転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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20話 取り戻せ

 

 

 

「……はあ?」

 

さやが寝た後すぐに、マミとまどかが戻ってきた。

 

どっちも決意を固めた顔をして、いの一番に開いた口は

 

――ついて行かせて下さい!!――

 

これだった。

 

マミはいい。魔法少女だし、戦力にもなる。ただしまどか、テメーは駄目だ。

 

ほむらの奴見てみろよ。フリーズしてるぜ。まどかのことになるとすぐこれだ。

 

「うんいいよ」

「そうだ、い……て」

 

やけにくぐもった声が後ろからするので、後ろを向くと、起きてドーナツをほうばるさやを視認。

 

 また勝手に食いやがって……!!

 

 いや、今はそれよりも

 

「なぜかしら? 巴マミはともかくとして、まどかは足手まといにしかならない。契約させる気かしら?」

 

アタシの代わりに、フリーズから立ち直ったほむほ…ほむらが言う。

 

「まどかはあたしと一緒に結界の外にいて、さやかに呼びかけてもらう」

「それだけの為に? あってもなくても関係無さそうだけど」

「さっきの話聞いてた? 魂の主導権争いは、言わば精神世界での戦いなの。だから、現実では微々たる変化しか与えない声援とか、モチベーションをあげる要素が重要になってく

 

るの。わかった? ほむほむ」

「……ほむらよ」

 

 そろそろ諦めかけているな、ほむほむ…ほむら

 

「ほむほむちゃ……」

 

 言っちゃったか……

 口を押さえても、後の祭りだぞ。

 

「………もう、何とでも呼べばいいわ……」

 

ほむ……らは蹲って、ほむー☆ほむー☆言い始める。

 

 カリスマ(笑)ガード…プッ

 

一筋の光筋が見えるのは気のせいだろう。きっとそうだ。

あわあわと手をさ迷わせてどうしようか混乱しているまどかと対照的にさやはすんごく満足気な顔をしている。

 

「ほむほむが一緒に来てくれれば、とっても嬉しいな」

 

さやはさらに追い打ちをかけにかかる。

そこに容赦の二文字は存在しなかった。

 

「誰があなた何かに……」

「まどかはついて来て欲しいらしいけど?」

 

ほむほむ……ほむほむはまどかに視線を向ける。

まどかはおずおずと、だけどしっかりと首を縦に振った。

 

「ほむらちゃん、私は、魔法少女にはなりたくない」

「え?」

「だから、代わりに戦ってくれないかな?」

 

お願い、と頭を下げるまどか

 

ほむほむに選択肢は無かった。

 

「………認めるわ。私の完敗よ」

 

見誤っていたわ、と髪をかきあげるほむほむ。

 

「それじゃあ……」

「私も行くわ。ただ、勘違いしないで。私はまどかの為に行くのよ。」

 

 ツンデレ乙

 

「何か言ったかしら杏子?」

「いや、何も」

「そういうことにしとくよ。杏子、説明は任せた」

 

と、さやはそのまま横になった。

 

 ………今度こそ、寝たよな……

 

「さやちゃんって、傍若無人だね」

 

まどかは床に散らばった菓子の袋をテーブルの上に片付けて……片付け……

 

「ってほとんど食われてんじゃねえか!!」

「気付いて無かったの? さやさんすごい勢いで食べてたわよ」

 

安らかに眠るさやだが、よく見ると口元に食べかす、手に砂糖がこびりついている。

 

「フフ……クフフ……」

「ダメよ佐倉さん。」

「放せマミ。あいつマジぶっちKILL」

「ちょ、杏子ちゃん落ち着いて……」

「アタシは十分落ち着いてる」

「ほむらちゃんもおさえてよ!!」

「それには及ばないわ」

 

その日、ぐっすりと眠るさやのそばで、大乱闘がささやか(ホテル内で流石に槍は振るえない)に行われた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「円」

「はい」

「今からあんたに、禁じ手を教える」

「禁じ手、ですか?」

「これは、ある条件下のみ、行っていい術式。」

 

 もしも、もしもあたしが……

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

「ここね……」

 

駅の近くの工事現場

 

そこにアタシ達は集結していた。

 

「ええ。ソウルジェムも反応しているわ」

「ここに、さやかちゃんが……」

 

緊張しているまどかの肩をさやが叩く。

 

「今から緊張してどうするのよ。それにあたし達は信じて待つだけだから、意味無いし」

 

ほら、行くよ。とさやはずかずかと工事現場に入っていく。

 

「私達も行きましょう」

 

ほむらもその後に続いた。

 

 ……お、普通にほむらって言えた

 

「行きましょう。鹿目さん。佐倉さん。ゆまちゃん」

 

「はい。」 「おう。」 「うん!」

 

 

 

カツン、カツンと足音が響く。

 

それにしても、奇妙だ。

 

魔女の結界の近くは通常空気が澱んでいる。

さやかも例外では無かったが、何処か他の魔女とは一線を画している感じがする。

 

 これも妖怪化の影響か…?

