オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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遅くなって申し訳なぃです・・・・・、え?待ってなかった?ですよね。

シリアスです!危険!シリアスです!

迷いに迷って迷走した結果こんな形に・・・・・前半駄神様の視点です。

シフシフ調べでは最もシリアスなキャラな駄神様・・・・・でも株は上がらないんだろうなぁ。










63話『・・・・・限界だ・・・・・!早く・・・・・!』

おっす、オラ悟空。現在ダンジョン探検中です。十八階層です。大きな穴が空いています。一体誰がこんなひどいことをしたんだ。まったく、親の顔が見てみたいぜ。・・・・・割とマジで。

 

「ふぇー。やっぱスゲーなこりゃあ・・・・・。再生してねぇぞ・・・・・」

「周りが少シ残ってル位ダネ・・・・・」

 

うむ。そうなのだ、まるでドーナッツ。

 

さて、リヴィラのあった場所に偵察に訪れている俺たちなんだが・・・・・冒険者が居ないな。まぁあれだ、ダンジョンはいるなよー、って言われたんだろう。好都合好都合。

 

『さて、始めますか。邪魔なものをどけるぞ』

 

まずは掃除からだな。廃材を穴に投げ捨てて、まだ使えそうなものは脇に寄せる。リド達もやってくれているようだ。

 

『これはーOK、これはーダメー。』

 

選別選別、要らないものはどけて欲しいものを残すのです。・・・・・とは言え、これじゃあさすがに足りないからどっかから木、若しくは石を持ってこないとな〜。十九階層が木で出来ているって言っても取り出したり切り出すのは骨が折れるからなぁ。

 

「ん?」

 

ん?リドがなんか見つけたかな?

 

『どうしたリド』

「・・・・・死体だ」

『へ〜。』

 

なんだ、死体か。

 

え?死体?

 

『え?死体あったの?』

「あぁ。冒険者だな。ハルっち、知り合いか?」

 

リドがちょいちょいと手で俺を呼ぶ、その事に若干嬉しさを覚えながらも、死人が出た要因である俺は若干足が重い。

 

『んー。違うな。こんな人知らない。』

「背中の文字読めるか?」

『読めるぞ』

「読メルんだ・・・・・」

 

なになに・・・・・?・・・・・わぁお・・・・・。タケミカヅチ・ファミリアやん。・・・・・・・・・・タケ達は元気かな?うーん、ポーション掛けてみる?胸元から取り出したりますはポーション!サラサラー。サーッ!(※液体です)

 

「うぅ・・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・・・・ぅ?」

『おぉ?生きてたのか?』

 

死んでねーのかい。・・・・・しかし何故?何でこいつ死んでないんだろうか。

 

「アンタ・・・・・幹部の・・・・・?」

『・・・・・・・・・・名前は?』

「譲二だ・・・・・、っっ!!!おい後ろ!!」

 

譲二?じょうじ・・・・・テラフォーマーか・・・・・?何たる名推理か。さすが俺。

 

『後ろのモンスターはテイムしたんだよ。最近はダンジョンにこもってモンスターと戯れてるのさ。』

「て、テイム・・・・・だと?・・・・・確かに鎧も着てる、本当なのか?だったらもっとわかりやすい印をつけてくれ・・・・・。」

 

無理だよ、テイムしてねーもん。

 

『今は訳あって地上には戻れないんだが・・・・・まぁ手前までは送れるぜ、送ってやろうか?』

 

「あぁ、頼む。死にたくないからな・・・・・」

 

ドクン。不可思議な程に大きい脈動(・・)が俺の胸から響く。これが・・・・・恋?な訳が無い。・・・・・痛い。何故か胸が痛い。

 

「どうした?」

「グルル?」

 

ドクン。ドクン。・・・・・あぁ、苦しい。目の前の生物(人間)を見ていると、とてつもなく苦しくなる。何故か、何故か分からないけど・・・・・憎いと思ってしまう。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・離れろ。早くここから居なくなれ。』

