オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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スマホで執筆をしていたシフシフはスマホが直るまで執筆をできなかった。しかし、こういう時のためのストックなのです( ー`дー´)キリッ

前半ギャグ、後半シリアス?

ダンジョン「ゆけっ!ゴライアスよ!あの銀髪を倒すんだ!」




43話「複合剣術―――天翔光龍十閃」

知らない天井だ。僕はそんな事を思いながら、瞬きを繰り返す。・・・布地なんだ・・・テントの中なのかもしれない。

 

意識もはっきりとし始めた頃で・・・・・・

 

「リリ!?ヴェルフ!?~~~~~~~~~!?」

 

ふたりが無事なのかを確認しようと飛び跳ねようとして悶絶する。腕や足、腹や腰など、痛めつけた場所は多くて悶え苦しむ。きっと今ほかの人が僕を見たら芋虫みたいだと思うに違いない。

 

「大丈夫?」

 

ぇ―――今の声って――。いやいや、まさか。遂に僕は幻聴まで聞こえ始めたのか。

声のする方に頭を向け、目を開く。そこにはちょこんと僕の頭の横に座っている金髪の美少女。

 

「あ、あわ、あわわ!?」

「・・・・・・・・・大丈夫?」

 

見られてた。芋虫みたいなのが見られてた!?本物だよね!?アイズ・ヴァレンシュタインさんに見られてたよ!?幻覚であってくださいっ!!

 

「どど、どうしてここに・・・?」

 

冷静さを取り戻すべく頬を殴り、アイズさんに震える声で尋ねる。

 

「遠征の帰り。・・・ここ十八階層に留まってた。」

 

シャキン、とじゃが丸君を取り出したアイズさん。やっぱり天然なんだな。と思った僕は悪くないはずだ。差し出されたじゃが丸君を受け取り、そんな可愛らしい姿をどきどきしながら見つめる。首をかしげるアイズさんを見て、僕は思い出した。

 

「―っ!?リリ達は!?桜花さん達は何処に!?」

 

立ち上がり――立ち上がろうとして手をついた僕の手は、命令に従わずに力無く折れる。もちろん関節のとおりに。「うわっ」と声を上げながら前に倒れ込む。

 

「うぷっ」

 

僕を受け止めたのはアイズさんの胸。よかった胸当て着けてて。つけてなかったら僕はきっとロキ・ファミリアにフルボッコにされた後ゴライアスの口に放り込まれるに違いない・・・・・・って良い訳ないだろ!?

 

「ゴメンナサイッッ!!」

 

妖夢さんの1振り位の速さをイメージして仰け反る。もちろんの事身体は痛い、でもそれよりも僕は命を優先した。

ふざけんな馬鹿野郎死にたいのか!と抗議するように身体は痛み、仰け反った体を支えるだけの力が無くて後頭部を強打する。人生山あり谷ありと言うことばが有るらしいけど・・・・・・。僕の【幸運】って機能してるのかな・・・。

 

「~~~!ん?」

 

好きな人に情けない姿を晒しながら、髪の毛の先に触れた感触に違和感を覚えて我慢しながら体を起こす。そして後ろを向くとヴェルフとリリが寝かされていた。

 

「リリ!?ヴェルフ!!」

「リヴェリア達が治療してくれたから・・・大丈夫。でも・・・君の怪我も大変だったよ・・・?」

 

安定した呼吸と殆ど治っている怪我に安心して、ほっと一息ついていると「平気?」と僕の前髪をかき分け僕の頭に巻かれていた包帯をなでる。僕は全身を真っ赤に染めながら思考がショートした。

 

そのまま見つめあってるよりも外に出た方が良いと思う。リリ達はちゃんと寝かせてあげたいから。この場を切り抜ける為の言い訳に仲間を使った僕はアイズさんに連れられてテントの外に出た。

 

「わっ・・・・・・」

「フィン・・・・・・団長に、連絡するように言われてるから、ついてきて」

「はっ、はい!」

 

視界に広がる大規模な野営陣地。開けた森の1角のような場所に天幕が設置され、中心に空間を作っている。

そこにいる冒険者達は皆鋭く強い光を放つ武具を身につけていて、やっぱりロキ・ファミリアは凄いと僕は再認識させられた。

 

「―――」

「チッ」

 

・・・・・・僕に突き刺さる視線が痛い。なんていうか敵意を感じる。・・・やっぱりアイズさんに看病されていたのが原因なのだろうか・・・それともさっきのが見られていたのか・・・。

