オラリオに半人半霊がいるのは間違っているだろうか?   作:シフシフ

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まさか、まさか、こんな失敗をしているとは・・・。
なんと、完成していない奴を投稿しており、何故か完成しているやつが手元に残っていると言う事態が発生していました。おうふ・・・。

ええー、追加されているのは、神様の視点、それに対する妖夢の視点。
ジジの視点。ベル君の現状等です。

割と重要な部分がごっそり三千文字抜け落ちているという悲しみ・・・なぜコメントで触れられないのかなー、と思っていたら未完成のを投稿していたと言う現実。あぁ!もう何やってんのさ!としょんぼりしてます。(´・ω・`)


28話「――なぜです」

「ここに、500万ヴァリスがある。これが俺達の全財産だ。」

 

地面に突き刺さる剣が描かれた旗をはためかせる極東の建築物。タケミカヅチ・ファミリアのホームだ。そこでタケミカヅチの声が響いた。

 

「そ、そのような大金何につかうのですか?」

 

命がタケミカヅチに尋ねる。

 

「必要な物をありったけ集めるんだ。武器でも防具でもアイテムでもいい。少しでも有利になる必要がある。」

 

タケミカヅチがそう言って胡座をとき立ち上がる。

 

「俺も戦いたいが・・・・・・流石にレベル3の冒険者は部が悪い。」

 

刀を手に取り、しかし再び元の位置に戻すタケミカヅチ。いくらタケミカヅチと言えど、人とほとんど変わらない身体能力では出来る事とできない事がある。

 

「いえ、タケがレベル2を倒せる時点でおかしいと気が付くべきそうすべき。なんで技の大半使えるんですか」

「レベル3倒してるお前には言われたくないな、あと使えるのは俺が剣神でもあるからだ」

「あれは向こうがドヤ顔して油断してたからですよ、剣神ずるいです」

 

さて、とタケミカヅチが話を戻す。

 

「取り敢えず何が必要だ?」

 

何が必要かと聞かれると各々が必要な物を上げていく。

 

「武器はお猿さんが選んでくれたので沢山あります、鎧もお猿さんが鎖帷子を買ってくれましたし、充分かと。」

「まだ丸薬が足りないでござるな。力、護りの丸薬が少ないでごザル。癒しの丸薬は売りに出している物を持ってくれば足りるでごザルな。」

「え、ええと。・・・・・・矢の補充くらいしか思いつきません」

「そうだな、千草を助けた後の千草の武器が必要だ。攫われた時に紛失しているみたいだしな。猿師さん、いい弓は売ってなかったですか?」

「ふぅむ、弓でごザルか・・・・・・少なくとも拙者が立ち寄った店には東洋弓は無かったでごザル」

「・・・あー、つまり、特に必要なものは無い?のか?」

「うーむ、そうでごザルなぁ・・・素材はあればあるだけ色々な薬を作れるでごザルが・・・」

「よし、ありったけ買おう!」

「いやいや、作るの拙者と娘だけでごザルよ!?多く買っても無駄でごザル!」

 

とは言えもう殆どの準備は終わっている。この後、妖夢達は少しでも経験値を稼ぐために模擬戦を繰り返す。ダンジョンで何かあっては困るのでダンジョンには行かないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはインナーを着て、その後鎖帷子を着て、んでもってその上から何時もの洋服を着て、更に鎧を付ける。うわー重装備だな(錯乱)

 

ん?おっすおっす!妖夢ですよ。今日は本番です、戦争遊戯です。千草を救ってエロスの首を跳ねる日です。くくく、異界の剣士を甘く見たその驕りを首ごと改めさせてくれる・・・・・・なんか俺悪役みたいだな。

 

うっし、ええと?太ももに専用レッグホルダーをつけまして、その中にポーションを入れる。ポーションの内訳はハイポーション3、マジックポーション2の計5本。え?少ない?・・・半霊の中には沢山あるから大丈夫ですぜ。

 

