転生少女さやか(!?)☆マギカ    作:ナガン

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8話 謀略と契約

 

 

「はあ……ハア……」

 

半ばからぽっきりと折れた刀を捨てる。

 

 後二本か、大事に使わないとね

 

遠く、悠々と町の上空を飛び、町のほとんどを蹂躙していった特大の魔女を睨み付ける。

 

「さやかちゃん……行っちゃうの?」

 

既に息絶えたほむらのそばからまどかが声をかける。

 

「……うん、行ってくる」

「どうして!? ほむらちゃんも死んじゃったのに……」

「だからこそ、あいつを倒せるのはあたししかいない」

「わたしだって、魔法少女になれば、一緒に……」

「まどかはほむらの最後の言葉を聞いたんでしょ?」

 

まどかはぐっと言葉につまる。

 

「それは……」

「あたしも聞いちゃったしね。なおさらだよ。」

 

あたしを一人で行かせたくはない、だけどほむらの遺言をやぶれず、俯くしかないまどか。

 

「ねぇ、逃げようよ……、だって、仕方ないよ。誰もさやかちゃんを恨まないよ……」

「誰も恨まなくても、あたしが後悔する。このままあたしの大事な人達を殺した相手に尻尾巻いて逃げるなんて、絶対にできない」

 

ポタポタと水滴がほむらの頬に落ちる。

 

「まどか。あたしはまどかと親友になれて、本当によかった。だってこんなにあたしを心配してくれるもん。あの時さ、まどかを助けられたことは密かなあたしの自慢なんだ」

 

 まどか、まどかはいつでもどこでもあたしの側で力になろうとしてくれた。

 だから、さよならは言わない。また会えると信じて。

 

 

気付かれないように右足を後ろに少し下げる。

 

「それじゃまどか……」

 

またね!!と背を向けて一気に跳躍

 

まどかの叫びを聞きながら、魔女に突撃した。

 

ガバッ

 

「ゆ、夢オチ……、はあ……」

 

なんつー夢だ、とため息をつく。

 

 なんで玉砕覚悟で突っ込んでるのあたしは? そして何故転校生を親しく名前で呼んでたの? 後殺してごめん

 

ベットから離れて身支度をする。

 

 今日も嫌な予感しかしないわ~

 

 

――――――――――――

 

 

ザーッ ザーッ

 

雨が降っている。

 

「…………!! …………!! ……て」

 

誰かが、わたしに呼びかけている。

 

でも、視界がぼやけて、よく見えない。

 

なんだか、とても眠い。まどろみに意識を任せたい

 

 

「……! ……でよ!!」

 

 

なおも必死に呼びかける声。

 

その時、視界が少しだけクリアになった。

 

 

 

わたしの横で、神社が燃えていた。

荘厳な雰囲気を放っていた、愛着のある社は、あいつらが放った邪悪な火で侵されていた。

 

 あれ?

 

 どうして、愛着があるの?

 

 あいつらって、だれ?

 

「………。…………よぉ」

 

 あ、そうだった。誰か呼びかけてくれてるんだった。

 

その人の顔を見ようと、視線を上げる。だけど残念なことに、炎の逆光で、よく見えない。

炎に無償に腹が立った。

 

それでも、なにか話しかけようとして、口を開く。

 

「ごめんなさい。○○○様」

 

 え? どうして、謝った、の…………?

 

そこで、目が覚めた。

 

「……夢?」

 

 ほむらちゃんの時みたい……。

 

時間を確認すると、いつもの起床時間を大幅に過ぎていた。

昨日は泣き腫らして帰ってきたし、みんな心配してるはず。

 

「…………学校、行こう」

 

 

 

 

 

 

 

いつも通り登校すると、昨日殺したはずのキュウべぇがまどかの肩に乗っていた。

 

……いやまあ確かにその予感はしてたよ。あれでことがすむなら転校生が真っ先に殺しているはずだし。

 

(「……あの、さやかちゃん。昨日のことなんだけど……」)

 

控えめなまどかの念話

 

 やっぱ見ちゃってたか……。

 

(「後で話す。だから今はやめよう」)

 

まどかは何か言いたげだったけど何も言わないでくれた。

 

 

――――――――――――

 

昼休み

 

あたしとまどかは屋上に来ていた。自然と向かいの方に視線が向かう。

向かいの屋上にはやっぱりマミさんはいなかった。

 

 やっぱりそう割りきれないなあ……。

 

「……さやかちゃんは、魔法少女にだったの?」

 

まどかがこう切り出した。

 

「違う。あれはあたしが生まれながらに持っていた能力(ちから)」

 

手を広げてその上に霊弾を一個作る。

 

「あたしは霊力って呼んでる。」

 

手を振って霊弾をかき消す。

 

「それで……魔女を倒したんだよね?」

「……うん、そう」

「どうして、最初に言わなかったの?」

 

やっぱわかっているけど聞いちゃうもんだよね。

 

「この力は、今の人には過ぎたもの。露見したら、奇異な目で見られちゃう……。それに、まどかに嫌われたくなかったから。おかしいよね、まどか達があたしを嫌うはずなんて万が一にもないのにね…」

