに対して若干極端な思考を持ち合わせているのだ。
そんな思考の元、前述のライダーの善悪診断が行われたわけだが、結果は敵がいない、という結果となった。
これに対し、ライダーは己の行為を恥とは思ったが、同時に己のマスターに感心し、ますますマスターに貢献しようと思った。
そして、そんなマスターを見たからこそ、ライダーは思ったのだ。
『この方ならば私の生前の悩みの答えを見出してくれるのではないか?』
と…
ーーーーーーー
時は少し遡り、ライダーがパイプを伝ってひたすら建物上部に向かっていた時にまで遡る。
そこで一番屋根に近い壁伝いのパイプの上に着地すると、ライダーは一呼吸つくようにして、息を吐く。
(さて、ここからですね。うまくいくか、どうか…しかもあと、
ジャバウォックがライダーの前にまで飛び上がり、拳を振るう。その拳をライダーは避けはしない。ただ、立ってそれを観察していただけだった。だが、彼は上体を逸らしてもいないのに、そのまま沈むようにして、その拳を紙一重で避けていく。
何をしたのか、それは簡単である。それは下のパイプを切って落としたのである。これによりライダーは落下しながら、避けていくことに成功した。
「ふっ!」
そして、大して
「おって!ジャバウォック!」
上に飛び上がるライダーを認識したキャスターは、ジャバウォックに失速する自らの巨体を壁に足を貫き引っ掛けるさせることで落下を止め、ライダーを追い、更にスピードを上げて突進する。すでにパイプの上で一度止まってしまったライダーの動きになどジャバウォックは遅れはとらない。
一瞬にしてジャバウォックはライダーへと追いつき、今度は背後からその拳を迫らせる。
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!」
それに対し、ライダーは突如クルリと体を回転させる。そして、彼はその拳の前に剣を盾にするように横に構える。その反応に対し、肩に乗っているキャスターはわずかに苦い顔をしたが、その拳を止めることはせず、一気に拳を振り切る。
「っぐっ!?」
地に足も付かずにただ、中空を移動しているだけのライダーにそれを受けきるだけの能力などあるはずもなく、吹き飛ばされていく。吹き飛ばされていくライダーは屋根に穴を開け、勢いそのままに外へと飛び出していく。
(今だ!!)
ここからは一世一代…いや、すでに一生を終えている自分がそんなことを言ってるのもおかしいものだが、とにかく勝負時だ。と判断したライダーは
そして、その剣の特性を活かし、突き抜けた屋根とそこかしこのパイプを斬っていく。切られたパイプと屋根は穴の空いた方へと落ちていく。
「「……」」
それに対して、ジャバウォックとキャスターは無反応だ。いや、いっそ呆れていると言っていいだろう。ジャバウォック達にこの程度の障害物は効果を示さない。それ以前にサーヴァントには一般的な物理現象は効かない。だが、この後ろにはライダーがいる。である以上は、視界は開けた方がいいと考えるのが自明の理。ジャバウォックが左手でそれらのゴミを払いのける。そして視界は一気に開けたのだが、そこでジャバウォックとキャスターが見たものは意外な光景だった。
「はああぁあ!!」
なんと、ライダーが頭からこっちへと突っ込んでくるのだ。
キャスターはこの選択が何を意味するのかわからない。思考状態が安定していないのと、普段の能力が発揮しきれていないことも理由のうちになる。だが、それ以上に先ほどの視界を埋め尽くすほどの目眩しを無駄にするような突進をしてくる敵の愚かさにガッカリしたといった方が正しい。
「むかえうって!ジャバウォック!」
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!」
その突進に対してキャスターは、ジャバウォックに拳を突き出させる。だが、予想外のことが起きた。なんと、今まで受けきるだけが精一杯だったはずのジャバウォックの拳をライダーは予測して
(っ!やられた!そういうこと!?)
