とノリツッコミをしたくもなったが、気を取り直して、本命の10連…まさかの爆死!
もうね…何なんだよ!!!
とマジで言いたくなったのであった。
「根源と別の何かが両方存在している…だと?」
「おうよ。俺も馬鹿な話だとは思うんだがよ…それしか考えらんねえんだよ。」
アーチャーはふぅっと息を整えるように吐いた後にさらに言葉を続けていく。
「あり得ないな。もしも、本当に根源と別の何かがこの世界に存在し、両立が成り立っているというのならば、この世界はとっくに存在していない。魔力の質こそ似ているとはいえ、元は別の全く
「ああ、そんなものが同時に存在すりゃ、世界は当然どちらかの理を選ぶことになる。そんなものに世界が巻き込まれれば、大噴火、洪水、果てには疫病までわんさかはびこる文字通りの終末世界になる。だがよ、それを解決する方法なら、あるじゃねえか?この
それが何を指しているのかは明白だ。つまり…
「君はこの世界が
「それしかあり得ねえんじゃねえか?これだけの矛盾をどうにかしちまうほどの馬鹿げたような奇跡なんていうのは…」
「それこそあり得ない。君の言は確かに的を射ているかもしれないが、そもそも、聖杯を降臨するだけの魔力、さらには術式までもが俺の時代では完璧に消されていた。我が師によってな…それこそ、本物の願いを叶える聖杯か何かが…」
とそこでアーチャーは言葉を止めた。ランサーは怪訝に思いアーチャーの顔を伺うようにして睨むと、そこには目を見開き、まるで雷にでも打たれたような間抜けヅラを晒して立っているアーチャーがいた。
「…おい、どうしたよ。アーチャー?」
さすがに言葉の途中でくぎれたこともあり、未消化の部分が多くイラついたランサーが問い詰める調子でアーチャーに伺いを立てる。
「…いや、なんでもない。それで?もしも、聖杯か別の何かの力が発見されたとして、君は一体どのような予測を立てているんだ?」
「……。まあいい。俺は少なくとも、三通りはあると考えていた。
いくら、聖杯でも0から世界を作り出すなどということはできやしねえ。それに、そんなことになったら、まず、
「で?その三通りというのは?」
「焦んなよ。まず一つ、世界という一つの文明をやり直すために人間を皆殺しにし、一つの文明を終わらせる。だが、こいつはさっきも言った通り、
「二つ目は?」
「二つ目は根源が弱くなったことにより、世界はもう一つの力を必要とし、その別の理を受け入れた…っていう筋書きだ。まあ、これならば、聖杯に何も関係していない分一番可能性としては低くない方だと思ってたんだが…
ただ、これだとあまりに柔らかすぎる。もしもこんなに柔らかに世界が変わったって言うんなら、そもそも、俺たちの記憶が混濁していることにも繋がらん…何より…」
「俺が先ほど言ったように、文明の発達スピードは遅く見積もっても、200〜300年が精々…そんな薄い歴史が浸透しきっているこの世界についての説明もできなくなる。」
「そういうこった。そして、三つ目は…」
「そのどれでもなく、この世界は一方の世界がもう一方の世界に
「応よ。馬鹿馬鹿しいにもほどがあるが、今んところそれが一番確率があるってくらいは分かってんだろ?アーチャー?つーか、よくそんな予測すぐに建てられたな?俺の方は未だに半信半疑だっていうのによ…」
「別に…ただそのバカバカしい出来事というヤツには生前縁があったからな。」
そう。その馬鹿馬鹿しいにもほどがある推論だけはもっとも誰もがあり得ないと首を横に振るであろう可能性でありながら、現状、もっとも確率が高い可能性。
何せ、これだけの混乱が起きている理由についてもほぼ全て『この世界に別の世界が割り込んだから』こそ起きた現象と言えば、説明ができなくもないのだ。ただし、その言が無茶苦茶だということを置いておけばの話ではあるが…
「つまり、この世界は俺たちが
「まあな、それが俺の推論の結果だ。で、だ。てめえはこれに対してどう思う?」
「どう、とは?」
「要するに答え合わせだ。てめえは今の推論について違和感はなかったか。」
アーチャーはわずかに考え込むように顎に手を添えて、項垂れるが、その後すぐに…
「…そうだな。一考の余地はあるんじゃないか?」
「なんだ?はっきりしねえな。」
