異形のバースト・リンカー『凍結中』   作:羽島羊

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週1投稿を目標にしておきながら先月は1話しか投稿出来ませんでした・・・。
本当にすみませんでした、理由としてはリアルの仕事がかなり忙しくなり家に帰る時間が遅くなるは疲れて執筆する余力が無いわ、さらに書こうとしても何故か文が進まず書いては消しての繰り返しと俗に言うスランプに陥ってしまいました。
そして漸く今月に入り投稿する事が出来ました。
これからまだしばらくは仕事の都合で投稿が遅れると思いますがご了承の方何卒よろしくお願いします。


波乱の初対戦

2人の最初の加速から現実に戻り今から2人のデュエル・アバターについて辞書アプリを使い調べている所だ。

 

「じゃあまずはカズ君から調べてみようか。」

 

辞書アプリにクレイフィッシュと入力して検索してみる。

 

「へへへオレのデュエル・アバターってどういう意味なんだろ。」

 

ピコーンと言う音がして検索が終了した事を知らせてくれた、わくわくしながら待つカズ君に検索結果を伝える。

 

「検索出来たみたいだね、クレイフィッシュは日本語に翻訳すると・・・ザリガニって言うみたい。」

 

「ざ、ザリガニ?」

 

「そっ、ザリガニ。」

 

「見たまんまでしたね。」

 

顔を俯けてプルプル震えだしたカズ君。

 

「(正体がザリガニと分かって凹んじゃったのかな?)」

 

と思ったが次の瞬間大声で。

 

「かっけー!!」

 

と言った、どうやらあのデュエル・アバターはカズ君のお気に召したみたいだ。

 

「じゃあ次はわたしの番ですね、ユウ兄さん入力お願いします。」

 

「うん、了解。」

 

「ナギのデュエル・アバターかあ、名前からして結構強そうなイメージだな。」

 

「強そうと言うよりは恐そうな感じですけどね・・・。」

 

「あ、終わったみたいだね、えーとまずカラーネームのセレスタインは天青石と言う石の事だね。」

 

「「天青石!?」」

 

「あまり聞いた事が無い鉱石だね、最初見た時はメタルカラーか白系統のカテゴリーかと思ったけど違うみたいだね。」

 

「じゃああれは何色なんですか?」

 

「かなり彩度が低いから判りずらいけどどうやら青系の色みたいだね。」

 

「と言う事はナギはオレとは正反対の近接型だな。」

 

「格闘戦ですか・・・出来るかどうかとても不安です。」

 

「そこらへんは僕が色々と教えていくから安心して。」

 

格闘戦向きの色と聞いてやや不安そうな表情をするナギちゃんだが僕の言葉を聞いて一安心といった感じだ。

 

「さて次は問題のデスストーカーだけどこっちは・・・。」

 

「せめて可愛い生き物でありますように。」

 

名前がかなり恐そうなので可愛い生き物である事を祈るナギちゃんだが現実は甘くなかった。

 

「残念ながらサソリの1種でしかも世界中の生物の中で5番目に強力な毒を持ってるって辞書にはかいてあるよ・・・。」

 

「・・・だからツインテールの先端にハサミが付いてたんですね。」

 

「オレがザリガニでナギがサソリか、デュエル・アバターも何処となくに似てるな。やっぱり兄妹だからかな?」

 

「それは僕には分からないよ、でもなんかデュエル・アバター自体は可愛いのに名前が物凄い恐ろしい事になっちゃったね。」

 

「ふぇ〜。」

 

それから暫く学校に行くまでの間部屋の中はナギちゃんの悲痛な声が響渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時間を進めて夕方になり僕等は学校から帰る途中に有る交差点の前に来ている、この交差点の向こうの地区は僕達の所よりも住んでいるバーストリンカーの数が多く青と緑のレギオンのメンバーもかなりいるので対戦相手には困らないなで2人のデビュー戦をしようと思う。

 

「じゃあまずオレからだな!」

 

「カズ君頑張って、くれぐれも相手は自分と同じレベル1の人を選んで勝つ事よりも楽しんできてね。」

 

「カズ君かんばってね〜。」

 

「任せといてよ!いくぜバースト・リンク!!」

 