「は、はあ?送ってくれるんじゃ・・・・・ッ!!」

 

刀を首筋に押し付ける。・・・・・違う、首を切り落としそうになったからギリギリで止めたんだ。

 

『速く・・・・・行けっ・・・・・!』

 

頭が痛い。心が痛い。身体が痛い。目をカッと見開いて力を込めて耐え忍ぶ。

 

「わ、わかったから、な?武器をしまってくれ」

『・・・・・限界だ・・・・・!早く・・・・・!!!』

「うぉおお!?」

 

立ち上がって一歩後ろに下がった譲二に刀を振り下ろす。ギリギリで回避した譲二は転がるように逃げていった。遠のく譲二を見て、未だに憎しみが心で燻っていた。

 

「ハルっち・・・・・?大丈夫か?」

 

大丈夫だ。平気。問題ない。そう言い聞かせる。

 

───罅割れる音が耳にこだまする。

 

『少し、一人にさせてくれ・・・・・』

 

そう言って中央に空いた穴に飛び降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はダンジョンを下へ下へと降りていた。少しでも地上から離れたかったのだろう。敵意を持って襲いかかるモンスターを、見向きもせずに呆気ないほどに簡単に切り裂き進んでいく。それを駄神と呼ばれる僕は眺めていた。

 

独り言も無い。眼は常に地面を捉え、足取りは幽鬼のようだ。時折地面に落ちる涙は煙となってフッと消えるのを繰り返す。・・・・・崩壊が予想よりもはやい。速すぎた。

 

『俺は・・・・・・・・・・・・・・・何なんだろうな』

「ギャオオオオ!!」

 

彼の問いに答えたモンスターは8等分に切り分けられ地面に身体をボテボテと転げる。その問に、僕は答えなくてはならない。

 

「答えてほしいかい?」

 

質問に質問で返してんじゃねぇ。そんな雰囲気を出しながらも、何処か嬉しそうに彼は僕の前を進み始める。恐らく、今も変わらない関係が嬉しかったのだろう。

 

「君はね・・・・・僕なんだよ☆」

 

彼は僕だ、僕が作り出した『自分』。いや、正確には作り出した『自分達』の集合体。

 

『・・・・・。』

 

ヤケクソで作り出した試作品。数千の魂を一つの核に定着させた・・・・・まるで玩具みたいなものだ。

 

「・・・・・?・・はっ!・・・・・君はね・・・・・儂なんじゃよ」

 

ここまで崩壊が早まるとは思っていなかったけれど、それも継ぎ接ぎだらけ魂ゆえなのかもしれない。

 

『いやそこじゃねぇよ!?』

 

勝った!第3部完!と喜ぶ僕に彼はため息をつく。冗談は顔だけにしやがれ、と僕に呟いた。

 

「プププまだ気がついてないのかい?pgr。」

 

僕は、彼の心を傷付けなくてはならない、傷をつけて、心を剥き出しにし、引き出さなくては。彼は、自分の能力に気が付けなければ・・・・・少なくとも数日と持たないだろう。

 

『あぁ?何が言いたいんだよ・・・・・』

 

彼が僕の意味深な行動に不信感を抱いている。僕は「やっとネタバラシだねぇ。」と語り始める。

 

「僕は嘘なんてついてないんだよ。君は僕。僕は君。より正確に言うなら僕が『オリジナル』で君は『クローン』だ。君は僕が作り出した僕って訳さ。」

『はぁ?わけわかんね。ちょっと病院いって来いよ』

 

ごもっともだな意見。・・・・・信じたくない、信じる理由もない。だから彼は僕の話を足蹴にして話題を変えようとする。しかし、僕はニマニマしながら話を続ける。

 

「そう簡単に分かってもらっちゃ困るのさ!」

 

これは本心だ、大変だったのだから。一つが限度の魂を、数千個繋ぎ合わせるなんて、考えた僕は頭がおかしい。

 

「ねぇどんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?自分の体が妖夢だと思ってたらしいけど!!」

 

煽る。僕の得意な技だ。彼と僕の間にある確かな、同族嫌悪がそれを助長する。

 

「ねぇどんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?自分の意思で動いてると思ってたらしいけど、ねぇどんな気持ち?勘違いに気が付けずに5年も無駄にしたのってどんな気持ち?プププwおもろ過ぎて腹ねじれるわwpgrポカヌポォwww」

 

出来るだけ全力で煽る。嘲る、罵る。

 

『・・・・・何、わけわかんないこと・・・・・』

 

彼は混乱しているようだ。自分は妖夢の体を乗っ取っていたのでは無かったのか、と。まぁそう考えるのも仕方のないことだ。魂達の共存のために魂達の自己記録を抹消したのだけれど、その際に、魂を傷付けないように長い時間を使った。

 

そして彼は空っぽ。彼が入り込んだ事で記憶が吹き飛ばされた妖夢も空っぽ。空っぽ同士の彼らが共に歩み、共に学び、共に過ごした。それらは全て無意識の領域であったから、彼は気がつけなかったんだろう。

 

「自分が能力をちゃんと使えば避けられた未来だったけど、家族と別れちゃってどんな気持ち?自分の能力が『剣術を扱う程度の能力』だと思ってたみたいだけど、ねぇどんな気持ち?」

 

彼の能力は「可能性を操る」事。僕が生前から持っていた唯一無二にして万能の力。

 

『お前・・・・・流石に怒るからな?』

 

怒っても何も出来ないしさせないけどね、と子供の喧嘩みたいな考えを巡らせてしまう。

彼は僕を少なからず信用している。信頼も多少しているだろう。だが、限度はあったようだ。

 

「君の能力教えてほしい?ねぇ教えてほしいだろう?」

 

『あぁ、教えてくれよ。スッゲー前から引きずってるそれをさ。』

 

彼は苛立たしげに問いただす。

 

「君の〜能力わ〜↑デデデン。『可能性を操る程度の能力』でーぇす!人であったころから僕が持っていた唯一の異能。それがこれだ。チートだろう?でも君はそれを初めから持っていながら、まともに使うことも無く、ただイタズラに時間を浪費し、家族と定めた者を傷付け!そして人を殺した。更には家族を家族と呼べなくなってしまった。自分で決めつけてね。・・あぁ!哀れ・・・・・悲しよね?なぁ、悲しいよねぇ?ククク、フハハ・・・・・ズーッ!ペッ」

 

僕に言われて彼は狼狽える。今まで僕は彼の味方をしていた、けれど今は単純に彼を煽って、いびって蔑んでいるだけだ。信頼していた、信用もしていた。そんな者から唐突な敵意。彼の罅が広がっていく。

 

でも、彼は分かっている。僕が本当はそんなことをするヤツではないと。だからこそ、心の底で「きっとタチの悪い冗談だ」と願っている。

 

自分が言うことを聞かなかったから、きっと見捨てられたんだ。そう彼は考えた。なにせ、この世界の歴史・・・・・原作をめちゃくちゃに改編することを僕が彼にお願いしていたのだから。

 

『で、でも、俺だって一生懸命・・・・・っ!』

 

 

 

 

「はっ!死者が生者を語るな。」

 

 

 

 

思わず声が低くなる。侮蔑の言葉と蔑みの視線を向けてしまった。彼の心の底から湧いて出た真摯な言葉に、嘲笑で返してしまう。まぁ、わざとだけど。

更に彼の心が悲鳴をあげる。

 

生者と死者。明確に分けられた見えない『何か』。生物が生まれた瞬間から死に始めるように、死んだものは死んだ瞬間に生きるために進み始める。

 

彼は死者である。生きていた事など無く、魂を作り、それを妖夢の中に送り込んだだけ。故に、死者でありながら生きる為に進むことを許されなかった魂だけの塊。

 

「運命を変える可能性を持っているくせに、それを行おうとしない愚か者め。なぜ分からぬ、何故こなせぬ。・・・・・使えないものは消える運命だ。昔も今も、そうやってきた。お前は何人目だったか・・・・・一兆?一京?一咳?それとも不可思議だったか?」

 

僕の言葉は続く、彼の頬を涙が幾つも幾つも伝っていく。ヒビが広がり、嗚咽が漏れる。

今が畳み掛ける時だ、限りなく崩壊に近づけて無意識的な危機感を呼び起こせ・・・・・!