で、腰に小さめのポーチをつけます、ここには丸薬の他に『危ないお薬』が入っています。大量に摂取すると死ぬぞ、毒だからね。

・・・って危ないな、同じ場所に入れたら間違えて俺が食べちゃうだろ、うーん、取り敢えず毒薬は半霊に突っ込むか。

 

丸薬の内訳は癒しが6、力が4、護りが4、あとよくわからないが危なくなったら飲めって渡されたヤツが1。あぁそれと魔力を回復するやつもだ。毒薬を抜いたから空きが出来たな、投げナイフでも突っ込んどこう。半霊にも突っ込んで・・・まぁたハリネズミ、いやモーニングスターみたいになってるなハハハ。

・・・・・・これで半霊パンチを撃てば凄まじい威力になるのでは・・・?

 

「おーい、妖夢、命、準備は出来たか?」

 

タケの声が玄関の方から聞こえてくる。俺は命の肩をとんとんと叩き一緒に向かう。タケたちと合流した俺達はホームの前に来ていた馬車に乗り込んだ。

 

そして町中を馬車が駆け抜ける。周りからは歓声が上がる。

 

「頑張って〜!変態なんかに負けたらだめよ〜!」

「いけいけ!フォーーーー!」

 

そんな人たちに俺はニコニコと手を振りながら答える。

 

「行ってきまーーす!」

 

さぁ、なんだか緊張してきたぞ。たくさんの人に見られる事も考慮しなくちゃいけないのかな?でも千草を助けなきゃいけないのにそんな事を考えていられるかね?答えはNO。流石に広範囲破壊兵器妖夢マンに成らねば時間かかるし。あっ、ウーマンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、命です。妖夢殿が私のすぐ後ろで着替えをしている。私も早く準備をしなくては。キチンとサラシを巻いて、インナーを着る。その上から鎖帷子を着込み、更に水色の着物を羽織る。そしてハードアーマードの甲羅で作った肩盾を装着し、残雪・・・は私の愛剣の名です。その残雪を腰に佩く。

 

・・・既に緊張でいっぱいいっぱいだ。千草殿は石化され身の安全は保証されているらしいが、それを鵜呑みには出来ない、ですから妖夢殿も桜花殿も1日目で決めるつもりの様だ。猿師殿が購入なさった装束を3人分サーポーターバックに詰め込み、その他ポーションなどの薬品も詰める。

 

この戦争遊戯における私の役割は千草殿の捜索。私がしくじれば見つからない可能性がある、とても重要な役割だと、私でもわかる。気持ちをリラックスさせなくては・・・。

 

「おーい、妖夢、命、準備は出来たか?」

 

タケミカヅチ様のお声がして、思考の海から引き上がる。肩を妖夢殿がとんとんと叩いてくれた、もう馬車は来ているらしい。

 

馬車に乗った私達はオラリオの方々に熱い声援を貰った、ジンと来るとはこういう事を言うのだろうか。まさか応援してもらえるなんて考えてもいなかったのだから。

 

「行ってきまーーす!」

 

妖夢殿が大きく手を振り、声を張り上げる。これから沢山の「人間」相手に戦うとは思えない程自然だ。そして、私は見てしまった。

 

妖夢殿の目が何処までも鋭利な色を帯びていることに。

 

私が言うのも何だがこのままでは妖夢殿は一線をこえてしまう。そう思ったのだ。私は体が勝手に動くのを感じた。自然とタケミカヅチ様と桜花殿の方を向いてしまう。二人の顔色は良くなかった、そしてその目は、妖夢殿をしっかりと捉えていた。

 

「みょん?タケ?桜花?どうかしましたか?私の顔になにか付いてます?」

 

ぐるり。と妖夢殿が振り返る。視線に気がついたのか、それとも雰囲気でわかったのか。

 

「もぅ、どうしたんですか?緊張するのはわかりますが緊張のしすぎは逆効果ですよ!」

 

頬を膨らませ、腕をブンブンしながら妖夢殿が私たちを見ている。いつも通りの妖夢殿だ。私は少し安心し、その緊張を和らげる。

 

