とある愚兄賢妹の物語   作:夜草

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第4章
御使堕し編 駆け落ち?


御使堕し編 駆け落ち?

 

 

 

???

 

 

 

「詩歌ッ! お前の事が好きだ!」

 

 

簡潔な言葉。

 

しかし、それは決して簡単に放たれた言葉ではない。

 

2人が一緒に育ち、一緒に生活してきた時間の全てがあって。

 

どんな事があろうと切れない絆があって。

 

 

「俺は詩歌の事が大好きだッ!」

 

 

ようやく口にできた言葉である。

 

 

「ぇ―――」

 

 

詩歌は目を見開き、小さく息を呑む。

 

 

「当麻…さん……? ―――あっ」

 

 

詩歌の身体に両手をまわして、当麻はその華奢な身体を抱きしめる。

 

言葉だけでは伝えきれない想いを籠めて、しっかりと力を籠めていく。

 

 

「それは……家族…兄妹として、ですか……?」

 

 

詩歌の目尻に特大の涙を堪えてゆく。

 

 

「家族としても、兄妹としても……1人の女の子としても、詩歌の事が好きだ」

 

 

その言葉で、すぐにダムが決壊した。

 

 

「……嘘……ですよね……」

 

 

その言葉を詩歌は待ち望んでいた。

 

そのせいか、詩歌はこの言葉が嘘なのかもしれないと考えてしまう。

 

自分が見せている詩歌に都合のいい幻想なのかもしれないと。

 

 

「嘘じゃねぇよ」

 

 

しかし、当麻の言葉がその幻想を破壊する。

 

そして、当麻の勇気に答えるように、詩歌も俯きながらも言葉を紡ぎだす。

 

 

「私も……当麻さん事が好きです、大好きです。1人の男として愛してます。幼いころからずっと………でも、私達は血の繋がった兄妹だから……」

 

 

顔を見れないからどんな顔をしているのかわからない。

 

抱きしめた身体から伝わる僅かな震え。

 

 

「だからっ! ……もし私の気持ちを知られてしまうと…今の関係が壊れるんじゃないかって……当麻さんの傍に居れなくなるんじゃないかって…ずっと…怖かった…んです」

 

 

その不安を打ち消すかのように当麻はもっと力強く抱きしめる。

 

 

「約束しただろ。……お前の傍にいるってな。それに、どんな事があろうとお前の事を好きだという気持ちは変わらねぇよ。……もし、それを邪魔するようなら、社会だろうか、常識だろうか、この右手でぶち殺してやるッ!!」

 

 

当麻の言魂は詩歌に力を与える。

 

それは、幼いころから、そして、これからも当麻の言魂は詩歌に力を与えていくのは変わらないだろう。

 

それほど、詩歌には効果抜群である。

 

 

「当麻さん……」

 

 

しかし、それはちょっとやり過ぎたようだ……

 

大噴火寸前の火口に大量の起爆剤を投下したくらいに……

 

 

「ふふふ……」

 

 

詩歌の目に世界全土を焼き尽くす勢いで炎が点火する。

 

 

「そうですよね。……愛さえあれば十分です! 認めてもらえなかったら、駆け落ちでもすればいいんです!」

 

 

ないた烏がもう笑う、といったところか、いや、それ以上といった感じで詩歌のテンションが-100からメーターを振り切り1周し、+200くらいまで跳ね上がる。

 

 

「大丈夫です! こんな時のためにしっかり貯金してきました! もちろん、駆け落ち計画も練ってあります!」

 

 

「え……ちょ、ま―――」

 

 

いきなりの急展開に当麻はついていけなくなる。

 

というか、駆け落ち資金どころか、計画も練っていたとは……

 

 

「善は急げと言いますし、今すぐにでも行きましょう!」

 

 

詩歌は一体この華奢な身体にどれほどの力があるのだろうか、と毎回、疑問に思うほどの強引な力で有無を言わさず当麻の腕を引っ張る。

 

