転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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注意この話はほむらの逆行について筆者の独自解釈が多分に含まれます。

ご容赦できる方のみ、本文をどうぞ


29話 逆行の真実

 

「まず、暁美さんをこの人形としましょう。」

 

マミはリボンで新しく人形を編む。

色や体型がほむらに似ているのはマミの几帳面さが顕れている証拠だろう。

 

「暁美さんがある程度時間を過ごし、逆行するとき、恐らくあなたの因果はこんな風になるわ」

 

そして、ほむら人形を前に動かして、また元の位置に戻す。

その過程でリボンは逆行する位置に固定し、まどか人形の上を通過させる。

 

「そして、また逆行し、逆行し、それを繰り返していくと…」

 

まどか人形が次第に黄色に覆われていく。

 

「暁美さんの因果がまどかに絡み付いていった。これが今の状態ね」

 

マミは全てわかったという風に口を開く。

そしてほむらもマミが言いたいことにいち早く気付いた。

そして紫の言葉の意味も。

 

「……それが何と関係があるのよ?」

 

わかっているが認めたくない、そんな声色。

 

「……暁美さん、鹿目さんが魔法少女になった時の強さはどれも同じだった?」

「……いいえ、むしろ繰り返す度に強くなっていったわ…。最初はワルプルギスと相討ちだったのに、後の方になると一撃で倒してしまう程に」

「やっぱり……」

 

この返答がマミの推測を確信へと変えた。

 

「因果の集束が魔法少女の資質を高めたってことか?」

「そういうことになるわね。いえ、そうとしか考えられない」

「違う!! それじゃ私が……」

 

三人は同じ結論に至る。

 

ほむらがまどかを最強の魔女に育ててしまった。

ほむらの行為がことごとく裏目に出てしまったのだ。

そんな残酷な現実にほむらは打ちのめされた。

 

「どうかしら? 美樹さん」

「……ま、40点かな」

 

まあよくもそんだけの情報でそこまで推理できるね。とさやかが顔を動かす。

 

「魔法のメガネですもの」

「……激しく疑問だけど今は置いておこう。マミの推理の補足だけど、実際はほむらの因果だけじゃ弱い。それを説明するには、ほむらの逆行の真実を説明しないといけない」

 

ほむらはビクッと体を震わせる。

 

「大丈夫か?」

「……大丈夫よ。この際だわ」

「それなら話を進めるよ。ほむらの逆行は厳密には時間逆行じゃない」

「どういうこと?」

「本当の時間逆行は……」

「こういうこと」

 

マミ、杏子、ほむらがバッと声のした方、さやかの右側へと顔を向ける。

また気付かれずに侵入された、と思うよりも先に有り得ないが先にでた。

何故ならその声はさやかの声とそっくり、いや一緒だったから。

三人の視線の先にはもうひとりのさやかが手を振りながら消えているところだった。

 

「……流石あたし、説明する手間が省けた」

「つまり、本当の時間逆行は……」

「過去の自分も存在している、てことか」

「多分ほむらのそれは平行世界の移動の方がしっくりくる。実際時間逆行の方が平行世界の移動より難しいしね。

それだけならまだ良かったんだけど、それに加えてほむらのは魄(からだ)が伴ってなかった」

「…? つまり、どういうことだってばよ?」

 

杏子が横から疑問を口にする。

 

「元々平行世界の移動だってかなり難しい所業で、ほむらの資質では体ごと移動するのは不可能だったってこと。そこで、魂だけ移動して、自分に憑依する形をとったって考えられる」

「ちょっと待って、それだと元々いた暁美さんはどうなったの?」

「融合したと思う。そしてそれが、マミの推測を完璧にするファクターのひとつ」

 

とそこで、杏子が手を挙げて質問する。

 

「なあ、別にマミの推測でも筋は通るんじゃねえの?繰り返せば繰り返す程強くなるんならそれだけ回数こなせばいいじゃん」

「……一ヶ月は14年の何分の一?」

「え? えっとそりゃあ12×14分の……あ」

「気付いたよね? ほむらが逆行して、まどかの因果を増やしてしまう量は時間換算で約一ヶ月。因果の量を二倍にするだけでも170回は逆行しないといけない。

しかも逆行しているのはほむら自身でまどかじゃないから、加算するのはほむらの因果の量。

だから、その効率はさらに悪くなってしまう。

最後に、それだけの回数親友を助けるのを失敗しても、最初の気持ちを忘れずに続けられる?」

 

そうか、と杏子は己の思慮のなさを悔いる。

 

170

 

この数字は逆行する数だけではない。

親友を救えず、見殺しにする回数。

ワルプルギスの夜に希望を折られる回数。

あるいは両親を騙す回数かもしれない。

もしかしたら、諦めかける回数かもしれないのだ。

 

「こなすだけならどうとでもなる回数。だけど、心が折れるにも十分な回数なんだよ。

加えて、ほむらはまどかを救うのを諦めた時点で魔女化するのは確実。

つまり一回も折れずに初志を貫徹しないといけない。

あたしにも絶対無理。絶対あきらめる。

ほむら、あんたは何回逆行したの?」

「……9回」

「ほれ、合わないでしょ?