「俺は君とは違って短期即決などということはできない柄でね。君のように野生の獣のような勘を頼りにするよりかは後々考えてこのあり得ない推論に対し、結論を出した方が納得がいくというものだ。」
「けっ…そうかよ。んじゃ、まあ、話は終わりだ。そろそろ第二ラウンドと行こうぜ。アーチャー。」
ランサーは戦車の手綱を握り、その呪いの朱槍を構える。
アーチャーもそれに対し、干将・莫耶を構え、向き直る。
(そうだ。あり得ない…あり得るはずがない。)
自らが先ほど思い当たった一つの答えに対し、ずっと自答し続けながら…
ーーーーーーー
「優麻!」
自らの魔力がある方向を辿り、ようやく監獄結界の最深部らしき場所にたどり着いた古城はその中心にいる人物に対して声をかける。
声を掛けられた人物はこちらへと顔を向ける。
「やあ、古城。早かったね。」
返事をされた古城だったが、その後に言葉は続かなかった。なぜなら、優麻がこちらに身体を向けた影響で彼女(?)の身体に隠れていたモノが目に映ったからである。
「な、どういうことだよ!?どうしてあんたが…」
「そんな!なんで!?」
「そうか。君たちは知らなかったね…」
そう。丸っ切り拷問椅子と言っても違和感がないような暗い雰囲気のある木造りの椅子…そこには見覚えのある顔があった。その幼いながら人形のような美貌は忘れようもない。
「この監獄結界はね。古城。この椅子に座っている南宮那月の夢そのものなんだよ。」
「夢…だと?んな馬鹿な!」
衝撃的な事実に思わず声をはりあげる古城。だが、それに対して優麻は冷静に諭すように答える。
「ちなみに言っておくと、古城。彼女はこの監獄結界から一度も出ていない。」
「は?何言っやがる!俺はいつも那月ちゃんに会ってたぞ!」
「それ自体がすでに彼女の夢だったんだよ。彼女はこの監獄結界にいながら、自らの分身を絃神島に放っていたのさ。古城。君が見ていた彼女も夢の一部でしかない。」
「そんなっ!?」
あまりの事実に雪菜も小さく悲鳴を上げる。そして、そんな彼らを他所に優麻は手を振り上げる。
「そして、この眠り姫を起こして僕の役目は完璧に全うされる。」
「っ!させません!」
雪菜は割り込むようにして優麻に攻撃することにより、優麻はすぐに手を止め、その場から離脱する。
優麻が離脱した隙に雪菜の方へと古城は近寄って行った。
「決着をつけようぜ!優麻!」
その言葉に対し、優麻はわずかに瞑目した後に、意思を込めた強い瞳で今は自分の身体に入っている幼馴染に対し、
「そうだね。行くよ!古城!」
宣言した。事実上の最終決戦が今始まる。
ーーーーーーー
「はあ、はあ、はあ…」
「あらあら、頑張りますわね。お姉様。」
「そうね。オクタヴィア。ここまでよく防ぎきったけれど、そろそろ辛くなってきたのではなくて?獅子王機関の舞威媛」
目の前の紗矢華に対し、余裕が見える笑みで佇む魔女二人。当然であろう。
ここまで、彼女たちは完璧に相手の攻撃を防ぎきり、確実に彼女を追い詰めていっているのである。
(あの…蛸足…柔らかくてどこにでも仕掛けられるから…罠としても活用できる上に…直接攻撃自体も結構強い…正直な話…このままだと、そろそろヤバイかも…)
途切れ途切れの思考の中なんとか状況を整理しようと頭を動かす。
これがもし、あのタワー屋上での戦闘というのならば、話が違ってくるだろう。あそこは場も限られてくる上に、そもそもとして屋上なので非常に開けているのである。そんなところに罠を仕掛けられる人間などいやしないし、仕掛けたとしても屋上の屋根に穴を開けなければならないので、どのみちバレバレなのだ。
だが、今は障害物などが置いてある港。ここはメイヤー姉妹にとってまさに格好の砦だったのだ。
つまり…
「状況は最悪ってとこかしら…」
このままでは本当にジリ貧だ。こちらの敗北が確定的なものになってしまう。
だが、そんな時に…
「アッシュダウンの魔女…紗矢華。確か、メイヤー姉妹が故郷とする土地にてある一つの事件が起きたことは知っていますか?」
「え?あ、はい。アッシュダウンの惨劇…確か、半径いくらだったかは忘れてしまいましたけど、300ヘクタールの森が一夜にして掘り起こした跡もなく、消えるという事件でしたね。」
「もしも、その木々こそが
「え?」
一夜にして、掘り起こされることもなく木々が消えてしまった。それは人の身技では不可能だ。少なくとも大規模な魔術講師でもしない限りは…