そして、当麻の体が横に引っ張られながら宙に浮くくらいの速さまで一瞬で加速。

 

詩歌はいつのまに忍者の仲間入りを果たしたのだろうか……

 

というより、当麻の肩が心配だ。

 

 

「あ、私、もう大丈夫ですし//// 頑張って、当麻さんの子供産みますからね! 是非、野球、いえ、サッカーチームが作れるくらいに////」

 

 

ぽぽぽぽーっと顔が赤い。

 

メーターはもう振り切って1周どころか2周、3周、何周でも回っている。

 

長年想いを溜めこんできた活火山が噴火したのか、まさに、大災害。

 

おそらく、今の詩歌の脳内プランは老後の事まで一気に進んでいる。

 

 

「頼むから落ち着いてくれーっ!!」

 

 

そうして、当麻は(強引に)詩歌と共に学園都市から背を向け、どこかへ去っていった。

 

 

 

 

 

???

 

 

 

「はっ!!」

 

 

夢見が悪かったのか、当麻は目が覚めると同時に覚醒する。

 

 

「……今の夢だったか…そうだよな…俺が詩歌に―――って、あれ?」

 

 

変な夢でも見たのか必死に気を落ち着けさせながら、天井を見るといつものとは違う。

 

それに、顔を横に傾けると自分の部屋にはない、和室の光景が広がる。

 

後、ちょっと鼻を動かすと潮の香りがする。

 

 

「ここってどこ―――「むにゃ、む~」―――えっ?」

 

 

横から悩ましい寝息が聞こえる。

 

ついでに、身体の右側が妙に重い。

 

嫌な予感がする、もとい、嫌な予感しかしない。

 

しかし、前に進まなければいけない。

 

その声がする方、今向いている方向とは逆側に油が足りてないロボットのように少しずつ首を向ける

 

 

「ッ!!?」

 

 

するとそこには、絶世の美少女がいた。

 

腰まで届く流麗な髪は朝日を浴びて輝き、肌は白磁の陶器のように白くて滑らかで、唇はサクランボのように瑞々しく、穏やかな顔立ちは深窓の令嬢といった風情がある。

 

首から下は、細い肩とは不釣り合いにたっぷりと育った張りのある胸、両手で包めそうなくびれたウエスト、カモシカのように引き締まった脚。

 

まさに男を虜にする魅力に充ち溢れている。

 

そんな少女が当麻の右半身に密着していた。

 

しかも着ている浴衣が少しずれて無防備である。

 

 

「こ、こここれは一体どういう事でせう!? ぅおふっ!!」

 

 

華奢な身体というのに、万力の如くがっちり締め付けられ、右腕はマシュマロのような柔らかさをもつ大人顔負けの豊満な胸の谷間に挟まっており、右足にはすらりとした両足が絡みついている。

 

当麻は、上質な絹のようにきめ細やかな肌触り、優しい母性的な感触を存分に堪能していた。

 

さらに、身体から脳が溶けていくような錯覚に陥ってしまうほどの甘い色香が漂ってくる。

 

 

『今こそ好機です! 全軍をもって鉄壁とうたわれた理性軍を完膚なきまでに滅ぼしなさい』

 

 

今まさに、当麻の中で理性と本能による空前絶後の苛烈な戦争が開催している。

 

何故か、理性軍の大将は当麻で、本能軍の大将は詩歌である。

 

 

「ふふふ……ん、ん~、すりすり」

 

 

一瞬、薄目を開け、微笑んだかと思うと、匂いをつけるかのように全身を擦りつけ始める。

 

まるで、猫が自分のものだとマーキングするように。

 

 

『何、ここに来てさらに援軍だとっ!!?』

 

 

「ちょっ、いくら当麻さんでもそんなことされたら!」

 

 

いくら鈍感で、ラッキーイベントには耐性がある当麻とはいえ、ここまで過激な体験は味わっておらず、理性が崩壊しかけている。

 

 

(落ち着け! 何が起きているかわからんが、今すぐに落ち着くんだ! こういう時は素数を数えるんだ! 2、3、5、7、11、13、17、19、23、29――むにゅ――π(パイ)サンテンイチヨン異国に婿さん(3.141592653)―――って、何故に途中から円周率に!? ああ、駄目だ落ち着かない!!)