 

現実逃避に上を見上げる。暖かな木漏れ日が差し込むこの場所に僕は酷く戸惑った。太陽が有るのかも、なんて考えてしまう。

 

困惑する僕を見て何を思ったのかアイズさんはこちらをじっと見たあと

 

「・・・・・・寄り道、する?」

「え、あ、はい!・・・え?は、はい。」

 

咄嗟に返事をしてしまったけど良いのかな?進路を変えて野営地から離れていく。

 

ダンジョンの中に『森』がある。その事に驚きながらキョロキョロとあたりを見渡しアイズさんに続く。すると更に驚く物に遭遇した。

 

水晶だ。足元に生える小さな物からまるでミノタウロスが使っていた大剣の様な大きさのもの。それよりもさらに大きな物までもある。色んな形の水晶が森のあちこちから生えていた。

 

さらに進むとそこには。

 

「・・・凄い」

 

そこには地上なのかと見間違えるほどの大草原。視線を移せば湖が。

 

「上のも、全部クリスタル。・・・・・・時間がたつと光は消えて、夜もやってくる・・・。」

「と言うことは・・・今は朝?昼?」

「ん・・・・・・朝?・・・・・・お腹は・・・お昼。」

 

え、えと・・・・・・今は、昼らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十七階層。俺達は遂にそこに到達した。そして、目の前にそびえるのは一体の巨人。

 

「ォォオオオオ!!」

 

雄叫びを上げ、拳を打ち鳴らす。階層主に相応しき威圧感を持っている。

 

「ほぇ~。あれがゴライアスですか・・・・・・生で見るのは初めてですね」

「ああそうだな、俺も初めて見る。」

 

ゴライアスをタケと眺め、若干現実逃避しながらそんなことを言っていると、ゴライアスが飛びかかってきた。おお!まさに必殺の一撃ってところかな?・・・・・・・・・地面についてる少量の血が皆の物であるなら・・・容赦なんてしないぜ?いや、訂正しようか、元から容赦なんてするつもりもない!

 

「ゴォオオオオオオオオオオ!!!アアアッ!!!」

 

野太い気迫と共に放たれた一撃。皆が回避に徹する中。俺だけは全く動かない。

 

「ちょ!タケミカヅチっ!早く逃げる様に言うんだ!」

 

ヘルメスが焦ったようにタケに警告する中、俺は腰に回した白楼剣に手をかける。俺は思ったわけだ、零閃十機編隊と天翔龍閃を合体させたら最強なんじゃないかと。だってさ、光に近い速度の斬撃が後出しで放たれた後、発生する真空領域やら何やらで掃除機のように相手を吸い込み、そこにまた光速に近い斬撃が打ち込まれ・・・の繰り返しで相手をサイコロステーキに変えられる・・・・・・と思ったんですよ俺は。うーん、名前どうするか・・・・・・天翔光龍十閃・・・?天翔龍零閃十機編隊?まぁ前者で行こう

 

「複合剣術―――――【天翔光龍十閃(あまかけるこうりゅうのとうせん)】ッ!!」

 

迫る腕が刃の届く距離に入る前に左足を前に踏み出し、抜刀とほぼ同時にゴライアスの握りこまれた手の指が全て吹き飛ぶ。抜刀と殆ど変わらない速度で納刀。抜刀により弾かれた空気が真空領域を作り出す、ゴライアス本体には効果が薄いが吹き飛んだ指が吸い込まれ俺の後方に飛んでいく。【集中】が発動しているようでスローモーションの世界の中、痛みに目をゆっくりと見開くゴライアスに二回目の抜刀。指が無くなった手が真っ二つに。発生した真空領域による吸い込みを利用しつつ縮地を使って納刀と同時に前進。3度目の抜刀。引っ込めようとゆっくり動く腕が横に斬れて裂けるチーズのようになった。まだだ。4度目の抜刀で脛から下を斬り飛ばし、発生した吸い込みが脛から下をこちらに吸い寄せる。納刀。5回目の抜刀で飛んできた足を吹き飛ばし、接近。納刀。6回目の抜刀で腹筋の一番下を綺麗に斬るが、上半身が浮かぶことは無かった。ゴライアスの目が完全に見開かれる。7回目の抜刀が左肩を吹き飛ばし、納刀。飛んできた左腕を8回目で吹き飛ばし、納刀。9回目で魔石に到達し真っ二つに。納刀。最後の十回目で余計だけど首を飛ばす。これで終わりだ!

