転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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叛逆の物語まで後28日ですね。胸が熱くなります



34話 そしてまた

 

ねえさやか様。わたしどうしても腑に落ちないことがあるの。

 

んあ?

 

転生した、って言ったけど、それだと色々と時期が合わない所があるよね?どう言うこと?

 

ああ、それはあたしもほむらみたいに世界を越えて転生したから。時期が合わないのは当然だよ。

 

そ、そうなんだ。

 

ま、あたしの場合は完全な転生だから、赤ん坊からスタートしたけど。羞恥心半端なかったわ?。

 

ははは……

 

 

 

 時音 みき

 

美樹さやかの魔女の生まれ変わり。

 

さやかの能力を使用可能であり、保有する魔力もかなり多い。

しかし、産まれて間もないことから実戦経験は皆無。美樹さやかの記憶を共有しているとのことだけど、戦いのいろはを知らない以上当てにならないだろう。

 

さらにこれだけ巨大な結界を展開しているから、移動に支障は出ないけど、攻撃に回ることも不可能。

 

 

「……基本方針はこれまでとは変わらないわ。但し杏子、攪乱には幻影を使いなさい。ワルプルギスがあなたに注意を向けても、逃げられる場所をキープ。出来るわね。

そして時音みき、あなたは私達と一緒に行動よ。基本巴マミが狙撃で攻撃、ワルプルギスに気付かれた時点で私が時を止める。そして別の場所に移動してまた狙撃の繰り返しよ。ただ、私はいつ時を止められなくなっても可笑しくないから、その時は代理を頼めるかしら。まどかもそれでいいわね?」

「うん」

「わかった」

「大丈夫だと思う」

「わかったわ」

「うん」

「あと、みき。結界の中を複雑に出来ないかしら?いくら何でも障害物が無さすぎる」

「お、おっけー」

 

みきが床に手をつく。

そうすると、あちこちから地面が盛り上がり、壁を作った。

 

「……きつかった?」

「ぜぇ……いや、これぐらい……きつくも何とも……ゲホ」

 

((((きついんだろうなあ……))))

 

四つん這いで息が上がっている。明らかに強がっているのがまる分かりだ。

 

「さあ、攻撃を再開するわよ」

「は、はいぃ……」

 

 

 

 

「……はっ……は……きっつ……」

 

所変わってほむホーム

そこには荒く息を吐くさやかの姿があった。

 

「あと……六時間ってところかな……」

 

時間経過で妖怪化が進行するなら、能力で時を進めてしまえばいい。

 

そんな単純な発想で、すでに後25時間の所を6時間まで進めていた。

 

もう一息、と再び彼女は時を進める。

 

「ぐっ……ああああああ!!!!」

 

時を進める、すなわち妖怪化を無理矢理進行させる荒業。

それ故、一般人なら卒倒するような痛みが彼女を襲う。

 

「がっ……はっはっ……5時間」

 

だが、さやかはやる。

何がそこまで駆り立てるかは、彼女自身もわからない。

 

ただ、予感がするだけである。

 

 

 

このままだらだらと待つだけではいけない、と。

 

 

 

 

 

腑に落ちない

 

幻影を上手く使いワルプルギスを攪乱している杏子はわかる。

おそらく幻影魔法は昔扱えた時期があったのだろう。

 

 

だけど

 

 

 

「フィロフィナーレ、フィロフィナーレ、フィロフィナーレ……」

 

マミの射撃能力がはね上がった。

さっきからこわいぐらい同じ箇所にしか当ててない。

ワルプルギスが縦横無尽に動こうが何のその。

目がアレだ。歓喜に満ちていて、やる気爆発、だけど狩人の目。

ぶっちゃけ気持ち悪い。

 

スキル:精密射撃をどこでつけたの?

 

ゆま、何淡々としているの? 悟りを開くにはまだ幼すぎるわ。

 

そもそも何がそこまでやる気にさせるの?

 

ワルプルギス、あなた本気出したんじゃ無かったの?

