ストライク・ザ・ブラッド 錬鉄の英雄譚   作:ヘルム

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お待たせしました。いや本当に、マジで忙しい。おそらく、また時間が空くでしょうが、どうか皆様応援よろしくお願いいたします。


観測者たちの宴 VII

ダン、という勢いのある音がある建物の屋上から鳴り響き、コンクリートの地面が音ともにわずかに舞い上がる。もしも、屋上に人がいたならば、一体、何事かとすぐに周りを確認しただろう。だが、今日は波瓏院フェスタということもあり、屋上にたむろする若者などは存在せず、ビルの屋上はただ無人だった。だから、その跳び続ける(・・・・・)ソレに対しても誰も注意も興味を持たなかった。もっとも、常人が見たとしても一体何が起こっているのか理解できないだろう。なぜなら、跳び続けているソレ(・・)は今もなお音速を超え、人々がコンクリート板の状態を確認した時には既に遠く彼方へと飛び去っているのだから…

 

そして、ソレ(・・)とはいうまでもなく、今尚、騒動の中心にいるであろう仙都木阿夜の捜索を行っているサーヴァント、アーチャーだった。

 

「っ!?」

 

だがそんなアーチャーが突如として、建物の上を飛ぶ足を止め、膝をつく。

 

「なんだ?今の感覚は……?」

 

アーチャーの感じた感覚。それは以前、自分のマスターとの契約が薄れてしまった感覚に近い。自らの膂力が、能力が、全てが何かに奪われていくような脱力感。ただ、それもまだそこまで強力なものではない。全力は無理にしろ、まだ問題はないと断言できる。

 

「だが、あまり長時間は不味そうだ。早計かもしれんが、おそらく仙都木阿夜の仕業だろう。早く見つけねばな。何より、こちらとしても元々持ちそうもなさそうだしな(・・・・・・・・・・・・)

 

シロウは自らの手を見ながら、ふぅと息を吐き、落ち着くように念を押し、立ち上がる。その後、彼は改めて標的を探るために走り出すのだった。時刻は分からない。この擬似太陽のお陰で時間感覚が妙なことになっており、大体の目算でしか見当がつかないのだ。そのことが余計にアーチャーの不安を煽り、ただひたすらに脚を動かし、夜の街(・・・)を駆けていくのだった。

 

ーーーーーーー

 

アーチャーが足を止めたのと同時刻。

 

「っ!?」

「!?ちっ!!」

 

瞬間、セイバーとランサーも同時に足を止めた。アーチャーと同じく妙な脱力感が彼らの身にも襲いかかったのだ。

 

「なんだ?今のは?」

 

ランサーが呟きながら、何か異変がないか辺りを見回す。だが、当然といえば当然だが、彼の視界には異変らしいものは映らない。

そのことに対して、ランサーは気味の悪い感触を感じ、同時にわずかな苛立ちも感じる。なにせ、ランサーはそもそもとして全力の戦いに興じたいからこそ、この戦いの儀式に応じたのだ。

 

言わば、彼にとっての願い(・・)を何者かにより二度も潰されたのだ。一度目のアーチャーはどのみち自分の気にくわない相手であることも相乗し、そこまでの苛立ちは感じなかった。

 

だが、今まさに目の前にいる剣の英霊と雌雄を決そうというこの瞬間にまで邪魔が入れば、それは憤りを覚える。

 

「……どうやら、そちらも私と同じ状態らしいな。ランサー。」

 

苛立ちはよほど顔によく出ていたそうで、セイバーはランサーの顔を見ながらそう言葉をかける。ランサーはそれに対し答えず、鋭い猛犬のような視線で返す。苛立ちが彼の言葉を濁らせたのではない。ただ、ランサーは答えずとも分かるだろうと、セイバーに促しただけだ。

ランサーはそのまま何も答えずにまた槍を構えセイバーに改めて向きなおる。この状態であろうとも戦いを続けようとセイバーに促しているのだ。

 

戦いとは常に非情なもの。いつどんな時にどんな罠が待ち構えているかわかったものではない。特にこのランサーとセイバーはそういう罠というものに対して、共通の認識が存在している。

 

ランサーはセイバーの正体にまだ行き着いてはいないものの少なくともセイバーは純粋な戦士だと認めている。だからこそ、このセイバーの応答に対しても特に何も問題はなく答えるだろうと考えていた。