 

「何回やっても、何度作っても、どこの世界に送っても。お前は運命を変えることが出来なかった。何パターンも試した。何回でも壊した!だが!・・・・・お前は成果を持ち帰らない。

 

お前は無能だ、何も出来ない何も救えない何も変えられない!・・・・・使えない、情けない、つまらない!」

 

彼の罅が広がっていく。魂とは精神である。精神にその比重を全て傾ける彼の精神崩壊は・・・・・即ち消滅である。だからこそ、むき出しになる。

 

「死んでしまえ。消えてしまえよ。もう誰もお前を必要としてなんかいない。お前が家族だと思ってた奴らだって、お前じゃなくて妖夢を見ていたんだからな。お前はおまけ、金魚の糞と一緒だ!」

『ぅぅ・・・・・ぁぁ・・・・・』

 

痛みに身体を抱きしめて小刻みに震える。ポタポタと涙を流しては身体をうずくめる。

 

嘘だ。そう叫びたくて、彼は顔をあげる。

 

「僕はね・・・・・」

 

全部タチの悪い冗談なのかも、と言う希望に彼はすがる。けれど、それは止めを指すための一言だった。

 

「君みたいな奴が大っ嫌いなんだよ。」

 

良く聞こえるように耳元で。僕の声が響いた。彼の涙が止まる。震えを止まる。全力で無けなしの力を振り絞る。・・・・・どうだ?・・・・・と思った僕の首が飛ぶ。そこには刀を振り切った彼の姿があった。

 

『・・・・・殺ス。オマエだけは絶対に!』

 

成功だ・・・・・!

可能性を操作し命中していない事にした僕は無傷だ、そこにに彼は飛びかかってくる。

 

「笑わせるなよ紛い物。お前は俺を倒せない。」

 

地下深く、超常の戦いが巻き起こった。可能性を操作し彼の足元の地面が吹き飛ばす。彼が上方向に吹き飛ばされ、態勢を立て直すも、一瞬にして魔力で地面に叩きつける。

 

「お前は本来この世界に無いものだ。」

『黙レ!!!!』

 

地面蹴り、斬りかかろうとした彼は地面を蹴れない・・・・・・・。彼が地面を蹴ること、その可能性を1にしてやったのだ。

 

『!?グッ・・・・・!!』

 

前のめりになった彼が地面に手をつこうとして失敗する・・・・。顔から地面に突っ込み、あわてて顔を上げるが彼だが、僕ら彼の足元の地面を砕き、彼を更に下へと落とす。。

 

『くソが・・・・・!何がドウなってる!?』

 

目を血走らせ辺りを警戒しながら彼が怒鳴る。片目だけが血走りながら執拗に僕を追いかける。

 

「これがお前と俺の力だよ。いや、その末端の末端。基礎の基礎だ。可能性、それは全てに存在する。そして、それを操れるのが俺だ。」

 

つまり・・・・・。と僕は続け、彼を指さす。劣化し、初めての認識した能力ではどう足掻いても僕に勝つことは出来ない。

 

「お前は動けないし攻撃もできないし回避も出来ないし戦うことすら許されないのさ。」

 

 

 

 

 

 

 

同じような一方的なイジメが数10分続た。俺が動こうとしても動けず、ケタケタと笑う駄神。 ぶち殺したいが、まともに行動出来ない。けど、まだ何か突破口がある筈だ!