中ボス臭しか出してないわよ、あなた。

 

すごく謎だわ。

 

そうこうしている内に、こちらの方を優先対象にしたワルプルギスがこちらに体を向ける。

 

「ごめんなさい。それ炸裂魔法弾なのよ」

 

 

ワルプルギスが爆発し、たまらず高度を保てず落ちる。

この隙を逃さず、杏子が槍で攻め立て、まどかが弾幕を放つ。

けれど腐っても鯛。

ワルプルギスは衝撃波や使い魔で応戦して、攻撃をかわしていた。

 

「気付かれたみたいだし、移動しましょう」

 

 

マミに言われた通り、時を止めて移動を開始。

 

 ……やっぱり、腑に落ちない

 

 

 

 

 うふ、うふふふふふふふふふ。まさか美樹さんも隠れオタクだったなんて。僥倖だわ。これは絶対生きて帰らないと。そしてオタク談義で話を花を咲かすのよ!ふふふふふうふふ、今の私は何でもできるわよ!

 

 

 

 キョーコ……早く帰ってきて……

 

 

 

 

 

 ん? 今なんか邪念と救難信号が……。気のせいか?

 

 

ブオン

 

「うわ!っとぉ」

 

気を散らしていたら使い魔がすぐそばまで接近していた。

 

使い魔の攻撃を瞬動で避けて、真上に移動。

 

「せい!!」

 

投擲した槍は綺麗に使い魔に吸い込まれた。

 

 月光!! なんてな……

 

着地と同時に、槍を引き抜く。

 

 今の使い魔も魔法少女の姿……。全く、胸くそ悪い。

 

深くえぐられたくぼみを見る。そこにもう魔法少女の姿をした使い魔はいない。だが同じ人型の使い魔を屠るのに杏子は不快感を感じていた。視線を上げると一定間隔で閃く一筋の光がワルプルギスに断続的に突き刺さっている。

 

 

 すげーな、ダメージ効率上げる為にしっかりと連結部分を狙ってる。

 

さっき弾が炸裂したのは、ほむらあたりの入れ知恵だろうな。

 

まあ、ワルプルギスも負けては無いけどな。風で銃弾を反らして、集中しないようにしてやがる。

 

 

無駄な足掻きだけどさ

 

もうワルプルギスは防戦一方。反撃は難しい状態。

 

 

分身を16体に増やし、突撃させる。

 

使い魔を凪ぎ払う間に本体はグリーフシードでソウルジェムを浄化し、分身には道を作らせる。

 

 

さやかの為に考案していた技だ。試し打ちにはちょうど良い。

 

 

 

食らえ

 

 

「ハア!!」

 

突き穿つ死翔の槍<ゲイボルグ>!!!

 

 ……無いな、うん。忘れよう

 

 

投擲した槍は風を物ともせず、深々と突き刺さり、歯車の動きを止めた。

 

 

爆破させたい。が、やり方がわからない。

マミはどうやってるんだ? 今度聞いてみるか。

 

 

そろそろ作業と化してきた使い魔討伐をまた終えた時、

 

「!! なんだ?」

 

膨大な何かがマミのところで集束していた。

 

『杏子ちゃん。今すぐワルプルギスから離れて!』

 

終幕のベルが、鳴らされようとしていた。

 

 

 

 

 

「やっ、頑張ってんじゃん」

 

ワルプルギスボロボロじゃんと、空間を裂いて三人の前に姿を表したさやかに、一同は驚く。髪は伸びて、服装がなぜか魔法少女のそれでは無くなっているが、顔や雰囲気は美樹さやかそのものだ。

 

「なんで……」

 

 神格化が終わるまで立つこともままならないはずなのに何故。

 

「ふふ、何ででしょう?」

 

と、ほむらはそこで気付いた。

 

さやかは隠しているが、息が上がり、顔色も悪いことに。

 

明らかに無理をしている。

しかし、何故? とほむらは不審がる。

 

神格化が完了していないなら、ここに来ても足を引っ張るだけなのはわかっているはずだ。

 

「ああ、心配しなくても、この身体はもう神様そのもの。足手まといにはならないよ。」

 

