転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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どうして俺はまどかさんを魔改造したのだろう。
多分はぶられていたのが不憫に思っていたのだと思うが、もう思い出せない。
ただわかることは、この上なくこのSSがまた煩雑になったということだけだ。


26話 収束後昏倒

 

 

神奈子と諏訪子が戦うのを交代して、魔法少女組は美鈴の説明を受けていた。

 

「八坂神奈子と洩矢諏訪子、ですって!?」

「知ってるのマミさん?」

「知ってるもなにも、有名どころよ。名前ぐらいは聞いたことあるでしょ?」

「その二人が……」

「あいつらなのか?」

 

魔法少女組は、二人の強さに驚き、マミはさらに正体を聞かされて驚いた。

 

「圧倒的ね」

「ああ。傷一つついてないな」

「所詮魔力ですからね。お二人の神力に弾かれるのが関の山です」

 

美鈴が二人の戦闘に補足をつける。

 

「ジンリョク?」

 

マミが説明の中にわからない単語に反応する。

 

「神力です。神が持つ力。私なら妖怪ですから妖力を持ってます。」

「え? 魔力以外にもそういうのってあるの!?」

「私が今さっき使ったんだけど……」

「ありますよ。先程言った神力、妖力そして人間なら霊力があってですね、魔力はどの種族も持つことができまして……」

 

 

妖怪説明中…

 

 

「魔法少女にならなくても、元々持っていたなんて……」

「つーか、そっちの方が魔法少女っぽいよな。現代兵器とのハイブリッドなやつもいるし」

「しょうがないでしょう。これと言った攻撃手段が無いのだから」

「?」

 

マミ、杏子、ほむらが、それぞれの感想を述べる。

ゆまは今一わからないといった風だ。

 

「それにしても、キュゥべえ達はなんで知らないのかしら?」

「そうね。知っていてもおかしくはないはずなのに……どうしてかしら」

 

魔法少女組の空気は戦うそれではなく、疑問を考察するそれに変わり始めていた。

 

「あ、あんた達ねぇ……此処にきた目的忘れてない? そしてゆま。なんで杏子達ばっかり治してるのさ!!」

「あ、あれ? 傷治してないんですか?」

「そんなMPガリガリ削れるようなこと出来るわけないでしょうが!! そして手当てぐらいしろ!! なに悠長に説明してるの!?殺す気か!!」

 

さやが怒鳴る。

 

 

「いや、さやだしなあ」

「これくらいの傷で死ぬとは思えないのよ。」

「さやか様の仮人格だからてっきり大丈夫かなと……」

「あんた達人を何だと思ってんだーーー!!」

 

訂正、シリアス()な空気だった。

 

「ちゃんと治したよ?」

 

そんな中、ゆまは完全に治癒したと反論する。

 

「いやなんか、あっちの方が完治してないからこっちに皺寄せが来てるの」

 

さやが傷口を見せると、確かに傷が開き始めていた。

 

「つーかさ……さやかが全く起きている気配がしてないの。あの二人が頑張ってるのに」

「そうなの?」

 

ゆまの治癒魔法を受けながら、さやは首肯する。

 

「たぶん神奈子達は決着はつけようと思えばつけれるはず。なのにそれをしてないの」

「……待っているんだろ? さやかが起きるのを」

「でも肝心のさやかが起きないのね」

 

そういうこと、とさやが頷く。

 

「呼びかけてみない?」

 

魔法少女組+αが思案顔になって考えていると、不意にまどかがそう言った。

 

「みんなででいい加減に起きろー!! って呼びかけて、わたしがそれを言霊にすれば、きっとさやか様は飛び起きると思うんだ」

「渇を入れる。いい考えね」

「ええ、やってみましょう」

 

ほむらとマミがそれに賛同する。

 

「そうだよな。アタシ達だけがんばってても仕方ないもんな」

「精神論的にも中々いい考えだと思います」

「いや、それはわかるんだけどさ……、なんで美鈴はあたしを羽交い締めにしてるの?」

「気を使いました」

「誰に対してだよ!!」

 

さやはじたばたと暴れるが、美鈴に完璧にホールドされて抜け出せない。

 

「さやちゃん、ちょっと痛いの、我慢できる?」

「まてまてまてまてえええええ!?」

 

数秒後、誰かを呼ぶ声に混じって微かに悲鳴が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

目を開けた時、まず目に入ってきたのは、ボコボコと巨大化していく肉塊だった。

最悪の目覚めだった。

 

「遅かったじゃないか」

 

うわ、と顔をしかめつつも、声に呼ばれて振り返ると、神奈子が手をあげながら歩いてくる。

 

「ちょっとヤボ用でさ」

 

バシン!! と勢いよくハイタッチ

 

気持ちいい笑顔が二人に浮かんだ。

 

