転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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13話 課題と異変

 

 

 

「あ~、駄目だ……」

 

さっきまで色々と書きつらねていたメモを丸めて捨てる。

あれから二日、マミを生き返らせようと色々準備してみたけど、そこで問題が生じた。

 

 

まず、魔力の質の違い。

 

 

キュゥべえは魔力さえこめれば再生できる、と言っていたけど、あくまでそれは自分の体の話。

他人の体では話が違ってくる。あたしの魔力で作った体では最悪マミと拒絶反応を起こして、生き返った瞬間にまた死んでしまうかもしれない。

簡単に言うと灯油で車が動かないのとおなじこと。

 

これは魔力の質をマミに近付けたらいいのだけれど、魔力が余分に必要となる。

 

 マッチポンプ、って言うやつだったっけ?

 

次にソウルジェムの活性化、というより思考の誘導

 

今、マミの魂は死んでいると勘違いして、思考が働いていない、というかできてない。死んだら何もできなくなると、マミが思いこんでいるからだ。

魂だけでも活動できるとか、死んでもやりたいことがある、と思っている人が幽霊となっても、意識を持って活動できる。

確かそういうことを以前幽々子が言っていたはず。だから、一時的にあたしがソウルジェムに働きかけて思考を共有させ、体を再生させように促す。だけどこれにも結構魔力がいる。

 

そして最後に魔力の必要量

中学生とはいえ、マミの体はほぼ成長しきっている。

肉体を一から作るとなると、魔力がグリーフシード換算で三個程必要となる。

 

それと思考誘導、魔力質の変換を加えて計算すると、最低でも5個必要で、後2個足りない。

 

 グリーフシードから、穢れを取り除ければいいんだけどなあ……

 

そうすれば、何色にも染まってない純粋な魔力が手に入る。

それで体を作り、マミのソウルジェムに支配させれば、後は勝手にマミの体に変化する。

 

 魔力も必要最低限だけで賄えるから、コストパフォーマンスもかなりのものなんだけど……。現実はそう甘くはない。

 

ないものねだりしてもしょうがない、と切りかえる。

 

それによくよく考えて見れば、そこまで焦る必要もない。

ふと窓を見ると僅かに遠くが白みがかっている。

 

「あ~あ、これじゃ殆んど徹夜じゃん」

 

寝ないよりはましかと、あたしはふとんの中に入った。

 

――――――――――――

 

次の日

 

登校すると京介が学校に復学していた。

 

「さやかさんは京介と話さないのですか?」

 

クラスメイトに囲まれている京介を見ながら、仁美は尋ねる。

 

「いや、ここは敢えて話しかけない方向で行きたいと思います」

 

そして話しかけて来たら泣いてやる。

 

「だ、駄目だよさやかちゃん。京介に酷いことしないで!」

 

 ……まどかは何時の間に読心術を習得したんだろう

 

「いや、何時の間にまどかはそこまで京介と仲良くなったの?」

 

そしてツッコミの中にボケを入れる、さすがまどかだ。

 

いや違うよ!? 京介君とは何とも無いよ!? と必死に弁明するまどかだけど、それだと帰って怪しまれるよ。

 

チャイムが鳴り、みんなが席に戻る。

 

 そういやああいう場合は、もうどんな感じに弁明しても聞いて貰えないよね…、逆に弁明しない方が正解、なの……かな…………zzz

 

案の定授業中寝てしまった。

 

――――――――――――

 

放課後

 

「えっと、それで話って?」

 

仁美が何時になく真剣な表情で、あたしに相談事がある、と言うから、近くの店で話すことにした。

 

「相談とは……、恋の話です」

「京介のことでしょ?」

 

今日の仁美の京介に送る視線、あたしに恋の相談を持ちかけること。

この2つで誰が好きなのかがわからない程、あたしは朴念仁じゃない。

 

「そうですか……なら話は早いですわね。さやかさんの言う通り、私は上条京介をずっとお慕いしていました」

「ング……なら告白すればいいじゃん」

 

ホットドッグを頬張りながら応対する。

 

「さやかさんはどうなのですか?」

「え?」

 

 なんでそこであたしが絡んで来るの?