「そうですよね。緊張は少量がいい。」

 

コクリと妖夢殿が頷き、そのまま馬車に揺られる。しばらく進むと門が見えてきた、あそこから外に行くには色々と手続きが必要なのだ。

タケミカヅチ様が馬車から降りる。タケミカヅチ様は残念ながら戦いに参加する事は出来ない。

 

「妖夢、それに桜花達もだ。・・・・・・殺しはするなよ?」

 

タケミカヅチ様が表情を引き締め、そう仰った。私と桜花殿が頷こうとした時、その場の雰囲気が変わった。妖夢殿の目によって。

 

「――なぜです」

 

戦争遊戯に真剣に取り組もうとしていたその目が文字通り真剣(・・)な物へと変わった、不用意に触れれば手が切れてしまいそうな程に、更に鋭い光を纏っていたのだ。

 

「お前達が――――俺の家族だからだ。」

 

ですが、タケミカヅチ様は退かない、その剣を硬く握りしめてみせる、例えその手が出血を強いられようとも。妖夢殿の目が大きく開く。

 

「殺すな。絶対だ。・・・・・・・・・・・・あー、なんだ、頑張ってこい、お前達なら負けないさ!」

 

タケミカヅチ様が頭を掻きながら激励する。キョトンとしたままの妖夢殿と私たちを乗せ、馬車は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弓兵!点検はおわったな?」

「「おう!」」

 

キュクロの張りのある声が砦にこだまする。砦の外壁の上、人が通れるスペースには弓やクロスボウ、その他長距離武器を持った冒険者がずらりと並ぶ。

 

彼らの手に握られるその武器達はそれほど大層なものではないが、神の恩恵によって強化された肉体から放たれる矢は速く重いだろう。

 

「号令があるまで撃つんじゃないぞ!」

「「おう!」」

 

日は高く上り、広い草原を明るく照らし出す。しかし、その草原にはタケミカヅチ・ファミリアの者達は見受けられない。彼らは更に奥の森の中に拠点を構えたようだ。

 

「歩兵!しっかりと武装はしているな?」

「「おう!」」

 

キュクロは門前に固まらせた30人の近接武器を持った冒険者に確認をとる。裏や中庭、砦の内部にまで冒険者達は配置されている。こっそり忍び込むのは不可能だろう。少なくとも正面からは。

キュクロは頷き、踵を返し建物の中へと入って行った。

 

 

 

「皆さん!しっかりと魔力を蓄えましたか?ポーションももった?」

 

砦の二階に高い声が響く。廊下では右足を鋼鉄の鎧に包み、体をローブで覆った冒険者、エン・プーサが指揮を執っていた。桃色のウェーブのかかった肩まで伸びた髪を後ろで縛ってポニーテールにしている。そんな彼女が指揮を任されたのは魔法使い達だ。

 

「「はいっ!」」

 

全三階からなるこの砦、1階、3階を護るのは【単眼巨神(サイクロプス)】。2階を護るのが【魔鉄淫獣(リリス・アイアン)】。そして遊撃を行うのが【爆裂劫炎(ボンバー・フレイム・ボンバー)】のダリルだ。

 

エン・プーサのよく通る高い声が廊下に響く。

 

「キュクロさんの号令が聞こえたら詠唱を開始します。それぞれ詠唱文の長さが違うと思うので無理に合わせようとはせず、好きに撃っていいそうです。あ!それとしっかりと緊急時の武器は持ちましたか?」

 

それぞれが腰につけた短剣やメイスを見せ、エン・プーサはふぅと安心する。

 

「エン団長はしっかりと持ちましたか?武器」

「え?・・・・・・あ、ああぁえとこれはええと。・・・忘れてました・・・」

「団長ぉ・・・」

「ふえぇごめんなさいごめんなさいっ!」

 

どうやら本人が忘れていたらしく、エン・プーサをエンと呼んだ同じファミリアの団員に短剣を手渡され、目の端に涙を浮かべつつペコペコと頭を下げる。そんな団長らしからぬ姿にエロスファミリアの者達もキョトンとしている。

