とある愚兄賢妹の物語   作:夜草

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大覇星祭編 一寸の虫にも

大覇星祭編 一寸の虫にも

 

 

 

道中

 

 

 

午前10時30分。

 

ようやく開会式が終わった。

 

統括理事会側も一応は厳選しているのだが、

 

 

「……この街は、校長先生の数が多過ぎると思う」

 

 

上条当麻はぐったりしながら呟いた。

 

炎天下極まる残暑の中、校長先生のお話15回と電報50発はもう拷問に近い。

 

それに最後、選手宣誓に出ていたLevel5の1人、削板軍覇が、妹の詩歌に何かアピールしていたのが気に喰わないし……

 

小中高大共通の鉢巻きで、白を付けていた所を見ると当麻と同じ白組なのが残念だ。

 

<大覇星祭>は、基本的に学校対抗で行われ、勝敗に応じて点数が加算されていく。

 

ここでさらに、各学校は赤組と白組に分かれており、各組の合計の勝ち数に応じて、それぞれの学校へ点数が追加されていく。

 

赤組対白組、学校対学校。

 

それらを合わせたトータルの総合得点により、最終的な学校の順位が発表されるのだ。

 

当麻と美琴が開会式前に勝ち負けを論じていたのはこのシステムによるもので、学園都市全体の内、自分の学校の順位が上回っていれば『勝ち』となる。

 

 

『みっ、見てなさいよ……ッ! 罰ゲームとして負けたら何でもするって言った事を死ぬほど後悔させてあげるから!!』

 

 

とは、美琴の弁。

 

死ぬほど後悔……

 

まさか、日が落ちるまで超電磁砲キャッチボール(主に自分が受け)!?

 

い、いや、詩歌にそういった能力の使い方は注意されている筈……

 

でも、同意の上なら…………罰ゲームだし断りようがない。

 

……もしかすると、超電磁砲じゃなくて荷電粒子砲だったりして……

 

 

「やべーな。マジで洒落にならねーぞ」

 

 

戦慄の未来予想図にがくがく震える。

 

だが、要は負けなければいいのだ。

 

いくら名門といえど、相手は中学生でしかも女子校。

 

挙句に勝負内容は、能力の使用が認められていると言っても、基本は体育の延長線上である(はずだ)。

 

正直当麻としては、蝶よ花よと大切に育てられてきたお嬢様達では、無駄に男勝りな汗臭い高校生集団には勝てまいと思う。

 

……まあ、中には能力を使わなくても妹やそのルームメイトのように桁違いの奴らがいるが、当麻が、たとえ常盤台中学との直接対決で負けようとも、まだ道があるのだ。

 

当麻の学校が他の学校に勝って、常盤台中学が他の学校に負ければ、その差を取り戻す事もできる。

 

うん、きっと大丈夫だ。

 

 

「当麻さん」

 

 

と、不意に横合いから聞き慣れた女の子の声が聞こえた。

 

そちらを見てみると、体操服ばかりの雑踏の中に、ジャージの上着を羽織った妹と、金色の刺繍を施した真っ白な修道服を着た居候の姿があった。

 

居候――インデックスの両手には何故か焼きイカ、わたあめ、持てない分は妹――上条詩歌がたこ焼き、お好み焼き、焼きそばなどなどを持っており、一生懸命パクついている(三毛猫、スフィンクスも詩歌の腕の中)。

 

 

「おい、詩歌。いくら何でもコレは買い与え過ぎじゃねーか? つーか、お前も朝飯はちゃんと食ったじゃねーか!!」

 

 

この居候の銀髪シスター、スレンダーな体型をしているが、とある飲食店を危うく破滅させかけるほど大食い怪物。

 

上条家のエンゲル係数の半分以上は彼女が占めている。

 

10万3000冊もの魔導書を、完全記憶能力によって頭の中に収めているらしいが、それはそれほどカロリーを消費する事なんだろうか?