俺の目を見た駄神は俺の考えに気がついたのか、やれやれと、肩を竦める。

 

「無意識に使うなよなぁ。無意識に使う能力って恐ろしいんだぜ?・・・・・まぁ、確かにこの能力にも弱点はある。・・・・・可能性には0%と100%が存在しない。いや、

存在はしているけれど、自然には発生しない。つまり僕はね、1%から99%までしか操れないのさ。

それと、この能力は他の能力に引っ張られる性質があるからねぇ・・・・・君は妖夢の能力に引き寄せられて、本来の能力の性能を引き出せていないしね。」

 

俺は混乱する。駄神から敵意を感じなくなったからだ。冷静になり、そして、訳の分からない話そのものにも混乱した。

 

可能性を操る?さっきは何となく聞き流したが・・・・・今まで喰らった変な攻撃もそれって事か?それを俺がもってる?訳が分からん。

 

「あ、今の戦闘は軽いデモンストレーションだからね、深く考えなくていいよ。君はすごい能力を持ってる。・・・・・・・・・・ただ、それだけの事さ。」

 

俺は眉間にシワを寄せながら、武器をしまった。ウザイし、殺したいが、倒せないなら一旦引く。タケに習ったことはしっかりと覚えている。だから、ここは引く。

 

「付け加えるなら、僕が言ったことは全て本当だ。何もかもが、本心からの言葉さ。」

 

うるせぇ、ぶち殺す。俺は霧のような煙をだし、半霊に姿を変え、その場から撤退した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ、なんとかなったかな?彼は無意識に能力を使って抵抗してきた、やはりだ。今までの彼もそうやって必死になった。

 

「・・・・・・・・・・ハァ・・・・・死ぬかと思ったよ?」

 

僕も、彼も。

 

「・・・・・・・・・・もう時間が無いなぁ・・・・・死ぬまであと何年か・・・・・。」

 

僕は後、何年耐えられるのか。彼の心は何時まで持つか。

 

「強引にやり過ぎたかな・・・・・?崩壊寸前だけど・・・・・いや、この僕なら何とか立ち直ってくれるだろう。」

 

時間が無いとはいえ、些か急ぎすぎた。応急処置にも程があったけど、彼の可能性は操作できた。これで彼の精神が崩壊する可能性は大分抑えられただろう。彼が無意識に抵抗したせいで底まで下がらなかったけど。

 

「最悪、自分の力でどうにもならなくても、繋いだ絆がどうにでもしてくれる。・・能力は明かした、後は、それをうまく扱ってくれることを、願うばかりだ・・・・・。」

 

僕は笑う。自分の目的に最も近い彼が【英雄】になる未来を思い浮かべて。

 

そして。その上で死んでくれ。必要なんだ、【英雄の魂】が、自分自身が英雄となった【英雄な自分の魂】が。僕の目的を達するために、必要なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タケミカヅチ・ファミリア・・・・・武錬の城。その1室に、今、この世の最大戦力が集まっていた。

 

「・・・・・」

 

タケミカヅチが集まった面々を眺める。まずは神からだ。ロキ、ヘスティア、ミアハ、ヘファイストス、そして自分。

次に冒険者・・・・・唯一の7レベルオッタル、6レベルのフィン、ガレス、リヴェリア、アイズ。そして原作よりも早く6レベルとなったベート、ティオネ、ティオナ。タケミカヅチ・ファミリアの幹部、リーダーの全員。そしてベルやリリ、ヴェルフだ。

 

長四角に並べられた長机を囲むように座る全員からは並々ならぬ、警戒が伝わってくる。

 

「な、なぁ、タケミカヅチ?何が始まるんや?」

 

タケミカヅチは答えない。沈黙を守り、何かを見定めている。その様子にこの場のもの達はザワつく。

 

しばらく目を閉じて、ざわつきに耳をすませていたタケミカヅチは口を開いた。

 

「一つ約束をして欲しい。」

 

張りのある声に油断していた者達の肩が飛び上がる。

 

