転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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さて、ここから本格的に東方要素が入ってきますよ。


21話 三人の死闘 前

 

 

斬る かわす

 

かわす 斬る

 

突く 折る

 

受け流す 突く

 

どれ程この応酬が続いただろう。

 

もう数えるのも億劫だ。

 

ギン!!

 

今ので48合目

 

剣はまだ折れてない。

 

 

 

分かってきた。

どう返せば威力を殺せるか

 

例えば、この袈裟斬り

 

ただ愚直に受けては駄目。

強引に滑らせるのも駄目。

相手の軌道を読み切り、それに合わせるだけ!!

 

敵の剣はあたしの剣を滑って、空を切る。

 

体勢が崩れた瞬間、すかさず突きを繰り出す。

 

あたしと敵の間が不自然に開き、剣は届かない。

 

だけど、

 

「はあ!!」

 

斬撃は届く!!

 

敵は体を無理矢理ひねり、回避するが、わき腹にかすった。

 

やっと……2回目……

 

どこのオレンジ頭の修行だよ……

 

いい加減限界も近い。

 

『がんばって』

 

 ……うん。がんばる

 

さっきからまどかの応援が命綱。

 

同時に、敵の能力の使用に、インターバルが生じるようにもなった。

多分、杏子達との戦闘にリソースを割いているからだと思う。

おかげで、かなり戦いやすくなった。

 

 なったんだけど、よりにもよって……

 

「何で神奈子達を召喚するかな!!」

 

 どこにそんな力を残してたんだよ。

 

しかも、あたしの親友を召喚するなんて、趣味悪すぎ。

 

 どうする? 今の杏子達に勝ち目なんて殆どない。

 

何せ相手は、2000年以上生きる有名な神二人と、いつもは冴えないが、近接戦闘に置いては無類の強さを誇る妖怪。

いくらか本物より劣っているとは言え、よっぽどセンスが無い限り、弾幕ごっこ初心者がノーマルをクリアできるはずが無い。

 

「いい加減くたばれよ!!」

 

 早くケリをつけないと……!!

 

 

 

 

 

魔女が腕を振り上げたことで始まったこの戦い。

 

 開始早々、赤い服を着た使い魔の一人が、一枚の札を取り出す。

 

――「エクスバンデッドオンバシラ」ー―

 

光が収束し、そこから空中に御柱が出現する。

 

「散れ!!」

 

杏子がそう叫ぶのと同時に、御柱が一斉に襲いかかる。

当たりそうなのを瞬時に予測し、避ける。

 

御柱が地面にやすやすと刺さり、地面を砕き土煙が上げる。

 

 これは、当たるとまずかったわね。

 

「ほむら!! マミ!! 無事か!?」

 

御柱の向こうから杏子が叫ぶ。

 

「ええ! 無事よ!」

「こちらも!」

 

どうやらマミも無事らしい。

 

 でも……

 

「分断された……」

 

眼前には高く聳え立つ御柱。

 

 不味いわね

 

 さっさとこれを超えて杏子たちと合流したいけれど……

 

土煙の向こうから人影が見えた。

警戒しつつ、両手にベレッタを構えて、相手を見据える。

 

相対するのは大陸風の緑の服を着た女の使い魔。

 

この感じ、ただの使い魔、って訳でも無さそうね。

 

「本当に、美樹さやかには手を焼かされる」

 

躊躇なく引き金を引く。

甲高い銃声を上げて、銃弾が使い魔に向かって突き進む。

だけど、あろうことか美鈴は、銃弾を掴んで止めた。

 

「……厄介ね」

 

 避けるどころか掴み取るなんて……

 

少しの間開いた口が塞がらなかった。

 

使い魔でこれだと、あの魔女に私が打てる手は、全くないかもしれない。

 

 先が、思いやられるわ……

 

御柱の向こうからも、戦闘音が響き始める。

援護に回りたいけど、許してはくれないでしょうね。

 

今は、目の前の敵を倒すことに集中しましょう。

 

意識を美鈴に集中させる。

 

美鈴は静かな動作で、一枚の紙を取り出し、掲げる。

 

――彩符「彩雨」――

 

 

色鮮やかな球体が出現し、縦横無尽に駆け巡る。

 

まさしく、弾幕

 

はたから見れば、それは綺麗な軌跡を描いているに違いない。

だけど、その渦中にいれば、そんな悠長なことは考えていられない。

 

「くっ……」

 

どの球体が当たるとか、当たらないかを瞬時に弾き出し、撃ち落とし、避ける。

 

「これがどうして"ごっこ"なのよ……!」

 

空間把握能力、予測能力が無いと対処など不可能。

 

 妖怪にとって、これぐらいは児戯に等しいと言うの!?

 

チリチリ

 

本能の従うままに前に体を投げ出す。

 

さっきまでいた場所が、使い魔によって、踏み砕かれる。

 

弾幕ばかりに気を取られすぎていた。

 

体勢を立て直す間もなく、迫る美鈴。

 

踏み込みと共に出された肘打ちを顔を傾けて避ける。

同時に、銃口を美鈴の体に向け、発砲

 

しかし、銃口をそらされて弾は空を切る

 

使い魔が畳んでいた腕を開いて、顔に裏拳を繰り出す。

腕を間に入れて、ガード

 

したはずだった。

 

 

 

次の瞬間、額に衝撃が走り、そのまま美鈴からすさまじい勢いで離れていく。

勢いは御柱に背中から激突するまで止まらなかった。

 

「ぐ……う……」

 

衝撃で視点が定まらない。

 

防御を抜かれた。それに、ただの腕の開閉だけで、この威力。なんという技術。

 