だが、冷静になったキャスターはそこからなんとか理解できた。ライダーが
例えばもしも、逃げるような体勢でライダーがジャバウォックの追撃を受けた場合、それはどうあれ、胴体などの
なぜなら、必ず頭を狙ってくると分かっているのだから。
(わたしののうりょくのたかさをさかてに…)
このキャスターは幼い外見はしていても馬鹿ではない。ライダーがジャバウォックの攻撃に対して宝具を活用することでなんとか防いでいたことについても理解は及んでいた。
加えて、
「かかりましたね。ジャバウォック…いえ、キャスター!!」
「っ!?」
だが、わかったとしてももう遅い。ライダーの言葉を聞いたキャスターはわずかに硬直し、ジャバウォックに命令を促せなかった。その瞬間、はるか後方の大地の方から声が響き渡る。
「
自らの背後から辺りの振動と共に破壊を撒き散らす轟音が鳴り響く。まずいとキャスターは考え、ジャバウォックに指示を出そうとする。だが、遅い。キャスターのジャバウォックのステータスは確かに大したものだ。それは筋力も敏捷性もサーヴァントの指標で言うのならば、共にEXクラスまでに上り詰めるほどに…
だが、ジャバウォックの足は現在中空にあることで封じられ、左手は先ほどパイプなどを払ったことで戻るのに一瞬遅れている。右手は今まで一撃一撃を防ぐのがやっとだったはずのライダーが剣で防いでいるので、効果を示さない。
よって、この一瞬だけ、ジャバウォックは確実に無防備な状態となってしまったのだ。
(けど、どうして?どうして、そんないっしゅんのことを…)
ーーーーーーー
確かに彼らはその判断を自らで行なっていない。ただ、
「どうだ?」
「タイミングはバッチリです。後は当たることを祈るばかりかと。」
「よしっ、ライダーの作戦通りだな!」
古城の質問に雪菜が返す。
一番最初、ライダーが何をしたか覚えているだろうか?ライダーはジャバウォックの攻撃を避けるために自分の体勢を変えるわけではなく、わざわざ、自らが立っている
それが古城たちにだけ伝えるサインの役割だった。ライダーとジャバウォックが今まで戦ってきた中で他のパイプが切れることもあったがそのパイプだけは切らないように細心の注意を払った。
なぜなら、
「しかし、よくあのバツマーク気づかれなかったな。結構大きかったろう」
「元々、ここが廃工場ってこともあるけれど、あの傷、さっき
古城の言葉に今度は後方にいる紗矢華が返す。
その傷のついたパイプだが屋根に一番近いが故に落ちるのにも3秒ほどかかる。だが、その
その三秒の中の一瞬をつき、キャスターたちの背後から轟音と共に真紅の
それはあらゆる物質が塵にに還るほどの圧倒的な破壊の嵐だ。それを受けたジャバウォックは…だが、しかし毅然とした様子でライダーと向き合っている。
「すこし、ひやっとしたけど、ぶじみたいね。ジャバウォック。」
「ーー!」
そう。この圧倒的破壊の嵐と向き合って尚、この怪物は全くそれを意に介しておらず、主人をその破壊の嵐から護るまでの余裕を見せる。
一度、このジャバウォックは第四真祖の眷獣の力をもろに受けている。その時もこの怪物は悠然と前に進み、その攻撃を全く意に介していなかった。そんな怪物にとって今更、この程度の破壊は破壊ではないのだ。
「やっぱ効かねえか…なら!」
だが、それは一体の眷獣を相手にした場合に限る。もしも、
「
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!」
「っ!?ジャバウォック!?」
これにはたまらず、ジャバウォックは苦痛とも、絶望ともつかぬ絶叫を上げる。ジャバウォックが第四真祖の眷獣の攻撃を受けても無事な理由は自らの主人であるキャスターからの魔力供給を霊基の回復に当てている擬似的な不死と持ち前の頑強さにある。
だが、そんな能力も火力で言えば、世界最高クラスと言っていい第四真祖の眷獣の攻撃を二つ同時に食らってしまえば、たまったものではない。擬似的な不死は圧倒的破壊により打ち消され、今ジャバウォックは頑強な肉体によってのみその破壊を防いでいる状態だ。
