転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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続き待ってると言った人。
書いたぞおおおおおおおおお

ほんと間空けてすみません。相変わらずしょぼいですけど、どうぞよろしくお願いします。


39話 エピローグ

 過去最大級の魔女ワルプルギス、そして世界をも破滅させるクリームヒルトが倒されて一ヶ月。

 

群馬及び見滝原市では、表向きではスーパーセルに見舞われた地区の被害の規模等が調査され、復興が始まり多数の義援金や援助が届いた。ニュースによれば奇跡的に死者は出なかったとのこと。

徹底した避難指示の成果とか、どこかの大学の教授が、スーパーセルだけではここまでの被害は出ない等と話題にはなったけど、だれも真相に行き着くことはあり得ないだろう。

 

真相は私達しか知らないし、それを話すつもりもない。

 

 

「そろそろ時間ね」

 

 

一ヶ月ぶりにハンガーにかけてあった制服を取り、腕を通す。

 

 

今日から、学校が再開する。

 

 

 アパートの鍵をかけて学校に向かう。

 

砂時計の砂は全て流れ落ち、時間停止は使えなくなった。やろうと思えば、いつでも時間を巻き戻し、やり直しを試みることができる。

あの日約束した、まどかを救うという誓い。この世界ではそれは果たせなかった。まどかは魔法少女となり、それを私は止めることができなかった。

でもこの世界のまどかはまだ魔女化していない。魔法少女(?)としてだが、ちゃんと生きているのだ。ならば、時間を巻き戻す必要は全くない。少なくともこの世界のまどかを残して逆行するということはあり得ない。

 

『いい天気だねほむら。まあ僕たちの世界とは比べ物にならないけど』

 

 不意に、建物の隙間からキュゥべえが姿を現した。流れるように私の肩に上って丸まるこいつに私は不快感こそ持つが、以前のように払いのけはしない。

この生き物はあの過激合理主義なキュゥべえではない。キュゥべえの形をした使い魔、と言った方が正しい。

 

 

災厄から10日後、キュゥべえは突如見当たらなくなった。何の前触れもなく、その気になればいくらでも見つけられるはずなのに、その日から一週間全く気配すらも感じられなかった。

 

なのに、一週間たった直後に、何事もなかったかのように現れたのが、これ。

 

『僕と契約して使い魔にさせてよ!!』と、開口一番耳でお札を渡された。拒否は認めてくれなかった。何でもグリーフシードの代わりらしいのだが。それを見て、八雲紫そして美樹さやかが一枚かんでいると悟った。姿かたちはキュゥべえとまったく同じなのだが、言動の端々に感情の発露が見え隠れしており、インキュベーターという素顔を知るものとしてはどうしても違和感が付きまとった。

 

こいつに上記の印象を率直にぶつけ、変化の原因を問うと意外にもキュゥべえもどきは素直に答えてくれた。

 

 

『人間というものがより理解できて、僕たちも感情を持つことができた』

 

というのは表向きの建前で、

 

『ロボットを作るならともかく、使い魔から感情消すのめんどいし、時間がなかった』

 

と、飾る気もなくぶっちゃけた。

 

魔法少女の真実を知っていてかつ美樹さやかや八雲紫に接点があった私には、事の経緯をいろいろと(ぼかしてだけど)教えてくれた。

 

 事の発端は、やはりというかあの災厄から一週間後の日で、八雲紫、というか幻想郷総出で地球上のインキュベーターを一匹残らず消滅させ、そのまま本丸に乗り込んで不可侵条約まで取り付けた。インキュベーターによる人間の感情エネルギーの搾取を看過できないなんて建前もあったらしいけれど、大雑把に言うとこんな感じだろう。

 

そんな無茶苦茶な話を聞くにつれて、口が開いていったのは仕方がない。

 