後ほむら、話を続けるけど、ソウルジェムは大丈夫?」

「…少し濁っているけれど、グリーフシードを使えば問題ないわ」

 

ほむらはなぜさやかがこの状況でSGの穢れ具合を確認したか、その理由に気づいた。

おそらくこの後に話すのが、この上なく残酷な真実なのであるのだと。

 

 

「ならばよし。で、魂の融合に応じて、ほむらが持つ因果は増え、逆行する毎にまどかに絡み付く因果の量も増えていく」

「でも、それだと暁美さんがもつ因果の量も増えるんじゃないの?」

「まあね。でも、契約はもう取り結ばれているから、後付けの因果は何の影響も与えない」

「そうなの……」

 

マミは膨れっ面をしてメガネを外す。

 

「完璧だと思ったのに……」

「いや完璧だよね。あれだけの情報でここまで推測できるのは」

「そうだよな。あたしなんか話についていくのが精一杯だ。

で、さやか。まだ続きあるんだろ?」

 

杏子の問いかけにさやかは静かに首肯する。

 

「もうひとつ理由がある。そのキーワードは……」

「無秩序、ね」

 

再びメガネを装着したマミが即答する。

流石ティロ・フィナーレ(即答)だ。

 

「ねえ、そのメガネ……」

「私の必需品よ。聞いても誰にも渡さないんだから」

「………マミの言う通り、無秩序がもうひとつの理由のキーワード。無秩序、つまりランダムに平行世界を移動するもんだから、他の人の因果も巻き込んで逆行してしまう。それはほむらに近しい人のか、はたまたまどかのものかはわかんないけどね。

そしてそれらは自ずと願いの中心のまどかの元へと集束していく。

 

以上、1.逆行することでまどかに因果が集中する。

2.逆行するたびにその都度ほむらが自分と融合することによる因果の増加。

3.無秩序な逆行によって他人の因果も巻き込んでしまう。

この三点がまどかの因果の量を加速度的に増加させた原因だよ」

 

ほむらはそれらを、目を瞑って静かに聞いていた。

 

「……変わらない。何も変わらないわ。それが全て事実だとしても、ワルプルギスの夜が後30時間強でくるのは変わらない。まどかを救うことが私のたったひとつ道しるべなことも、何も変わらない」

 

一見、揺さぶりを一笑に伏すような言動であったが、同時に、自分を見失わないように必死になっているようにも聞こえた。

 

「……ああもう、なんでこんな時に話さないといけないのかなあ」

 

さやかとてこんな戦意を喪失するようなことは避けたかった。

とにかく時期が悪すぎた。

ほむらにとって、これらの真実は知らなければならないもの。

だが、戦闘前に話すことでは絶対にない。

ラスボス戦の前で話す等、言語道断である。

しかし、今しかなかった。直前など立ち直る暇などないし、戦闘中など以ての他。

だから、今告げるしかないのだ。

 

「ほむら、あんたにはもうひとつ伝えないといけないことがある」

 

ほむらにとっての最悪の事実を。

 

「紫の『逆行は最後にしろ』この言葉の意味は……」

 

 

あんたはもう逆行(コンティニュー)できないってことなんだよ。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

"私"の記憶を洗い出しながら考える。

何故"私"の世界は滅びたのか。

本当に"私"は対処出来なかったのか。

"幻想郷"を救うことは出来なかったのか。

 

理由はある。

それは"各々"から各々への記憶(魂)の継承。

こちらで確認しただけで30名弱。

これだけの人数の魂を咄嗟に発動させた術式でこちらに飛ばすことが果たして出来るのだろうか。

 

 

不可能に決まっている。

ならば、"私"は以前から知っていたはず。

 

答えは、すぐにでた。

"私"は崩壊の三日前に崩壊を察知していた。

 

………………

 

これは、やることがひとつ増えたわね。

藍にはこれ以上押し付けたら倒れそうだし…どうしましょうか。

……ふぅ

私も徹夜組に入るしかなさそうね…。

 

 

  ああいやだいやだ。

 

 

 

 

 


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