「約束とは・・・・・何なのだ?」

「そうや、内容にもよるで」

「何か・・・・・あったんだね?」

「私なんの関係も無いんじゃないかしら・・・・・」

 

神々がそれぞれの反応を示す中、冒険者達はゴクリとつばを飲み込む。

 

「実はな・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ゆっくりと溜めて、視線を集める。誰もが耳を傾けたその時を狙ってタケミカヅチは言い放つ。

 

「妖夢が記憶を取り戻した。」

 

タケミカヅチは眉間にシワを寄せ、真剣な目で睨むようにして全員を見た。信用できるか否か、それはこの先にかかっている。

 

「・・・・・・・・・・なんで、そんな顔をしてるんや?記憶が戻ったのはええ事なんやないんか?」

「・・・・・・・・・・まさか・・・・・失う前の記憶だけなのか?失ってからの記憶が、ない?」

「!?そんな事・・・・・有り得るね・・・・・」

「なるほどね、溺愛してたものね・・・・・」

 

若干違うのでタケミカヅチは言い直す。

 

「いや、記憶はある。だが、これまでの約6年間の記憶と、失う前の数十年の記憶が混ざり合い、混乱しているらしい。」

 

タケミカヅチの言葉に誰もが「なるほど」という顔をする。完全に理解出来ずとも何となく解ったのだろう。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・ハルプの事を、覚えてるよな、皆」

 

タケミカヅチが何故か心配そうに聞いてくる。

 

「当たり前です。忘れるわけがありません」

 

命が誰よりも先に答え、タケミカヅチは口元を緩める。

 

「良かった。なら話を進めるが、妖夢には二つの人格があった。わかるな?」

 

部屋の皆が頷く。

 

「しかし、俺達は違った。一つの人格しかないと思っていた。」

 

頷く命達。「ん?」と首を傾げる他の者達、早速話についていけなさそうになる者達が出てくる中、タケミカヅチは話をやめない。

 

「妖夢からの説明でな、意識を半分に割いたりすることでハルプを操作する事が出来る。意思は一つしかない。と言われていたんだ。スキルとして現れた時はなるほど、としか思わなかったが。」

 

タケミカヅチの話しの途切れたところでロキが手をあげる。

 

「待つんやタケミカヅチ。じゃあウチらが見てきた妖夢たんが、妖夢たんで、ハルプたんは妖夢やない。つまりはウチらが見ていた2人が真実で・・・・・ん?あかん、わからんなってきた。」

 

頭を抑え始めたロキの様子にタケミカヅチが苦笑する。

 

「俺だって頭を何度も抱えたさ。・・・・・記憶が戻った原因は妖夢の魔法だ。それを発動したショックによって記憶が戻った。が、それと同時に、一つの身体に共存していたハルプが弾き出された。・・・・・最近、ハルプを見てないだろう?それについて尋ねてもはぐらかされた筈だ。」

 

「そこで」とタケミカヅチが話を進めていく。

 

「妖夢に対する認識を再確認すると共に、今までの印象を教えてあげたい。さらに言うとハルプが居なくなった要因を探り、ハルプ自体も見つける。・・・・・協力してくれ。頼む。」

 

タケミカヅチが頭を下げる。同じ神々だけでなく、子供たちにまで。その強い意思のこもった頼みを蹴るものは居ない。

 

「はい!もちろんです。今まで家族として生きてきた全てを教えてさしあげます。少し驚きましたが、ハルプ殿だって共に暮らしてきた家族ですから」

「うん!私も!頑張りますタケミカヅチ様!」

「ははは、当たり前だよな?」

 

桜花の言葉に口々に賛同の有無を伝える皆。しかし、ベートだけがそっぽを向いている。

 

「なんやベート、なに拗ねてんねん」

「あぁ?うるせぇな。」

 