カズ君が加速コマンドを発声した瞬間予め観戦登録をしていた僕とナギちゃんもギャラリーとして加速した

今回のフィールドは森林ステージのようで僕とナギちゃんは他のギャラリーの人達とは少し離れた木の枝から対戦を見守る事にした。

 

「おっ見ない奴だな、ニュービーか?」

 

「そうだと思うよ、親は誰かな近くにいない?」

 

「いや、いないみたいだな。」

 

対戦相手の名前を見ると名前から察するに青系統の近接型の様だ、なら遠隔の赤のカズ君は如何に相手に接近されずに自分の距離を保ち戦うのかがポイントになってくる。

 

見るとカズ君は対戦相手とはまだ距離が離れているが自分からはガイドカーソルが指す相手のいる所には行かずにその場で待機していた。

 

遠隔の赤は基本的に遠距離攻撃を得意としている為近接戦闘は得意ではない(例外的な人もいるけど)、なので大抵の人達は開始直後に近くのオブジェクトに隠れたり高い所に移動したりするのだがカズ君はその場から動こうとはしない。

 

一応対戦前に2人にはブレイン・バーストと対戦に関する基礎的な事は教えてある、その中には勿論アバターカラーのカテゴリーやそれ等が得意とする攻撃方法も教えているが・・・。

 

この場合の理由としては幾つか考えられるがここはナギちゃんに訊いてみよう。

 

「クレイが動かない理由としてなにが有ると思う?」

 

因みに加速世界にいる時はカズ君はクレイ(クレイフィッシュから取って)でナギちゃんがセレス(デスストーカーではなくカラーネームのセレスタインから)と言う愛称で呼ぶ事になっている。

 

「そうですね・・・最初はセオリー通りに何処かに隠れて相手を遠くから狙い撃つと思ったのですが恐らく対戦相手の方が近付いてくるのを待って真正面からビームを撃つと思います。」

 

「どうしてそう思うの?」

 

「クレイ君の性格からして隠れるのは無いと思います、多分相手の方と不利を承知で正面から戦うと思います。」

 

成程確かにカズ君性格なら隠れて攻撃したりするより正面からの戦闘を望むだろう、そんな事を思っていると対戦相手がカズ君の方に向かって走って来るのが見えて来た。

 

ナギちゃんの予想通りカズ君は隠れようとはせずに左手のハサミを前に出して構えて対戦相手が近付いて来るのを見ているだけだった、対戦相手はやはり近接の青で160センチ位の普通の体格の人だった。

対戦相手が見えてくると左手のハサミの相手に向け照準を合わせる。

 

「くらえ!」

 

ハサミから出たビームは対戦相手目掛け一直線に飛んでいったがむこうもカズ君と同じレベル1とはいえ既に何回かは対戦を経験しているのだろう、その証拠にカズ君のビームを掠りはしているが立ち止まる事なく上手に避けながら走り続けている。

 

「よし、捉えた!」

 

そしてついにカズ君の目の前までやって来て一撃入れようと渾身の威力を秘めた拳を突きだすがそれは届かなかった、接近されれば当然攻撃されるのは分かっていてのだろうカズ君は慌てる事なく右のハサミでガードしたからだ。

そしてガードされて動きが止まった瞬間を逃さず思い切り左手のハサミを相手のお腹目掛け突きだす。

 

「ぐあっ!?」

 

「まだまだ!」

 

「ぐあああ!?」

 

左手のハサミによる突きにより体勢が崩れた相手目掛け追い打ちとばかりに右手のハサミで相手の左腕を見事に切断してしまった。

 

「(あのハサミ思ったよりかなり硬い、それに相手の腕をいとも簡単に切断するあたりただビームをすだけの物じゃないみたいだね。)」

 

赤系統と言う事もありカズ君の近接能力は低いと思っていたが体力ゲージを見るとカズ君が先程のガードした時の余波で僅かに減った位で逆に相手は最初の一撃に加え部位欠損ダメージ連続のせいで半分にまで減っていた。

 

「このままで終われるか!」

 

対戦相手は何とか立ちあがり再びカズ君に攻撃しようとダッシュし、そしてその勢いのままジャンプそして空中回し蹴りを放つがそれを今度はタイミング良くハサミを縦に丁度テニスのラケットでボールを打つ感じでフルスイングした。

 

「おりゃあああ!!」

 

「ぐはああ!?」

 

打ち返された対戦相手はそのまま近くの大木に凄い勢いで衝突した。

 