「諏訪子もありがと」

「どういたしまして」

 

 

向こうの5人もボロボロだけど、まだまだ元気そう。

 

「ぎゃあああ!! 耳が、耳がああああ!!」

 

視界の隅っこであたしが転げ回ってるのはほっておこう。

つっこんだら負けな気がする。

 

 

――グオオオオオォォォォ――

 

漂う戦勝ムードに投げ込まれる野次。

まだ終わらない、終わってたまるか、といった風な雄たけびがとどろく。

 

振り返れば、グリーフシードはその体を懸命に作り上げようと、もがいていた。

 

「オ……ォ……」

 

体がボトボトと崩れているのに、それにも構わずただまっすぐにあたしに向かってくる。

 

 

生き汚いを形にしたら正しくこんな感じだと思う。

 

 全く、誰に似たんだか…

 

「いや、あんたに決まってるよ」

「心を読むな心を」

 

ま、誰に似たかなんて詮ないことか。

 

魔女はそのドロッとした手を伸ばしている。

 

 

静かに愛刀を抜き放つ。

 

これで、終わらせよう

 

――斬符「八花……

 

イキタイ

マダイキテイタイ

 

 

八花……

 

アナタダッテ、ソウシテキタンデショ? イキギタナクイキテイタンデショ?

 

……斬符……

 

ワカッテヨ

 

ざ……

 

タスケテヨ

 

「~~~~~~!! あーーもう!! わかったよ!!」

 

ずんずんと魔女の方へと歩いていって、その体に腕を突き入れた。

 

肉の中に手を突っ込む気持ち悪さよりはるかに気色悪い感触に耐えながらも、目当てのグリーフシードを見つけて、握りしめる。

 

「あたしの、中で、生きてろ!!」

 

そして、取り込んだ。

 

 アリガトウ

 

肉塊は形を失い、塵へと還っていった。

 

「あ~気色わる」

 

 なにかふくものふくもの……

 

「ハハハ、まあいいじゃないか。そっちの方がさやからしいさ」

「そうそう。死人を出さないのこそ異変だよ」

 

諏訪子の何気ない一言にはっと気付く。そう言えばそうだ。結果的には誰もが笑っている。怪我はすれども、誰も死んでない。

 

 やっぱり、持つべきものは友、か。

 

「異変……か。これが異変と呼べるかはわからないけど、少なくともハッピーエンドには相応しいよ」

「誰もが笑うハッピーエンド、達成できたじゃないか」

「うん。ありがと」

 

 ……あれ? 今まで違和感無く喋ってるけど……

 

「もしかして諏訪子達も転生したクチ?」

「いや違うよ。記憶が入り込んだだけ」

「憑依の方?」

「それでもないと思う。実のところ私達もよくわからない」

 

 なんか釈然としないやり取りだったけど、昔の様に話せるからいいか。

 

「さやか~」

 

マミ、杏子、ゆまが笑みを浮かべてやってくる。

 

ほむらは相変わらずの鉄仮面で髪を掻き揚げているし、美鈴はあたしの体に肩を貸していた。

 

「はっはっは~。おーいみんな~」

「ほむぶ!!」

 

皆との再会を喜びつつ、ほむほむに一発入れるのは忘れない。

 

「美樹、さやか……!!!」

「言ったでしょ? 一発殴るって」

「満身創痍のこの体に、鞭は打たないでほしいわ……ぐふ」

 

軽く吐血するほむら、言い返せるぐらいだしまあ大丈夫でしょ。

 

「さやか様」

 

 

 

はるか昔、神奈子達に出会う前の遠い記憶。それが今、鮮明に呼び起される。

 

 あの頃の呼び方と全く変わってない

 

すうっと目を細めて、‘円‘の方の向く。

 

「……余が言いたいこと。わかるな?」

「……はい。申し訳ありませんでした」

「その謝罪。何故?」

「全てに。社を守れず、最後までともにできず、そして契りを反故にしたことに」

 

円はひざまずき、じっとあたしの言葉を待つ。

 