 

「――アアアアアァァァァ――!?」

 

ゴライアスが灰になって消えていく。・・・ふっ、実にあっけないな。多分ゴライアスは1発目を知覚するので精一杯だっただろう。オリジナルの零閃には遠く及ばない速度ではあるけれどマッハは余裕で越えてるからな。てかまぐれっぽかったけどそれを防ぐレベル6よ・・・・・・あれ?まぐれっぽかった?・・・下手すればあの場で殺してた!?・・・よし、零閃は模擬戦に使うのはやめよう。今更感が凄いけど。

 

「ぁ・・・・・・ぁぁ・・・・・・ぇぇ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「は、ははは・・・・・・・・・」

 

ん?なんだ?なんでみんなそんなポカーンとした表情でこっち見てんだ?ゴライアスなら倒したけどなぁ。

 

「どうしたんです?ゴライアスなら倒しましたよ?ふふっ、結構本気出しちゃいました。でもなんだかあっけなかったですね」

 

今回でひとつ分かったとすれば複合剣術はえげつないって事かな、この調子ならクロゴラさんとか余裕じゃ?・・・・・・・・・・・・あれ?駄神って「原作通りに進めるといい」的なこと言ってなかった!?俺が瞬殺したらまったくもって原作通りじゃないんじゃぁ・・・・・・。ま、まぁ仕方ないよね。やってしまった物は仕方が・・・・・・どうしよう、もしこれで実は桜花達死んでましたとか言われたらその場で自害するわ。

 

ん、そういえば駄神って「物語かき回して来い」的なこと言って俺をこの世界に放り込まなかったか?気が変わったのかな?まぁ神なんてみんなそんなもんか。コロコロ変わるんだろう。

 

「うそ・・・・・・だろ・・・?階層主だぞ・・・ありゃ。」

「僕達は夢を見てるのかもね、ねぇダリル僕の頬を抓るか激辛料理をちょうだいだだだだだ!?。」

「癪だが夢じゃねぇな・・・」「そうだね・・・痛いね・・・」

 

あのふたり仲いいなぁ。じゃなくて・・・そうか、俺が階層主瞬殺したから驚いちゃったのか・・・。ちゃんと今初めて試したんだってこと言っとかなきゃな。

 

「初めての組み合わせでしたが上手くいって良かったです。技の説明いりますか?」

「いや、いらないよ。俺達じゃあ何も見えなかったし」

 

むむ、俺が懇切丁寧に教えてあげようと思ったのにヘルメスは聞きたくないらしい。まあ仕方ないか、見えないんじゃ聞いてもわからないだろう。

 

それにしても・・・・・・体感的にもう夜か。

 

お願いだ、神様仏様駄神様、誰でもいいからとにかく皆を死なせないでくれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとに・・・・・・夜が来た・・・・・・」

 

僕は少しづつその明度を落としていく水晶に見とれていた。まさか本当に夜が来るなんて・・・・・・信じていなかった訳では無いけど、にわかに信じがたかった。

 

「よっ!ベルは十八階層(ここ)初めてらしいな」

「あっ桜花さん、起きたんですか?」

 

僕が水晶に見とれている間にボロボロの服を纏った桜花さんが前に来ていた。そういえばタケミカヅチ・ファミリアの人達は同じテントには居なかったな、なんて今更思い浮かぶ。

 

「はは、俺は気絶してないぞ?気絶してるお前達をアイズさんと運んだのは俺達だしな。まぁ・・・アリッサとクルメが倒れたが・・・。あの2人は大丈夫か?」

 

やっぱりレベルが高い桜花さんは気絶してなかったみたいだ。確かに服はボロボロだし、包帯を巻いていたとしても1番軽傷だった。僕は桜花さんに促されるままテントの奥に入る。

 

2人はまだ眠っていた。2人の首元に手を当て小さく頷いた桜花さんは「大丈夫だ、安定してる」といってテントを出ていった。アリッサさんやクルメさんの看病だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は自分達に貸し与えられたテントに向かう。どうやら夕餉の準備を始めたらしいロキ・ファミリアに模擬戦で時たまあった事のある人達を見つけ軽く挨拶をしておく。妖夢には感謝しなくちゃならないな、ロキ・ファミリアと懇意にしておいて正解だった。敵対していたらこんな待遇は受けられなかっただろう。

