転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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一周間といいつつ二週間たっていた。
すみません。


24話 望郷の視点

 

 

 

虫のさえずりが聞こえる程、静かな夜。大きな、けれど少し欠けた望月が私を照らしていた。

 

「珍しいね、こんな時期に月見なんて」

 

そこへ諏訪子が来て、手元にある酒を飲み始める。

 

視線を月に戻す。そこまで高い酒でもないし、咎める理由もない。

 

「あの女のこと?」

「……どうしてだろうね。あいつが夢に出てきてから、胸にポッカリと穴が出来た感じがするんだよ」

 

あの月が満ちれば、わかるかもしれない気がする。だからこうして、今か今かと待ち続けている。

 

「本当に迷惑な話だよね。勝手に現れて掻き乱して、そのくせ正体は明かさないなんてね」

 

見付けたら、とっちめてやる、と諏訪子は一気に酒を煽った。

 

「そうだね、盛大にとっちめてやろうか」

 

そしてその後は、盛大に酒を飲み交わそうかね。

 

 

 

「夜分遅くに失礼しますわ」

 

目の前の空間が割れて、そこから紫が口元を扇子で隠しながら身を乗り出してきた。

 

「何のようだい?」

「私も月見に混ぜて貰おうかしらと思って来たかったのだけど、何分相手に急かされているから、単刀直入に言うわ。すぐ来なさ

 

いとの霊夢からのお達しよ」

「博霊の巫女が?」

「断るなら無理矢理連れてこいとも言われているわ」

 

なんだいそれは、と呆れながらもあの博霊の巫女がそこまでする理由が気になった。

 

「なんで私達なの?」

 

そう問われると紫は、クスリと笑って

 

「あなた達だかららしいわよ。ほら、早くしてくれないかしら?私、紅魔館の門番も連れていかないといけないのよ」

 

あー忙しい忙しいと、紫は空間を開いて、そちらの方へと手招きしている。割れ目の端には可愛らしいリボンが結んであるが、そ

 

のなかには、無数の目がギョロ、ギョロ、と蠢いている。実にシュールだ。そして入りたくない。

 

「正直あんまり行きたくないんだけど……」

「あなた達の胸のもやもやがとれると言ったら?」

 

 ……ふむ

 

「最初からそう言えば良いのにねぇ」

「これが性分なのよ」

「そうかい」

 

  やっとこさ手掛かりが見つかりそうだ。

 

 笑みとともに私達はスキマの中に足を踏み入れた。

 

「来たわね」

 

スキマをくぐり抜けた先には巨大な陣の中にいる霊夢が佇んでいた。

 

「こいつはまた……どういったものなんだい?」

「それは門番がき…「ふぎゃ!!」…遠隔操作を応用したものよ」

「それで、私達を呼び出した理由は何なの?」

 

う~、今日は不幸続きです……。と呻いている門番を尻目に問答を続行。

 

「ちょっと古い知り合いを助けて欲しいの。青い髪、って言えばわかるわよね?」

「知っているのかい?」

「ええ、知っているわ」

「なら、彼女は誰なんだい?」

 

霊夢は少し考えた後、

 

「これが終わったらいくらでも話すわ。だから今は言う通りにして」

「……名前ぐらいは教えておくれよ」

「さやか。美樹さやかよ」

 

そうかい、と陣に足を進める。

 

「わからないことだらけですけど、私がここにいる意味はなんですか?」

「あんたもここに入るの」

「あの、拒否権は?」

「三面ボスに拒否権があると?」

「メタ発言はやめて下さい」

 

わかりましたよ、と美鈴も陣の中に入る。

 

「じゃあこれからあんた達がやることを説明するわ。さやかはどういった経緯かは知らないけど、魔女になっているわ。そして使

 

い魔としてあんた達のダミーを使役中よ。今回はそのダミーの支配権を奪取して、適当に痛めつけておいて。後は私と紫が何とか

 

する」

 

 魔女ねぇ……ここじゃ見ないけど、昔は結構やりあったもんだ。しかしなんだって私達の姿を・・・?

 

「どうしてわかるんですか?」

「紫なら楽勝でしょうが」

 

美鈴の質問にさも当たり前のように答える霊夢。確かにあいつなら簡単だろう。

 

「随分と大雑把な命令だね。でも、分かりやすくてやりやすい」

 

 確かに、細かく決められた作戦よりはよっぽどいいか。

 

 

しっかし、ダミーなんてつくるとはねぇ……、何考えているのか

 

「何がともあれ、ひさしぶりに弾幕ごっこじゃない戦闘ですね」

 

三人それぞれが、神力または妖力を練り上げていく。

 

「水をさすようだけど、こんなことしていいの? 博霊の巫女としてはあるまじき行為だよ」

「え? 私が博霊の役目で取り組んでいるっていついったっけ?」

 

霊夢はゆかりんスマイルで返した。

 

「ハハッ!! そうかいそうかい。そうだよね」

 

さて、おしゃべりはここまでよ、と霊夢が位置につく。

 

「行くわよ!!」

 

魂が体から抜けて、空を舞い、そしてまた中に入っていく感覚を覚える。

 

――あんた、なにもんだい?――

最初の出会いは諏訪対戦

向こうはボロボロだった。

 

 

 !! これは…

 

――あんたらさぁ……、もうくっつきなよ――

赤い顔で否定するあいつ

 

――ハァ、あんたそんなことでウジウジ悩んでたのかい?――

その後、付き物がとれたようにすっきりした様子になったさやか

 

 

 ……成る程、こりゃダミーを作ったのも納得だ。

 安心しな。"あんた"の分までしっかり面倒見てやるよ

 

 

 え?なんでそんなにすんなりと受け入れるかって?