 

~~~「あのさ」

~~~「は、はい!!あの……誰、ですか?」

~~~「……っ。あたし美樹さやか。よろしくね」

 

 

 ……学校でまどかと再会した時、こうなるなんて思ってもいなかったなあ

 

 いや、はっきり言ってさ。円にとっては14年だけど、あたしにとっては2000年ぐらい間があるんだよね。

 だから怒りとかそんなに長続きするわけがなくて……。

 

「おかえり、と言うべきかな?」

 

 ぶっちゃけ、超嬉しい。

 

「っ……はい……! ただ今戻りました」

 

 

 

思えば、巫女を採用しなかったのも、どこかわだかまりがあったのかもしれない。

ずっと円のことを引きずっていたのだろう。

 

 ま、今はもう詮無いことか。

 

 

「さてと、これであたしが体に戻れば万事オッケー」

「そうだね。頑張りなよ」

「? なにを?」

「知らないの? 人外化ってすごい痛みを伴うらしいから」

「え?」

「え?」

「……どうしたの? 顔青いよ?」

「え、あ、いや」

 

諏訪子がニヤニヤとした顔でわざとらしく聞いてくる。

 

 く、あんたぜってーわかってて聞いてるでしょ

 

やばい、美鈴が爆弾抱えて向かって来ているように見える。

 

 来んなくんなくんなー!!

 

そんな願いも虚しく、美鈴はしっかりと任務を果たしやがった。

 

 

「よ~あたし。早く体に入ってよ。ようやくお役御免だよ。う~耳が~」

「超お断りです」

 

反射的に即答してしまった。

 

「え、何で?」

 

あたしが一歩進む

 

一歩後退

 

二歩進む

 

二歩後退

 

あたしが腕を伸ばしても絶対届かないように位置取るあたしすごい、と現実逃避していたら、

他の皆も空気が変なことに気付いてこっちを向いている。

 

ただ、親友三人組は心当たりがあるのか、少し納得した顔をしている。

 

「さやかちゃん。どうしたの?」

「まさか、まだ問題が?」

「ああいや、その問題っていう問題じゃないんだけど、私的にはかなりいやっていうか絶対入りたくないっいうか……」

 

皆がそれこそ血反吐吐いてやり遂げたことをここで無に帰するのはできず、自分勝手に中止するのは気が引けて、最後はしどろもどろになってしまう。

 

「諦めなよ。さやか」

「最後の試練だと思ってさ」

「私達は見てるだけしか出来ませんが頑張ってる下さい」

 

 はっ!! そうだ神奈子達に頼めば……

 

「神奈子様!! なんとかして!! お願いします!!」

「いや、なんていうかね……」

「もうそろそろ術が切れちゃうんだよ」

「その意味も込めて頑張って下さい」

 

 そんな殺生な!!

 

「そ、そんな~」

「だからいま私達にできるのは……」

「決心のつかない親友の」

「後押しをするだけです」

 

ドンと三人があたしに息のあった軽い掌底を食らわせる。

思わずたたらを踏んで後退したさきには、あたしの体。

 

「お帰りなさ~~い」

「いや……」

 

だああああ!!

 

あたしは不吉なくらいすんなりと体の中に入った。

 

恐る恐る目を開けて、手を開閉してみる。

 

なにも……ない?

 

 もしかして、嘘?

ほっと息をつこうとしたその時、

 

ドクン!!

全身の全ての骨がおれて、皮が剥がれて、筋肉が断裂して、血液が沸騰する感覚と、一個一個の細胞から、痛覚が同時に送られた。

 

「……!!」

 

心臓貫かれた痛みなんて目じゃない。

 

「……あ……ぎ……」

 

 イタイ……

 

 

 

 

「さやか様!?」

「おい、さやか!!」

 

さっきからさやかに呼び掛けているがまともに返事もしない。

ただ時折声にならない苦痛を漏らしている。

 

ゆまが治癒魔法をかけているが効果は毛程も出て来ない。

 

 

 くそ!! もう終わったんじゃなかったのかよ!!

 

「ねぇ。あれ大丈夫なの?」

「聞いてた話以上に痛そうなんですけど…どういうことなんでしょう」

「心の準備はさせとくべきだったのかもしれないね」

 

元凶三人組は少し申し訳なさそうにしている。

 

「おい!! これは一体どういうことなんだよ!?」

「妖怪化だよ。体を作り変えているのさ」

「でも妖怪化は完了したって……」

「それは多分魂の話じゃなかい? 体の話はまた別だよ」

「多分死ぬことはないと思うので大丈夫だとは思います」

 

 死なねぇからって……

 

 

「だ…じぶ…な…け…い……わ」

「さやか!?」

「…ね……らぜ…で…」

 

 

そう言った後、さやかはまた力尽きる。

痛みで気絶しても痛みで意識が覚醒するらしく、うめき声をあげ、身体中を痙攣させて、生き地獄を経験しているようだ。

 

なんて言いたかったんだ?

 

「眠らせて欲しい、て言ったのかしら?」

 

僅かにさやかが頷いた。

 

「眠らせても多分同じだと思うよ」

「魂(精神)と魄(身体)の調和しようとする痛みだからね。魄の痛みを遮断しても、魂の痛みですぐ目が覚める」

「そんな……なんとかならないの!?」

「ないね。本人が耐えることしかできない」

「どのぐらい続くの?」

「少なくとも三日、長けりゃ4日……それくらいは覚悟しておいた方がいいです」

「3日……」

 

ほむらが厳しい顔をして呟く。

 

ほむらの統計によるワルプルギス出現予測日まで、後2日

 


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