 

 

「まあまあ、これ、陽菜さんの家族の方からサービスしてもらったものですし。それに今日はお祭りなんですよ」

 

 

「そうなんだよ! そこかしこから何とも言えない匂いが漂ってきてそれどころじゃないんだよ! もう、日本の料理文化は食という名の誘惑の塊かも」

 

 

詩歌に口の周りをティッシュで拭かれながら、インデックスがそーだ、そーだ、と串を持った両手を振り上げる。

 

む? と当麻も改めて周囲の匂いを確かめる。

 

醤油やソース、マヨネーズなどが焼ける独特の匂いがうっすらと漂っており、風上に目を向けると、手製の屋台が通りの左右に並んでいる区画があるのが見える。

 

さらに良く見れば、店員のほとんどが顔に傷のある屈強な男共で、中には東条英虎と呼ばれる見知った男の姿が。

 

左目に眼帯をした姿は、古い任侠映画に出てくるヤクザのよう……というか、本当にヤクザの幹部なのだが、その外見に反して腰は低い。

 

鬼塚組にとって部外者でもある当麻に対してさえも、礼儀を忘れないほどだ。

 

今も、視線で気付いたのか当麻に向けて軽く頭を下げてくれている。

 

この前もインデックスがお世話になったそうだし、親切で気の良い人である。

 

まあ、それでも外見が泣く子が黙るほどの強面なのだが……

 

と、彼ら以外にもそこそこ文化祭の模擬店のように学生達でお店を出している所もある。

 

<大覇星祭>は大規模な運動会ではあるが、全生徒が全ての時間を競技に拘束されている訳ではなく、決まった時間に決まった競技場に移動する事を守れば基本は自由。

 

他の学校の応援や、家族とお土産を見て回っても、コンビニで立ち読みしていても別にかまわない。

 

なので、土御門舞夏が通うような家政や調理の学校、繚乱家政女学院などはここぞとばかりに屋台を出して(メイド弁当 定価1200円)臨時収入を得ようと動く。

 

本来なら自分の学校の応援に回るべきなのだが、屋台で稼いでおけば後の打ち上げが豪華になる。

 

180万人強もの学生とその父兄を捌くだけでも利益は余りあるのだ。

 

 

「しいか、しいか! 今度はあれが食べたいかも!」

 

 

と、いつのまに詩歌が手に持っていた分まで食べ終わったインデックスは次の標的を指し示す。

 

まだ見ぬ食への殿堂に想いを巡らせているせいか、インデックスの瞳や髪や肌などがとにかく全身が輝いている。

 

精神活動は人体に物理的な影響を及ぼす、という心理学の学説は本当だったらしい。

 

このように、とりあえず目の前に食べ物があれば何でも手を出してしまうインデックス。

 

彼女に『修道女(シスター)にとって、暴食は罪ではないのか?』と問いたいところだが、こんな遠くから漂ってくる匂いだけでも白米のおかずになりそうな中で、全店制覇するまでインデックスが我慢できるはずがない。

 

 

「ダメですよ、インデックスさん。先ほど約束しましたよね。もうすぐ当麻さんの競技が始まりますから、それが終わるまではまた後です」

 

 

詩歌は青空に浮かぶ自動制御のアドバルーン、それに垂れ下がった特殊薄型スクリーンを指さす。

 

そこには『第7学区・高等学校部門・第1種目・棒倒し。競技開始まであと10分30秒です』という文字が流れている。

 

 

「あ、あうう……」

 

 

詩歌はインデックスに対して、激甘ではあるが、厳しくない訳ではない。

 

組手をしている際、当麻に対してもそうであるように優しいけど凄くスパルタ、ときっちりと飴と鞭を使い分けている。

 

もうそこらへんの上下関係がしっかりできているのか、インデックスは詩歌の言う事なら割と素直に聞くのだ(それに対して、当麻の言う事は一切聞かないが)。

 

まあ、この食欲魔神を封じ込めるとは流石は我が妹といったところだ。

 

 

「でも、あれは美味しそうですね。インデックスさん、私と半分個なら特別に許可しちゃいます」

 

 

「ほんとっ! ほんとにいいの、しいか!」

 

 

「ふふふ、もちろんです。でも、1つだけですよ」

 

 

でも、やはりウチの妹は可愛いもの、特にインデックスのような小さくて母性本能をくすぐられるような子供には弱い気がする。

 

やったぁっ!! とインデックスは詩歌を待たずにその屋台へと突撃していくのを見て、呆れた表情を浮かべる。

 

 

「おい、本当にいいのか? インデックス、あの調子だと本気でこの辺の屋台を全店制覇すんぞ」

 

 

「問題ありませんよ。今日のために溜めておいたポケットマネーは結構ありますし。それよりも、当麻さんの方こそ良いんですか? 美琴さんと勝負を挑んで……負けても庇いませんよ」

 

 

やれやれと、今度は詩歌が当麻に呆れるような視線を送る。

 

 