つまり…
「この守護者は、メイヤー姉妹の故郷…アッシュダウンにて消えてしまった木々の成れの果て…つまり木々としての大質量がこの無限に近い悪魔…」
「ええ。つまり、何度攻撃しても無駄でしょう…」
その事実に項垂れるようにして顔を曇らせる両名。それを見た魔女たちは…
「あはははは!!見てください。お姉様!やつら、絶望して顔を曇らせてますわよ!」
「ええ、さて、そろそろ終わりね。そのまだ未熟な肢体をどう辱めてやろうかしら。」
陽気な高笑いを上げる魔女二人に向かい合う皇女と巫女はその不快なほど高い声に対し、言い返しもせずただ俯いている。
だが、それは彼女たちが絶望しているからではない。
「うふふふふふ…」
「!?何を笑ってるのよ!?」
「いえ、思ったよりつまらない仕掛けだったようなので…あまり高笑いしすぎないほうがいいですわよ。
「っーー!!!」
憤りを抑えられないといった様子で魔女たちは生娘達を睨みつけ、ぬがあ、という怒号と共に守護者を攻撃に向かわせる。
それに対して、ラ・フォリアが前に出て儀式銃を構える。
「我が身に宿れ、神々の娘。楯の破壊者。雹と嵐。勝利をもたらししを運ぶものよ!」
ほっそりとした王女の身体へと、殺気を交えた触手が殺到していった。
それに対し、彼女は天高らかに腕を上げる。そして、そこから神々しいまでの光が放出されていく。
魔女達はその光を受け、すぐにその正体が理解できた。
「そんな、精霊の召喚ですって!?そんなことができるはずが…」
その言が終わる前に、無慈悲なまでの光は一気に振り下ろされた。
「キャァァァ!?」
悲鳴と共に衝撃により身体を浮かせられた魔女達はすぐに体勢を立て直そうとするが、遅い。その間に一人の舞姫が舞うが如く前に出てくる。
「獅子の巫女たる、高神の舞威媛が願い奉る。」
祝詞を紡ぎ、一つの鏑矢を手にした舞姫は空に向けて弓を向け、その鏑矢を番える。そして…
「極光の炎駒、煌華の麒麟、其は天樂と轟雷を統べ、憤焔をまといて妖霊冥鬼を射貫く者なりー!」
その鏑矢を射出する。鏑矢は花火のように一気に拡散するとそこに一つの巨大な魔法陣を作り出す。魔法陣は人の声域で決して不可能な声量で呪いを放つ。別に大声だから呪いは大きくなるというわけではないが、その呪いは一気に守護者達の枝を燃やし、青白い炎と化して一気に根元まで到達する。そうなってしまえば、木は脆い。300ヘクタールほどの大質量であろうと、それを覆い尽くすほどの強大な呪いは一気に拡散していき、たちまち彼女達の守護者を燃やし尽くした。
「そんな…私たちの森が…」
「っ!?逃げるわよ!ランサーを呼んで…」
「おっと、そうはいきません。」
「ええ。そこでおとなしくしてくれるかしら?」
メイヤー姉妹は恐る恐る背後を振り返る。するとそこにはすでにいつの間にいたのか儀式銃を片手に構えて、こちらに挑発的な笑みを見せている皇女がいた。その銃口は確実にランサーのマスターたるエマ・メイヤーに向かれていた。
「シェロから聞かされています。その令呪というのは英霊達に自らの命令を聞かせる役割も担っていますが、同時に瞬間的にですが、英霊達の強化にも使える。と、その令呪を一画使われてしまうと私としても困ってしまうので、ご遠慮願いたいのですよ。」
「っ!?」
「動くな、っていったわよね?次、妙な動きをしたら強力な呪詛をかけてやるからね。」
オクタヴィアがなんとか状況を打開しようと手を動かそうとした瞬間、エンチャントによる身体強化で一気に詰め寄った紗矢華がその剣を首元へと向ける。
「ありがとうございます。紗矢華。しかし、これからやろうとしていることも加味すると、これでは一体どちらが悪役なのか分かった者ではないですね。」
「これからやろうとしていること?」
「ええ、単刀直入に申し上げます。エマ・メイヤー。あなたのその令呪、私に譲ってもらえないでしょうか?」
「なっ!?」
絶句し、エマは思わず振り返りそうになるが、それを儀式銃を押し付けるようにされて無理矢理前を向かされる。
「貴方がたが現在契約している英霊・クーフーリンを私たちに手渡して欲しいのです。言っている意味はわかりますよね?」
「っ!?馬鹿にしないでちょうだい!小娘が!当然、却下よ!