 

テントの幕を開けて中に入る。先ほどのベル・クラネルと何ら変わらない簡易テントだが、もちろんメンバーは違う。入口から見て左からアリッサ、クルメ、千草が眠っている。呼吸の邪魔にならないように命が鎧などの武装は取り除いてある。

 

「あ、桜花殿。ベル殿達の方はどうでしたか?」

「あぁ、大丈夫。問題なかった。」

「はぁ、良かったです・・・・・・私が巻き込んでしまったので後で謝らなくては」

「あぁ、そうだな。その時は一緒に謝ろう。」

「・・・・・・すみません」

「構うもんか」

 

深く反省している命。だが、あの状況なら最も正解に近かっただろう。どのみちあのままではベル・クラネル達はモンスターにやられる可能性があった。強引にでも突破して良かった筈だ。

 

「それにしても猿師さんが気になるな、こっちに来てないとなると地上か?」

「・・・・・・・・・すみません、私がしっかりしてれば・・・・・・」

「いや、あの人なら大丈夫だろう」

 

根拠は無いがあの人ならそう簡単には死なないだろう。恐らく助けを呼んでいるか、個人的に捜索に乗り出すだろう。そう言う人だからな。

 

命の頭を安心させるように撫で、クルメとアリッサの様態を見る。フードも兜も外させているが・・・・・・良かったのだろうか?何か事情があって隠していたなら他人に見られるのは不味いだろう。

 

「―わ・・・私、が。―――守らねば――なに、もかも・・・・・・――」

 

アリッサが魘され始めた。何の夢を見ているのかはわからないが彼女の過去に起因する物なんだろう。しかし、守らねば・・・か。アリッサらしい、とまだ言える程知ってる中では無いが・・・彼女らしいとは思う。

 

「アリッサ!おーい、アリッサ!アリッサ!」

「団、長?」

 

俺の呼び掛けにアリッサは反応を示しその目を薄らと開ける。状況を確認する様に虚ろな目であたりを見渡し、砂金のような髪を揺らす。安全を確認し安心したのかアリッサはこちらをまっすぐ見つめてくる。金と銀の混じり合う不思議な目が。

 

「団長ご無事ですか?」

「おいおい、初めの言葉がそれか?」

 

起きて初めにすることが味方の生存確認とは・・・二つ名に恥じない凄い人だな。俺は安心させる為に笑いながらアリッサの頭をなでる。

 

「!?!?!?」

 

するとアリッサが目を大きく見開いた。そして再びあたりを確認し始める、今度は高速で。

 

「―――よ、鎧が!?無い・・・!?」

 

どうやら俺が触れた事に慌てたらしい。・・・そうか・・・そんな嫌か・・・鎧ないと触られたくもないか・・・・・・いや、それでいいんだ。俺は団長、たとえ嫌われても全員守る心意気で行く(泣き)

 

「だ!団長!・・・っ!ん"ん。・・・団長。私の鎧が見当たりません。あれが無くては皆さんを守る事など・・・それに、余り素肌を晒したくない。」

「鎧なら砕けている部分が多かったからな、たまたまそこにいたヘファイストス・ファミリアに直してもらってる。」

「・・・了解。」

「あぁそれと・・・気にしなくてもいいと思うぞ。」

「―――――っ。」

 

っておいおい、何言ってるんだ?アリッサがなんで隠してるかも知らないのに無責任な・・・・・・。駄目だな、こんな奴じゃ。このままだとファミリアを纏めるなんて到底できない。

 

「あー・・・悪かった。考えなしの言葉だ、気にしないでくれ。じゃあ俺は外に行ってるな」

「――――了解。」

 

明らかに怒ってんもんなぁ・・・・・・。金と銀の視線を背中に受けながら俺はテントを出た。

 

「桜花ぁぁあ!命ぉお!!千草ぁあ!!」

 

響き渡る小さな女の子の叫び声。けど、俺には聞き覚えのある声だった。

 

「――妖夢?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴライアスの灰の中からドロップアイテム〈ゴライアスの硬皮〉を手にいれた俺は魔力と霊力の消費は押さえるべきと判断し白楼剣を消し、大刀に切り替える。はやる気持ちをどうにか抑え、急ぐ足を叩いて正し、怯える心にムチを打ってゆっくりと進んでいく。

 

―――怖い。

 

それが俺の正直な感想だ。

 

―――もし、死んでしまっていたら。

 