 

「……ふむ、そうだな。愚問だったか。だが、すまないな、ランサー。私も今この場で貴公と決着をつけたいのは山々なのだが、そうもいかんのだ。」

「……何だと?」

 

だが、その期待は裏切られた。

 

彼らは同様に神話の時代、女神やら妖精やら女王やらの罠で散々に貶められた英雄ではある。

だが、一つだけ、現状においては一つだけ決定的に違うものがあった。

 

それはセイバーはマスターに仕えている(・・・・・)が、ランサーは仕えていない(・・・・・・)という点である。

故に…

 

「マスターからの命令でな。もうここを去らねばならん。ではな。」

 

そういうと、彼は自分の身の丈ほどもある大剣に焔をまとわせ、大きく振り上げる。その大剣を思い切り地面へと叩きつけんと振りかぶる。瞬間、剣先が地面に激突し、瓦礫やどこからか吹き上がるマグマとともに辺りに砂塵が舞う。

 

「ちっ!!」

 

砂塵に視界が封じられ、ランサーは腕を顔の前にかざし砂塵から目を守る。しばらくして、砂塵は収まり、ランサーの視界には溶けた地面と不格好に砕けた瓦礫のみが広がっていた。

 

「……野郎。」

 

逃げられたということが分かり、明からさまに不機嫌になるランサー。

何度も言うようだが、すでにアーチャーとの戦いでも不完全燃焼にさせられたこの身だ。戦い無くして、サーヴァントは存在する意義などないというのに、此度の聖杯戦争の参加者どもはどれもこれも及び腰だ。まだ最初だから、様子を見なければならないというのも分かるが、それでも気にくわないものは気にくわない。

 

しかも、彼にはマスター関係のこと以外でもう一つセイバーに対してある違和感(・・・)が存在していた。その違和感もあってか、彼の顔は見る見るうちに苦虫を潰したように歪んでいく。だが、やがてそこから少しずつ気を取り直していき、

 

「ちっ、いつまでもここで腐ってても仕方ねえ。とりあえず、形だけとはいえ、マスター(あの女)のところに戻るか。」

 

無論、まだマスターと認めた訳ではない。

ただ、こう立て続けに戦いを中断されては興が醒めるというもの。ならば、現在のところは形だけとはいえ、自らの主人の元に行ってみるのも手だろうと考えたためだ。

 

「マハ、セングレン!!」

 

二頭の愛馬の名前を叫ぶ。すると炎がランサーの周りを包み込むように覆い、頭を差し出すように二頭の馬が瞬時にランサーの元へと近寄る。ランサーは近寄ってきた馬の頭を撫で、戦車の手綱を握る。

 

「しかし、いい加減太陽を収めた方がいいか。魔力の方も馬鹿にならんしな。マハ、セングレン!!」

 

手綱をわずかに引く。すると、マハとセングレンは応じられた命令を理解し、わずかに車輪の焔の力を弱める。陽光纏いし猛犬の車輪(クー・ロスフェイル)はの能力の一つでもある擬似太陽を収め、再び夜の闇を戻そうとしているのだ。次第に偽物の日光は薄れていき、空は本来の色である黒と青を孕んだ闇の色へと戻っていく。そのことを確認したランサーは再びマハとセングレンの手綱を今度は鞭のようにしならせ、鞭を響かせる。すると、マハとセングレンはゆっくりと方向転換し、空を足場に闇夜を駆ける。

 

「しかし、妙な感じだったな。あのセイバーとの戦いは」

 

空を飛び、駆けながらも先ほどの戦いについてランサーは思い返す。そう。不思議だったのだ。先ほどの戦い、動きの一々に見切りの強さが大きく反映されていた。あれではまるで、昔一度戦ったことがある(・・・・・・・・・・・)ように感じられたのだ。だが、あり得ない。アーチャーのように会いたくもないのによく会うような英霊ならばともかく、少なくともセイバーについては今回初めて会う英霊だと感じだのだ。だから、セイバーと戦ったあの時の違和感は別に気にすることではないのだと、そうランサーは自らに言い聞かせるのだった。深く物事を考えるのが苦手というわけではない。ただ、単にランサーにとって闘いというのは常に非情なものであり、非常なものなのである。だから、情や常識などに囚われることこそ、戦うときにもっともしてはいけないことなのだと理解し、割り切っているのだ。

