wake up knights   作:すーぱーおもちらんど

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 第十五話になります。
 大変お待たせいたしました。
 ゲルマン洞窟編完結です。



15

 アラクネたちの恨み、憎しみ、怒り、全ての負を込めたような咆哮と雄叫びが刀霞の全身を叩く。

 大地が大きく揺れ、天井からパラパラと小さな氷塊が刀霞の肩に落ちる。

 神聖な地を踏み躙られ、己の住処を荒らされ、我々の寝床を汚された貴様らを許さない。そんな恨みが募ったような表情がアラクネとヨトゥンに表われていた。

 しかしトウカには恐れや緊張などはなく、威風堂々と剣を構え、強大な力を持つ邪神級モンスターの迫力にまったく動じることもなく、表情には不思議と笑みがこぼれていた。

 

――俺の背中には共に戦ってくれている仲間がいる。

 

 トウカにとって安堵するには十分すぎるほどの理由だった。

 

「お、後ろは始めたみたいだな」

 

 後方からはリズベットが天井に攻撃を仕掛けたのであろう轟音が響いてくる。恐らく完全に決壊するまでは五分程度だろうか。その時間まで生き残る事ができたならば二人で脱出することも可能なのだろう。しかし、この時のトウカは少し違っていた。

 

「……よし、始めるか!」

 

 その言葉を口にすると同時に、アラクネが咆哮しながら前足を振り上げつつ飛び掛ってきた。

 トウカは横っ飛びでなんとか回避することができたが、その先にはヨトゥンが棍棒を振り上げ待ち構えて――

 

「くぉ……ッ」

 

 両手剣を盾にヨトゥンの攻撃をかろうじて受けることには成功したのだが、勢いで後方に吹き飛ばされ、氷の壁に背を打ち付けられる。

 いつしかの斧持ちの男に似たような攻撃されたことを思い出すトウカであったが、前回とは違いスタン効果はなかったため、すぐさま体勢を立て直し、剣を握り締めヨトゥンに向かって攻撃を仕掛けた。

 

「くあぁ!!」

 

 体を勢いよく一回転させ、水平斬りをしかける。足に一太刀浴びせることには成功したのだが、ヨトゥンはまったく怯むことなくそのままトウカを蹴り飛ばす。一撃与えたことに油断してしまったトウカはまともに食らってしまい、

 

「ぐぁ……ッ」

 

 大きなハンマーに叩きつけられたような衝撃がトウカを襲う。軽々と直線状に吹き飛ばされ、別方向にいたヨトゥンの腹部に衝突し、そのまま追い討ちをかけるように体を鷲掴みにされて、床に叩きつられてしまった。

 

「が……ッ」

 

 あっという間に瀕死の状態に陥ってしまったトウカであったが、それでも彼は臆することはなかった。

 

――もう少し……もう少しだけ……ッ

 

 よろよろと立ち上がったトウカは、力を振り絞るように地面を蹴り上げ、空中へ飛び上がる。ヨトゥンたちは追撃しようと棍棒を振り回すが悉く空を斬り、攻撃が届かない。

 

「よし、これなら……!」

 

 その安心が一瞬の隙を生んでしまった。

 瞬間、トウカの両足に糸のようなものが付着した。引っ張られた勢いで体勢を崩し、錐揉み上に落下しつつも目の端で糸の先を辿ってみる。それは、アラクネの口から射出しているものだとわかった。なんとか剣で糸を切り落とすことに成功したのだが、バランスを保つことができず、階段の入り口付近の壁へ強引に不時着するように体を預けた。

 その直後、入り口の方からリズベットの声が洞窟に反響した。

 

「トウカ! 戻ってきて! もう崩れちゃう!!」

 

――……間に合ったか……。

 

「先に行っててくれ、すぐ追いかける!」

 

 予定とは違うトウカの一言に、リズベットは青ざめた。

 

「なにしてんのよ!? 今いくから――ッ」

「来るな!! 俺は大丈夫だから早くいけ!!」

「でも……でも……!」

 

 トウカの強い制止にリズベットは困惑してしまうが、迷っている間にも天井はみるみる崩れ落ちていく。リズベットには最早悩む時間は残されていなかった。

 