ベートは悔しがっていた。実は最近ハルプを探して街をウロウロしていたりしたのだ。妖夢にあってそれとなく聞いてみても、残念ながらはぐらかされた。妖夢が乗ってきそうな「戦闘訓練」に誘ってみたりしたが断られた。歩き方、座り方、身振り手振りに違和感を感じていた。さらには「ベートさん」と1度でも呼ばれている。

 

これ程にヒントがありながら、なぜ自分は『友人』の異変に気が付かなかったんだろう。自分に出来た小さな友人の扱いに、困りながらも少しの楽しさを同時に感じていたのだ。

それに、『友人』である。ベートに出来た友人なんて片手でかるーく収まってしまう。

 

と言うか妖夢とハルプだけだ。

 

そんな友人だ、助けたいと思うし、頼りにされたいとも思う。だからこそ悔しい。頼られた時は「面白いやってやる」と思った。妖夢が人を殺してしまった時は「ふざけんな」と怒った。

 

なぜ、自分の元に来ないのか。ベートは悔しがった。自分に頼ればいい。友人なのだから。言えないことはある、それはベートにも分かっている。だが、頼って貰いたかった。ベートは自分が強いと自負している。逆境にあって耐え忍ぶ術も知っている。

 

だから、自分の前位には現れてもいいのではないか。そう、考えてしまった。

 

だから、悔しい。ここまで譲歩している自分が恨めしい。自分とはこんな人間だったのか、と問いただしたい。そんな気持ち。

 

「・・・・・うるせぇよ。手伝うのは構わねぇ。やってやる『ダチ』だからな。」

 

なぜ、同じファミリアの「仲間」でも無いのにここまで協力しているのだろう。

 

「・・・・・けどよ、第一線の冒険者動かすんだ。分かってんだろうな?」

 

恥ずかしいからキツく当たる。困ってるタケミカヅチに報酬を所望する。

 

「あぁ、わかっている。」

 

短く本気で言われた言葉にやるせなくなるベート。自分は、まだまだガキなんだなぁ、と思い知る。

 

「ふふふ、青春やなぁ」

「あぁ、そうだね。」

「うむうむ。若いもんはこう出ないとな。」

「・・・・・相手は子供だが・・・・・それでいいのかお前達は」

「テメェら後で殺す」

「・・・・・え?私もかベート。」

「そうだババァ!殺すからな後でまじで!」

 

早速始まった喧騒。けれどこれも照れ隠し。わかっているからこそ、タケミカヅチは微笑んだ。

 

「妖夢、ハルプ・・・・・お前達の帰る場所はここにある。決して無くなったりしないぞ。な、お前達」

 

「「「はい!」」」

 

つぶやきに命達が一斉に返事を返す。

 

夕暮れ時、陽が地平線に沈もうとする中で会議は行われる。題材は『妖夢について』。

 

満足気に頷くタケミカヅチ。微笑む皆。しかし、ここに妖夢の姿は無い。彼女は今、オラリオの街を練り歩いているのだろうか?

 

否。その背には刀を背負い、防具を外し、紺色の装束に着替え、時を待っていた。数日前から始めたこの行為。しかし、それを止める時はまだ先だろう。

 

仮面を顔につけ、髪を束ねる。

 

人知れず、戦いは進む。

 














はい、そうですよね、言いたいことはありますよね。

え、チートですか?はい、チートです。割と初期からずーっと使っていた能力です。いろんな場面で使ってましたよ、ほら戦争遊戯とかそれ以前の強敵とかの場面で、「いや絶対死ぬだろ、その攻撃くらったら」という場面があったでしょう、なのに肋骨1本とかで済んでいたりしたのはこの能力を無意識に使っていたからなのです。

能力的には万能だけど運要素が常に絡む使いにくさ。けど純粋に強いのです。



ちなみに駄神様とタケミカヅチ(本気)だとタケミカヅチが勝ちます(確信)


なんと言うか、今回は批判が多そうですね、怖いぞ。

コメント、誤字脱字報告、お待ちしております。次回はリクエストにあったアリッサとモルドが偶然再会したら、と言うのが前半にありますので、おたのしみに。


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