注意
この文を読まないと、後々面倒なことになるかもというくらいには重要なので皆さん呼んでおいてください。お願いいたします。
今回触れるのは、皆さんずっと気になっていたことであろう。なぜシロウが子供になってしまったのかというところです。
これは結論から先に言わせてもらいますと、前回名前は出しませんでしたが、(まあ、ほとんどの方気づいてるんでしょうけど)アーチャーとして召喚された場合、無類の強さを誇るセイバーがキーマンとなります。
今回、シロウが召喚された時、全く同時に地球の裏側でも同じくアーチャーを召喚しようとしたのは前回の描写から類推できると思います。つまり、同じ『アーチャー』という椅子に二騎の英霊が椅子取りゲームの要領で急いで座ろうと必死になったわけです。
このアーチャーの椅子に座れたのは奇跡的にシロウだったわけですが、当然、そんなことをしては、たとえ無色の魔力となっている英霊とはいえ、お互いをぶつけ合い、霊核を傷つけるような事態になります。
本来、このような椅子取りゲームをするような事態はまずないのですが、そこはそれ後々語ろうと思う今回の聖杯戦争の異常性が大きく関わるのですが、とりあえず、こういう訳で、シロウは召喚された時、自分でも予期せぬ『戦闘』が起こってしまったために霊核はボロボロとなり、本来なら現界を保てないほどでした。それゆえに自衛目的で自分の体を一時的に子供化させることで何とか現界を保った、というわけです。
ほとんど、無意識化の状態で行ったことなので、シロウはそのこと自体の記憶はありません。
この霊核は傷つけると言っても根幹までは傷つけられていないので夏音とのリンクを確かなものにすれば、霊核は完全回復し、彼の体はすぐにでも全盛期の状態に戻ります。
彼が成長しているのもこれが理由で、弱いリンクの中、彼はわずかずつながら傷ついた霊核が回復しているために成長しているというわけです。
はい。長々とつまんないオリジナル説明をお聞きくださいありがとうございます。
なんで、こんなことを今説明したかって?
とてもじゃないけど、こんな説明これから先する機会ないと思ったからです!
はい。申し訳ありませんでした!!
ではどうぞ!
戦王の使者I
「くそ、くそ、くそー!!」
黒豹の獣人は悪態をつきながら、コンテナ港を走っていく。
コンテナからコンテナへと飛び移り、ひたすら元々いた場所から遠ざかるために走り続ける。
獣人の背後にある施設は爆炎により赤く赤く染まっていた。ある程度遠ざかることができた獣人はふとそこで立ち止まる。
「取引場所が…バレていたとは…」
口を歪めて、獣人は呟く。
彼は国際的テロ犯罪シンジケート“黒死皇派”の構成員であり、今先ほど、ある遺物に関するもので取引をしていたのだが、これをモノの見事に絃神島に看破され、今現在、この黒豹の獣人のように逃げ惑う羽目となっているわけである。
「やってくれたな。人間ども…」
シャツの裾から、配管スイッチらしきものを手に取る。
「同志の仇だ。思い知れ!」
ピッと、不吉な音が立った瞬間、彼は施設を覆う爆炎をさらに覆う巨大な爆炎を想像して、ニンマリと口を引き裂くが…
どういうわけか。いつまで経っても、新たな爆発が巻き起こる気配はない。
「何?」
怪訝に思い、確認するようにまたスイッチを押し続けるが、やはり反応はない。
何故?と考えている間に横合いから、強烈な衝撃を伴った何かが飛来し、彼の手元にあるスイッチをバチンと弾き飛ばして行った。
「今時、暗号化処理もされてない小型プラスチック爆弾とはな…」
ふん、と鼻を鳴らしながら相手を見下す幼さを感じさせる声。その声に気付いた獣人はすぐにそちらを振り向き、見上げる。
見ると、豪奢なフリルのドレスを身に纏い、射している日傘もそのドレスに合ったフリルをふんだんに使って飾りをしている少女。一言で言うなら、派手な格好である。