「それに私達、今年は優勝を目指しています。それに当麻さんの事でしょうから、決してないとは思いますけれど、可愛い美琴さんに変な命令はさせられません。ですから、手は一切抜きませんので悪しからず」

 

 

最後に、詩歌はそう言い残すと若干不機嫌そうに軽く鼻を鳴らして、インデックスの後を追う。

 

 

「ぐっ……」

 

 

不味い。

 

詩歌が本気を出す事は非常に不味い。

 

夏休みのドッジボールで思い知らされたが、個人戦よりもチーム戦が得意な詩歌は他人の力を伸ばす優秀な司令塔だ。

 

如何に世間知らずのお嬢様といえど、性能ならホワイトハウスすらもいとも簡単に制圧できる。

 

今からでも罰ゲームは無し、もしくはソフトなものにお願いしてこようか―――と思った瞬間、

 

 

「でも、昨夜も言いましたけど当麻さんの学校も応援してますので、頑張ってくださいね!!」

 

 

バッ、と顔を上げ、声がする方に向く。

 

応援席の出入り口付近に、詩歌がいた。

 

そして、彼女は両手でメガホンを作り、

 

 

「ファイト、お兄ちゃん!!」

 

 

無邪気な笑顔で叫んだ。

 

先ほどからここには大勢の人達が行きかっている。

 

流石の詩歌も少し恥ずかしかったのか、顔が赤くなっているがそれでも構わず、手を大きく振る。

 

 

「ったく、こんな所で……」

 

 

もちろん、メッセージを送られた側も恥ずかしい。

 

上条当麻は、自称ごく普通の平凡な男子高校生なのだ。

 

だが、やはり嬉しくもあった。

 

当麻もグッと親指を立て、そのまま妹に兄の生き様を見せつけるように背中を向け、真っ直ぐ競技場に足を運ぶ。

 

スイッチが入った。

 

愚兄――上条当麻のスイッチが入ったのだ。

 

 

(よしっ! ここはスタートダッシュを決めて点差をつけてやりますか!)

 

 

そうだ。

 

本気を出すならこちらも同じだ。

 

でも、7日も続く<大覇星祭>では、途中でバテないよう、ペース配分が重要だ。

 

いくら体力なら底なしの当麻がいても、クラス全体が使い物にならなくなってしまっては駄目なのだ。

 

最初に点差をつけて逃げ切るか、後半まで体力を温存してスタミナの切れた他校を追い抜くかなど、様々な選択肢が存在する。

 

が、余程のスポーツ推奨校でもないかぎり、冷静に戦局を見極め体力を温存し続けるのは不可能だと予想はつく。

 

特殊な能力を持っているとはいえ、基本は学生同士の勝負で、競技の結果が感情に引きずられることだって十分に考えられる。

 

例えば理論上はまだ勝てる状況であっても、極端に点差をつけられ、完全に心が折れた状態から逆転を狙うのは不可能ではないだろうか。

 

という訳で、当麻はスタートダッシュ派なのだ。

 

 

(そういや、準備中とか馬鹿騒ぎの連続だったからなー、ウチのクラス。って言うか、学校全体そんな感じだったか。ま、あいつらが気合入っているのに間違いはないだろ。負けず嫌いな連中も多そうだし、むしろ勝つために何をやらかすか心配なぐらいだぞ)

 

 

やる気満々な当麻は、クラスの無駄な団結力に対して期待感で胸をいっぱいにしつつ、校庭の隅にある選手控室エリアへ意気揚々と乗り込み、クラスメイト達の輪へと入っていった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

妹に格好良い兄の背中を見せてやる、とやってきたのは良かった。

 

そこまでは良かったのだ………が、当麻を出迎えてくれたのは、

 

 

「うっだぁー……。やる気なぁーいーぃ……」

 

 

こういった祭り騒ぎが如何にも好きそうだ―――と思っていた青髪ピアスの全くもってやる気を感じさせない声だった。

 

当麻は何もない地面に盛大にずっこけた。

 

何だ、これは!? と地面に突っ伏しながらも良く良く辺りを見渡すと、他のクラスメイトも大体そんな感じだ

 

つまり全員が日射病の一歩手前みたいな、そう、クラスメイトの殆どが青髪ピアスと同じように、既に体力気力共に尽きたような表情をしている。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください皆さん。何故に一番最初の競技が始まる前からすでに最終日に訪れるであろうぐったりテンションに移行してますか?」

 

 

まだ、競技が始まってないのに、もう最終日みたいなローテンション。

 

これではペース配分以前の問題だ。

 

当麻の問いに対して、クラス代表の青髪ピアスが気怠げな眼差しで当麻を見つめ、

 

 

「あん? っつかこっちは前日の夜に大騒ぎし過ぎて一睡も出来んかったつーの! しかも、開会式前にも、どんな戦術で攻め込みゃ他の学校に勝てるかいうてクラス全員でモメまくって、残り少ない体力をゼロまで磨り減らしてちまったわい!」

 

 

スタートダッシュの切りどころが早過ぎるっ!?