「それは……!! そう…、だよね……」

 

まどかは顔を俯かせた。

 

「わたし、怖くなっちゃった……」

 

あたしの弱気な発言にあてられたのかまどかはぽつりぽつりと言葉をこぼしていく

 

「最初は……マミさんやさやかちゃんが戦っているのを見て、怖いけど……すごいって思った。力に成りたいって思った……、けど、マミさんが死ぬのを見て、そんな想い…全部ふっ飛んじゃった……。」

 

まどかの靴の辺りが濡れていく。

近くによってまどかを抱き寄せる。

 

「ごめん。わたし、弱い子で……、でも、あんな死に方……!!」

「いいよ、まどか。あんたは正しい。いくら資質があるといっても、か弱い女子中学生。いきなり死と隣合わせの戦いに出ることなんてない」

 

 謝るのは、あたしの方。

 

まどかが生物を見る。ちなみに生物は最初からいた。空気だったけどね。

 

「ごめんキュゥべぇ。わたし魔法少女にはなれない……」

 

 謝る必要はないぞまどか……、むしろこいつが謝るべき。

 

『そうか。それが君の答えなんだね』

 

まどかは頷く。

 

「これからここら一帯はどうなるの?」

『ここは有数の魔女の出現率が高い場所だ。おそらく外からきた魔法少女達の奪い合いが発生するだろうね。』

「その人達は……マミさんみたいな人じゃないんだよね」

 

まどかが尋ねる。

 

『確かにマミのようなタイプは珍しいよ。他の魔法少女は損得を考えるからね。誰だって見返りは欲しいさ』

 

 まあ、綺麗事だけで世の中成り立っているわけじゃないのは同意するけど。

 

『それじゃあお別れだ。僕は僕と契約してくれる人を探しに行かないと。短い間だったけど、楽しかったよ』

「さよなら、キュゥべえ……」

「……(さっさと消えろこの****)」

 

若干副音声が入ったが一応形だけの別れの挨拶をしておく。どうせまた会うことになるだろうし。

 

生物は何も言わずに去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

さて、どうしようか

 

学校から出て移動しながら考える。

 

まどかは進んで契約する気はなくなった。さやかも言わすもがなだ。まあ、方法がなくなった訳じゃない。

 

ある清潔感溢れる建物の中に入る。

 

 する気が無くても契約せざるを得ない状態をつくればいいのだからね…

 

キュゥべえの瞳の先にはリハビリに励む上条恭介がいた。

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

家で勉強していたら恭介の足の包帯の中にある札が恭介の異常を知らせた。

 

 ……ストーカーじゃないよ。ちょっと治療が上手くいかなくて変調をきたした時にあたしがわかるようにしただけだからね。治療し始めた時にはりっぱなしにしておいて忘れてただけだから。

 

ホントダヨ

 

「ってなに弁解してんだあたしは」

 

急いで身支度をして、家から飛び出し病院に向かって飛ぼうとする。

 

『どこへいくんだい?』

 

こんな時に限って目の前に生物が現れた。

 

「邪魔。どいて」

 

今はこいつと戯れる時間はない。乱暴に押しのけて飛ぼうとした。

 

『病院に行くのかい?行ってもいいけど、その時は君の親友が死ぬよ』

 

飛べなかった。

 

「どういうこと?」

 

生物を掴み上げる。

 

『君がいつも一緒に登校している緑の髪の女性、確か仁美だったかい? が魔女の口づけを受けてしまったようだよ。まどかが止めているけど無駄だろうね』

 

 仁美が!? こんな時に!?

 おかしい。偶然ならなんでこいつが2人の危機を知っている?

 そしてそれをあたしに教える意味は?

 

「おい、あんた……」

 

 まさか……

 

キュウべぇは隠しきれないとでも言うように続ける。

 

『さやかには是非契約してほしくてね。君の親しい人達に少し種を仕掛けておいたけど、まさかこんな早くに使うとは予測してなかったよ』

「おおまええええぇぇぇぇ!!」

 

見くびっていた。

こいつは感情がない。親しいなんてそんな感情的なもの理解できないとふんでいた。だからこんなことはしないだろうとたかをくくっていた。

 

ピリリリリ

 

携帯がなる。まどかからだ。

 

『さやかちゃん!? 仁美ちゃんに魔女の口付けがあるの。倉庫街にいるから今すぐき…』

 

電話に出ると切羽詰まった声でまどかが助けを求めてきたけど、誰かに切られたような不自然な切れ方をして、それきり一定音しかしない。

 

と同時に恭介が心肺停止状態に陥ったことを札が知らせる。

 

マズイマズイ

 

 焦るな! 落ち着け!

 

パニックになるのを抑えて冷静になるよう努めろ。

 

『さて、どうするんだいさやか? このままだとどちらかが死ぬのは確実だ。だけど僕と契約すれば二人共助かるよ』

 

 前言撤回!! こいつ悪魔より性質が悪い!