 

 

必死に素数を数えて落ち着こうとするが、なかなか冷静さを取り戻すことができない。

 

 

『残るは大将首のみ―――なっ!!?』

 

 

本能の完全勝利を目前にし、もう一度少女の顔を見た時、当麻は何か気付いた。

 

 

(ん!? こいつ、詩歌か!?)

 

 

いつもは束ねられた髪が解かれていたので最初は気付かなかったが、当麻の横で寝ているのは妹の詩歌である。

 

 

(こいつ、意外と、いや、かなり着やせするんだな……―――って、俺は妹に対して何考えているんだ!)

 

 

男女7歳にして同衾せず。

 

たとえ、妹でもこの年で一緒に寝たのは不味い。

 

いやこの状況を察するに、もしかすると妹の方が性質が悪いのかもしれない。

 

当麻はしばらく、自分で自分を、主に下半身を中心に殴り続ける。

 

 

「ハッ! ま、ままままさかっ!」

 

 

瞬間、先ほど見た夢の内容がフラッシュバックする。

 

当麻は殴るのを止めて左手で頭を抱える。

 

大人への階段を昇り切ってしまったのか!?

 

もしや二階級特進してしまったのか!?

 

とうとう、シスコン軍曹になってしまったのか!?

 

真相――――

 

 

「あ……当麻さん、起きていたんですか?」

 

 

「!!?」

 

 

流石に横が騒がしかったのか、詩歌が目覚める。

 

当麻からしてみれば気を落ち着けるまで、もう少しだけ眠っていて欲しかった。

 

 

「な、なななあ、何で俺の横で寝てるんだ?」

 

 

目の焦点をぶれさせながら、当麻は恐る恐る詩歌に質問する。

 

すると、詩歌はポッと顔を赤らめながら俯ける。

 

何故か周りの空気がピンク色になっている。

 

 

「それは、遅くまで情熱的に愛してくれたから……」

 

 

さーーっ、と当麻だったモノが砂になって風に流される。

 

上条当麻は不幸な人間である。

 

歩いていれば鳥の糞をかけられ、必死な思いで勝った特売の卵は割れてしまう。

 

出会いが欲しい、と言えば妹に重いボディーブローをもらい。

 

放課後には後輩に勝負だ、と電撃を投げつけられ。

 

好きな人はいないのか、と妹に聞けば関節技をかけられ。

 

お腹が減った、と家では、居候に理不尽な理由で噛まれ。

 

ラッキーイベントになると、妹に近くにあるものを投げつけられる。

 

あくまでも自分に非の無い出来事だが、耐性ができている当麻には『不幸だ』の一言で済ませられるレベルである。

 

 

「責任とって下さいね。……当麻さん」

 

 

頬を薄く桜に染め、色っぽい。

 

だが、目の前の光景は『不幸だ』と言って済ませられる問題ではないのかもしれない。

 

そして、それを前に当麻は、夢の時と同じく彼女を―――

 

 

 

…………………………

 

……………………

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

「         」

 

 

カミジョウトウマ、オーバーロードシタタメ、キンキュウテイシ。

 

と、どうやら、あまりのショックに魂がどこかへ飛んでいってしまったようだ。

 

当麻の口から白い何かが漏れでている。

 

 

「ちょっと、当麻さん! どうしたんですか!? 今のはちょっとお茶目なボケですよ!? まさか、冗談を本気にしたんですかっ!? 当麻さーんっ!!」

 

 

しばらくの間、当麻の魂は戻ってこなかった。

 

まあ、そのおかげで本能対理性の決着寸前に天変地異が起き、戦いはうやむやとなった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「………なので、おそらく夜に寝床を間違えて当麻さんの布団の中に潜り込んでしまったんです。お騒がして、申し訳ありません」