 

たとえ、その答えが一つの真理にたどり着こうともこの男は気にしない。なぜなら、戦いとは常にヒジョウなものなのだから……

 

ーーーーーーー

 

「くっ!」

「どうしたんですか!?ライダーさん」

 

同時刻、やはりライダーにも同様な脱力感が襲いかかった。たち絡んだ訳ではないが、突如として横で呻き声を上げられ、心配になった雪菜たちが駆け寄る。現在、彼らがいる場所はオシアナス・グレイヴII号の付近海岸である。オシアナス・グレイヴII号とは、前の獣人による騒ぎの際にヴァトラーがテロ活動を支援する目的で貸したオシアナス・グレイヴの同型機である。

古城と浅葱、そして仮名『サナちゃん』はこの船の中にいる。だが、船の中は治外法権。つまるところこの国の法律(ルール)が通じない場である。雪菜と紗矢華は日本の法律側専門の組織に属しているため、基本的に特別な許可でもない限り、入ることはできず、外で立往生をせざるを得なかったのである。一方、ライダーは特にそのような縛りはないのだが、中に入ると視界に制限がかかるためという理由で外にいる。

 

「申し訳ありません。何やら奇妙な力に自らが吸い取られていくような脱力感を感じまして……どうやら事態が動きそうですね。そろそろマスターの方にコンタクトを取るべきだと思われ……!?危ない!!」

「え?きゃっ!?」

「にゃわっ!!?」

 

ライダーに庇われながら、雪菜と紗矢華が後方へと飛んでいく。ちなみに言っておくと、「にゃわっ!!?」と言うのは紗矢華が叫んだ叫び声である。

雪菜と紗矢華はいきなり倒れこむようにして押し倒されたために、若干の不機嫌さを伴った眉を寄せた顔でライダーを見つめ返そうとする。だが、すぐにそんな余裕はなくなった。

 

突如として、次回の左横にあったコンテナ群が勢いよく弾き飛ばされていく。そして、ビリヤードのようにコンテナ群を弾き飛ばしたその物体は勢いそのままに旅客船へと衝突する。すると、今まで自分たちの目の前に存在していた旅客船が横殴りの調子で大きく歪む。例えるならば、それは針で割ろうとした風船に似ている。風船は針で突かれた部分に皺が寄り、一点に力が集中し、その逆側は引っ張られるようにしてわずかに体積が大きくなる。そう。まさにそんな調子で船は割れた(・・・)のだ。

 

「な、なんですか!?」

「…困りましたね。どうやらキャスターがこちらに来るようです。」

「え?」

 

言われている意味がしばらく分からなかった。だが、そのあと、この状況が何を示すものなのか理解できるものが目の前に出てきた。ボロっと船の穴から一つの影が落ちて来る。その影に雪菜と紗矢華は見覚えがあった。

 

「あれって…まさか!」

「アルデアル公!?」

 

そう。蛇の眷獣を主として従え、戦う戦闘狂吸血鬼ディミトリエ・ヴァトラーが落ちてきたのだ。そのことに雪菜たちは揃って驚愕する。ヴァトラーは性格に難はあるが、少なくとも能力面においては非常に強力な力を有する吸血鬼である。そのため、吸血鬼内では真祖に最も近付いたものと字され、恐れられてきた。そう、ならば、ヴァトラーが倒されるとするのならば、真祖と恐れられる吸血鬼と同等以上の存在でなければならないはずだ。それが顕す事実、それはつまりキャスターは真祖と同等以上の怪物だということ。

 

ズシンと何かが落ちる音が辺りに響き渡る。その音に背筋が凍る。音が連続して響き渡り、辺りの地面を揺らし、道にある小石がわずかに宙に浮く。その事実が響き渡る音が足音なのだと認識させ、彼女らの背筋の凍り様をより確実なものとしていく。

 

「煌坂、姫柊!!」

 

その凍った背中に暖かみを加えてくれたのはよく聞く少年の声だった。頼りないが、それでも心に勇気を与えてくれるような優しさを含んだ声色は彼女らを安心させ、冷静さを取り戻させていく。

声がした方向を見ると、そこには南宮那月似の少女を連れて立った色素の抜け落ちた髪と気怠そうな印象が特徴的な少年が立っていた。

 