 

とりあえず種? だったか? これはただのハッタリに決まってる。

まどかにはほむらがついてる。まどかの為なら仁美も助けるはず。

仁美達をほむらに任せてあたしが生物を無視して恭介のもとに急行しようとした時、あの夢が脳裏に浮かび、足を止まらせた。

 

 この選択は、本当に正しいの?

 ここで契約しなかったらあの夢に繋がって行くんじゃないのか?

 

確信にも似た予感が頭を駆け巡る。

 

 ……ハハ、何を迷ってるんだあたしは、自重しないって昨日決めたばかりなのに。

 

踏み出した足を戻して生物と向き合う。

使えるならば、敢えて相手の策にのるのも自重しない。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 これは、罰なのかな? わたしがマミさんを見殺しにした。

 

帰りに見かけた仁美ちゃんの首に魔女の口づけを見つけて、引き止めようとした。

けれど、止められなくて、ついた倉庫には同じように魔女の口づけを受けた人がいっぱいいた。

さやかちゃんに助けを求めたけど携帯を仁美ちゃんに取り上げられてしまう。

その後集まった人達が集団自殺をしようとして、それは何とか阻止できたけど、そのまま魔女の結界に取り込まれた…

 

結界の中で四肢を引っ張られて頭の中がぐちゃぐちゃにされる……

 

 ……しょうがないよね……罰なんだもん

 

終わりを悟って目を閉じる。

 

その時……

 

「いーや、罰なんかじゃないね!!」

 

四肢を引っ張っていた使い魔が蒼い閃光にかき消される。

 

「マァスタァァ」

 

聞き覚えのある声

 

辺りを見渡すと

 

「スパアァァァク!!」

 

青い魔法少女の服を着たさやかちゃんが魔女に向かって極光を放っていた。

 

 

 

 

 

「いや~危機一髪ってところだったね~」

 

グリーフシードを回収してまどかに歩み寄る。

 

 でもこの服着てるとほんと懐かしい。身体が軽くなるって言うか……気持ちが高ぶる感じがする。なんとなくだけど予感はしてたよ、前世のあたしの服になるだろうなあって。そこのところだけはあいつに感謝……は絶対しない。

 

「さやかちゃん、それ……」

 

まどかが私の服を指差す。

 

「ああ、これ? これはね……なるしかなかった、というかキュゥべえに嵌められた。」

「えっ、それってどういう……」

 

意味なの? とまどかが言おうとした時。

気配がしたので振り向くと転校生が目を見開いて立っていた 。

 

「あなた……どうして……!」

「さっきも言ったけど嵌められたの。具体的に言うと仁美と恭介が同時に全く違う場所で死にかけててあたしじゃ片方しか救えなかった」

 

敢えて契約したなんて絶対に言わないけど。

 

「えっ!? 上条君大丈夫なの!?」

「生物は気にくわないけど契約は成立したからね。今頃全快になって不思議がってるんじゃない?」

 

後日聞くとその時医者がショックで死にそうになったとか……。

 

「とにかく! まどか!!」

 

ガシッと肩を掴んで言う。

 

「今後一切生物に耳を傾けちゃ駄目だから!! あいつは悪魔よりひどいヤツなの!! 分かった!?」

「はっ、はいい!!」

 

あたしの気迫に押されたのか涙目になって答えるまどか

 

 分かってくれたみたい……。念には念を入れて後でまどかの家に対生物用トラップを施しておこう。

 

 さてと……

 

転校生と向き合う。

 

「……別に考えなくあいつと契約したわけじゃない。こっちの方がいろいろと都合がいいしね」

「……後悔するわよ」

 

転校生は何も言わずに踵を返して去る。

 

「……これだけは言っとく。あたしはただでは転ばないから」

 

 あと、ごめん

 

転校生の足が一瞬鈍くなったが、そのまま影に消えていった。

 

帰ろ、とまどかに声を掛けて帰る。

 

 なんかあたし転校生に嫌われてる? いやいや、真実を話してくれたしそれはない……はず……。うん、転校生は一人の方が都合がいいんだ。きっとそうに決まってる。

 

ガックリとため息をつく。

 

「どうしたのさやかちゃん?」

「いや、ままならないものだなぁって……」

 

まどかは首を傾げている。

 

 出来れば、共闘したいなあ

 

 

 

 

ハァ……

 

「……最悪だわ」

 

まどかに注意を払い過ぎていた。これまで美樹さやかには手を焼かされてきた。そして最後には周りを巻き込んで潰れていく、はた迷惑な人物なのに。

今度は違うようだったから共闘も考えたが、まどかももれなくついてくる。これは不味い。まどかにはできるだけ離れていてほしいからだ。

幸いさやかもキュゥべえとの契約阻止に尽力してくれているようなので、さやかにはこれからもそれに専念してもらおう。

そろそろ彼女もくるころだ。戦力は充分。何も問題はない。

 

考えが纏まったところである疑問がふと浮かんだ。

 

 そういえばおかしの魔女を美樹さやかはどうやって倒したのだろう……?

 


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