そのため、ジャバウォックの肉体は少しずつ…だが、確実に削れていった。だが、いつまでもそのままでいるほどジャバウォックとその主人たるキャスターは木偶の坊ではない。
「ジャバウォック!!」
命令をされたジャバウォックはカッと目を見開く。そして、それと同時に自らの拳の前にあるライダーの剣をガシッと握る。握った後、その剣を持つライダーごと一気に振り回すようにしてライダーを古城の攻撃が晒されている自らの背後へと投げ込もうとする。
(来ましたね。)
ライダーとてその程度のことは予測がついていた。
しかし、ここで選択肢が二つある。
一つはこのまま剣を掴み続け、古城の攻撃の方へとわざとぶん回されること。こうすれば少なくとも自分の守りの要である剣をなくすことはないし、まず、自分のマスターのことだ。攻撃を取りやめてくることだろう。だが、古城の攻撃はジャバウォックには打ち止められ、一時でも多くかの怪物の肉体を
もう一つは剣を離し、一度だけジャバウォックの攻撃を避けること。この場合、キャスター側の攻撃は避けられ、古城の攻撃は続けることができる。しかし、自分の守りの要である剣をどこぞに飛ばされることとなる。
どちらにせよ致命的。そんな中彼が選んだのは…
(一か八かですね。)
掴んでいる剣を離す。そう、ライダーは後者を選んだのだ。これにより、自分を持つ主人を失くした剣は虚しく虚空を舞い、ジャバウォックはその剣を即座に投げ捨てる。
そして、剣を失くしたライダーは、今度は、ジャバウォックの体を押し込もうと突進を仕掛ける。本当ならばそこから離脱した方が建設的ではあったのだが、ジャバウォックが中空にいるということはそこに向けて突進したライダーもまた中空にいるということだ。
もしも、セオリー通りだったならば先ほど落としたパイプたちを足場に逃げ切ろうと思ったのだが、それはジャバウォックの予想以上の膂力の掌の嵐によって容易に吹き飛ばされていった。
そのため、彼にもまた自由に動く権利はなくなっているのだ。だから、そこからできるのはヤケクソとも取れる突進のみ…
「うん。わかってたわ!」
しかし、ライダーがキャスターの思考を読んだように、キャスターとて例外ではない。その動きを先に読んだキャスターは、今度は空いている左拳を前へと突き出す。その一撃をライダーは突進したことも加えてカウンター気味に食らってしまった。
メキメキメキ、と鎧の上から抉るようにめり込まれていく拳。
「ごふっ!?」
その衝撃に吐血し、ジャバウォック地面の方へと回されるようにしてライダーは吹き飛ばされる。
「っ!やべっ!」
背後には今尚、古城の眷獣による破壊の嵐が渦巻いている。そんな場所にライダーが巻き込まれでもした場合、一体どれほどのダメージがあるかわかったものではない。遠目からでもライダーがまき込まれそうになったことが確認できた古城は急いで眷獣を己の内に仕舞ってしまった。
吹き飛ばされていったライダーは、地面を勢いよくバウンドする。そして、ゆっくりとまた地面に背中がつくのだった。
「ぐっ…うぅ…!!」
うめき声を上げながら態勢を立て直そうと体をうつ伏せへと戻す。だが、そんな彼に追い討ちでもかけるように、ズンという何かぎ落ちる音が目の前でした。見なくても分かる。それはジャバウォックが地面へと足をつける音だ。
自分が跪き、相手がひたすら見下ろす。そんな姿にかつての過去を幻視する。
ーーーーーーー
「その異教をやめよ。」
と王はその男に言った。男とはもちろんゲオルギウスのことを指す。
王は異教を信奉し、さらに自らと同じ宗教を信奉する者たちにまで半ば無理矢理な形で異教を押し付けようとしたゲオルギウスをけがらわしく思い、捕らえるように命じた。すぐさま捕らえられ、王の御前にて頭を地面に押さえ付けられるようにして御前に跪かされた男の答えはこうだった。
「いいえ、私が信ずる教えはただ一つでございます。王よ。」
王はその男の態度に憤慨を露わにし、その男を拷問するように命じた。時には、ムチに打たれることもあった。時には、刃のついた車輪に張り付けにされることもあった。時には、煮えたぎった鉛の中で釜茹でにされることもあった。