「攻魔師か…どうやって追いついた。」
「貴様こそ、逃げ切られるつもりだったのか?野良猫風情が。」
不遜な響きのある少女の一言に対し、カッと頭に血が登る感覚を自覚し、気付いた時には少女へとその鋭い爪を振り抜いていた。
だが、人形めいた美貌を持つ少女はその高速の攻撃を軽々と避けていく。
「差し当たって、“黒死皇派”クリストフ=ガルドシュの部下と言ったところか。戦王領域のテログループが海を渡ってご苦労なことだ。」
少女は避けながら、尚も淡々と見下した口調で自分の推測を余裕を持って呟いていく。
それが、獣人の怒りを更に押し上げる。
「うおおおお!!殺すー!!!」
怒りがピークに達した獣人は大きく振りかぶり、少女を殺さんと、その鋭い爪を突き刺そうとする。
だが…
途中で、少女は消えてしまう。
獣人は一体何が起こったのか分からないと言った調子で辺りを見回す。
「貴様には無理だよ。」
決定的な何かを宣告するかのように、少女の声が響く。獣人は驚いて振り向き、その少女の姿を確認すると、ある一つのことに気づく。
「空間制御の魔法だと!?バカな!そんな芸当…高位魔法使いでもなければ…」
と言った瞬間、息を呑む。そして、恐る恐る言葉を続ける。
「お前…まさか…『空隙の魔女』!南宮那月か!?」
男が正体を看破した時にはもう遅かった。
彼は悲鳴を上げる間もなく、魔女の背後から出現した鎖によって、縛り上げられていたのだった。
獣人を縛り上げた彼女はしばらく、縛り上げた獣人を見た後、満足したように鼻を鳴らし、
「さて、戦王領域のテロリストどもに興味はあるが、尋問はアイランドガードに任せて、帰るか。明日の授業もあるしな。」
実に教師らしいセリフを吐いて、魔女・南宮那月は虚空へと消えていくのだった。
さて、今回は英雄エミヤシロウの華麗なる朝生活から物語を続けていこうと思う。
「ふむ。今日も快晴か…ここまで常夏が続いてしまうと、日焼けすらも国民の象徴だったりするのだろうか?…いや、すでに焼けてるオレには関係ない上に、非常にどうでもいいことだな…」
などと、カーテンを開けながら一人ごちた後、シロウはキッチンへと向かう。
簡素な1LDKながら、一人で暮らしていくには十分なほどの広さを誇る彼の部屋、学生である彼が1LDKなどと言う贅沢をできているのには訳があるのだが…
その辺りは後々明らかにしていくとして、キッチンで彼は手頃なホクホクのスクランブルエッグとドイツ製のピリリと辛みのきいたソーセージ、そして絶妙な時間加減で焼き、焦げ目のついたトーストを皿に盛り付ける。
本来、英霊である彼にはこんな食事は必要ないのだが、基本的にオカン気質の彼にとって、料理というのは一定の生活リズムを保っていくのに必要不可欠なのである。
食事を摂り終えた後、彼は冷蔵庫の中から、ある物を取り出す。中身は、以前浅葱への報酬として頼まれたケーキで、今日のメニューはサクサクとした食感がたまらないパイ生地にマンゴー、アップル、チェリーなどのフルーツを盛り合わせたミックスフルーツパイである。
ミックスにしてしまうと、味の組み合わせが至難を極めるわけなのだが、そこは長年の彼の経験則が容易く味の絶妙な組み合わせを作り出すことを可能としている。
どうせ、周りの皆や会うことになる古城の妹方も欲しがると思い、ホールで二つ用意した。
そして、学校のカバンを持ち、この姿になってからかけている赤縁眼鏡をかけ、いざ学校へと向かうため、アパートを出る。
出た後、しばらくすると、モノレールの駅が見えてくる。すると、彼の知った顔が目に映る。
古城とその妹の凪沙、そして雪菜がそこにはいた。
古城とは割と家が近所ということもあってか、よく見かけることがある。