それが何よりも怖かった。自分のお粗末な行動でまた(・・)家族を失う、それは嫌だった。

 

一歩を踏み出すのが恐ろしい。けれど立ち止まっているのも立っていられなくなる程に怖い。刀をしまおうとするが手が震えて上手く入らない。仕方ないから抜刀したままで歩く事にした。

 

「妖夢・・・・・・」

 

タケの声が聞こえる。心が暖かくなる。安心感が背中から全身に広がるようで・・・・・・けれど、踏み出す度に恐怖は足元から忍び寄った。

「・・・・・・・・・・・・大丈夫、です。・・・・・・・・・・・・どうであれ、覚悟は・・・出来ています。」

 

―――嘘を付いた。

 

けれどこれはタケを騙そうとした物じゃない。自分を勇気づける為の嘘。そうだ、覚悟は出来ている、しなきゃいけないんだ。自分の我侭でこうなっているのだから、責任をとらないと。全てを背負わないと。

 

一歩、一歩と踏みしめていく。下へ降りる坂、十八階層へと続くそこに迫る程に冷や汗が溢れ出る。血の気が引く。歯がカチカチと目障りな音を立てる。

 

―――進まなくては。進んで、見なくては。

 

生きているのか、死んでしまっているのか。怪我をしているのか、それは致命傷なのか。

 

「大丈夫?」

 

リーナが心配そうに俺の背中をなでる。やめて欲しい、今はそんなもの要らない。

 

「大丈夫です。」

 

そう言ってその手を振り払う。・・・・・・我侭で、傲慢で、嘲って、本当に自分はダメなやつだ。本当に自分は嫌な奴だ。家族を守るための力を・・・まともに扱う事も出来やしない。

 

元からここに、オラリオに来たのは、来た目的は家族を守る事だった。

 

強くなり、地位を得て、誰からでも守れるように、そう考えて・・・・・・。

強くなって、地位も得て、団員も得たのに・・・・・・これじゃあ・・・俺は何もできてない。

 

守りたい人から自分から離れてどうするんだ・・・!力に驕って、信頼と言う言葉を隠れ蓑に桜花達を送り出し危険に晒したのは他でもない自分じゃないか!!

 

刀を持つ拳を握り込む。柄の部分を構成する木材が変な音を立てて形を変える。

 

―――もうすぐ逢える。

 

だから、足を前に出す。

 

―――大丈夫、きっと生きている。

 

そう信じて足を出す。

 

―――誰も、欠けてない。

 

歯を食いしばり前に出る。

 

―――また、一緒に笑える。

 

涙を拭いて全力で駆け出した。

 

―――大丈夫、可能性は・・・・・・生きている。

 

 

 

俺は坂道を全力で駆け抜ける。何度も転びそうなった。でも耐える、この先に行けば会えるかもしれないから。

 

「おい!妖夢」

 

ダリルの静止を無視してステイタスが許す全力で。

 

そして十八階層に辿り着き叫んだ。

 

「桜花ぁぁあ!命ぉお!!千草ぁぁあ!!」

 

肺活量が許すまで何度でも、何回も。ここまで来て脚がすくんだ。呼べばきっと来てくれると、そう思ってしまった。情けない、本当に情けない。甘えてばかりで本当に子供だ。

 

音に集中する。【集中】のアビリティが発動したのか、森のざわめき、動く動植物の音を耳が捉える。聞こえろ、聞こえてくれ。お願いだ・・・!!

 

―――返事は・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おーーい!妖夢ーー!」

 

―――来た!!

 

捉えた。桜花の声。間違えるはずもない、5年間も一緒だったんだ、間違える訳もない。俺は声の方に振り向いた。そこには

 

「妖夢!!来てくれたか!」

 

そこには元気に笑ってくれる桜花が居た。俺の目から涙が溢れ出る。言葉に出来ない、体が震えて喉から声が満足に出てこない。

 

「おぉかぁぁあ!!」

 

足がさっきまでと違って軽く、早く動く。

 

―――生きててくれた。

 

「おっ!?お、おい・・・・・・ははは、泣いてるのか?」

 

―――笑ってくれた。

 

「ごめんなさいっ!わだしのせいでっ私のせいで!」

「いいや、お前のせいじゃない、俺が退き際を間違ったんだよ」

 

―――頭をなでてくれた。抱きしめてくれた。

 

「でもっ・・・でもっ!!」

 

涙が止まらない。言いたいことが言葉にならない。

 

「ハハハ、・・・・・許すさ、それが【家族】だろ?」

 

―――許してくれた。家族と言ってくれた。

 

気持ちを抑えられない。

 

「生きててくれてありがとうございますっ!笑ってくれてありがとうございます!話してくれてありがとうございますっ!!」

 

止めどなく溢れてくる涙を両手を使って拭う。髪がぐしゃぐしゃになろうと構わない。ただ、今この気持ちを伝えなきゃ・・・!