 

 

「おお、そうか、そうか。間違えたらしょうがないよなー。ははー、あはははー」

 

 

あれから、詩歌は持てる技術を全て用いて当麻の蘇生に成功した。

 

ただ、目が覚めた当麻の様子が少しおかしい。

 

もしかして、魂がどこか遠く、涅槃へ行ってしまったからなのか、当麻は悟りを開いたのかもしれない。

 

無意識? であるとはいえ、少しやり過ぎたと詩歌は反省する。

 

 

(ふふふ、夜討ち、朝駆けは戦の基本ですね。……まあ、今回は少しやり過ぎたようですが、そこはおいおい……)

 

 

反省……したのか?

 

 

 

 

 

わだつみ

 

 

 

ここは海の家、わだつみ。

 

学園都市の外の世界である。

 

学園都市は外部に対して閉鎖的で、極力学生を街の外へ出すことを好まない。

 

だが、上条当麻、上条詩歌、インデックスがここにいる。

 

それは当麻が学園都市最強のLevel5序列第1位を倒してしまったからである。

 

そのせいで、当麻は腕に覚えがある学生から追いかけられる毎日を送っていた。

 

もちろん、詩歌はその騒ぎを治めよう? と尽力を尽くしていたが、それでも、止める事ができず、むしろ、詩歌の事を彼女だと勘違いし、あのリア充を抹殺せよとますますヒートアップした。

 

今の学園都市で、当麻の首に賞金が掛けられている、という噂も流れている。

 

結果、学園都市のお偉いさんは、この騒ぎを治めるからしばらくの間どっかに行ってろ、と騒ぎの中心である二人を外へと追い出した。

 

普通はいきなり追い出されたら慌てふためくはずである。

 

だが、追い出される前日から、すでに準備が万全だった。

 

まるで、この事を予見していたかのように……

 

この事態に、計算通り、と密かに詩歌は黒い笑みを浮かべていた。という事実は定かではないが。

 

 

「でも、悪ぃな。俺に付き合わせて……」

 

 

詩歌の説明を聞いて、事態を思い出し、ようやく当麻は元に戻った。

 

 

「そんな、謝らなくてもいいですよ。元はと言えば、私が騒ぎを止め切れなかったせいですし……それに、ほら、泳ぐ事はできませんが、海に来れたのは変わりありません。折角だから、思いっきり楽しみましょう」

 

 

(……旅の解放感で、当麻さんを…フフフ―――おっと、危うく本来の目的を忘れるところでした)

 

 

当麻が見えない位置で口元を拭うと、一瞬でいつもの微笑みを向ける。

 

目の錯覚なのかもしれないが当麻は妹がこちらを肉食獣のようなギラついた表情を見たような気がした。

 

まあ、いつも通りの目の錯覚という事で処理する。

 

でも、今も感じる悪寒は一体……

 

 

「それはそうと、当麻さん。しばらく、当麻さんとはあまり口を聞きませんので、ご注意を」

 

 

まずは押してダメなら引いてみろ―――という作戦ではない。

 

この鈍感馬鹿に引くなんて、相性が悪過ぎて愚策もいい所である。

 

きちんとアピールは―――と、そうじゃなくて。

 

 

「え、何でだ?」

 

 

当麻は首をかしげながら問いかける。

 

今回、この旅行には保護者同伴が義務付けられていることから2人の両親、上条刀夜、詩菜も今日からやってくる予定だ。

 

普通は久々に両親に会えると喜ぶかもしれないが、当麻は記憶喪失である。

 

インデックスに、記憶を失くした事をばれるのを避けるためにも両親との接触はなるべく控えたい。

 

そこで、事情を知っている詩歌に協力してもらおうかと考えていたのだが……

 

 

「……訳は言えませんが、いつも通り当麻さんと接すると少し分が悪くて……まあ、陰ながらサポートするつもりですけど」

 

 

詩歌にとって、当麻と海に来て実行しようかと考えていたプランは山ほどあるが、今後のために絶対にやらなければいけない事がある。

 