そうして、人にやるとは思えない拷問を何日、何週間、何ヶ月と繰り返し、時が経った頃。王は、ゲオルギウスを呼び出した。そして、またも地面にめり込ませるようにして頭を自分の目の前で跪かせた後にまたも命令する。
「さあ!その異教をやめよ!!」
王は勝ったと思っていた。水も食事もロクに与えられず、身体中の生傷とて並のものならばもはや発狂するだろうと思えるほどに体のいたるところに浮かび上がり、竜を殺したその肉体は最初のような威厳に満ちたものではなく瘦せ細り、どこぞの奴隷と言った方がしっくりくる。すでに虫の息と言ってもいい。このような状態の男ならば如何なモノであれ必ず弱音を吐き、自分から首を垂れながら詫びてくるだろう…と
だが、そんな状態にあっても男は
「……いいえ、私が…信ずる教えはただ一つで…ございます。王よ。」
と答えたのだった。
王はその返し言葉に怒り狂い、再度拷問にかけるように命じた。
拷問が始まるまでゲオルギウスは牢屋へと入れられる。格子状の窓からわずかに漏れ出る月明かりを見て、ふぅ、と息を漏らしながら誰も見ていないことを確認し、祈りを捧げようと片膝をつく。
「それが…異教の祈りですか?」
ハッとして、声がした方向を振り向く。すると、そこには女性が立っていた。白い寝間着と金色の髪は月明かりに濡れ、怪訝そうに尋ねてきたその女性の元々ある美貌をさらに幻想的なものへと高めていた。
頭を押さえ続けられていたゲオルギウスには知る由もなかったが、その彼女こそが自分に拷問を命じた王の妻にして王妃であったのだった。
ーーーーーーー
(今でも…いや、
ゲオルギウスはずっとその悩みを無意識に抱えながら生きてきた。
(私はその答えを導き出さなければならない。そうでなければ、私は
もしも、他の者がマスターであったのならば、このような思いを抱かなかったかもしれない。だが、あの少年の身の上を考えるとどうしても考えてしまう。
自分はあの王妃と出会って良かったのだろうか… と
「ライダー!!」
遠く、彼方から少年の声が聞こえる。あの少年のことだ。きっと自分の下まで駆け寄り、自分の前へと進み出て庇うことだろう。
そう考えた瞬間、ライダーの腕に力が入る。
「ぐぬ…うおおおお!!」
雄叫びを上げ、ライダーは立ち上がる。その様子を見て今まで静観していた怪物も動き出す。ライダーは理解した。この立ち上がりは間に合わない…と、たとえ立ち上がりが間に合ったとしても剣はジャバウォックの遥か後方にあるどのみちライダーに怪物の攻撃を防ぐすべはない。
だが、止まらない。むしろ、より力強さを増してライダーの腕は胴を上げようと必死になる。一方のジャバウォックの動きは先ほどよりも大分緩慢だ。嬲ろうとしているわけではない。ただ、単純に不死の怪物ジャバウォックにもダメージが未だ残っているのだ。
「っ!ジャバウォック、はやくやって!」
彼女が命令を出し、魔力による発破をかけようとしたその時。鎖が彼らの首を、腕を、脚を、全身を巻きつけた。その鎖をキャスターは…いや、『アリス』はよく知っている。残り少ない魔力のリンクを辿り、アリスはそちらへと振り向く。
そこには、アリスの考えた通りの光景が映し出されていた。
幼げな人形めいた美貌を持ちながらも、その瞳は威厳に満ち、見るものを萎縮させる。その少女の名は…
「なつ…き…?」
「久しぶりだな。アリス。まさか、貴様が
目覚めた少女に憤慨はない。ただ、純粋に子供のダダをたしなめるような口調で南宮那月は言の葉を紡ぐ。
その少女の光景に一瞬、目を奪われたアリス。その一瞬の隙をつき、古城は眷獣をを召喚する。
「
その眷獣の能力は『
たとえ、どのように頑強な肉体だろうと次元ごと食い破られれば意味はなく、大ダメージを受ける。その能力の正体を正確に察知したキャスターの反応は早かった。
次元ごと万象を喰らう竜の顎が迫る。それに対し、キャスターはジャバウォックに命令してギリギリで自分たちの鎖を断ち切り、二頭の竜の頭を掴み顎が自分に迫るのを阻止する。
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーー!!」