――……良かった。なんとか敵を引き付けることができそうだ……。

 

 刀霞は安堵していた。

 天井を崩さずにトウカが囮になっていた場合、時間稼ぎすらできなかっただろう。そうなればリズベットは逃げ切れず、二人ともモンスターにやられていた。トウカは端から戻る気などなく、こうでも言わなければリズベットは言うことを聞かない。

 結果的にリズの気持ちを裏切ることになってしまったかもしれない。それでも一緒に戦えることもできたしきっと許してくれるはずだ。そんな満身創痍と極度の疲労で意識が薄れかけていくトウカの前に、アラクネたちが最後の止めを刺そうと一気に詰め寄る。

 敵の姿がぼやけて見える。後方からは天井の崩れる音が聞こえ、地面の揺れる感覚が妙に心地良く感じた。

 

「やれやれ……今日は……疲れた……」

 

 

――――。

 

 

――――――――。

 

 

「――男でしょ!! ちゃんとしなさいよ!!」

 

 聞き慣れた強気な女性の声が聞こえる。先に逃がしたはずの、不器用で怖がりで我侭な女の子の声が。

 トウカはふと目を開けるとリズベットに支えられ、ふらふらと飛行していることに気づいた。先に行けと言ったにも関わらず言うことを聞かないリズベットに、トウカは説教をして振りほどこうとしたのだが、疲労で体が動かすことができず、何も抵抗することができなかったため、精一杯の皮肉をこめてリズベットに言った。

 

「ばかやろう……先に行けって……いったろ……」

「うっさいわね!! 嘘つきに説教される筋合いはないわ!」

「はは、仰るとおりで……」

 

 天井は八割方崩壊し、もはや塞ぎきってしまうところであったが、リズベットはなんとかトウカを階段下まで運ぶことができた。が、そこでトウカの意識は完全に途切れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――なんだ……この感触……。

 

 随分と柔らかくて寝心地のいい感覚がトウカを優しく包んでいた。ついその心地良さに負けてもう一度眠ってしまおうかと思ったのだが、自分の現状がどうしても知りたかったため、重く感じる瞼をゆっくりと開ける。

 

「あ……気がついた?」

「――……リズ……?」

 

 目を開けるとそこにはリズベットの顔があった。

 

――……俺は……気を失っていたのか……? この柔らかさって……膝の……上……!?

 

「す、すまん……!! いまどくから――って……あ、あれ……」

 

 体を起こそうにも、体のいうことがきかない。早くどかなければと思い、トウカは無理やり体を転がそうと上半身を捻ろうとしたのだが、リズベットに頭を抑えられ動かすことができなくなってしまった。

 

「まだ動いちゃだめよ、あんたボロボロなんだから……」

 

 嫌がっていないところから察するに、自ら膝枕をしてくれたのかと察したトウカは、力が抜けるように、

 

「――……すまない……迷惑かけたな……」

「別にいいわよ。それよりも教えて、なんで嘘ついてまで先に行かせようとしたの…?」

「……仲間だから」

「どういうこと……?」

「俺も、リズと同じで不器用ってことさ」

 

 リズベットは驚きに目を丸くした。リズベット自身も自覚していたのだ。仲間に対する想いへの不器用さに、もどかしさを感じていたのはトウカも同じだった。助けたいのに助ける力がない。だからこそ彼女は裏方で仲間を支えることができる武具屋になったのだ。トウカの場合は自己犠牲の上で成り立つ、彼なりに仲間を支える唯一の方法だった。

 

――こんなにボロボロになりながらも私を守ってくれた……。私の我侭のせいで……こんな目にあってるのに……迷惑かけたのに……

 

「ごめんね……あたしのせいで……」

 

 本来ならば見捨てられて当然だった。独断で必要以上に鉱石を採取し、仲間の指示を無視し、仲間の気遣いにすら耳を傾けることをしなかった。リズベットは下唇をきゅっと噛み、肩をフルフルと震わせながら謝ることしかできなかった。

 そんな彼女の表情を見たトウカは、優しい口調でリズベットに感謝の言葉を口にする。

 