「せ、先輩!あれ?浅葱さんはどうしたんですか?」

「浅葱のやつなら、この騒動で更にイカれちまったシステム復旧のためにさっき絃神島のメインコンピュータルームに連れていかれちまったよ。それより、どうしたんだ。この状況?」

「それが分からないのよ。私たちもさっきこの状況に遭遇したばかりで……あなたなら何かわかるんじゃないの?」

 

話を促されたライダーはそちらを向かずに、弾き飛ばされたコンテナ群の方をジッと見据えている。そのことを怪訝に思い、古城はマスターとしてライダーに話しかける。

 

「ライダー?どうしたんだ?」

「これは…予想以上にマズイかもしれません。マスター。逃げる準備を!どうやら、この場で私たちは圧倒的に不利な立場に立たされていると見るべきです。」

「は?どういうことだよ。」

 

問いただすように聞き返す。すると、ライダーは苦虫を潰したような表情で見つめた方向に睨みを利かせたあと、早口で説明を始める。

 

「今、私は何らかの阻害の影響で全力を出せる状況にありません。一体、どうしてこのようになったのかは知りませんが、おそらく、これは全サーヴァントに共通していると思っていました……のですが、どうやらそうではないらしいです。」

「え?」

 

息を整えるように深く短く深呼吸した後、ライダーは告げる。

 

「何故かは分かりませんが、キャスターはほとんど力が制限されてない。どころか、僅かずつですが力を取り戻しつつあるようです。まるで私たちに反比例でもするかのように……この場で戦えば、まず間違いなくあの旅客船に吹き飛ばされた彼のようになるでしょう。」

「なっ!?」

 

その説明が終わると今まで鳴り響いていたはずの音が止む。恐る恐る、今まで音が鳴り響いていた方へと目を向かせる。そこには怪物が立っていた。左腕は噛み砕かれ、首は落とされ、心臓部である左胸は貫通している。致命傷だ。その死に至ろうはずの傷口を外に晒しながら怪物は立っていた。おそらく、ヴァトラーが今までつけた傷なのだろう。だが、そんなものは意にも介さず、怪物は止めを刺さんとヴァトラーの方へとゆっくり歩み始める。

 

「野郎!」

「っ!待ちなさい!古城!」

疾く在れ(きやがれ)獅子の黄金(レグルス アウルム)!!」

 

怒号とともに、雷光を纏いし獅子が召喚される。黄金の獅子の咆哮は空気に響き、瞬き、辺りを日輪と見紛うほどに照らしていく。それは、古城たちは状況に夢中で気づかなかったが、先ほど出ていたはずの幻の日輪をも霞ませる勢いの気が狂いそうになるほどの魔力の光で、まさに閃光とも呼ぶべきものだった。だが、その魔力の嵐を形にした光を浴びてなお、怪物は一瞥もくれない。別に気づいていないわけではない。ただ、怪物はその破滅の光を何の問題もなく受けきることができると確信しているのだ。

獅子はその態度に激昂した。眷獣は魔力の塊とは言え、意思がないわけではない。彼らにはそれぞれ意識があり、感情が確かに存在する。だから、怪物がこちらに何の興味も示していないことに対し、憤ることだってあるのだ。獅子は怒りそのままに契約主の命令を果たさんと攻撃を仕掛けようとする。牙を剥き勢いよく突進していく黄金の獅子。

だが、その攻撃が突如として鋼を纏った蛇に遮断された。召喚主が未熟とは言え、紛れも無い第四真祖の眷獣の一角の攻撃を阻める存在はそう多くない。この場で言うのならば、そんなことができるのも…否、してしまうのも一人に限られていた。

 

「ヴァトラー!お前、なんで!?」

「……余計なことをしないでくれ。古城。ようやく、楽しくなってきたんだヨ。」

 

そう言いながら、立ち上がる彼の姿はボロボロだ。すでに何度か攻撃を受けたのか、両腕の骨は砕け、左腕は半分落ちそうになっている。足も右片足はひしゃげ、雑巾のように塊と塊が繋がったような酷い有様と化し、頭は半分凹み、人から見ても明らかに致命傷だ。だというのに、ヴァトラーはなおも狂気的な笑みを浮かべ獲物を狩る肉食獣のような瞳を怪物へと向ける。ただ、純粋に戦いを楽しんでいるのもそうだが、別に彼にとってこんな傷はなんでもない(・・・・・・)のだ。真祖に一番近しいものは伊達ではない。彼の不死の呪いは彼のその致命の傷すらも時の巻き戻しと見紛うが如く修復していく。

