「いるのはわかってるから、さっさと出てきて。それともあんた、この結界の元凶?」
さっきからじろじろとこちらを見ている気配に向かって鉄パイプをなげる。
そしてまどか、その抱えている猫みたいな生き物はなんだ。まさかそいつに呼ばれたとかそんな発言はよして下さいお願いします」
「呼ばれたもん!」
「ばっか、知らない人に付いて行っちゃだめってさんざん言われたでしょ?」
「……人じゃないもん(ボソッ」
「おなじだっつの。」
「……そろそろいいかしら?」
出てきたのは金髪の胸がでかい女性。
「……早苗クラス」
「何がかしら?」
「いえ、なんでもないですよ。っと」
後ろから迫るハサミを体をひねってよけ、そのままハサミの出前部分を掴み引き寄せる。妖怪が飛んできたところでパイプを叩き付けて打ち返した。
「ホームラン」
「変身しないの?」
金髪の女性がそんなことを尋ねてくる
「変身?」
「……魔法少女ではないの?あなた」
「そんなファンシーな存在になった覚えは無いですよ、と」
妖怪をぶっ飛ばしながら言う。
あ~鬱陶しい!! この人いなければ霊力使って一瞬なのに!
さっきからぶっ飛ばしてばっかで消滅させられてないんだよ。
「ねぇあんた。あれ倒せるよね?」
「ええ勿論。その為にここへきたんだから」
「なら任せた」
「あらいいの? もしかしたら私がこの結界の元凶かもしれないのに」
「あんたの気配と結界の空気がぜんぜん違うし、それに元凶ならわざわざ警告なんてしない」
「あなた本当に魔法少女ではないの?」
「違うって言ってるでしょ。さっさとこいつら倒して下さいよ」
そういうとあきらめたのか金髪っ子は卵見たいな球体を掲げて変身した。
黄色を基調とした魔法少女らしい服。
なつかしい
前世で私がきていた服を何故か思い出した。
「離れて!」
そうドリルっ子が百に及ぶ数のマスケット銃を召喚し、妖怪達の方に向けた。
「行くわよ!!」
おびただしい数の弾丸が妖怪を貫き、消滅した。
それと同時に景色が歪み元の景色に戻っていく。
「おー戻った戻った」
手に残っていたパイプを投げる。鉄パイプは壁に当たる前に何者かに受け止められる。
投げた先にはこれまた懐かしさを感じさせる魔法少女っぽい服をきた転校生がいた。
「あなたも気づいてたの」
「まあね。急いでこっちに向かってくる気配がしたと思ってたけどまさか転校生だっとはね。で、転校生、魔女退治がしたいなら追いかけたら?消滅した感じはしなかったからまだ生きてるはずよ」
「私が用があるのは……」
「聞き分けが悪いのね。今回は見逃してあげるって言ってるの」
あなたは見逃してあげないけどと胸デカっ子は私に言ってくる。
厄介なことになっちゃった……
その後転校生は引き下がったけど、その時一瞬くやしいというかなんていうか、やってしまったという表情をしたのが妙に頭に残った。
「んでまどか。それなんなの」
ほっと一息吐いているまどかにちょっと剣呑な雰囲気で尋ねると
「えっあっいや、その……声が聞こえたの。『助けて』って。それでその…声がした方に行くとこの子が倒れてて……」
はぁ……。予想通りの回答ありがとう
あたしは優しく両肩をつかみ、
「うんまどか、分かるよ、普通ではあり得ないことが起きたら気になるのはね…」
うんそうだよね、気になるよねなどとまどかは愛想笑いをしている。あたしは両手をさりげなくまどかの頭に持ってきて……、
「ちょっとだけだけどね!!」
こめかみをグリグリした。
いたいけな少女の悲鳴がしばらく響いた。
「うう…ひどいよ。こんなのってないよ」
「うっさい! 大体頭の中に声が響いてきた時点でフラグたってるってわかんなかったの!?」
「そんなのわかんないよ……。大体フラグってなんなの?さやかちゃんの方が絶対中二だよ……」
「へぇ? それは光栄だね。そんなまどかにはお礼にもう一回……「ほむらちゃんほんと中二病だね!いつもほむほむ言っててなに考えてるかほんとわかんないや!」いやー、まどかは賢いねー。お母さん嬉しいな」
「そろそろいいかしら?」
いつの間にかまどかが抱えていた猫的生物を治しながら金髪のお姉さんが尋ねてくる。
「キュゥべえを助けてくれてありがとう。この子は私の大切な友達なの」
「あの! 私さっき言いましたけどこの子に呼ばれたんです!」
「ええ。わかっているわ。信じたくない人もいるようだけれど」
お姉さんはそう言ってくれる。
何かこの人私のこと警戒してるのよね…魔法少女じゃないって言ってるのに…
魔法少女って各々で対立してる、っていうのは、穿ちすぎかな?