「おはよう。今日も暑いものだな…古城…?」
言葉の最後に疑問符がついたのは、彼の顔の異変に気付いたからである。見ると、古城の顔面は相当強い衝撃を加えられたのだろう。若干、デコが赤くなっていることがわずかに離れていてもハッキリと分かる。
「どうしたんだ?それは?」
シロウが質問すると、その質問に対して怒りの声を交えながら、傍にいる凪沙が説明するため口を開く。
「あ、ねえねえ。聞いてよ!シェロくん!古城くんってば、本当にデリカシーないんだよ!私がいるかいないかドアを開けながらノックもせずに確認して、その挙句に、雪菜ちゃんの下着姿を見たんだよ!本当、信じられない!女の子の部屋にノックもせずに入ってくるなんて、そんなんだから未だに彼女もできないんだよ。大体この前だって、ノックをしてって言ったはずなのにそのまま入ってきたんだよ!一回ならまだしも、本当に学習能力ないんだから!」
「なるほど、要約すると、古城が女性の部屋へ入ろうというときに、ノックもしないなどという不粋な真似をしたため、姫柊の怒りを買い、怒りの鉄拳…いや、その痕からすると回し蹴りか?
それを食らってしまった…と」
雪菜は顔を赤らめながら、古城は気まずそうに沈黙しながら、両者共に頷く。
「いや、まあ、悪かったけどよ。そもそも、なんで姫柊がうちにいたんだよ!?」
なんとか、状況を打開しようと考えた古城は怒鳴りながらも尋ねる。だが、その質問に対する凪沙の答えはひたすら冷ややかだった。
「言ったでしょ!今日、球技大会の衣装の採寸するために、雪菜ちゃんが家に来るって!…まったく聞いてなかったんだね?」
そんな言葉にたいしてシェロはわずかに驚いた風に尋ねる。
「衣装?なぜ、球技大会に衣装が必要なのだ?」
「ああ、それは…」
「男子全員土下座!?」
「それはまた、ずいぶんなことをするものだな。プライドというものはないのか?君たちのクラスの男子には?」
「まあ、私たちも引いたもんだけどさ、相手が雪菜ちゃんということもあったから、仕方がないかな?って女子の方は納得して、結局協力することにしたんだ。」
「私の方もそこまで真摯に頼まれると断れなくて…」
校舎へと続く坂道を登りながら、シェロたちは話を続けていく。すると、凪沙が何かに気づいたかのように、話を途中で区切る。
「そういえば、シェロくん。」
「ん?」
「その手に持ってる物って何かな?もしかして…」
「ああ、前に浅葱に頼まれてな。ケーキを作ってきたんだ。良かったらいるか?君たち用に、ちょうど、二つ持ってきたんだ。」
「本当!?やったー!!」
大喜びの凪沙に対して、古城は怪訝そうな表情でシェロの顔を見て尋ねる。
「なんだ?なんで、シェロがケーキ作ることになってんだよ?」
「ああ、少々、前に頼みごとを聞いてもらってな。その報酬として、ケーキを要求されたというわけだ。」
「頼みごと?」
ここ最近で、浅葱に聞かなきゃいけないようなことというと、イマイチピンと来なかった古城はその言葉を聞いてますます怪訝な表情を深めていく。
そんな表情をシェロは察したのか。
「何。他愛のないことさ。少し、オレが行きたい場所について調べてもらったというだけでな。ほら。結構重いが大丈夫か?」
「よいしょっと、うわ!これ本当にケーキ?それにしてはすごい重たさなんだけど…」
「ああ、なんせフルーツを盛り合わせてある特製のパイだからな。フルーツの重さが相まって結構なものになってるんだよ。
すまないな。本当ならば、ケーキを君たちのクラスのところまで運んでやりたいところなんだが…俺ももう高1、正直、中等部の方に行くのは憚られるんだ。」
「ううん。いいよ。いいよ。これも幸福の重さだと思えば苦じゃないしね。ありがとう!シェロくん。シェロくんのケーキって店に出しても問題ないくらいの美味しさで、みんな一斉に取ってっちゃうから、むしろこれくらいでちょうどいいくらい!」