だが、真祖に近しいというにしては妙に治りが遅いとヴァトラーは感じた。まるで、呪いそのものが弱まっているかのように、身体の復元が明らかに遅れていた。それが何を意味するのかというのも気づかないほどヴァトラーは愚かではない。

 

「なるほど……闇誓書。まさか、力を解放するとここまでの影響があるとはネ。とにかく、そういうわけだ。古城。この怪物は僕の獲物。この怪物の相手をしたければ、僕を仕留めるか、それか僕が倒れてからにしてくれヨ。」

「はぁ?んなこと言ってる場合か!!ここは力を合わせて…」

「いえ!残酷なようですが、古城。ここは彼に任せた方がよろしいかと」

「なっ!?ライダー!」

 

まさかの提案に古城は目を剥き、反抗を露わにした。だが、それを圧倒する勢いの眼で睨み返しながら、古城に言葉を返す。

 

「今のまま、彼と協同して戦ったとして、同じことだと思います。古城。この状況下ではどうあれ、キャスターに対抗する手段が存在しません。ならば、ここは彼に任せ、撤退をすべきです。」

「つったってよ…」

 

理屈はわかる。今の自分たちでは先ほどとは状況が異なり大きく戦力がダウンしているのだろう。ヴァトラーから感じられる魔力も自分から感じられる魔力も心なしかわずかに弱くなっていた。何より、キャスターの真の目標は南宮那月(仮)なのであって、ヴァトラーではない。となると、現在は戦力とならない南宮那月(仮)のためにも逃げなければならない。それは分かる。分かるのだが、気に食わないとは言え、こんな状態のヴァトラーを放置するのも気が引ける上に、性に合わないのだ。だからこそ、古城は迷った。

そんな迷いを察し、断ち切るようにして言葉を割り込ませた少女がいた。

 

「先輩。行きましょう!」

「姫柊!」

「どうあっても、今の状態では負けるのは確定的である以上、逃げるのもまた戦法のうちの一つです。何より先輩、アルデアル公と協力したとして、ちゃんと連携が取れるとお思いですか?」

「あー…それは……」

 

正直、全然とれる気がしない。なんか、攻撃の節々で割り込まれたりして、邪魔されることは容易に想像がつくのだが……

 

「……。」

「マスター!」

「先輩!!」

「暁古城!!」

 

黙考し、どうするか考えていた古城だったが、思考を流行らせるようにして周りの3人が言葉を割り込ませる。そして、少しして、古城はチラリとヴァトラーと那月(仮)の顔を見比べ、苦虫を潰したような表情を浮かべる。

 

「…〜っ!?仕方ねえ!おい、ヴァトラー!死ぬんじゃねえぞ!」

「おや、心配してくれるのかい。古城。」

「うっせぇ!」

 

悪態をつきつつ、古城は那月(仮)の小さな手を握りながら走りら他3人もそれを追いかけるのだった。その姿にらしくもなく、フッとニヒルな笑みを浮かべながら、改めてヴァトラーは怪物の方へと目を向ける。すると後ろの方から怪物へ着いていくようにしてトボトボと歩く少女が見えてくる。少女は怪物の前へと出ると不意に逃げていく古城たちの方へとあるはずのない瞳で見つめる。

 

マスター(ナツキ)……」

 

物憂げに呟く。そうして彼女が思い出すのは一つの言葉。南宮那月が最初に彼女に問うた言葉だった。

 

『貴様、名前を何という?』

 

そう。それが彼女たちの最初の邂逅の言葉だった。




一つ皆さんにお聞きしたいことがあります。
少し前に評価の中にオリジナル設定が多すぎということでなかなか辛辣な評価をいただきました。そもそもとしてオリジナル設定が無くして何が二次小説か、とも思いはしたのですが、何だかやり過ぎな設定とかあったりとかしますかね?そこらへんは自重したと思うんだけどな〜とも思うのですが、ちょっと気になったので皆さんが気になったオリジナル設定について、お聞きしたいと存じ上げます。

それ以外に単純に感想を書いてくれても嬉しいです。では、また!

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