ともかくとして、インキュベーターは地球上からすべて駆逐されたわけなのだが、それで魔女や魔法少女がいなくなるわけではない。このままでは地球上に魔女が跳梁跋扈する事態に陥ってしまい、ありていに言えば人類滅亡の危機だ。そうさせないためにこのキュゥべえもどきが作られたということらしい。

 

 とりあえず幻想郷はとても危険なところらしいことは確信した。はやくもまどかの安否に対する安心感が揺らいだ。一刻も早くまどかをこちらに取り戻さなければ。

 

 

 それに、私達魔法少女にとってみれば、支配者がインキュベーターから妖怪に変わっただけで大差がないような気がするわね。

 

 

それでも、キュゥべえもどきが配っているお札はグリーフシードをはるかにしのぐ許容量があり、魔女を退治する必要性がなくなり、これによってグリーフシードをめぐった血みどろな争いは無くなり、魔法少女同士の諍いは無くなって行く筈だ。

 

だが、魔女は放っておけば自然消滅するものではなくむしろ発生するものなので、魔女は引き続き退治する必要はある。

 

そんな訳で、魔女戦において実はかなり不味い状況に私は置かれている。

 

 

時間停止は使えないし、銃火器もほぼ使いきっている。

今の所、実質撤退か援軍が来るまで逃げ続けるかのどちらかしかとれる手段がないのだ。またやく●のところから拝借すれば解決するのだけれど、その事務所がワルプルギスのせいで瓦礫と化していて補給手段がなくなってしまった。自衛隊基地から盗むこともできるが、盗むごとに一定数の自衛官が路頭に迷うことになると思うと、ワルプルギスならともかく、そこらの魔女相手では二の足を踏んでしまう。

 

マミや杏子からもあまりいい顔はされず、それならばほむらの分までやるとまで言われてしまった。

 

だからと言って、彼女達にまかせっきりも気が引けるので、街を歩いて魔女探索だけは行っている。場所を特定したら速やかにマミや杏子に連絡を取り、民間人が巻き込まれないよう見張るのが最近のルーチンとなっている。幸いなことに私単独で戦闘に陥ったことはない。

 

 

ふと顔を上げると、学校の校門が視界に入っていた。校門をくぐり、学校を一望すると、何故か学校がどこか真新しく見えた。何度も足を運んだはずなのに、初めてここに足を

運んだ時みたいな期待と不安が私を包み込む。どうしてここまで気持ちが不安定なのか疑問に思っていると、廊下の掲示板に自然と目が行った。

 

 “今日の日付は……月……日”

 

そう言えば、日付の感覚なんて暫く忘れていたわね。そんなことを思った時、私はやっと、この高揚感の正体に気が付いた。

 

これから未来を彼女と、まどかと一緒に歩める。学校に来てその事実をようやく実感できたのだ。こんなにうれしいことが他にあるだろうか。一歩一歩教室へ歩みを進めていく毎に変に体がこわばる。緊張しているのだろうか。胸の鼓動が早まり、うるさく感じる。必死に自分を落ちつけ、平静を装いながら教室の扉を引いた。

 

 

 

  今日の私の教室の欠席者は二人だった。

 

 

 

放課後、気分は絶不調。

 

欠席者二人はもちろん美樹さやかとまどかだった。何の連絡もないのに学校にひょっこり現れる筈はないことぐらいすぐにわかるじゃない。朝の私は本当にどうかしてた。まどかが欠席したと理解した私は目に見えてテンションがダダ下がりで、授業中に先生に心配される始末。昼休みにはマミには微笑ましいものを見た顔で優しく励まされた。ちょっと泣きかけた。

 

 

朝のテンションはそう、まどかと一か月もあってないからあれよ、マドカニウムが不足してたから、精神バランスが崩れやすくなってただけよ。それに、ちょっとしたサプライズで連絡なしに学校直行は美樹さやかならしてもおかしくないじゃない。

 

 というか何でしないのよ。いつまでまどかと一緒にいるのよ羨ましい大体連絡をよこさないさやかに問題があるわまどかの声ぐらい聞かせなさいよまどかまどかまどかぁーーーーーー!!