影が差し、弾かれるように横に転がる。

使い魔の足が御柱に突き刺さり、砕いた。

 

まともに食らえば、命はない。

 

接近戦は向こうのフィールド

 

――幻符「華想夢葛」――

 

 

息つく間もなく、新たな光弾が襲う。

 

かと言って、遠距離からの攻撃にも抜かりはない。

 

そこでふと、考えが浮かぶ。

 

本体が駄目でも球体ぐらいなら……。

 

手を左手に装着した盾に添えて……、時を止めた。

 

世界がモノクロへと反転し、球体もその動きを止める。

 

使い魔も時の束縛からは逃れられなかったらしい。

 

 僥倖ね……

 やっと、一息入れられる……

 

そう気を抜いた瞬間、足が体を支えられなくなる。

 

どうやら先程の一撃のダメージは思ったより深かったらしい。

 

「急がないと……」

 

あまり長く時間は止めていられない。

 

覚束ない足を叱咤して袖のギミックを作動させ、爆弾を取り出す。

本来なら対魔女用だが、この敵ならば心もとないぐらいだ。

スイッチを入れ、使いまの足下に設置。

 

そして、時間停止を解除すると同時に爆破

 

 これで……

 

煙の向こうを油断なく凝視する。

 

それが、いけなかった。

 

ゴリッ

 

背中に抉りとられるような衝撃

 

「ごふ!?」

 

 しまった弾幕!?

 

咄嗟に時間を停止

 

視線を前に戻すと、所々ケガを負っているものの、しっかりと使い魔が拳を突き出していたところだった。

 

後一瞬遅れていたら、とゾッとする。

 

油断していた。

綱渡りを終えたと勘違いしていた。

ここはまだ綱の上。まだ半分にも達していない。

 

 落ち着いて。さっきから自分の戦いらしくないわ。

 

ともかく、時を止めることが有効であることがわかったことは大きい。

これならば、弾幕は楽に避けられる。

接近されたとしても、容易に距離は取れ、あわよくばカウンターも狙える。

火力だって、対魔女用爆弾をならば、十分ダメージは与えられる。

 

問題は、時間停止している間

 

隣から音は聞こえてこないから、おそらくは他の使い魔も時間停止の影響を受けているはず。

しかし、魔女には影響がないだろう。

今のところ、動いていないのは幸いだけど、もし動けるようになられると、時間停止は使えなくなる。

 

できるだけ、早く倒す必要がある……。

 

今度はC4爆薬を使い魔の周りにセットする。

対ワルプルギス戦用に取ってお置いていたけど、この際だ。

 

「これで…」

 

ポチッ

 

C4が爆発し、爆薬が美鈴に牙を剥く。レンズ効果もあり、その威力は倍増する。

手応えもあった。弾幕も襲ってこない。

 

しかし、煙は一向に晴れない。

 

 まだ生きていると言うの……?

 

これで倒れなかった場合のシュミレーションを構築していく。

魔力で煙を飛ばしたくなる衝動をぐっと抑える。その隙をまさにあの使い魔は狙っているかもしれないのだ。

 

 そして……

 

「……ふう」

 

うつ伏せで地に伏した使い魔を確認。

 

爆発に巻き込まれたその体は記すのも憚られる状態だった。

 

ただ一つ記せるのは人の形は保っていることだけ。

 

 手強い相手だったわ……

 

袖のギミックを作動して、スナイパーライフルを取り出す。

 

さて、どちらの援護にまわりましょうか……

 

敵に背を向ける。

 

 戦況を見て判断しましょうか……

 いや、そんな回りくどいことをしなくても、時を止めてC4を爆発させれば、それで跡形もなくなるわね。

 

 

 跡形も……?

 

違和感が全身を駆け巡る。

何か致命的なミスを犯しているような感覚。そしてそれを私は見逃している。

 

 もし跡形があれば……

 

 

  どうなる?

 

ジャリッ

 

本能的に振り向いてライフルを盾にする。

直後、ライフルはまるで薄い板切れのように砕け散った。

そして、コンマ一秒も経たない内に、使い魔の拳が胸にに突き刺さった。

 

よく小説で爆発した、何ていう比喩表現があるけれど、言い得て妙だと感じた。

多分爆発が衝撃波のみならば、比喩ではなくなるだろう。

突き刺さる、というのももう少しで比喩では無くなったかもしれない。

中から、何とも形容し難い音がしたから。

 

テンプレ的に言うならば、

胸で爆発が起き、ぐちゃぐちゃにかき回されたと錯覚した。

 

それぐらいの威力があった。

声の代わりに口から血が吹き出る。

使い魔から伝わった力積は全て、余すことなく私に伝わり、体は弾丸と化す。

そのまま御柱を倒し、向こう側へと私を押しやった。

 

「っ……ぐふ……げほ……」

 

体がまともに動かない。

今度は私が記すことも憚られる状態になった。

御柱に激突した時にミンチにならなかったのは奇跡に等しい。

 

 心臓が、破裂してる……早く、治さないと……

 

魔法で体を修復していくが、損傷している内臓はほかにもたくさんあり、さらに骨が砕けて突き刺さっているから、どうしても時間がかかってしまう。

 

改めて使い魔を視界に入れると、とてつもない速さで体が修復されていた。

 

 なんて……デタラメ

 

ダメだ。このままだと先に相手が回復しきってしまう。

 

使い魔を視界にとらえつつ、手探りで落ちていたベレッタを拾う。

いつも手にしているベレッタがただのゴム鉄砲に思えてくる。

 

視界の端で、杏子が、マミが、膝をついていた。

 

「くそ、あり得ねえだろ……」

「どう……かんね」

 

敗色は、濃厚だった。

 


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