絶叫を上げ、掴む掌と地を噛む脚に更なる力を加えていく。そうして50mほど進んだ辺りで完全に止め切る。そして、今度は今まで一度も使わなかったその短い足を使って下顎に蹴りを食らわせる。
その一撃には流石の竜も堪らず、姿を古城の体の中へと消してしまう。
止めたことを確認したキャスターは今度はその攻撃の主である古城の方を見やる。
「っ!?」
睨まれた古城は一瞬にして全身を冷や汗で濡らしてしまう。怖い。今まで命を狙ってくる敵には何度も会ってきた。だが、目の前のキャスターとその少女が連れている怪物は違う。確実に今の自分ではまず勝てないと分かるほどの威圧感。そして、殺気。だが、それを受けても古城はそこから一歩も退かない。恐ろしいのではない。彼は立ちながらも後方にいるライダーに目をやる。そう、彼はただ…
「悪い。ライダー。今までずっと囮をやってくれてありがとうな。あとは休んでてくれ。ここからは俺がやる。」
本来は自らを守る最大の盾として動くべきサーヴァントを守るために来たのだ。
自分の方がはるかにこの中では格下だと分かっている。だが、それがなんだ。だからと言ってそれがライダーを守れないことには繋がらない。
ライダーを背に今度はキャスターの方へと目を見やる古城は宣言する。
「ライダーから聞いたよ。あんた、今も那月ちゃんを守るために…そのためだけに動いてるんだってな。あんたの思いは正しいし、本来なら、少し違う出会い方をしていれば俺たちは分かり合えたのかもな……
けどな、どんな理由があれ、そのために全く関係ない奴を巻き込んでいいはずがないんだよ。それでも、『那月ちゃんを守るため』と言って、またやたらめったら壊しまくるなら来いよ。俺が相手をしてやる。
ここから先は俺の
その宣言とともにジャバウォックに突進するように命令するキャスター。一瞬にして目の前まで来た怪物になんの反応もできなかった古城は焦った。だが、問題はない。ここには1人、その少年をずっと見続けて来た少女がいる。その少女はサーヴァントの速度にたとえ追いつかなくても、キャスターたちがその少年を攻撃する瞬間だけは持ち前の眼で見続けることができる。
銀の流星が怪物の肩に乗るキャスターに流れていく。寸前でジャバウォックはその流星に気がつき、腕を出すことでなんとか避ける。攻撃を弾かれた後、その攻撃の主である姫柊雪菜は体勢を立て直し少年の前に立ちながら宣言する。
「いいえ、先輩、私達の
その言葉を皮切りにキャスターが告げる。
「いって!ジャバウォック!!」
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!」
命令されたジャバウォックは勢いよく突撃していく。その突撃に相変わらず反応できない古城だったが、そこはもはや関係ない。どうあれ、突撃してくるのは確かだと先の攻撃で分かっている以上、そこに罠を仕掛ければいい。
「
召喚したのは銀の霧を纏った甲殻獣。その能力はあらゆる物資の強制的な霧化による消滅。これはジャバウォックに対して仕掛けるのではない。対象はジャバウォックが今まさに踏もうとしている地面だ。
甲殻獣の能力が発動する。すると、一瞬と経たぬうちにコンクリートで覆われた地面が霧と化してしまう。その霧となった地面にジャバウォックは思い切り踏み込んでしまう。すると、ジャバウォックとひいては肩に乗っているキャスターまでその蟻地獄状の穴へと真っ逆様に滑り落ち
ていく。
それを確認した周りの者たちの判断は早かった。
「
まず、砂状となったコンクリートの壁から那月が鎖を召喚して、鎖でジャバウォックを縛る。
「獅子の巫女たる高神の剣巫が願い奉る。」
その一瞬をつき、地に槍の持ち手の底を突き、雪菜が祝詞を紡ぐ。
「破魔の曙光、雪霞の神狼鋼の神威を用いて、我に悪神百鬼を討たせ給え!!」
聖光を纏いし神格振動波が銀の流星となり、ジャバウォックの腕へと向かっていく。その星を確認したジャバウォックは必死になってその鎖を引きちぎろうとする。そして、あとちょっと引きちぎれるその寸前で…
「はああぁあ!!」
異能を無効化する槍の刃が寸前まで迫っていた。
「っ!?」
肩にいるキャスターはそれに対し、何もできないでいた。
(やはりですか!)