 

『中々興味深いことになっているね』

 

そんなことを考えていたら、上から今絶賛聞きたくないランキング一位に入っている声が降りかかってきた。

 

視線を上に向けると、キュゥべえが鉄骨の上に鎮座していた。

 

「キュゥべえ…」

「何しに来たのかしら、インキュベーター?」

『僕も見届けに来たんだよ、暁美ほむら。美樹さやかがどうなるのか、確かめにね』

「あなたがこんなことに興味を持つなんて、どういう風のふきまわしかしら?」

『僕達にも知りたいことぐらいあるよ。そして今回、さやかがその鍵を握っている』

「妖怪のことか?」

『そうだよ』

「……ねえ……。目的とかどうでもいいけどさ、あいつ連れてかない?」

 

キュゥべえを見ながら、さやはそう呟いた。

 

「あいつ多分、あたし達の最高の囮になると思う」

 

 ……凄く良い考えだ。

 

「マミ!!」

「わかったわ!!」

 

マミのリボンがキュゥべえを捕らえる。

 

「囮も手に入ったところで、さやかもすぐそこ、さっさと行こ」

 

と、さやが一歩踏み出した瞬間

 

ブシュッ

 

さやの至るところから、血が吹き出た。

 

「うぐ!?」

 

たまらずその場でさやは膝を着く。

 

「さやちゃん!?」

「駄目!! 出ないでまどか!!」

 

 魔女の攻撃!? 結界の外だぞここは!?

 

まどかを中心にして、円陣を組む。

さやが受けた攻撃の正体がわからない以上、迂闊に近付けない。

 

「……美樹さんはとんでもない魔女を生んだようね」

「そのようね。」

 

マミとほむらが警戒しながらそう言う。

 

「~~~~っ。ここまで手酷くやられてんのかい。情けな」

 

さやが前方を睨み付ける。

 

バリバリッ

 

睨み付けたところに亀裂が走り、空間が裂け、魔女の結界の入り口が現れた。

 

「……これは魔女の攻撃じゃないから、構えなくていいよ」

 

構えを解いて、さやの方へ駆け寄る。

 

どうやら、致命傷となる傷はない。

 

「ゆま」

「うん」

 

ゆまが杖を振ると、さやの傷が塞がっていった。

 

「さやかの受けた傷が、こっちに跳ね返ったみたい」

「決着はついたのか?」

「いや、まだみたい。でも、大分マズイっぽい」

「なら、早く行きましょう」

「ええ」

「皆……」

 

まどかは心配の色を必死に隠している。

 

やっぱり不安なものは不安らしい。

 

「杏子、マミ、ほむら、ゆま」

 

――必ず、生きて帰って来なよ――

 

その言葉を背に、アタシ達は結界の中に飛び込んだ。

 

◆ ◆ ◆

 

『きゅっぷい!?』

 

開始一秒で囮は消えた。

全く以て使えない囮だった。

廊下にキュゥべえだったものが散らばる。

 

 

廊下の壁には、モニターが備わっていて、とある場面を映し出していた。

 

「これは……」

 

~~「一人ぼっちは、さみしいもんな。」~~

~~「いいよ、一緒にいてやるよ。さやか。」~~

 

アタシが、魔女と心中していた。

 

「ねえ、あれ…」

 

マミが指差すモニターが次々と映像を映し出していく。

 

~~「なんであたしは生きてるの?」~~

 

生きていることに困惑しているさやか。多分直後のことだろう。

 

 

――…うわああ!?来るな化け物ォ!!――

 

逃げる青年の背中、力なくおろされた手。

 

それを皮切りに他のモニターも次々と映像を映す。

 

――消えろ!!二度と来るな!!――

 

武装した集団がこっちに矛を向ける。

 

 どうして?

 

「ぐっ!」

 

頭が痛み、手で押さえる

 

頭に……何か、入ってくる。

 

これは……さやかの感情?

 

――お前のような悪は消え去るのが義務なんだよ――

 

 どうしてあたしは歩み寄ろうとしているのに……

 

――ごめんなさい。さやか様……――

 

地に伏した巫女姿のまどか。

 

 どうしてあたしに牙を剥く

 

 どうして…

 

モニターが一つになり、ある光景を映し出す。

 

――……わりぃ……――

 

それは、さやかの腕の中で一人の青年が動かなくなる映像だった。

 

 あたしの大切なものを奪い去る!!!!!

 

直後、景色が目まぐるしく変わる。

 

守る

 

この世界があたしから大切なものを奪うなら、

 

護る

 

自分の世界を創る

 

まもる

 

それでも侵略するモノがあるなら、

 

マモル

 

あらゆる手段を使ってでも……

 

突き当たりにあるドアが次々に開き、そして、あの場所に着いた。

 

コロス

 

魔女は、神社の障子の前で座禅を組んでいた。

 

「佐倉さん、暁美さん……」

「なんだ」 「何かしら?」

 

マミは静かにマスケット銃を構える。

 

「あのモニター。不幸な時の記憶しか映して無かったわね」

「そうだな」

「私、幸せな頃の話も見たくなったわ」

「見るのは無理だな……」

 

槍を構える。

 

「後でじっくり話してもらおうぜ」

「そうね、私も興味があるわ」

「ゆまも! さやかお姉ちゃんの話、聞いてみたい」

 

ほむらも銃を構え、ゆまはステッキを構えた。

 

今、さやかに同情する暇なんてない。あるのは、目の前の魔女を倒す時間だけ。

 

魔女は動かない。

 

ただ、手を床に置いた。

 

それがトリガーとなって、魔方陣が現れる。

 

その数は三つ。

 

マミが生き返った時に見たものとはまた違う。

 

その中で、人の形をしたものが形作られていく。

 

そうして出てきたのは、

 

紫の服で頭にカエルのような帽子を被った幼女と、

 

胸に鏡がある赤い服で、背中にしめ縄を付けている、女性と、

 

大陸風の緑の服で、燃えるような赤い髪の女性だった。

 

「AAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

魔女の咆哮で、戦いの火蓋が切って落とされた。

 


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