 

 

「全員それが原因なの!? 結論言っちゃうけどみんなまとめて本末転倒じゃねーか! しかし姫神はおめでとう! ちゃんとクラスに溶け込めているようで当麻さんはほっと一安心です!!」

 

 

姫神秋沙。

 

今、当麻からちょっと離れた所でだれている色白で長い黒髪を持つお人形さんのような少女。

 

かつては己の特殊な能力<吸血殺し>に悩まされていたが、今は半袖の体操服の胸の中へ隠すように首から下げた十字架――<必要悪の教会>から送られてきた<ケルト十字>によって<吸血殺し>は封じられている。

 

と、色々と事情はあるがそれは置いておいて、姫神は今月初めに当麻のクラスに転入してきたばかりである。

 

新しい環境でやっていけるかどうか、と当麻は少し心配だったがクラスメイトと一緒にだらけている所を見ると溶け込めているようで良かった。

 

本当はやる気を出しておいて欲しかったが、とりあえず良かった。

 

姫神は逆に今時珍しい純和風の黒髪を軽く揺らし、

 

 

「学校の競技なんて。所詮はそんなもの。専属のトレーナーとか。コーチがいる訳でもないし」

 

 

「うっ、所詮とか言われた!」

 

 

これは思いっきり大差をつけられて負けそうだーっ! と当麻は頭を抱える。

 

そんな当麻の心情を察したのか、労うように、

 

 

「にゃー。でもカミやん、テンションダウンは致し方ない事ですたい。何せ開会式で待っていたのは15連続校長先生のお話コンボ。更に怒濤のお喜び電報50連発。むしろ何でカミやんがそんなにやる気があるのかが疑問だぜーい……」

 

 

と言ったのは土御門元春。

 

学生に見せかけた、魔術にも科学にも精通する多角経営スパイ。

 

短い金髪をツンツンに尖らせ、薄い色のサングラスをかけて、首元にはアクセサリーがジャラジャラついており、半袖短パンの体操服にはバランスが全く合っていないコーディネイトだ。

 

だが、土御門の言う事は的を射ている。

 

開会式だけで、当麻も体力を大幅に削られた。

 

しかしっ!!

 

 

「た、体力馬鹿の青髪ピアスと土御門ですらこの有様……」

 

 

体力が取り柄の三大馬鹿(デルタフォース)でさえも使い物にならなくなっているとは…

 

い、いや待て、対戦相手も同じようにグッタリしていればまだ勝機が―――

 

 

「駄目だにゃー、カミやん。なんか相手は私立のスポーツエリート校らしいにゃー?」

 

 

不幸だぁ!! と当麻は完全に地面に突っ伏す。

 

脳裏には御坂美琴に敗北した後に待ちうけているであろう雷地獄の罰ゲームが明確に浮かんでいる。

 

自然と全身に恐怖の鳥肌が立ってきた所へ、

 

 

「当麻さん、水筒を渡すのを忘れてました。暑いですし、熱中症には要注意、ってあれ?」

 

 

「……な、何なの。この無気力感は!」

 

 

妹と遅れてきたクラスの女子生徒が現れた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

<大覇星祭>の運営委員のパーカーを羽織った吹寄制理と先ほど別れたばかりの上条詩歌の2人だ。

 

両者ともスタイルは良いため……何というか、並んでいると圧巻というか体操服のTシャツの上から、ぐぐっと胸が盛り上がっているのが一目で分かる。

 

だが、纏うオーラは対照的で、聖母のように全てを包み込むような詩歌とは異なり、吹寄はどちらかというと全てを弾く鉄壁の女といったところだ。

 

 

「当麻さん、一体これはどうしたんですか?」

 

 

はい、と当麻に水筒を渡しながら詩歌が首を傾げる。

 

当麻がその問いに答える前に、

 

 

「ハッ! まさか、上条。また貴様が無闇にだらけるから、それが皆に伝染して。貴様……これはどう収拾付ける気なのよ!」

 