ーーーーーーー
「そういえば、ライダーさん。なぜジャバウォック以外は手がないと言えるのですか?」
この作戦が開始する直前、この工場内の入り口前にて雪菜はライダーに聞いた。ライダーはそれに対し、今まで入り口に注意を払っていた視線を雪菜へと向ける。
「そうですね。それは端的に言って、今の南宮那月の状態に起因します。我々サーヴァントは人間の形はとっていますが、人間ではありません。具体的に何が違うかというと、我々サーヴァントは必ずマスターからの魔力供給がなければ存在できないという点です。
…これは前にも話しましたね?」
「はい。ですが、それが一体…」
「そこで重要になってくるのが魔力の供給量です。我々サーヴァントが強大な力を使えば使うほど、魔力の供給量は当然、比例して大きくなってしまいます。その理論はジャバウォックを使役しているキャスターにも言えることです。」
そこでライダーはすこし間を置いたが、即座に言葉を続ける。
「普段の南宮那月ならば、おそらく、キャスターがジャバウォックを使役したところで特に問題視はしないでしょう。それだけの能力を持っている。ですが、今のキャスターは無理矢理、魔力供給を制限された上に思考も定まらない状態にある。我々サーヴァントは人間よりも丈夫な造りをしていますが、それでも無理というものは存在します。」
「ですから、キャスターはジャバウォック以外は
「ええ。単純な理屈ですが、単純だからこそその効き目は抜群。それを証拠に、彼女ならばあなたたちが逃げている時も自らの魔術で逃亡を阻止することもできたはず…
なにせ、彼女は
説明を終えたライダーはまたも入り口の方を注視すらのだった。
ーーーーーーー
キャスター自身に反撃する手段はすでに存在しない。雪菜もそれを確信した。だが、そこでキャスターは思いもよらない行動に出た。
「っ!あああぁあ!!」
「っ!?」
それは愚策以外の何者でもない。
なんとキャスターはジャバウォックの腕へと自らの体を突き出して、その銀刃を自らの腕で防御しようとしたのだ。
そのようなことをすれば魔力を断つ槍に自らを斬られることとなり、下手をすればキャスター自身の命が危ない。
思考が鈍ったせいもあり、その判断基準が彼女からは今失われている。文字通り、狂った行為なのだ。だがそれがどうした。今、自分は…
(ここにきてはじめてのともだちの…わたしになまえを『かたち』をあたえてくれたともだちのために!!)
