転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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18話 現状の把握

 

 

 

 

その時の対応は十人十色だった。

 

ほむらは驚きに目を見開き、あり得ない、と呟き、

 

まどかは歓喜にうち震えて、何も言えず、

 

ゆまはただ安堵し、

 

マミは事実を知ったショックでいっばいいっばいで、展開に着いていけず、ただ呆然としていた。

 

そして杏子は

 

手から伝わるぬくもりは確かにさやかのものなのに、何故か強烈な違和感を感じざるを得なかった。

 

その中でさやかは起き上がり、それぞれを視認した後、

 

「何で線路の上?」

 

と至極真っ当なことを呟いた。

 

――――――――――――

 

 

 

あの後、場所を変えようと言うことで、アタシがアジトにしているホテルに移動した。

 

「あんたさやかじゃねぇよな」

 

部屋に着いた早々に、キュゥベエを見つけ出し、窓から放り投げた(10階)さやかに尋ねる。

 

「いつから気付いてたの?」

「てめえが起きた時からだ」

「まあわかっちゃうか。杏子が言った通り、あたしは美樹さやかじゃないよ。まどか達に状況を伝えて、この体を生きながらえさせる存在」

 

さや、って呼んでね、とさやはそう自己紹介した。

 

「じゃ、じゃあさやかちゃんは!? さやかちゃんはどこにいるの!? 生きてるよね!?」

 

まどかがさやに詰め寄る。

 

「最初の質問から答えると、さやかは今魔女の結界内にいて、生きているはず」

「はず、とはどういうこと?」

 

ほむらが尋ねる。

 

「うん、さやかの記憶では魔方陣を起動した後、魔女化と魂の妖怪化の完了が、ほぼ同時に起こったようでさ。いまのさやかの状態は半分魔女で半分妖怪な状態なんだ。わかった? ほむほむ」

「ほむ……ほむらよ。」

「ちょ、ちょっと待って!! 妖怪化ってどういうことなのかしら?」

「そ、そうだよ!! さやかちゃんは人間だったよ!!」

 

マミとまどかは初耳だと言わんばかりに詰問する。

 

「さやかの魂は元々妖怪だったんだ。それが無理矢理人間の体に入っていただけ。今回魔法少女となったことでその枷が外れて、妖怪化が進行したんだ」

 

まあ遅かれ早かれ妖怪化してたかもね、とさやはクローゼットの中に隠れていたキュゥべえに、手を伸ばす。

 

キュゥべえが手を避けて、飛び上がる。それを見越していたさやは、空中で身動きが取れないそいつを窓へ華麗にシュート。

 

「それじゃあ……さやかちゃんはもう元には戻らないの?」

「少なくとも、人間には戻ることは不可能かな。でも、そんなおぞましい容姿になったりはしないよ。ちょっと大人びるぐらいで」

 

 魔女化寸前に言った言葉はこういうことか

 

さやかの直前の言葉を今更ながらに理解する。

 

まどかはよろよろとベッドに座りこんだ。

 

 無理もないな……

 

この短時間で希望と絶望を、何度も行ったり来たりしている。精神も限界のはず。

 

並の魔法少女だったらもう三回ぐらいは魔女化してるんだろう。

 

「その反応……あなた達は知っていたのかしら?」

 

マミはアタシとほむらの反応が違うことに気付いて、尋ねてくる。

 

「……最初自分が妖怪だった、って言われた時は、ふざけているのか、と一蹴さえしたわ。到底信じられることではなかったから」

 

髪をかき上げながら、ほむらは返答する。

 

「でも、美樹さやかのソウルジェムがグリーフシードから、穢れを吸収するのを見た時、それは一気に信憑性を帯びた」

「アタシも度々あいつが、こう人がしないような、凶悪な笑みを浮かべるのを見たことがあるしな、てめえも見たろ?」

 

チョコをほうばりながらまどかに話をふる。

 

「うん」

「あの時、あいつの妖怪化はかなり進んでいたはずだ。思考も妖怪らしくなっていたんだろ。だからあいつは、アタシ達から離れた」

「そう、だったんだ……」

「魔女化する必要はあったのかしら?妖怪化が完了すれば、それで良いように思えるのだけど」

 

話を遮るようにほむらは質問を続ける。

 

「あるよ、ほむほむ。妖怪化が完了すると、ソウルジェムで動かしている体は人間の体だから、そこに矛盾が生じて、体を動かせなくなる。だからこそ、魂をソウルジェムから開放して、この体に移すために魔女化が必要だった」

「"ほむら"、よ」

 

今ちょっと強めに訂正したな。

 

「魂を移す?」

 

マミのオウム返しにうん、とさやは相槌を打つ

 

「先も言った通りだけど、現在さやかは半魔半妖(?)な状態なの。それでさ、あんた達が見たさやかはどんな姿で、何をしたの?」

「何って、魔女の結界を形成して、アタシ達に襲いかかってきたな。なのに容姿はやけに大人びていたさやかだった。後、妙な青い双剣を持っていたな……」

 

青い双剣、そう言った時、さやの表情が変わった。

 

「……時を止めたり、空間を歪めたりは?」

「それはしていなかったわ」

 

なら大丈夫かな……、とさやは顎に手をあてて、考えこむ。

 