「あたしを見ながら言わないでくれる?それに誰も信じたくないとは言ってないんですけど。おばさん」
とりあえず、売り言葉には買い言葉ということで、笑顔でこう返した。
「おばっ……どうかしらね? この子を魔法少女にさせたくないのかもしれないし。後おばさんじゃないわ。巴マミよ」
この程度の挑発には乗らないか……口がひきつってるけど。
「ちょ、ちょっとさやかちゃん。なんでそんなに喧嘩腰なの? 魔法少女なの?」
「何そのバカなの? 的なノリは。警戒してる相手に仲良くできるはずないでしょ。そしてあたしは魔法少女じゃないって何回言ったら気が済むんだ!!」
「じゃああの瞬間移動はどう説明するのかしら?」
納得いかないと言った風にマミが聞いてくる。
さて……誤魔化し方は一応考えてあるけど……
「…ああそれは中国武術の歩法の一つで、ここをこうしてこうやると…」
と言って実践する。
「こんな感じかな…」
「そんなに速くないのね」
5メートルぐらいの移動だったけどマミは目で追えていたらしい。
「まあね、でもこれを予備動作なしですると……」
今度はマミの目の前に移動する。今度は目で追えなかったらしく、驚愕の色が見て取れた。
「大抵の人は目で追えない」
「……どうやら私の勘違いだったようね。ごめんなさい」
何とか誤魔化せた……。大体はみんな中国のせいなんだ。
実際はそんなに速く動けません。
「こちらこそおばさんなんて言って悪かったわね。後助けてくれてありがと。私は美樹さやか。よろしくね」
そう言ってまどかの方を見る。まどかは二回共見えなかったようで、頭を抱えていた。さやかちゃんって現代に受け継がれた忍者の一族の子孫なの? などとうんうん唸っている。
「まどか、自己紹介。あと私は忍者でもない」
「えっあっえっと鹿目まどかです。よろしくお願いします」
「ふふっ、さっきも言ったけど私は巴マミ。あなた達が通う滝見沢中学の3年生よ」
そしてマミは治療が終わったのかキュゥべえを抱き抱えてこう言った。
「そしてキュゥべえと契約した魔法少女でもあるわ」
考える。まどかとキュゥべえの契約の阻止を
思い出すのは自分が手にかけた私の大切な友達の言葉
――キュゥべえに騙される前のバカな私を…助けてあげてくれないかな――
キュゥべえとの出会いを阻止出来なかったことに唇を噛む。
まどかはことあるごとに契約を迫られるはず。いや、契約してないのがせめてもの救いね……
これからの立ち回りに思案を巡らせる。
それにしても……
着地と同時に迫ってきた鉄パイプを思い出す。
彼女、美樹さやかはこれまでとは何かが違う。
あの敵意丸出しの視線とは違う見透かそうとする目。そして、彼女の動きはただの一般人のではなかった。それどころか……
「闘い慣れていたわね」
まさかもうキュゥべえと契約した?それならば変身しているはず…いや、なんにせよ……
「調べる必要があるわね……」
願わくば、この変化が吉と出ますように。