「……リズ、助けてくれてありがとな」

「どこまでお人好しなのよ……そこまでして助ける価値なんてあたしにはないのに……本当に馬鹿ね……本当に……」

 

「ほ……んと……ば……か……」

 

 リズベットの顔がくしゃっと歪み、瞳から大粒の涙が滴っていたが、咄嗟に腕で顔を隠し嗚咽しながらも必死に堪えていた。自分の弱い部分は、例え仲間の前であったとしても見せたくなかった。だからこそキリトのことを諦めた時も、誰にも悟られないよう一人で見つからない場所で粛々と自分の気持ちを収めていた。

 その事はトウカも知っていた。本で詳細に書かれていた部分であったため、今ここで涙を堪えている彼女がどういう気持ちなのかも理解していた。それを全て踏まえた上で、トウカはリスベットの頭をまるでガラス細工を扱うかのようにそっと撫で、二言で彼女の雁字搦めに巻かれていた心の鎖を切り落とした。

 ――惨憺な心を慰めるために。

 

「……我慢するなよリズ。俺の前でくらい素直になれ」

「――――ッ」

 

 リズベットは堰がきれたように大きな声で泣いた。今まで強気だった彼女が、自分の内に溜め込んでいたものを全て吐き出すように、トウカを強く抱きしめ、大粒の涙を流し続けた。

 彼女は羨ましかった。好きになれた人ができたかと思えば友人に先を越され、応援すればするほどキリトが遠ざかっていく。

 キリトの傍にいる女性はキリトと同じくらい強くなくては釣り合わない。そう自分に言い聞かせ、諦めたつもりだった。

 

 ――今後いくら私がアプローチをかけたところでアスナには勝てない。

 

 それは彼女自身嫌と言うほど自覚していた。しかし、好きなものは仕方ない。そう単純な話ではないのだ。そんな解決できないストレスが溜まりに溜まってできたのが、今のリズベットだ。

 本で見るよりも、実際の彼女はずっとずっと繊細だった。アイテムをちょろまかして売りさばいたり、必要以上に金銭を求めて採掘したりする行動は、今思えば彼女なりのストレスの解消の仕方だったのだろう……。

 

 ――できる限りに力になろう。俺でしか支えられないこともある。それはキリトでも、アスナ、シリカ、シノン、リーファでもできないことだ。……クラインは大人だが、まぁある意味無理だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁすっきりした。ありがとね、トウカ!」

「ん、それはなによりだ」

 

 リズは太陽のような、明るい笑顔を俺に向けた。きっと全てを吐き出せたのだろう。つき物が落ちたように晴れ晴れとした表情で、とても満足そうな様子だった。

 その後、無事に洞窟を抜け出せた俺たちは、中都《アルン》まで移動し、武器の製作はまた後日にしようということで、今回は解散することになった。

 と、リズはログアウト際、

 

「ねぇトウカ、今度買い物に付き合いなさいよ」

「な、なぜ……?」

「女の子泣かした罰よ」

 

――俺が泣かしたわけじゃないだろう……

 

 リズは俺の心中を察したのか、顔を近づけギロっと睨らみ、

 

「なんか文句あんの?」

「いえ、ありません」

「ふふん、じゃあ詳しいことは連絡するから。今日は楽しかったわ。またね、トウカ」

「あぁ、おやすみ。リズ」

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 リズベットと見送った後、ポーションで回復済みとはいえ精神的に疲労困憊だった俺は、彼女に続くようにログアウトしようとしたのだが、メニュー画面を開いた瞬間、フレンドからメールが届いている知らせがきていることに気がついた。こんな深夜に一体誰からだと思いつつ、メールを開いて送り主を確認すると、そこには「Yuuki」と表示されていた。

 送り主がユウキだとわかった瞬間、あの不機嫌な表情をつい思い出す。結局何が原因で彼女の機嫌が悪かったのか、未だに心当たりが見つからず終いだったので、メールの内容を確認するのが妙に後ろめたく感じてしまった。

 

「あー……きっと怒ってんだろうな……」

 