「
その言葉にわずかな怒気を覚えたラ・フォリアだが、あくまで冷静に言葉を紡ぐ。
「そうですか…ではしかたがありません。コレを使いましょう。」
そう言って彼女が懐から取り出したのは雷のように曲がっている奇妙な形をした刃のナイフだ。
それが何なのか理解できなかったエマは首を傾げる。様子に気づいたラ・フォリアは驚くほど優しく言葉を放つ。
「これはですね。アッシュダウンの魔女よ。すべての魔術の効果を無効化するという神秘の刃なのです。」
「なっ!?」
「この刃を突き立てられた魔術は、たとえどのような強大さを誇っていたとしても、魔術である限り確実にリセットし、無効化しきるという超絶的な代物。できるのなら我が国の研究材料に使いたかったところなので、戦闘中は使えなかったのです。何せ、彼曰く『一回しか使えないようにした』ということなので…」
シロウは現代に対して大きな影響力を持つことを嫌う。現代のことは現代の人間が片付けるべきだと考えているからだ。故に、自らが再現した模造品とはいえ、それが世界に認識されてしまい、影響を受けたなどということになってしまうことになれば大問題だと考え、シロウはある細工をこの
そうしてしまえば、
「さて、一つお聞きします。エマ・メイヤー。この
「欠点?」
「はい。この
ウソ八百である。実際はそんなことを一言も言っていないのだが、敗北した魔女達にとって、最後の言葉は効いたようである。見る見る内に、その顔が真っ青になっていく。
「さて、では使わせていただきましょう…」
「ま、待ちなさい!令呪なら渡す!渡すから!!」
こうして、見事にラ・フォリアはランサーの令呪を奪い取ることに成功したのであった。
(さて、これで第一関門は突破です。次にやるべきは…)
決まっている。異変に気付き、こちらへと向かってくるランサーの説得だ。シェロの話が正しければ、ランサーの人格を考えるなら、たとえ、己がマスターの証を失ったものであろうと助けようとするだろうというのが、ラ・フォリアの見解だ。つまり、ここからが正念場なのである。
(気を引き締めなければ!)
彼女はそう心の中で意気込んだ。
ーーーーーーー
一方、一人の人間が決心しているのをよそに、一人の男が慟哭していた。
少年の名は暁古城。慟哭は怒りと悲しみの嘆きに満ち、どこまでもどこまでも監獄を覆い尽くしていた。
そんな少年の腕を確認すると、そこには人形のような美貌を持つ少女の姿をした魔女であり、彼の担任教師・南宮那月が真っ赤な花を咲かせるように、その豪奢なドレスを血化粧で染め上げ、ぐったりと倒れていた。
今回で蒼の魔女の迷宮は終わりです。次回から話の続きを書くために次の章の名前にしようと思います。
まあ、仕方ないんだけど、何でこんな未消化な戦いが多いんだろうか?fateだとやはりおなじみだし、何よりその場で決着が着くのは自分も面白くはないと思うんだが、不完全燃焼にもほどがあるような…ま、いいか。
では、また!
というか、確認するのが面倒というのもあるんだけど、次の章の名前って何でしたっけ?