転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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28話 三人寄らば

 

 

 

八雲 紫

 

一人一種の妖怪で、妖怪のなかでも抜きん出た力を持ち、妖怪の大賢者、神隠しの主犯とも呼ばれている。

紫を基調とした服を来て、頭にはZUN帽。

幻想郷の創設者で、心から愛しているらしく、その瞳の奥は誰にも悟らせない。

この世界ではわからないけど、前の世界では霊夢に興味津々だったはず。

 

そんな彼女が作り出すのがスキマと呼ばれる空間。

紫の能力である「境界を操る程度の能力」によって、彼女が次元の間に作り出した、紫の私物みたいなもの。

あちこちに椅子やら棚やら御札やらがふわふわと浮いている。

わからないなら四次元ポケットの中を想像すれば多分あってるはず。

気温、湿度その他諸々は彼女の思うままで、快適に過ごせる。

 

 

……そこらじゅうにある目を我慢したら。

いつもならギョロ、ギョロと忙しなく視線を動かす目は、SAN値をガリガリと削っていく。

スキマ送りされた人は大抵、というか絶対この光景を目にするわけで。

普通は防衛本能かショックで気絶すると思う。

この中で目を気にせず冬眠する紫の精神力はある意味すごいと思う。多分ここであの胡散臭さの元凶はこの空間だとあたしは確信している。

 

何で知ってるかって?

前に紫の式の藍に中々起きてこないから起こしてくれ、って頼まれたから。

小一時間程探して、息も絶え絶えになりながら見つけた紫は、鼻ちょうちんを膨らませてヨダレ垂らして爆睡してましたよ。

イラッと来たから、カメラに激写しといた。

でもまさかそれがあんなことになるなんて……

 

と、閑話休題

 

で、その目全てが今現在あたしをじっっっっと見つめてるんだよ。

瞬き? なにそれおいしいの状態で凝視するもんだから、充血して怖さを倍増させている。

 

「あの~、二つ程いい?」

「なにかしら?」

「目線外してくれない?」

「ご免なさい。私にも制御できないのよ」

 

 うそつけ

 

「もう一つ。あたしのこと識ってるの?」

「それは私を妖怪の大賢者と知っての質問かしら?」

「それなら、どういう経緯で?」

「"私"のせいね。霊夢だけでも助けようとしたけど、余りにギリギリだった。その為、何故かあなたも霊夢と一緒に転生、その場にいた他の面子は情報化され、各々へと吸収された。証明する証拠は何もないけれどね」

 

 あたしと霊夢だけが転生扱い?

 

「そうなの? 確かあの時霊夢の側には結構いたはずなんだけど……」

「私がわかるのはそこまでよ。後は当事者が解を出しなさい」

 

 なんか言葉の裏に棘が見え隠れしているのはあたしの気のせいだよね?

 あたしが何をしたっていうんだよ……

 

「あら、自分がした過ちすら気付いてないのかしら?」

「いた!? ちょっとやめて!! つつくの止めて痛いから!!」

「でもここを押すと痛みが和らぐわよ? 多分」

「確信がないのならしないでよ!!」

 

そう言うと紫は深いため息をついた。

 

「魔力以外の精神エネルギーの存在の露見」

「うっ」

「並びにインキュベーターに対する妖怪及び神の存在の露見」

 

前者は間に合わなかったけど、後者をあいつらに悟られずに阻止するのは骨が折れたわ。と紫は笑顔で言って来る。

 

「しょうがないじゃん。知らなかったんだもん。幻想郷だって見つからなかったたし」

「しょうがないじゃないわよ。あいつらに見つかっては意味がないもの。それに、あなたの能力なら幻想郷を見つけることも出来たはずよ」

「それは……そうだけど」

 

でも、だとしたらどうして?

まだ幻想郷の存在は露見していないなら、切り捨てることも可能なのに。

 

「あなたは私に、いえ私達にとって最悪のタイミングで事を起こしてくれたわ。でも……」

 

 

あなたのその能力は私達にとって最高に役に立つわ

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ほぐぇ」

 

さやかが浚われてからきっかり30分にさやかが布団に頭から落ちた。

 

「さやか!!」

「ゆ、紫め……頭から落としやがって……」

 

受け身も取れなかったのだろう、落ちた時すごい音がした。

 

「ふふ、ごめん遊ばせ」

「ぬおわ!!」

 

いきなり虚空から目の前に紫が顔を出して、驚いてどびずさる。

 

ゴン

 

勢い余って椅子に躓いて後頭部をテーブルに打ち付けてしまった。

 

「期待以上の反応ね」

「杏子がんばれ。超がんばれ」

「ぐおお……、てめえぇ」

「杏子、言い返すだけ無駄だよ。むしろ慣れた方が楽。つーか、なんでいんの?」

「言い忘れたことがあったのよ」

「だいじょーぶ?」

 

 

ゆまが側で手当てしはじめる。魔法がすごく身に染みる気がするのは何でなんだ……

 

 

紫はマミ達、特にほむらを見据える。

 