 そんなもんなんだよ。妖怪や神ってやつは。

 

 

 さて、さしあたっては…

 

 

 

 再会の蹴りでも浴びせようかねぇ!

 

 

 

 

 

 どど、どういうことだオイ

 

まどかがいきなり凛々しくなって魔法とは違う力も使い始めたのもあるし、魔法使い魔の三人がいきなり喋りだしたのも驚いたが

 

、魔女に敵意を持って対峙すれば、呆然とするしかねぇ。ゆまもマミもほむらもさやも、まどかでさえ訳がわからないという顔を

 

している。しかし、そのなかでいち早く復帰したのはまどかだった。

 

「我祖は…………美樹之加護を希ふ」

 

まどかが洗練された早口で呪文を紡ぎ、アタシたちに札を投げつける。

 

「これを身につけて! さやか様の加護が受けられる!」

 

 加護?

 

そう疑問に思うや否や、周りの景色がゆっくりと流れ始めた。

 

 魔女の仕業か!? いや、それにしてはこれは……?

 

魔女の次の攻撃に身構えたが、特に体が動かしにくいとかではなく、正常に動く。

 

「美樹様の加護は思考と体のスピードを上げる。そして」

 

カチリ、と音がして、世界がモノクロに変わった。

 

「時間系の能力と魔法は受け付けない」

 

魔女の顔が驚愕に染まる。アタシたちだってもう驚きっぱなしだ。

 

 えーと、なんだ? 使い魔が寝返って? まどかが戦えるようになって? 魔女の強力な能力も対処できるようになって?

 

 

 もう何でもアリになってきやがった

 

 

 

「……取りあえずあの人間達を治すべきだよね」

「そうだね」

「誰がやるんですか?私は気しか使えないので、自然回復力は高められますが、治癒はちょっと……」

「アタシは軍神だし……」

「私は祟る方が専門だから……」

「「「……」」」

「「こいつは私達が食い止めるから行って、中国」」

「美鈴です!! って言うかなんで私何ですか!?」

「「人当たりが良くて、優しいから」」

「それはあなた達もでしょう!?」

「「黙れ、三面ボスがしゃしゃり出るな」」

「だからそれはメタ……、はあ、もうわかりましたよ。さやかのこと頼みましたよ」

 

 

あの三人は使い魔だったからなのか、平然としゃべっている。

 

魔女はそれに業を煮やしたのか、剣を振るい、衝撃波で三人を消し飛ばそうとした。

 

 

しかし、しめ縄を背負ったやつと、麦わら帽子みたいなものをかぶった奴が、手をかざしてなんともなしに止めた。

衝撃の余波で二人の髪が凛々しく揺れる。

 

かなりの威力を込めたものだったのだろう。あっけなく止められたことで、魔女の表情が驚愕に染まった。

 

 

「あなた程度の魔力で私達を斬れると思いましたか?」

「所詮は偽りの神力、そんなもので斬ろうと思うなんて…ハ、笑っちゃうね」

「半殺しで済ませてやろうと思ってたのに…生き急いじまったねえ」

 

戦輪が、御柱が、静かにポツポツと表れる。

 

一つ一つが淡く輝いていて、そこに込められた威力は、アタシ達が戦っていたものとは比べ物にならなかった。

 

「え~、大丈夫ですか?」

 

そこへ美鈴が心配そうに聞いてくる。

 

「あ、矛は納めて下さいね。戦う気はありませんから」

「……何が起こっているの? どうしてあなた達は寝返ったの?」

「それはですね。色々と割愛しますけど、使い魔の支配権を無理矢理乗っ取りました」

 

端折りすぎている説明に若干あきれた。

 

「そんなことが可能なの?」

「出来たんだから出来るんじゃないですか?それとどうして寝返ったか、でしたか? 頼まれたからが半分。私的なものが半分です

 

かね」

 

失礼しますよ、と美鈴はアタシの手に手を添える。

 

すると、体の内部からぽかぽかと温かくなってきた。

 

「気の流れを調節しました。わずかですが回復力が上がるはずです」

「なあ、あんたらはさやかとはどういう関係なんだ?」

 

さやかには使い魔に選ぶほど深い縁があり、美鈴達は手を貸すほど仲がいい。

おそらくさやかの言う前世に関係しているのだろうけど、気になった。

 

そうですね、と美鈴は顎に手をあてて少し考えた後、

 

 

「受け継いだ親友、です」

 

こう答えた。

 


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