 

「ってそんな事を言っている場合ではありませんでした!誰か遠距離攻撃に備えるため、戦士を数人連れてきてください。ダリルさんのところからです!・・・あ、後私の武器も・・・そのぉ、持ってきて頂けると嬉しいかなと・・・思います」

「「・・・はい」」

 

 

 

 

筋骨隆々の肉体に、赤い髪をオールバックにした上裸の男、種族はウェアウルフ、名前をダリル。そんなダリルの元に1人の女魔法使いがやってくる。

 

「あぁん?どうしたんだてめぇ?何か用かよ。」

 

強面の顔が女冒険者にグイッと近付き、悲鳴を上げさせる。所謂強面の部類であるダリルは女冒険者には刺激が強すぎだ。

 

「だぁまれ黙れ、うっせーな。テメェみてぇな小便クセぇガキにゃ興味ねぇよ。」

「なっ・・・!」

 

いきなりの物言いに女冒険者は言葉をつまらせる。反論しようと口を開きかけるが、それをダリルは手を翳し止める。

 

「わあってる、どうせ盾が欲しいんだろ?好きなだけ連れてきな。どうせ役にゃたちゃしねぇよ。」

 

しっしっと手をふり、ダリルは冒険者を追い払う。空を見上げ、拳を打ち鳴らし、ニヤリと大きく笑う。

 

「いやぁ・・・悪趣味な主神に感謝しなきゃなぁ・・・!俺の強さを見せつけて、んでもってさっさっと何処か手短なファミリアに移ろう。・・・ここぁ少し・・・いや、だいぶ居づらいからな。」

 

彼は所謂飽き性だ、例えどれだけの恩があろうとも、金を積まれようとも、面白くないのならすぐさま何処かへ移るだろう。現に彼は3回のコンバージョンを果たしている。赤い耳をピクピクと動かし、伸びをする。

 

「あのベートが認め、主神に目を付けられる子供・・・さぁて、どっから来るかねぇ・・・敵さんは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!タケミカヅチぃ〜!こっちやでー!」

 

バベルの塔の天辺付近に神々が集まっていた。それは戦争遊戯を鑑賞する為である。戦場から遠く離れたこのバベルの塔に神々が集まるのは普段は封じられている神威を限定的に解放することを許されるからだ。

 

「よっ、ロキ。それにヘスティアにミアハ。」

 

タケミカヅチが心配さを隠しきれないといった表情でロキの元にやってくる。

 

「おいおい!君らしくないじゃないかタケ。君は信じているんだろう?君の子供たちを。」

「あぁ信じてる。それでも親として心配はするだろ?」

「ほーんま親バカやなぁ。」

「うむ、だがそれも良いではないか。」

 

神々が会話をしているとアナウンスが響く。

 

『さぁさぁ!皆様やってきました!来ちまいました!ウォーーーーゲーーームダーーーーー!』

 

ガネーシャファミリアの団員の威勢のいい実況が始まる。彼らの合図で神威をわずかに解放するのだ。

 

『いやー!ついに始まりましたね戦争遊戯、皆さんはどちらに賭けたかな?私ならばタケミカヅチ・ファミリアですかね!なんてったってその方が面白い!どうですかガネーシャ様!』

『俺がガネーシャだ!』

『頂きました「俺がガネーシャだ!」だぁー!素晴らしい。なんともコメントに困る返答ありがとうございますガネーシャ様!』

『俺がガネーシャだ!』

『はい、うるさい。では神々の皆様!神威を解放してどうぞ!』

 

少々うるさいくらいにテンションの高い実況がバベルの塔のみならずオラリオ全体に流れる。するとそれを合図まるでテレビの様に戦場となる場所を映し出す鏡のような物が無数に浮かび始めた。

『よーしよし!これで誰でも見られますね!やりましたねぇガネーシャ様!』

『俺が!ガネーシャだっ!』

『緊張してんのかな?』

 