「とどめだ!」

 

そこにビームを撃ちまくりそれがとどめとなり対戦相手の体力ゲージは0になった。

 

「よっしゃー初勝利!!」

 

初めての対戦での勝利に思わず歓声を上げ僕等を見つけたのかこちらにハサミでピースをするカズ君、それに対し対戦を見ていたギャラリーの人達もカズ君に色々な言葉を贈ってくれた。

 

「初勝利おめでとう。」

 

「これからも頑張れよ!」

 

こうしてカズ君の最初の対戦は幕を閉じた

 

そしてリアルに戻り。

 

「どうだったユウ兄オレの初勝利!?」

 

「初勝利おめでとうナイスファイトだったよ。」

 

「カズ君かっこよかったです!」

 

ナギちゃんと共にお祝いの言葉を贈ると再びVサインで返してきた。

 

「じゃあ次はナギの番だな!」

 

「はい頑張ります!」

 

「ナギちゃんも勝つ事よりも・・・。」

 

「はい、楽しんできますバースト・リン・・・。」

 

ナギちゃんが加速コマンドを言い終える前に僕達の意識は再び加速した、そしてこの時僕もカズ君も予想しない対戦が始まろうとはこの時は思っていなかった。

 

 

見渡す限り砂と岩しかない砂漠ステージ、ギャラリーの者は岩の上からこれから戦う2人のバースト・リンカーを眺めていた。

 

1人はこれが初めての対戦である小柄で華奢な長いツインテール状のパーツが特徴的なF型アバター、セレスタイン・デスストーカー事ナギちゃん、そして対戦相手はレベル3で最近実力が伸びてきて対戦を連勝中の話題の緑系のバースト・リンカーだ。

 

この戦いにおいてほぼ全てのギャラリーが注目しているのは連勝中の対戦相手ではなく視線から察するにナギちゃんの方だった。

 

何故かというと噂で聞いたのだが過去にクリムゾン・キングボルトというバースト・リンカーがいたのだが彼のアバターボディは一言で言えばボルトだそうなのだが出現した当時彼の強そうな名前とイメージが先行してしまいそのせいで至上最強の名前を持つ者という2つ名を与えらたそうだ。

 

今回も恐らくギャラリーの皆はセレスタイン・デスストーカーの名前から恐そうな姿を想像していたみたいだが実際の姿はその名前とは真逆の可愛らしい姿をした少女タイプのアバターだったのだから恐らくやや拍子抜けしてしまったと思う。

 

「名前見た時にどんな凄いのが来るのかと思ったが・・・。」

 

「名前と違って案外可愛いわね。」

 

「しかしやけに今日はニュービーが多いな?まっ、盛り上がるからいいけどさ。」

 

周り聞こえてくる声を聞くとギャラリーの中にはやはり拍子抜けしてしまっている人もいるみたいだ。

 

「ところでセレスの奴の大丈夫かな、オレはバトルマンガ好きだから戦い方も何となくイメージ出来たけどセレスはそういうのもないし戦えるのかな?」

 

「クレイの気持ちは分かるよ、だけど今の僕達に出来る事は信じて見守るしかないんだよ。」

 

眼下にいるナギちゃんを心配そうに見ながら聞いてくるカズ君に対して僕はこう答えるしかない。

 

「・・・信じて待つか。」

 

僕の答えを聞いて再び視線を眼下の2人に向けるカズ君、それと同時に戦いが始まった。

 

 

 

「先手必勝いくぞ!」

 

ナギちゃんに向かって走りだし距離を詰めようとする対戦相手、それに対してナギちゃんはその場を動こうとはしなかった。

 

そして距離を詰めた相手が右のストレートを放つがナギちゃんはそれを前転の要領で前に転がり相手の股の下を潜り避けるが流石にレベル3という事もあり何等慌てる事なく背後へと回ったナギちゃんを攻撃する為振り向くと同時にしゃがんだままのナギちゃんの頭部目掛け踵落しを繰り出す。

 

「っ!?」

 

隣でカズ君が息を呑む音が聞こえた。

 

今のナギちゃんでは回避は間に合わない、この場合両腕をクロスしてガードすれば多少ダメージを軽減出来るが2人の体格差を考慮すると例えガードしてもあの状態では追撃は免れない。

 

しかしナギちゃんは予想外の方法でそれを防いだ。

 