キャスターの決心は堅い。それこそ地中にて輝く金剛石のように…だが、その決心を鈍らせるものが1人、いや、正確には
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーー!」
「え、ジャバウォック?」
ジャバウォックは突如として自らの腕に飛び乗ったキャスターを掴んだのだ。そして…
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーー!!」
「えっ!?きゃあああ!!?」
一気にその蟻地獄から逃すようようにして上へと放り投げたのだった。その光景に一瞬驚いた雪菜ではあるものの、その銀刃を緩めることなく、腕の方へと走らせ…
「やああああ!!」
ジャバウォックの片腕を一気に断ち切るようにして、振り抜く。だが…
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーー!!」
「っ!うぐっ!?」
ジャバウォックの腕はなんとか断ち切れ、ジャバウォックは悲鳴を上げる。だが、そこで雪菜は
そして、一方のジャバウォックはそこで止まらない。ついにもう一方の腕その膂力を抑えきれなかった鎖が断ち切れる。そして、その腕を雪菜の方へと伸ばそうとした瞬間…
「わたしの友達に何してくれてんのよ!?この化け物!!」
今まで気配など存在しなかった箇所から勢いよく声が響き渡る。その声に驚愕したのか、それとも反応しただけなのか。そちらを確認するように 振り向こうとする。だが、遅い。
「せいやあぁあ!!」
剣の振り抜く音が聞こえる。その音ともに今度はジャバウォックのもう片方の腕もボトリと落ちる。雪菜もそちらへと目を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「紗矢華さん、優麻さん!?」
「時間がない。姫柊さん!早くこっちへ!!」
「ええ、来て!雪菜!」
「は、はい!(それにしてもどうやって?)」
雪菜にはいつの間にかジャバウォックの隣にまで来ていた紗矢華たちに対して疑問は尽きないが、とりあえずそのようなことは後にして、紗矢華の手を取る。すると、即座に魔術式を構築した優麻は自分を含めた三人の瞬間移動を行う。
すでに仙都木阿夜が倒れている以上、紗矢華たちが手持ちの切り札を使えるのもまた自明の理だ。先ほど、サナもとい南宮那月が自分たちの保護から抜け出して魔術を使っていたことから彼女たちももう自分の異能が使えるのではないかという結論に達した。
そして、使えるようになったことを理解した二人の動きは早かった。すでに最終局面に到達している戦況に入り込むにはタイミングというのがどうしても必要になってくる。だから、彼女たちは自分たちの異能が戻ったという高揚感と勢いをそのままに突っ込んでいった。
やったことは至極単純で優麻は空間移動魔術により紗矢華を自分ごと転送し、紗矢華はその移動先において、ジャバウォックに決定的なダメージと雪菜を救出することに全力を傾けた。
そして、満身創痍の身で弱っており、雪菜に気を取られていたジャバウォックはそれに反応しきれず腕を斬られてしまったというわけだ。
「
雪菜たちの避難を確認した古城は今度こそと腕を上へと掲げてつぶやくようにして呪文を唱えていく。
「
腕をなくした怪物へと双龍はその顎を向ける。
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!」
対するジャバウォックは絶叫し、なんとか腕を回復しようと奮闘する。だが、遅い。今までに比べると格段に…当然だ。今まで、この怪物は受けきってはいたものの、第四真祖の攻撃を
もしも、ほんの僅かでも食らっている時間が短ければその再生速度はかなり回復していたはず。そう。今ここに来て、ライダーが選んだ取捨選択が効き始めているのだ。
「◾︎◾︎っ!?」
それは驚愕か、それともただ威嚇しただけなのかだが、もう目の前にまで来た双龍の顎を前にしてジャバウォックは確かに短く叫んだのだ。
そして…
音は立たない。次元を食い散らかす龍蛇にとって、モノを咀嚼するということは食べるというよりも放り込むといった方が近い。その龍蛇の静かな晩餐は蟻地獄状だった落とし穴を更に深く深く底まで突き進ませていた。
「…はぁ、はぁ、はぁ、終わった…のか?」