 

自分でも意味不明な言い訳を脳内でまくしたて、これではいけないと頭を振る。美樹さやかのことだ。何も心配することはない。すぐにまどかとも再会できる。と自分に言い聞かせたところで、そのいつの間にか彼女に確信にも似た全幅の信頼を置いていることに気が付いた。

 

 どうしてだろう、あんな存在も破天荒な性格なのに大丈夫と思えるのは。本当に、おかしい

 

さて、今日も日課の魔女探索をしようと、私は街に繰り出した。

 

 

 

 

「キョーコ。カギ」

「あ、やべ」

 

自分の新たな住まいは鍵付きだったことをゆまに注意され、慌てて鍵を閉める。

 

 やべえやべえ。危うく家主の雷落ちるとこだった。

 

「ありがとな、ゆま」

 

笑顔で頭をなでてやると、ゆまも笑顔で返してくれた。

 

「さてと、ほむらの連絡もあったし、さっさと終わらせちゃおうか」

「おー!」

 

あの日から数日たってアタシらの拠点に見滝原市のとあるマンションの一室が加わった。家主はもちろん巴マミ。

元々テリトリーだった風見野市巡回は続けているが、週に二三回程度こっちに顔出ししている。

タダ飯食えるってのも理由だが、居心地がいいのも事実だ。

 

 というかマミのやつは何でいきなり合鍵渡してきたんだよ。私室以外は自由に使っていいからって、使ってるアタシが言うのもなんだが、いくらなんでもあいつ大丈夫か? ってほむらに聞いちまうぐらいに心配したんだが。今日も今日とて、朝食作り置きして学校行きやがったし。

 

まあ、逆に言えばそれだけ信頼されているってことで、悪い気持ちはしない。なんだかんだでさやかのおかげでマミと和解できて、またチームを組むようになった。あの時のような連携はまだ出来ないけど、もうすぐモノにできるっしょ。

 

「おーい。ほむら、マミ」

「あ、杏子。鍵はかけてくれた?」

「アタシが忘れるわけないだろ」

 

当然だとしたり顔をするアタシ。その横で、ゆまは微妙な顔でこちらを見ていた。

 

「さてと、それじゃあ行きましょう」

「ええ、頼んだわよ」

「まかせてほむほむ!」

 

先ほどのゆまと同じような顔を下ほむらをおいて、アタシ達は魔女の結界に侵入した。

 

 

 結果は、まあ言う必要はないよな?

 

 

 

 

「ふぃ~食った食った。ごちそーさん」

「お粗末様です」

「マミ。お皿」

「あらありがとう、えらいわね」

 

夕食後にゆまが律儀に持ってきたお皿を受け取る。ゆまの誇らしげなドヤ顔に癒されつつもお皿に水を流していく。

 

最近では週に半分は家に来てくれるようになってくれた杏子とゆまちゃんに、よく晩御飯を振る舞うようになった。あの日からすぐ、私は改めて杏子と和解した。杏子はちょっと照れくさがっていたけど、拒否する姿勢は全く見せなくて。やっと、仲直りできたと思うと、つい涙腺が緩んでしまった。

 

仲直りの印に合鍵を渡した。この一室を自由に使っていいと一言添えて。その夜暁美さんから電話がかかってきた。

 

閑話休題

 

仲直りの後、呼び方を佐倉さんから呼び捨てに変えた。彼女はすこし戸惑っていたけれど、いいんじゃないかってすぐに笑ってOKしてくれた。

そこからは離れていた分を取り返すかのように、出来るだけ一緒に過ごすようにした。流石にゆまちゃんがムッ、としていたのを見て、ちょっとくっつきすぎたと反省している。

今では暇があると杏子たちと一緒に風見野市のパトロールもするようになっている。杏子がお勧めしてくれたラーメン屋はとてもおいしく、彼女たちが帰ってきたとき暁には紹介してあげようと思った。