 

「あなたは京介さんをどう思っているのですか?」

 

 うーん。あたしにとって恭介は、やっぱり……

 

「ただの親しい男友達。確かに好きだけど、この感情はあくまで友愛。loveじゃなくてlikeの方」

 

だから、と続ける、

 

「どうせ仁美のことだろうから、一日猶予をあげるとか、そんなことを言うんでしょ?そんなことしなくても、あたしが京介に告白することなんてない」

 

あたしが愛すると決めた人はあいつだけ。

 

まあ、流石に演奏ぐらいは聞きに行ってもいいよね、と付け加えておく。

 

「男友達のわりには、よく京介さんに会いに行ってらしたようですけど、そこは置いておきましょう。ですが一日猶予をあげると言うのは、私にとっても心の準備をしたいからです。そこは譲れません」

 

 ホントは心の準備なんて、とっくにできてるはずなのに…、まどかといい仁美といい、ホントいい親友に巡り会えたよ。

 

「わかってるって」

 

頑張れ、と声をかけて、あたしはその場を立ち去った。

 

――――――――――――

 

「ディバイン……バスター!!」

 

黒鍵や弾幕で魔女の動きを制限し、そこに止めの一撃を放つ。

 

 え? 掛け声が違う? そんなもんその場のノリで変わるよ。

 

剣で切り刻んでもよかったんだけど、店を出たあたりから、また体に違和感が出始めたから、今回は遠距離で攻めることにした。

結界が崩れ、元の景色に戻る。

 

カラン

 

グリーフシードが地面に落ちる。

 

 後1個、いやあたしの分も合わせると2個か……

 

「ふう……」

「お疲れ様、さやかちゃん」

「大丈夫だった?」

 

うん、と首肯するまどか

 

 大分魔力使っちゃったな……、あんまり使いたくないんだけど

 やっぱり切り刻んだ方がよかった、とグリーフシードをソウルジェムに近付ける。

 あれ?ソウルジェムの土台ってこんな黄土色だったっけ……?

 

と疑問が浮かんだ瞬間

 

'ソウルジェム'が"グリーフシード"から"穢れを取り込んだ。

 

「っ!!」

 

反射的にグリーフシードを投げ捨てる。

 

 何が起こった? なんでソウルジェムがグリーフシードから穢れを取り込む? あたしのソウルジェムに何が起こった?

 

 わけがわからない

 

頭の中で疑問がスパイラルを巻き起こす。

 

ソウルジェムの結晶は輝いていた。まるで穢れを知らんばかりに

 

ソウルジェムの土台は濁っていた。まるで穢れを欲するように

 

 

「………、……?」

 

 これはソウルジェムの構造がわかるヒントになるかも…、て違う!! そんなこと考えている場合じゃない!! 普通ならあり得ないんだ。こんなことは

 

「さ……、…した…!?」

 

 体に違和感があるのもこれが原因?

 このままだと魔女になっちゃうの?

 まだマミを生き返らせてないのに?

 それにキュゥべえからまどかを守らないといけない。

 あたしには……まだやることがたくさん……

 

「さやかちゃん!!」

 

はっと意識を戻すと、まどかが必死にあたしを揺さぶっていた。

 

「あ……なに? まどか」

 

「何、じゃ無いよ。いきなりグリーフシードを放り投げてから、呼び掛けても揺すってもなにも反応しなかったんだよ!? どうしたの?」

 

現実に引き戻されて幾分か冷静になる。

 

「いや、ちょっと虫がいて、ビックリしただけだから……」

 

虫は昔からほんと苦手でさ~、とグリーフシードを取りに行って取り繕う。

 

 とにかく原因を探らないと

 

マミを生き返らせるどころじゃなくなった。

 

「き、今日はここまでにしようか」

「え?」

「いや、もう遅いし、あたし帰るね」

 

逃げるようにその場を去る。待って、とまどかが引き留める声がしたけど無視した。

 

何かが歪んだ、音がした。

 

  

 

 

 

 いきなりだった

 

 いつもの様にさやかちゃんが魔女を倒して、また探して、帰る。

 

 そうなるはずだった

 

私は見えなかったけど、多分グリーフシードをソウルジェムに近付けた時に、いきなりさやかちゃんはグリーフシードを投げ捨てた。

 

「さやかちゃん?」

 

突然の行動を不思議に思って訪ねてみたけど、返答はない。

不審に思って回りこんで見たさやかちゃんの顔は、ひどく狼狽えたものだった。

 

「さやかちゃん? どうしたの?」

 

顔の目の前で手をヒラヒラさせても、なにも反応を返さない。 それどころかブツブツと何かを言い始める。

 

「さやかちゃん!!」

 

心配になって体を揺する。そこでやっと反応してくれた。

何とか取り繕おうとして笑っているけど、ぎこちなさすぎるそれが、更に心配をあおる。

 

 

「き、今日はここまでにしようか」

「え?」

「いや、もう遅いし、あたし帰るね」

 

 

このまま行かせたら駄目な気がして手をつかんだけど、振り払われる。

振り払われた手を、呆然と見つめる。

 

 さやかちゃんが手を……振り払った?

 

ヒリヒリする手を、おそるおそる戻す。

 

 明日、明日になったら……いつものさやかちゃんに戻っているよね……

 

そう自分に言い聞かせて帰るしか……この言い知れない不安から、身を守れなかった。

 

 


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