穴の底を見つめながら、古城はつぶやく。そして、気を抜いた古城は静かに腰をつくのだ…
瞬間、古城の後方のコンクリートが一気に吹っ飛ぶ。
それに対し、何事かと全員が振り向く。
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!」
そこにジャバウォックは飛び出していた。如何なジャバウォックとて今の一撃を食らって無傷とはいかない。既に右腕と咆哮を上げる頭以外は全て龍蛇に食い尽くされており、肩と首がなんとか頭をつなげているような状態だった。そんな満身創痍の状態でジャバウォックは拳を古城へと振り上げる。
「せ、先輩ーー!!」
雪菜が絶叫を上げ、他の者たちも驚愕とともにその光景をただ見ることしかできなかった。
ジャバウォックが正に拳を迫らせようとしたその瞬間、一人の男が古城の前に出る。
男は剣を構えながら宣言する。
「これで…終わりです!ジャバウォック!」
守護の力を反転させたあらゆる鎧を貫く剣が迫る。その速度は未だジャバウォックには一歩及ばず、だがそれでも吸い込まれるようにして剣の軌道をジャバウォックの体の方へと向かわせていく。
その剣が拳と衝突する。辺りに響き渡る衝撃音。
「っ!はああぁあ!!」
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!」
だが、それも一瞬。力の拮抗は即座に破り去り、一方の力が貫くようにして通り切る。そして、力を通しきった勝者は高らかにその勝利を宣言するように叫ぶ。
「
最初の一撃に合わせるようにして、最後は頭上から一閃。十字の斬撃がジャバウォックというその怪物の全て照らし出す。
「◾︎…◾︎◾︎…。」
短く声をあげたジャバウォックだったが、それだけ…ジャバウォックはその後、静かに霧のように消え去るのだった。
その姿を確認した古城はライダーに尋ねるように言った。
「終わっ…たのか?」
「……。」
重苦しい沈黙。その一瞬にも永遠にも思える時間が過ぎ去り、ライダーは言う。
「ええ…私達の勝ちのようです。マスター。」
その言葉を聞いた瞬間、古城は今度こそ力なく仰向けに倒れていった。
「せ、先輩!?」
「暁古城!?」
「古城!?」
それを見た雪菜、紗矢華、優麻が駆け寄ってくる。そんな彼女たちが見たものは…
「…きっつー…」
とつぶやくようにして、古城が言っている姿だった。その姿にその場にいる全員が苦笑し、代表して雪菜が声をかける。
「お疲れ様です。先輩…」
「ああ…今回はさすがにやばかった。…と、そういや、パレードまだやってっかな?姫柊?」
「さ、さあ?ですが、今から行けばなんとか間に合うんじゃないでしょうか?」
「…そっか。いや、こんだけ苦労したんだし、せめて報酬として祭ぐらい楽しみたいと思ってさ…」
「くすっ、ええ、そうですね。先輩。」
その相変わらずな雰囲気を感じて周りの者も落ち着いたのか、雪菜を皮切りに続々と微笑み、笑い声が静かに上がる。
そう。その瞬間、誰もが思ったのだ。戦いは終わった、と…
だが違った。
続々と笑い声が上がり、周りの温度も徐々に温かくなるように感じられた。
そう、そんな空気をぶち壊すようにして
後方、屋根の方から穴を開けながら、隕石のようになにかが落ちてきた。
瓦礫は綿のように舞い上がり、土煙がモウモウと立ち込める。
その異変を肌で、耳で感じているというのに誰も即座に後ろを振り向こうとしなかった。
その音ともに現れた自分たちを覆うほどの存在感に全員が息を呑んだために…
だが、いつまでも振り向かないわけにはいかない。意を決して息を呑みながら古城を順に後ろを振り向いていく。
そこには男のすがたをした彫像があった。2メートルを優に超すその巨体は肌は黒く、硬い鋼のような感触を触りもせずに視覚だけで理解させた。全身を覆う筋肉はもはやプロのボディービルダーなど赤子に思えるほどに造形美を放っており、見るものを萎縮し、感嘆させるに十分すぎる魅力を放っていた。
だが、そんな彫像を見た古城たちからは脂汗が止まらない。彼らは一瞬で理解したのだ。
アレは断じて彫像などではない、と…
「……あまりいい気分はしないが、これも戦の常。そう考えて受け止めてほしい。先に名乗らせてもらおう。」
彫像の口から言の葉が紡がれる。その一つ一つが確実にこの重苦しい空間を支配していった。そして、その彫像は名乗りを上げる。
「サーヴァント セイバー。いうまでもなく、貴公らの
敵だ。」