「何が大丈夫なんだ?」

「あ~後で話す。で話を戻すけど、多分もう、魂の主導権争いが始まってるはずなの。因みにさやかは妖怪の方」

「勝ち目はあるのか?」

「出現する魔女によるかな。ただし、あなた達が援護出来るなら、勝率は上がる」

「どういうことだ?」

「ほむほむ達の話では魔女の部分も表に現れている。魔女と妖怪の戦いは、あくまで魂の喰らいあいだけど、外からの攻撃には対応している方が対処しないといけなくて……なんて言うかな? とりあえず言いたいことは、魔女の部分を攻撃すれば、援護になるってことなんだけど」

 

 成る程、そういうことなら

 

「その役目はアタシが引き受ける」

「杏子ちゃん……」

「1つ聞くけど、あんたは人じゃなくなったさやかを受け入れてくれる? けっこーさやかって臆病なんだよね。」

 

さやかが試すように聞いてくる。

 

 ……ハッ

 

 んなもん決まってる

 

「当たり前だろ、アタシは妖怪だろうがなんだろうが、気の合うやつなら関係ない。それに、また頼まれたしな」

 

しばらく目を合わせていると、さやが穏やかに笑った。

 

「わかった。さやかを頼むね」

「ゆまも! キョウコがいくならゆまも行く!」

 

ずっと黙っていたゆまも名乗りを上げた。

 

 ……今アタシゆまの比喩じゃない墓穴ほったか?

 

「だm……」

 

 止めてそんな泣きそうな顔しないでくれ、断れない。

 

「ゆまだって役に立つもん!」

「確かに、戦術においては僧侶は重要だよね。相性最悪のほむほむよりは役に立つんじゃない?」

 

ここでさやが加勢。て言うか今の言葉ほむらに刺さってたぞ。

『てめえどういうつもりだ!』

『どーしたもこうしたもないでしょ。もうこれ断られても絶対付いていく感じだよ? それに、もし杏子が死んだらゆまは確実に後追いするよね?』

 

ぐっと言葉を詰まらせる。

実際、ゆまのアタシへの依存は対処すべき問題だ。

ゆまは幼い頃からの虐待によって必要とされないことを何よりも嫌う。

その点から言えば、愛情を求めてアタシに鞍替えしたのは当然だ。

でも、アタシは早くゆまが独り立ちしてほしいのが本音だ。

だがしかし、その前に死んでしまったら元も子もない。

 

「……はぁ、わかったよ。但し、こいつの言う通り回復役に撤しろ。」

 

あたしは折れることにした。

 

さやはまどかの方に体を向ける。

 

「さやかは後悔してたよ」

「え……?」

「あの時は焦っていたとはいえ、きつい言葉を投げ掛けたことを、謝りたいって、土下座しよう、と思ってた。そのことは妖怪になっても変わらない。もしかしたら、あなたの声がエールとなって、届くかもしれないね」

「土下座なんて、わたしがするべきです」

「え?」

「あ、なんでもない。わかったから……」

 

 

続いて、マミに。

 

「……多分どうして生き返らせたのか、と疑問に思ってると思うけど、さやかはあなたともっといたかったらしいよ。」

「え?」

「マミと喋り、笑いあい、楽しく日常を過ごす。そんな当たり前のことを願ってた」

「どうしてなのよ。人じゃ無くなるのに、どうしてそんなことが言えるのよ……」

「逆に言うけど、人でなければ、ヒトの営みは歩めないの?」

 

ようはバレなければいい、と得意げに宣言するさや。

 

「妖怪は人より残酷だ、なんて言われるけど、人は時に妖怪よりも残酷になれる。ま、価値観の違いがあるのは認めるよ」

「……少し考えさせて。私はそんな風に割り切れない」

「うん。これは押し付けられるもんじゃないしね。自分なりに考えて、折り合いをつけて」

 

最後にほむらに向き合うさや

 

「ほむほむも、来る?」

「お断りするわ、後ほむらよ」

 

私は足手纏いにしかならないから、と髪をかきあげながら答えるほむら

 

「そんなほむほむに伝言」

 

 後で一発殴らせろ、だってさ

 

今度は外の壁に張り付いていたキュゥべえを、殴り飛ばしながら、言うさや。

 

「……期待しないで待っておくわ」

 

変わらない表情(ちょっと疲れている)で、だけど、少し穏やかな雰囲気になるほむら

 

「さてと、杏子とゆまには色々と教えないとね」

「まあいいんだけどよぉ……、何でさっきからキュゥべえを、物理的に追い出してるんだ? 別にそんなことしなくても結界張れば良いんじゃねえの?」

 

さっきから誰も咎めなかった行為の理由を尋ねる。

 

「結界はかなり魔力を消費するの。そんなことしたらあたし、3時間も起動していられない」

「は!? じゃあ後何時間起きてられんだ!?」

「んーと、後20時間程度かな」

 

寝るとその限りじゃないけどね、とさやはあたしの菓子が入った袋から、チョコレートを取り出す。

 

「ん、おいし」

「おい、勝手に食うなよ」

「杏子結界張って。そこで話すから」

「無視すんな!! まどかも何か言って……てあいつらどこいった!?」

 

いつの間にかマミとまどかが忽然と姿を消していた。

 

「もう遅いから帰るってさ」

 

ささっ、早く早く、と急かすさやに若干イラつきながらも結界を張る。

 

「ほむほむも聞くだけ聞いときなよ。新しい攻撃スタイルが見つかるかもよ」

「そうね。見付からないとは思うけど、お言葉に甘えようかしら」

 

さて、周りにキュゥべえも隠れていないし、盗聴されている感じもない。

 

「じゃあ、どこから話そうかな……」

 

さやの語りが、始まった。

 

「まずさやかの…」

 

 


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