鬱陶しいとすら言える実況だが、その熱気は見ているもの達にも伝わり、その興奮をより高めてくれる。

 

「・・・ついに、始まるんだね・・・。」

「うむ、そうであるな。だがタケミカヅチよ。どのタイミングで攻め込むのだ?」

「日が暮れたらだ」

 

タケミカヅチ達の会話に耳をすませていた神々が「え?」と声を上げるだろう。なにせ・・・・・・まだお昼時なのだから。

 

「お、おいおい・・・じゃあまだしばらく始まらねぇのかよ」

「えー・・・どうする?準備段階を見るってのも面白いかもしれないけどよー」

「はっ!まさかお着替えシーンが!?」

「なん・・・・・・だと!?それならば仕方がない!全裸正座で待機せねば!」

「殺すぞ」

「マジすんまそん」

 

男神達の何時もの戯言を至極真面目に受け取り威圧するタケミカヅチに他の神々が呆れていると、早速戦場の様子が映し出される。それぞれ見たい所見たい場面を見れるのだが、タケミカヅチのそれに映し出された映像はやはり妖夢達だった。

 

 

 

 

 

 

「お、桜花殿・・・こちらは見ないでくださいね」

「見る訳ないし見てもどうにも思わない。」

「ハルプも着替えさせておきましょうか」

『ほいっ!完了!』

「「速!?」」

『あ!桜花振り向いたらいけないんだぞ?』

「え?あ、あぁ悪い。」

 

 

森の中に拠点を構えている俺達は着替えに勤しんでいた。猿師が買ってきてくれたあの装束に着替えているんだ。夜襲をかける上でこれはあった方がいいだろう。

 

にしてもハルプの着替えは楽でいいな、装束を半霊に突っ込んで、着替えるように念じればあら不思議、着替え終わった妖夢が出てくるんだからな。

 

という訳で妖夢本体たる俺も着替えなくては・・・・・・・・・視線を感じるぞ?・・・あぁなるほど。神達か・・・。

 

「どうやら見られているようです」「桜花殿!?」

「いや見てないぞ俺は!!」

「いえ、神々がこちらを見てます」

 

絶対にエロスだけには見られたくない。ので俺は念のために持ってきたキャンプ用のテントをハルプ形態に移行させた半霊と協力し建てる。その中で俺と命は着替える事にした。つっても服脱いでもインナーと鎖帷子あるから見えないんだけどね?

 

なぜかロキが泣き叫ぶ姿を幻視したが多分気のせいだろう。

 

全員が着替え終わり夜襲の準備は整った。あとは夜を待つだけだ。

 

 

 

 

 

神々はビビっていた。

 

「嘘だろ?・・・・・・なんで見てる事がバレたんだ・・・これじゃあ俺達までぶった切られるのでは?」

「こんなの普通じゃ考えられない!」

「き、きっと目がいいんだよ」

「現実を逃避したらだめだ。逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!」

「高度な柔軟性を維持しつつ(ry」

「そんなんじゃ俺、オラリオに居たくなくなっちまうよ・・・」

 

 

オラリオから遠く離れた地を神威、つまり神の力をもって観察しているのだ。それに気がつける等、最早神業に等しい。

 

「ハハハ!さすがは妖夢!俺の子だな!」

「うわ!タケミカヅチのテンションが上がりおった!にしても見れへんかったかぁ。」

 

神々の視点は妖夢達からキュクロ達へと移ろう。強固な砦に守られるこちらは圧倒的に有利。しかし、数や地形の有利をステイタスで強引に押しつぶすのが冒険者だ。砦など魔法を防ぐ盾位に考えた方がいいだろう。

 

「ほー、なんや、宴なんか開いてんのかい。こんな真昼間から」

 

聞く人が聞けばお前が言うなと答えるだろうセリフだが、ロキの表情は面白そうに笑っている。ロキの目線の先、砦の中には木製のテーブルが並べられ、そこに沢山の料理が並ぶ。酒を喰らい、食い物をつまむ。まるでそれは敵が攻めてこないと知っているように。