そんなほむらの考えを見透かしたのか、はたまた一同の顔色を伺ったのか、さやかは安心するよう言う。

 

「さ、悠長に話してる場合じゃないよね。と言っても、もう終わりだけど」

 

最後にちょっとちょっかいかけるよ、とさやかが蒼穹双刃の鍔を重ね合わせる。すると、鍔が1つになり、反りが更に深くなって、先端から糸が伸びて繋がった。

 

その弓は綺麗で、凛々しくて、とても蒼かった。

 

「きれい……」

「最後は、あんたが決着つけなよ」

 

そう言って、ほむらに弓を手渡す。

 

「矢がないのだけれど?」

「矢は要らない。ただ引いて、放てばいい」

 

 いや、無理。矢があってこそ弦は引けるものだけど

 

釈然としないが、ほむらは言われた通り、そこにあたかも矢が有るように弓を引く。

 

キリキリと音を立てて、だけどすんなりと弦は引けた。

 

 

その時、ほむらははっきりと見た。

 

 

 

据えられた、勝利を約束する矢(終止符)を。この矢は必ずワルプルギスを貫き、私達に勝利をもたらす。そんな確証さえ持てた。

 

目線の先にあるワルプルギス。驚くことに私の心は静かだった。高ぶることもなく、どす黒くなることもなかった。ただ静かに、穏やかに、集中できた。

 

 

「さようなら」

 

長い付き合いだったわね。

 

 

まるで知り合いと別れるように別れの言葉を紡ぎ、手を、放した。

 

 

直後、

 

 

ワルプルギスに特大の風穴が開き、

 

 

崩れた。

 

 

 

「おわ……たの?」

「終わったよ。それも誰一人欠けずに……ね」

 

さやかは確信をもって断言した。

 

 ああ、終わった。

 

ほむらはただ、喜びを噛み締める。

 

 

 

「最後まで、笑ってたね」

「知らん。あいつの性質なんでしょ」

「……もっとこう、感傷に浸った台詞とかを……」

「あいつに何の感傷が有るのさ」

 

さやかは歩き出す。

 

「どこ行くの?」

「杏子迎えに行ってくる」

「でもあなた……」

「疲れてるのはお互い様でしょ。座って待ってなよ」

 

 

 

「お」 「あ」

 

地面を跳びながら杏子の元へ向かっている途中に杏子と円にバタリと出くわした。

やっぱりというか、予想通り、杏子と円は服装に驚いていた。

 

実際、服が変わったのはなんでかわからない。だけどこれだけは言える。

 

アルティメットさやかちゃん。ここに推参!!

 

 

さて、茶番はここまでにしてっと。

 

「大丈夫?」

「それはあんたもだろ? 顔青いぞ」

 

え~なんのことかな~。とさやかは顔を背ける。

 

「はあ……ほむらちゃんたちはどうでしたか?」

 

円はため息一つはいて、皆の安否を尋ねる。

 

「あんた達のお陰で皆無事。よく頑張ったね」

 

そっかと杏子は伸びをした。円は褒められてうれしそう。

 

「あ~。今日はもう疲れた。早く帰って休みてえ」

「そうだよね~。そのあとはマミさんの家で祝勝パーティーしようよ」

「お、いいねえ」

 

和気あいあいと三人は帰路に着く。どの顔にも笑顔があふれていた。

 

カラン

 

不意に杏子は何かが転がる音を聞いた。

 

「杏子?」

 

杏子があたりを見渡すと、歩道のあたりにGSが転がっていた。

 

「ワルプルのかな?」

「それが妥当ですね」

 

さやかが駆け寄って、GSのそばで屈む。

 

掌に載せた時、不意にあたりが暗くなった。

 

だれかがあたしの前にいると思考した時に、さやかはその異常に気付いた。

 

どうしてこれは杏子が聞こえるほど大きな音がした?

これは本当にワルプルギスのGSなのか?

 

 

 

今、神になり立てで不安定とはいえ、影が差すまで気づけなかった、目の前にいるこいつは誰?

 

 

 

 

ドスッ

 

 

 

「え?」

 


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