 

「え、いや、別にこれ俺のせいじゃないし! むしろ俺だって今やって来たトコなんだって!」

 

 

「つまり貴様が遅刻したから皆のやる気がなくなったのね?」

 

 

「何があっても俺のせいにしたいのか!? っつか吹寄だって俺より遅れて来たじゃん!」

 

 

「あたしは運営委員の仕事よ馬鹿!」

 

 

割と問答無用で馬鹿扱いか俺! と当麻が泣き出しそうになった時、

 

 

「まあまあ、吹寄先輩。落ち着いてください」

 

 

詩歌が、あくまでまろやかに窘め、

 

 

「例え、当麻さんが、妹の私生活に口を出し、あまつさえ、頼まれていた仕事をほっぽり出して素行調査と称してストーカーするような『馬鹿』だとしても、妹の後輩を挑発して罰ゲームありの勝負を持ちかけて、後になって後悔している『馬鹿』だとしても、だらけているなんて言わないであげてください。普遍的、多数派の嗜好から見ても『馬鹿』ですし、妹の私の目から見ても当麻さんはどうしようもない『馬鹿』で、吹寄先輩にいつも迷惑をかけている『馬鹿』ですが、決してやる気がない訳ではないんです。ね? 当麻さん」

 

 

「………………………はい、そうです」

 

 

ニコニコと微笑む詩歌に、当麻は自殺しかねないような顔色でがくがくと頷く。

 

妹に庇われて(止めを刺されて)もう、不幸だ、と叫ぶ余裕すらなく、立ち上がる事もできない。

 

 

「皆さんも今は英気を養っているだけですよね?」

 

 

と、そこでようやくクラスメイト達は詩歌の存在に気付き、歓喜の表情を浮かべる。

 

 

「詩歌ちゃん!? 何でここに!?」

 

「あ、いや、うん。今はちょっと休んでいただけなんだよ」

 

「そうそう! 先輩達はいつも全力全開!」

 

「我々人類の希望やね。流石のカミやんも妹の詩歌ちゃんには手を出さないし、僕らにも攻略が出来るかもしれへん!!」

 

 

おい、俺と妹の扱いが全然違うじゃねーかっ!? 当麻もぐったりしながらも喝を入れる。

 

砂漠の湧水と言うべきか、詩歌の一声で萎びたクラスメイト達に徐々に活力が戻っていく。

 

 

「ふふふ、学校は違いますけど応援してます! 先輩達、ファイト!」

 

 

そこに訪れる天使の癒し。

 

にぱーっ! と後光が差しているような満面の笑みを浮かべる詩歌にクラスメイト(特に男子)は、

 

 

「しゃーーーーっ!!! おら!! 何人でもかかってこいや!!」

 

「よしっ! 詩歌ちゃん。この試合を、君に捧げるよ!」

 

「ちょ、テメェ、ずりぃぞ!! 詩歌ちゃん、俺の雄姿も見ていてくれよな!!」

 

「マイラブリーエンジェル詩歌ちゃんの応援さえあれば、僕らは無敵やね」

 

 

だから、どんだけ扱いが違うんだよ!! っつか、俺の妹に手を出そうとすんじゃねーよ!! 試合前にテメェらをぶっ潰すぞ、ゴラ!! と当麻もヤる気満々と言ったところである。

 

しかし、

 

 

「ッ―――皆さん、少し静かにしてください」

 

 

士気が最高潮に差し掛かろうとしたその時、いきなり詩歌が水を差す。

 

何事かと思いつつ、とりあえずクラスメイトは声のトーンを落としていく。

 

 

「どうしたの? 詩歌さん」

 

 

「吹寄先輩。少し耳を澄ませてあちらに意識を集中してください」

 

 

詩歌が、水飲み場の奥、選手入場口近くにある体育館の近くに視線を向ける。

 

 

『……そんな事は……絶対に、―――ですよーっ!』

 

 

『……馬鹿馬鹿しい―――に決まって……ですが』

 

 

何か聞こえる。

 

体育館の物陰で、誰かと誰かが言い争っている。

 

当麻は音を立てぬように息を潜め足音を殺しながら水飲み場の方へ向かい―――その声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

「だから! ウチの設備や授業内容に不備があるのは認めるのです! でもそれは私達の所為であって、生徒さん達には何の非も無いのですよーっ!」

 

 