 

あの日の爪痕はまだ大きいままだけど、あの激動の日々からは考えられないぐらい、平穏な日々。

彼女は思想も、存在も何もかも変わっていたけれど、そうじゃきゃこの光景は無かった。

私達はもう人間のものとは言えない。だけど彼女、美樹さんをみてると、そんなことに悩んでる自分があほらしくなる。自分が人間らしくあればいい。それでいいじゃないか、それで何とかなる。そう思える。

 

ゆまちゃんがリモコンを操作して、私が録画していたアニメを見始めのを微笑ましく……てちょっと深夜アニメを選ぶのは悩んでちょうだい。

 

「ゆまちゃんちょ~とそのアニメは早いわよ~」

「む、マミ。いじわる! ケチ! おばさん! 」

「リモコン取り上げただけでそこまで言わなくてもいいじゃない……」

 

 私がおばさんなら、皆だってオバサンじゃない! 美樹さんも!杏子も!

 

杏子はカラカラ笑うだけで止めようとしない。ジト目で睨みつけていると、流石に言い過ぎだとゆまを軽く叱り始め……

 

本当、本当に突然、何の脈絡もなくテレビに大穴が開いた。人一人は余裕で通れるような、大穴。

そこから溢れるのは、視認できそうなぐらい濃密な魔女の気配。

 

普通の魔女とは比較にならないぐらい、強い!

 

私達は瞬時に変身し、戦闘体勢に入る。集中力を最大限まで高め、魔女の一挙一動も見逃さない勢いで大穴を注視した。

 

そいつは、戦地に赴いているはずなのに、まるで自分の家の庭先を散歩するように、優雅に歩いて大穴をくぐる。

 

そしてそのまま、頭からまっさかさまに落ちて、鈍い音を床に反響させた。

 

「「「ええ……」」」

 

  超、痛そう

 

三人とも困惑の表情で顔を見合わせる。

 

「いったぁ……」

 

そう一言つぶやいて、それきり悶絶しているそれ、というか彼女は、いつぞやの最終決戦でお世話になった(?)魔女で。

 

私達は自然と戦闘体勢を解いていた。

 

「はい。というわけで、このように入口と出口の向きだけをとりあえず合わせて置けばいいという横着をすると、こうなります。どう? 勉強になったかな? おーい」

「はぃ……」

 

 

後から出てくる青髪と桃髪。それは正しく、一か月間待ち焦がれた二人。

 

「一か月ぶり、だね。皆、元気そうでよかった」

 

帰還組を代表して、鹿目さんがただいまを知らせてくれた。

 

「「「おかえりなさい」」」

 

 

FIN

 

 

おまけ

 

 

「よし、再開の祝杯を! って行きたいんだけど。悪いけど火急の件が山積みなんだよね。とりあえず、マミ。ほむらに連絡とってくれる? ここの部屋かほむらのかで、こいつの結界の入り口として使わせてほしくてね」

「え?」

「やっぱりキュゥべえもどきだけじゃ即座に対応ってのが幻想郷からじゃ難しくてさ。で、外側に聡い私達がこっちである程度テコ入れする役目を承ったって訳。札の回収も紫が面倒くさがってこっちにお鉢が回ってくるからついでにこっちもあるんだけどね」

「はぁ」

「後みきをキュゥべえ側だって知らしめないといけないんだった。マミ達にも頑張ってもらうつもりだから、そこんとこ、よろしく」

「ちょっと」

「後は……仁美や京介には顔見せないとね。暗示は掛けさせてもらったけど今日すっぽかしたし。じゃあお邪魔したわね。詳しい話はまた明日!」

「「「……」」」

 

自由奔放なのも、考えものね

 

 

「あ、最後に、クリームヒルトの生存報告も明日でオナシャス」

「「「まだ生きてたの?!」」」

 

 




ご愛読ありがとうございました。

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