満面の笑顔でこちらに答えてくる凪沙の顔は清々しさを感じさせるもので、シェロの方もその顔を見て、わずかな嬉しさから笑顔が溢れた。
ーーーーーーー
「ん?あれは…?」
「あ、シェロに古城。おはよう。はい、これ」
「おう」
と彼女はさも当然のように古城に何かのケースを渡すと脱ぎ掛けの靴を下駄箱にしまっていく。
「いや、当然のように持たされたけど、何だよ?これ?」
「今日の球技大会に使うバトミントンのラケットよ。
ラケット足りなくなりそうだから、持ってきてくれって頼まれてたんだ。」
「ほう、なかなか気が利くじゃないか?珍しいこともあるものだな。」
「うっさい。あたしがなんて呼ばれてるのか知らないの?気配りのできる美人女子高生浅葱さんよ。」
『気配りのできる女子高生はそんなこと言わん(ない)』
思わずと言った形でハモった返しをする古城とシェロ。それに対し、浅葱は無言でストレートを両者に放つ。それをシェロはひらりと顔を横にそらすだけでかわし、古城の方は顔の形が変形するほど勢いよく拳をめり込まされた。
「ハモるな!!一人ならまだしも、ハモられると余計にむかつくのよ!!」
「おぉおぉぉぉ…」
言葉にならない悲鳴を口にしながら、古城はガクッと倒れ、それを確認した浅葱は不満そうな表情をシェロに見せた後、スタスタと教室の方へと向かって行った。
「大丈夫か?古城。」
「あ、ああ。いつつ…浅葱のヤロー、思い切りやりやがって…」
容態を確認したシェロは、そういえば、と一拍置き、
「最近、何か変なことはなかったか?誰か変なヤツがお前の元に訪ねてきたとか…」
「え?」
そう言われた瞬間、古城が真っ先に思いついたのは姫柊雪菜のことだった。彼女は成りこそ普通の女子中学生だが、実は獅子王機関というトンデモ機関から送り込まれた第四真祖たる古城の監視役だったりする。
そのことだろうと思った古城はこのことを伏せるためにも言葉を紡ごうとした瞬間…
「ああ、いや、姫柊のことではなく、何か別の…そう。男が来なかったか?しかも、とても言葉では言い表せないような雰囲気を持った男が…」
「…はあ?」
今度こそ、訳が分からなくなった古城は、素っ頓狂な声を上げる。
「…いや、別に特にそんなことはないが…?」
これについては本当である。女性関係で、最近知人は増えたが、男性関係でまだそういった奇妙な男を見かけた覚えは古城にはなかった。
「…そうか。」
その偽りない言葉を受け取ったシェロは難しい顔をして、わずかに逡巡するように顎に手を添え、チラリと、古城の左手に見える刻印に視線を移した後、また、考え込むように顔を曇らせた。
(…どういうことだ?ライダーが呼ばれてから、今日で一週間経とうとしている。普通ならば、すでにコンタクトを取っているはずだが…)
目の前の古城が嘘をついていないことはシェロの長年の観察眼から明らかであるとシェロは断じることができる。古城がマスターであると分かってしまっている以上、警戒を深めておくべきなのだろうが、ほぼ100%の確率で古城が巻き込まれてる側に回っていると推測しているシェロは、なんというかそういう部分に対しては共感できてしまうものがあったので、とてもではないが、警戒を強めるということは難しかった。
(あるいは、ライダーもそういった背景から古城にコンタクトするのは憚られた、というのは希望的観測をしすぎか…)
考えているうちに、教室に着いた。見ると、先ほどスタスタと歩き去って行った浅葱が立ち尽くしているのが確認できた。
古城とシェロは顔を見合わせてその光景を不思議に思い、駆け足気味に浅葱の方へと駆け寄る。
「どうしたんだ?浅葱?」
「…何よ?あれ…?」
「あれ?」