 恐る恐るメールを開封してみると、そこに書かれていたのは意外にもシンプルな内容だった。

 

『今から会えないカナ。世界樹の根元で待ってます』

 

 世界樹の根元……。ということは、今俺がいる中都アルンの中心ということか。

 はたして何を言われるのか。二度と話しかけるなーとか、ボクに近づくなーとか。

 いつか嫌われるだろうとは思っていたが、意外と早くきたことに戸惑いを隠せない。しかしこれは覚悟していたことだ。元々はこういうことが目的で接点もった部分もあるし、これを機に丁度いいかもしれない。なによりこれでユウキもわかっただろう。俺と一緒にいたら不幸なことになったり、傷つけてしまうことになると。

 ……それでもいい気分にはなれないが。

 いつもよりもネガティブな思考をしつつ、足取りが重くなりながらも世界樹の根元へ向かった。傷つくことには慣れているが、傷つけることには慣れていない俺としては、そう告げられる前に一言でもいいから謝っておきたいと思った。

 何が原因で彼女を苛立たせてしまったのか知りたい気持ちもあるのだが、それを聞くのは無粋なのだろう。

 ただ、一言だけ謝罪をし、黙って去る。これが俺のできる最後のけじめってやつだ。

 

 

 

 

 曲がりくねった緩い階段を暫く上がっていると、少しずつ大きな扉が顔を覗かせてきた。

 やがて根元付近まで到着し、世界樹のほぼ真下まで歩み寄り、眼前にある扉を改めて見てみると、あまりの大きさにしばし圧倒されてしまった。

 そう、この強固で堅牢な扉は《グランドクエスト》を受注することができる場所である。以前アスナが世界樹の頂上にて捕らわれていた際に、キリトが無謀にも単身で乗り込んでしまった場所でもあった。その時は攻略が絶対不可能な仕様になっており、通常通りに進行しても、誰も辿りつくことはできなかった。

 しかしその後、キリトたちの大きな活躍により運営もゲーム方針も大きく変化し、人数と装備がしっかりしていれば攻略できるような仕様になっている。それでも世界樹攻略となればALO最大の大規模クエストになるため、未だに攻略できた種族もギルドも存在していない。

 

――あのシーンは熱い展開だったなー……

 

 自分が体験したわけではないのだが、何故だか感傷に浸ってしまった。

 と、そんな感情に入り浸っていると後ろから声をかけられる。

 

「あ、トウカ。来てくれたのね」

 

 それは、想像した人物とは違っていた。

 

「……アスナ?」

「こんな時間に呼び出しちゃってごめんね」

 

 確か、呼び出したのはアスナではなくユウキだったはずだが。つい理由を聞きたくなった俺は、「なぜアスナがこんな所に?」と言いかけたのだが、ふとアスナの後ろを見てみると、なにやらアスナの背後で紫色の何かがもぞもぞと動いていることに気がついた。

 モンスターというわけではないのだが、アスナの背後にぴったりとくっついているその何かが気になってしまい、当初の目的であったアスナがここにいる理由を尋ねることよりもそちらの存在について質問を投げてしまった。

 

「な、なんか……後ろにいないか……?」

「あ。もう……ちゃんと言うんでしょ。ほら、頑張って」

 

 アスナが目の端だけ後方に合わせ、誰かに話しかけたのかと思えば、その言葉に答えるように紫色の何かがアスナの背中からひょっこりと顔だけ覗かせた。

 紫色の長い髪、インプ特有の服装、眉間にしわを寄せてなにやらもじもじしているその姿は俺の良く知る人物だった。

 

「ユウ、キ……?」

「……うん……」

 

 ユウキは返答するが目線を合わせてくれず、何かを伝えようとしているように見えるのだがアスナの背後から出てくることもなく、ただもじもじと物怖じしている様子だった。

 ――こんなにもじもじしているユウキを見たことなど、未だかつてあっただろうか。

 元気で明るく、破天荒で感情表現の激しいあの最強の絶剣が自分の姿を隠し、怯えた様子でこちらを伺っている。そんな姿を目の当たりにしてしまった俺は、ある意味動揺にも似た妙な緊張感を覚えてしまった。