 

「――あぁ、どういたしまして。」

 

安心感と安堵が体を占拠する。立っていられなくなってその場にヘタり込む。拭いても止まらない涙が地面に吸い込まれていく。

 

でも、聞かないと。どうして桜花一人なのか。2人は無事なのか。

 

「桜花・・・・・・2人は・・・生きて、いますか?」

 

唯これだけの文章を口から出すのが精一杯。【集中】が発動し、遅くなった世界の中で、無限に思われるその時間の中で、桜花の言葉はやけに大きく耳に届いた。

 

 

 

 

 

「生きている。誰も、死んでない。」

 

 

 

 

 

―――・・・良かった。

 

心の底からそう思った。膝を抱き、顔を埋めて嗚咽をもらす。

 

「うぅ・・・ぅぅ・・・・・・良かった・・・良かった、ですっ!」

 

あぁ、本当に、本当に良かった。誰もが死んでない。誰も欠けてない。誰も失ってない。誰も忘れられない。

 

「妖夢、顔を上げろ。そんな姿、千草達が見たら驚くぞ?」

「はい・・・・・・はいっ・・・・・・わかって、ます。・・・ぐすっ、大丈夫です。・・・嬉しくって、涙が止まらなくって・・・・・・」

「―――ありがとうな、助けに来てくれたんだろ?」

「はい、はいっ。助けに、きましたっ!」

 

桜花の言葉に顔を上げて、テントを目指す。

 

 

 

 

良かった、また、会える。生きている【家族】に。

 

 

 

 

 

 

 





次回!シリアル!!メインヒロイン(べートとオッタル)も登場!?そして壮大に何も始まらない!さらには水浴びっ!!(ここまでネタバレ)

なお、スマホが(ry



ハルプ『ハルプの!』
リーナ「僕も!」
ハルプ『えぇ?!えと、ハルプと!』
リーナ「リーナの!」
ハルプ&リーナ「『技紹介コーナー!』」
ハルプ『このコーナーでは!技と技を合わせて使う複合剣術を紹介していくぜ!今回はこの技!【天翔光龍十閃(あまかけるこうりゅうのとうせん)!』
リーナ「おぉ〜、あの技だね!ずばば!ざざん!って感じの!」
ハルプ『お、おう。あの技はまず零閃十機編隊っていう本来なら光速に近い速度で放たれる居合切りの連続技に、天翔龍閃っていう居合切りを合体させたんだ。』
リーナ「ふむふむー、全くわからーん。どうだろう、このままうどんを食べに行くというのは?」
ハルプ『何しに来たのさ』
リーナ「出番を得に」
ハルプ『あったよね?』
リーナ「あったけど?」
ハルプ『・・・・・・・・・・えっと、それで、対人戦なんかで使ったらゲームでいう10割確定の台バン性能の技だな。現実でいうなら一発目で首持っていけるから100割ですわ。100割ってなんだよ』
リーナ「ゲーム?」
ハルプ『気にしたらダメですよ。』
リーナ「・・・・・ふむ、聞いてみてもよろしくて?」
ハルプ『うどん、食うか?』
リーナ「口封じか、チュルチュルモグモグ、ふっ!ズズズーモグモグ、そのていどでモグモグ、ゴクリ、プハー。この僕の口を封じられるかなー?」
ハルプ『ふむ、あと5つもあったんだがな。うどんは効かないなら仕方ないか』
リーナ「負けました美味しいですありがとうございます!」
ハルプ『単純かっ!』
リーナ「で?僕の過去編はやらないのかい?」
ハルプ『めたい、めたすぎる。』
シフシフ「本当はやりたいんですよ。クルメもリーナもダリルもキュクロも。あと猿師も。けど、本編に入れる場所がないんですよねー。かくなら番外編になるかな?、」
リーナ「なれっ」
ハルプ『俺達の出番がなくなるだろいい加減にしろ!』
クルメ「なれっ!」




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