古城とシェロが浅葱の見つめている先を見るために黒板の方へと視線を上げる。
古城もそれを見た瞬間固まり、シェロはそれを見た瞬間、疑いの眼差しを矢瀬に向ける。と、矢瀬は何かをやりきったかのように、グッとガッツポーズを向けて来た。
黒板にはこう書かれていた。
バトミントン ペア
藍葉 浅葱
暁 古城
ーーーーーーー
「やれやれ、確かになんでも請け負うと言ったが、まさか、ほとんどの球技を請け負わされるとはな…」
などと、一人愚痴っているシロウ。
実はこの男、古城と同じようになんでもいい、と言ったのだが、その瞬間、助っ人の注文が殺到してきたのである。
別に、高校の球技大会などにそこまで肩肘張らんでもいいだろうと思っていたのだが、なんというか、自分に対して殺気立っている男の視線を感じて止まない。
正直な話、あれは肩肘張っているというよりもなんとかして、自分を痛い目に合わせたいと思ってる気がしないでもない視線だった。
このことを、矢瀬辺りに質問すると
『ああ、いや、まあ、アレだ。男子のちょっとしたやっかみみたいなもんだ。どうする?受けるも受けないも結局お前次第だし、無理に受けなくてもいいと思うが…』
『…いや、こんな程度で彼らの気がすむのならば、後々、面倒ごとを避けるためにも受けた方が良さそうだ。受けよう。全て』
『え?マジで?」
という感じで、自分で望んだことではあるものの、それがまさか、ほぼ全競技だとは誰が思うだろうか?
別にこの程度で息が切れるほど軟弱な体ではないシロウではあるものの、自分がここまで恨みを買うようなことをしたのかという疑問がつい、頭の中に湧いてくるわけである。
そんなことをしている内に、彼は知る由もないが、
「あ、シェロさん!」
「ん?ああ、夏音か。」
夏音の方は雪菜のように応援するというわけではないようで、普通の体操着である。それはいいのだが…
「その…暑くないのか?夏音?」
「はい?」
彼女は普段、制服の下に日除けのためなのかは知らないが、薄いレギンスをいつも身につけている。
別に見ていて暑苦しいということはないのだが、こんなもので汗をかかれて、体調を悪くされたなど笑い話にもならない。
「はい。大丈夫です。いつもつけていますから…」
「そうか。それならいいのだが…ところで夏音は一体何の競技に出るんだ?」
「いえ、私は、運動はあまり得意ではないので、見学だと思います、です。」
申し訳なさそうに顔を曇らせながら、シェロから目を離す夏音。それに対してシェロは、仕方がない、という表情で、
「仕方があるまい。人間得手不得手がある。」
そう言って、シェロは夏音の頭を撫でる。こういう行為が嫉妬を買うのだと知りもせずに…
夏音はまるで仔犬のような笑顔を浮かべた。そんな時、シェロは突如として、妙な力の気配を感じる。
(これは…やれやれ、また古城の方か…俺が言えた義理ではないが、よほどトラブルに好かれていると見えるな。あの男も…)
「すまない。夏音少々急いでいるんだ…また、後でな。」
そんなシェロの言葉に対し、わずかに名残惜しそうな表情を見せた夏音ではあるが、すぐに切り替え、
「はい。ではまた!」
夏音の言葉に対して、手を振って返すと、すぐに力の発生源へと向かうために走る。
着いた後、見たものは正直な話、見なければよかったかと思うような光景だった。
古城と、おそらくは古城の危機のために駆けつけた雪菜が居たのだが、そこに偶然、間が悪く居合わせてしまった浅葱が逃げるようにタッタッと駆けていくという絵面は甘酸っぱすぎるにもほどがある。
(何というか、運のステータスも下げている影響か随分と間が悪いことが多い気がするな。最近…)
物陰でそんなことを考えながら嘆息し、だがそれでも新たな波乱の予感を含めた雪菜の持つ封筒から目を離さなかったシロウであった。