 アスナはいつまでたっても用件を話さないユウキを見て、まったくもうとため息をついていたのだが、このままでは埒があかないと、アスナが何故ここにいるのかの事情を説明してくれた。

 

「あのねトウカ……実はね、ユウキから相談を受けたの」

「相談……?」

「ええ、トウカに冷たい言葉を言ってしまったからちゃんと謝りたいんだけど、一人じゃ怖くてできないから力を貸してほしいって」

 

 それは俺の予想とはまるで違っていた。

 

「あっあっ……アスナ言うなんて酷いよぉ……」

 

 相談の内容に関しては俺には内緒にしてほしかったのだろうか、少しショックを受けたユウキはアスナの服を引っ張り、心苦しい表情をしつつ文句を言うのだが、いつまでたっても話さない彼女にしびれをきらしていたアスナは苦言するように、言葉を付け足した。

 

「……早く言わないとあの件も私が伝えちゃうよ……?」

「だめだめだめ! ボクが……ボクが言うの……!」

 

 『あの件』という言葉に反応するようにユウキは慌てつつアスナの背後から飛びだし、俺の前に姿を現したかと思えば、目線を逸らして指をいじりつつ、体を波打つようにクネクネと捩じらせていた。しかし、時間が経つにつれて落ち着いてきたせいか、ゆっくりと、途切れ途切れの口調ではあったが、ユウキは自分の心に留めていた言葉を少しずつ俺に口ずさむ。

 

「トウカ……あの……あのね……?」

 

 俺はユウキから目を逸らさず、ただ黙りこくって彼女の言葉に耳を傾けた。

 

「ずっと……ずっとね、考えてたんだ。なんであの時トウカに酷いこと言っちゃったんだろうって……。結局、わからなかったけど……でも、ちゃんと謝らなきゃって……だってボク……もっともっとトウカと遊びたいし、もっともっとトウカと仲良くなりたい……だから……ごめんなさい……ごめんなさ……い……」

 

 言葉が重なるたびに、少しずつユウキの声が震えていく。最後の方は何を言っているのか聞き取れないほど言葉がつまり、彼女は涙を流しながらただ繰り返し謝っていた。

 アスナは「頑張ったね」と一言添え、ユウキの頭を優しく撫でつつ後ろからそっと抱きしめた。

 ――俺は彼女の言葉にどう答えればいいのだろう。

 いや、わかっているはずだ。それをそのまま口にすればいい。彼女が本心で俺に伝えてくれたように、俺の本心をユウキに伝えよう。

 

「ユウキ」

 

 俺は肩膝をつき、そっと包み込むようにユウキの手をとった。彼女に俺の気持ちがしっかり伝わるよう想いながら。

 

「確かにお前とは喧嘩をすることもあるし、我侭を聞き入れることができない時もある……だけど……俺はそんなお前と一緒にいるのが楽しいと思っている。だから……俺でよければいつでも甘えてこい。どんなにユウキが俺のことを嫌いになっても、俺がユウキを嫌いになることはないよ」

「…………」

 

――……うまく伝えられただろうか。それとも――

 

 と、次の瞬間。俺の一抹の不安をかき消すように、ユウキは咽び泣きながら俺の胸元へ飛び込んできた。

 ――1日に女性を二人泣かしてしまうのは今日限りにしよう。

 そんな反省を肝に銘じつつ、ユウキの気が済むまで俺は彼女の涙を受け入れた。




 今回も閲覧していただき、ありがとうございました。
 多忙が続き、投稿が遅れてしまったことをお詫び申し上げます。休日中にあげたかったのですが、間に合いませんでした……。
 今週は時間があるのでもう少し早く投稿できると思います!
 総合UA6000突破、お気に入り登録77名になりました。本当に嬉しいです。次回も頑張ろうと励まされます。
 コメントもありがとうございました。一文一文大切に読ませていただております。
次回もしていただけると嬉しいです。
 次の話はユウキ成分をいれていくので楽しんでいただけたらといいな思います。
 アスナの言っていた「あの件」という言葉が次回に繋がります。今後も宜しくお願い致します。



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