 

「・・・・・・夜襲、バレてんな。コレは」

 

ロキは口元を三日月の様に歪めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジジ・ルーシャは激怒した。なぜ私が誘拐犯に料理を作っているのかと。

 

「どうして私がこんなことしなきゃいけないのヨ。」

 

ぶつくさ言いながらも一人暮らしの長さ故に素早く料理を作っていくジジ。

 

(毒トカあればいいのにナ・・・)

 

しかし残念かな、ジジはアドバイザーであるからこそ、沢山のスキルにアビリティを知っている。【対異常】や【毒耐性】など、毒に有効なスキルは数多い。それにステイタスを持っているだけでも毒や病気に強くなるのだ。

 

「変な気は起こさないで下さいよジジさん」

 

後ろから男の声。実はもう既に2時間ほどこうして同じキッチンに居る、彼は監視役だ。ジジが毒を入れたり、逃げ出したりしないよう入口近くで見張っている、そこだけ見ればまともなのだが・・・なぜ妖夢の絵が描かれた盾を持っているのだろうか。

 

(はぁ・・・逃げ出す隙を作るためにこうして料理を作る事を選んだノニ・・・まぁ、見逃してくれなイカ)

 

「それハ、こっちのセリフ。変な気は起こさないデ」

「ははは、流石にそれはないっすよ。俺なんて下っ端の下っ端。まぁこれでも最古参メンバーなんですがね・・・」

 

やれやれ、と肩をすくめるその姿にジジは思うところがあった。

 

(確カ・・・初期メンバーは3人だったカナ?ならその1人?・・・・・・・・・あぁ、思い出しタ、主神の趣向が変わってファミリア内の地位が団長を除いて総入れ替えしたんダ。)

 

ファミリアを共に築いたメンバーを下っ端の下っ端にするなんて、ジジはわずかに同情する。

 

「可哀想だけド、私は何も出来ないヨ。コンバージョンをおすすめするヨ」

 

ジジの言葉に男は自嘲気味な笑みを浮かべる。

 

「いや、いいんだよジジさん。俺達が作っちまったファミリアだ。・・・・・・最後まで見届けるさ」

 

ジジは諦めが見て取れるその姿に彼は他の奴らとは違うのだと思い至る。逃げ出すために協力を要請できるかもしれないと。

 

「・・・最後まで見届けるなラ、私をギルドに早く返した方がいイ。今の監視は貴方だケ、あなた次第できっとファミリアも」

 

そこまで言ってジジの口は塞がれる。男の手が強引にその口を封じたのだ。

 

「やめるんだジジさん。もう遅いんだよ。・・・・・・ジジさんは知らないと思う、いま、ウォーゲームが始まってんだ。ジジさんの担当冒険者のちびっ子がジジさん達を救おうと向かってくる。・・・ジジさんは助かるさ、きっと助けに来てくれる。・・・・・・だから俺はこのファミリアの最後を見届ける。」

 

そこには決意した男が居た。負けると確信した男が居た。覚悟を決めた男が居た。

 

「キュクロも、アイツらも同じ気持ちだろうよ。・・・アイツの見込みだと攻めてくるのは夜だ。」

 

ジジは鼓動が速くなるのを感じた。戦争遊戯が始まっている、そして、自分達を助けるために行動している妖夢にジジは感謝と共に不安を覚えたのだ。

 

「ん、料理が出来たか。じゃあジジさん、俺がそっちを運ぶから、それよろしく。」

「ん・・・わかったヨ」

 

少しくらい優しくしてもいいのだろうと。彼らに同情してしまう自分に苦笑しながらも、次に作る料理は力を込めようと密かにジジは思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もが戦争遊戯に思いを馳せる中。ダンジョンで物語は進む。うさぎは牛を倒し、それを冒険者達は見届けただろう。世界最速兎の誕生の瞬間だった。




こんな凡ミスを・・・すみませんでした(´・ω・`)。

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