「暁美ほむら。あなたに一つなぞかけよ。無秩序に糸を束ねられるのはこれで最後」

 

 

そう言うと紫はどこからか糸と人形を取り出して机に置いた。

 

「わからないならこれを使って考えなさい。誰かに知恵を借りるのも良いかも知れなくてよ。さやか、答えは教えないようにね」

 

紫は扇子を軽く振るう

 

「この部屋にインキュベーターが入れないようにしたわ。時間はまだ十分にあるのだから、考えなさい」

 

それじゃまた、と今度こそ紫はその姿を消した。

 

「わからない人だったわね」

「わからないこそ、紫の真骨頂だよ……あ゛っつ……」

 

さやかが身を起こそうとして、失敗する。

 

「おい、まだ動ける体じゃねえだろ」

「やっぱまだ無理っぽい……」

「ほむら、マミ。手伝ってくれ」

「わかったわ」

 

マミと一緒にさやかを布団に寝かす。

 

「あ゛ー、寝たい」

「寝てないの?」

「そろそろいっぱいいっぱい」

 

一方ほむらは、手伝わずに人形と糸を手に考え込んでいた。

 

 

 

 

 

 ……本当に今回は今までとは違うわね。

 

八雲紫。あなたはいったい何者なの?

 

「無秩序に糸を束ねる……」

「……そんなに気になるのか?」

 

杏子が後ろから尋ねてくる。

 

「この人形……鹿目さんに似てない? 髪も桃色なのだし」

 

そんなことは最初からわかっている。

私の目的を八雲紫はすでに看破していた。

彼女には全て見透かされている気さえしてしまう。

だからこそ、彼女の言いたいことの予想がついてしまう。

だけど理由がわからない。

 

「糸を無秩序に束ねる、ってさ、ようはこの人形を簡単に言えばぐるぐる巻きにしたらいいんだろ」

 

貸してみな、と杏子は人形と糸を奪い、人形に適当に巻き付け始めた。

 

「こんなもんだろ」

「キョウコ……」

「……鹿目さんが見たら苛められていると勘違いされそうね」

「……大丈夫だ、問題ない。あいつは早とちりするやつじゃねぇって。それよりも、これからどうすんだ?」

 

はっきり言いましょうか。ますます訳が解らなくなったわ。

それは他の三人も同じようで、沈黙が流れる。

 

手持ち無沙汰になったゆまがその上からまた糸を巻き付けて遊び始める。

 

とりあえず止めておこう。

 

「ゆま、もう寝な」

「はーい」

「いやなんであたしの布団に……」

 

 

ぶつくさいっているようだけど、さやかは満更でもないらしい。

 

 

っと、話がずれているわ。確か……

 

「因果、ループ、ほむほむの願い」

「え?」

「大ヒント」

「ちょっと待って、あなたわかっているの?」

「まあね。でも答えは言わないから。それじゃおやすみ」

「お早う」

「早いよ!!」

 

 私の願い

 

 それを喋るべきだと言っているの?

 

「話してもいいんじゃないの? むしろこのまま隠し通す方が都合が悪いと思うけど」

 

 

さやかはそれきり口を閉ざした。

 

「さやかのやつ、教えてくれたって良いじゃんかよ」

「三人よれば文殊の知恵。少しぐらいは考えなよ」

 

 ……口を閉ざしたはずよね?

 

「因果とループと、暁美さんの願い、だったわね」

「……無理に話さなくてもいいけどよ、話さないとアタシ達は何もわかんねえままだ」

 

 何故だろう。この時間軸は本当に私を狂わせた。

 

「…わかったわ。話しましょう」

 

まさか話しても大丈夫と思ってしまうなんて。

 

 

初めてだと思う。私の祈りを話すのは。

 

「私は……」

 

――――――――――――――――――――――――

 

「そういうことだったの……」

「糸を束ねるのはこれで最後、つまり逆行はもうしてはいけないと言われているのは解る。だけど、その理由がわからない」

「わかんねえなあ……」

 

杏子が納得いかない顔で尋ねてくる。

 

「なんでそんなに逆行する必要があったんだ?さやかがいればすぐに解決しそうな気がするんだが」

「一つ言い忘れていたけど、逆行する度に何かが変化することもあった。と言っても、今回は変わりすぎている。さやかだって、本来なら只の資質を持った一般人。妖怪だったことなんて一度もなかったわ。ついでに言うと妖怪というもの自体が存在していなかったし、魔力以外の力も存在していなかった」

「まじかよ…!? 想像できねぇ」

「思い込みの激しい性格で、好き嫌いがはっきりしていたわ。半端な正義感で以てかってに散っていったわ」

「……正反対ね」

「正反対よ。そして全然強くなかった。戦いなんてド素人よ」

「今までの反動かしら?」

「「納得」」

 

さて、とマミが丁寧に人形の糸をほどいていく。

 

 

「暁美さんが話してくれたお陰でだいぶ筋がわかったわ」

 

スチャッとメガネを装着する巴マミ

 

 

「推理を始めましょう」

 

魔法探偵巴マミか 始まります。

 


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