ズガッ!突如対戦相手の背後から何かが飛び出しそのまま無防備な背中に衝突した

 

「がぁ!?」

 

対戦相手は背中に受けた衝撃でそのままナギちゃんを飛び越えてしまった。

 

「ぐぅ、どうして?」

 

突然背後から襲ってきた予想外の衝撃に何が起きたのか理解出来ていないようだ。

 

「貴方を攻撃したのはこれですよ。」

 

そう言って対戦相手に背後からの襲撃者を見せた、その正体は先端が特殊な形状のした針が付いた尻尾だった。

 

「バ、バカな!?そんな物何処にも無かった・・・!そうか砂の中に隠していたのか!?」

 

「はい、このステージに来た時に足元の砂が少し柔らかいのに気付いたので尻尾隠せるかな?と思ってやってみたら出来ちゃいました。」

 

成る程、砂漠ステージの地面は砂で構成されているのでその中に隠すというのは中々の戦術だね、だけど1つ引っかかる所が有る。

 

「だがお前が最初の攻撃を避ける際に転がった時に尻尾など無かった。」

 

どうやらむこうも僕と同じ疑問を思ったようだ。

 

「それは簡単ですよ、尻尾を折り曲げて畳んでその上に頭に付いているパーツを被せればこのとうり尻尾は見えなくなりますよ。」

 

「(これは・・・予想以上かな?)」

 

まさか対戦の始まる僅かの間に地形の特性にいち早く気付き作戦を練るとは流石の僕も予想外だった。

 

「成る程な、少々お前の事を名前だけの奴かと侮っていたようだ。だがここからは私も本気で行くぞ!」

 

今の攻防ではナギちゃんは策を用いて相手の攻撃を回避に成功し更には反撃する事も出来たがそれは相手が油断していたので出来た事であって2度目は無いだろう。

 

「セレスも中々やるね、地形と自分の身体的特徴を上手く活かした作戦を瞬時に考えるなんてちょっとビックリかな、だけどここからは相手も気を緩めてくれないから苦戦は必須かな?」

 

「そうでもないぜ。」

 

しかし僕の考えを瞬時に否定するカズ君、気になりその訳を聞いてみる。

 

「見てよ、セレスのあの表情、あれはピンチどころか余裕たっぷりって感じがする。

それに・・・。」

 

「それに?」

 

「たかが1回、それも不意打ちで終わるほどセレスは甘くない。」

 

そして次の瞬間僕の耳に聞こえてきたのは対戦相手の人の悲鳴がだった。

見ると対戦相手の人は倒れた状態のままでそこをナギちゃんが尻尾の先端に付いた針を叩き付けていた。

 

「えいっ!えいっ!」

 

それに対して相手は防御はおろか回避もせずにいた。

 

「何でアイツ防御しないんだ?」

 

「確かに変よね、幾ら何でも。」

 

「だらしねえ、あんな大振りの攻撃位さっさと避けて反撃しろっての。」

 

ギャラリーの人達は何故対戦相手の人が何にもしないのか不思議がっているが僕とカズ君だけはその理由を知っている。

 

「ねえ、あれってもしかしなくてもセレスの必殺技のせいだよね?」

 

「間違いないね、最初の不意打ちは通常攻撃じゃなくて必殺技だったんだね。」

 

「やっぱりセレスの奴はそのあたりは抜かり無いな。」

 

そんな事を話していると何時の間にか対戦相手の体力ゲージは1割まで減っていた。

 

「これでお終いですよ!」

 

最後の一撃と共に等々相手の体力ゲージはゼロになった。

 

「やりました~初勝利です!」

 

初めての勝利に笑顔で喜んでいるがギャラリーはそれどころではなかった。

 

「おい何が起きたんだよ!?」

 

「アイツ結局最後まで無抵抗のままやられちまったじゃん!?」

 

「もしかしてあの子の能力?でも間接の黄色じゃないし何で!?」

 

「親は誰だよ!?何処のレギオンだ!?」

 

等と混乱を極めていた、そしてそれを少し離れた所で見守る僕等。

 

「こりゃセレスの奴一気に注目の的じゃん。」

 

「そうだね、取り合えずリアルに戻ったら色々話さないといけないね。」

 

こうしてナギちゃんの初対戦はナギちゃんの圧勝で終わった。

 

 

 


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