それは両親の説得である。

 

詩歌の高校の進路について、ここで決着をつけるつもりである。

 

そのため、最大のネックとなっている2人の兄妹仲が、いきすぎるものではないと、大丈夫であると、どうにかして誤魔化さなければならない。

 

しかし、詩歌にとって最後の難関、母、詩菜を誤魔化すのは困難を極める(上条家の最終決定権を握っているのは刀夜ではない)。

 

いつも通り、当麻に接する所を見られれば、その瞬間でアウトであろう。

 

 

「まあ……そう言うことなら仕方がないよな。大丈夫だ。妹のサポートが無くても、何とかしてみせる」

 

 

「……ありがとうございます、当麻さん」

 

 

当麻の優しさに詩歌はこの説得を成功させ、当麻との高校生活を送って見せる、という気持ちがますます高まった。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「ところで、詩歌」

 

 

それはさておき、当麻は詩歌に聞きたい事があった。

 

 

「例えばだ。例えばの話だが、もし俺がお前のこと好きだとか言ったら、どうする? 駆け落ちとかするのか?」

 

 

夢での内容が気になったのか当麻は試しにこの質問をしてみる。

 

 

「……それは、女性としてですか?」

 

 

「ああ…―――いや、別に―――」

 

 

だが、よくよく考えてみれば、まじめな妹が兄妹同士での恋愛を良しとするはずがないと思い、質問を取り消そうとしたが、その前に詩歌が答えてしまう。

 

 

「駆け落ちなんてしませんよ」

 

 

やはりというか何というか、少しほっとしたというか残念というか、とりあえず、あれは夢だったと当麻は安心する。

 

 

 

「法を改正します」

 

 

「え?」

 

 

「この手が真っ赤に染まり、あらゆる法律と倫理に背く事になろうと、法を改正します」

 

 

どうやら、現実は夢より凄いらしい……

 

 

「まず、そうですね。派閥を作り、権力、財力、そして、暴力の3つを手に入れます。もちろん、Level5の美琴さん、食蜂さんもその派閥に入れます。この二人がいれば大概の事ができるので、絶対に入れたいですね。派閥がある程度まとまったら、自由恋愛を目標と掲げた学生運動を起こし、学外でも勢力を広げます。そこそこ顔が広いので、半月もあれば半分の学生の支持を得られると思います。いえ、食蜂さんもいますし10日で可能ですね。それから、学園都市上層部と交渉します。まあ、日本全土はすぐには無理ですけど、学園都市内なら1カ月以内で何とかなるでしょう」

 

 

恐ろしい。

 

普通は無理だと思えるのだが、詩歌なら本当にやってしまうかもしれないと思えるから恐ろしい。

 

 

「―――って、冗談ですよ、当麻さん」

 

 

そう言うが、詩歌の目は全く笑っていない。

 

本気である。

 

 

「そ、そうか……いや、変な事を聞いて悪かった……」

 

 

「フフフ、全く、妹をからかうのも程々にしてください…………本気にしたらどうするんですか……フフ、フフフフ」

 

 

最後の所だけ声が笑っていなかった。

 

俺の妹は病んでるかもしれない、と当麻はこの質問は二度としない事を心に誓った。

 

だが、スイッチが入ってしまったのか、少しずつ詩歌がにじり寄ってくる。

 

たぶん旅に出たからなのか、理性が少し外れかけている。

 

このままだと、当麻は一線を越えてしまうのかもしれない。

 

 

「さて…当麻さん、その質問の意図を―――「お兄ちゃーん」―――えっ?」

 

 

その時、ズバーンという大音響と共にドアが開け放たれ、部屋に乱入者が現れた。

 

 

「とーう、お兄ちゃんダーイブ!」

 

 

その乱入者は可愛らしいミルキーボイスと共に当麻にボディプレスする。

 

 

「美琴さん(ビリビリ)!!?」

 

 

その正体はここにいるはずのない美琴だった。

 

 

 

つづく


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