「はん。設備不足はお宅の生徒の質が低い所為でしょう? 結果を出せば統括理事の方から追加予算が下りるはずなのですから。くっくっ。もっとも、落ちこぼればかりを輩出する学校では申請も通らないでしょうが。ああ、聞きましたよ先生。あなたの所にあの常盤台から進学を希望する子がいるそうじゃないですか。本当、一体どんなコネを使ったんですか? ま、あなたの所の一学期の期末能力測定の酷い結果を見れば、考え直すかと思いますけど。こんな出来の悪い失敗作しかいない学校に得るものなんてないと」

 

 

……日当たりの悪い体育館裏手にいたのは(どういう訳だか……おそらく応援用にチアリーダーみたいな衣装を着た)当麻達のクラスの担任の月読小萌と何処かの学校の男子教師。

 

<大覇星祭>期間中は、教員も市販のジャージに着替えるものなのだが、彼は、何故かこの暑い中でも、ピッチリとスーツを着込んでいる。

 

その2人が言い争っていた。

 

と言うより、嘲る男の教師に、小萌先生が食い下がっているような構図だ。

 

 

「し、詩歌ちゃんはコネなんかじゃありません! それに生徒さん達に成功も失敗も無いのですーっ! あるのはそれぞれの個性だけなのですよ! 皆は一生懸命に頑張っているって言うのに! それを教師の都合で切り捨てるなんてーっ!!」

 

 

「それが己の力量不足を隠す言い訳ですか? はっはっはっ、なかなか夢のある意見ですが、私は現実でそれを打ち壊してみせましょうかね? 私の担当育成したエリートクラスで、お宅の落ちこぼれを完膚無きまでに撃破して差し上げますよ。そうすれば、常盤台の子もきっと目が覚めるはず。うん、ここで行う競技は『棒倒し』でしたか。いや、くれぐれも怪我人が出ないように、準備運動は入念に行っておく事を、対戦校の代表としてご忠告させていただきますよ?」

 

 

「なっ……」

 

 

「あなたには、前回の学会で恥をかかされましたからねぇ。借りは返させてもらいますよ? 全世界に放映される競技場でね。一応手加減はするつもりですが、そちらの愚図な失敗作共があまりに弱過ぎだった場合はどうなってしまうのかは、こちらにも分かりませんねぇ」

 

 

と言い残し、はっはっはー、と高笑いしながら男の教師は去って行く。

 

対戦校の学校だったのか、と大雑把に思うものの、正直、出来の良い妹と比べられてきたLevel0の当麻としては、その程度の罵詈雑言は言われ慣れているので、さして気にならない。

 

だが……

 

 

「……違いますよね」

 

 

ポツリ、と小萌先生の声が聞こえた。

 

たった1人で、誰に言うでもなく。

 

俯いたまま。

 

ぶるぶると震える声で、

 

 

「みんなは、落ちこぼれなんかじゃありませんよね……?」

 

 

ただでさえ小さな肩を振るわせながら、今の罵倒は全て自分のせいで皆に降りかかったのだと告げるように。

 

そっと空を見上げて、何かを堪えるようにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「――、」

 

 

当麻はちょっとだけ黙る。

 

そして、ゆっくりと振り返ると、無言で立つクラスメイト達の姿が見える。

 

そこには先程までの倦怠感は微塵も見られない。

 

後輩にいい所を見せようとする熱に浮かれた見栄もない。

 

あるのは静かな闘志のみ。

 

 

(……当麻さん)

 

 

上条詩歌が誰よりも尊敬する愚兄に熱い視線を送る

 

愚兄――上条当麻は背中にそれを受けながらクラスメイトに確認を取る為、口を開く。

 

 

 

「──―おい、本気でやるぞ」

 

 

 

返事は無い。

 

ただ、踵を返し競技場へと向かう背中が答えを雄弁に語っていた。

 

 

 

 

 

競技場 応援席

 

 

 

御坂美琴は学生用応援席にいた。

 

一般来客者用応援席とは違い、こちらに日差しを遮るテントのようなものはない。

 

ただ地面にブルーシートが敷いてあるだけで、椅子すらもない。

 

常盤台中学と言う超一流の環境に慣らされた美琴からすれば、ここまで原始的だと逆に新鮮だ。

 

実は、己の出場する競技プログラムの都合上、最後まで見ているとかなり厳しいのだが、どうも気になって、美琴は気が付けばここにいた。

 

 

(……まあ、ウチの学校に勝てるはずはないと思うんだけどね)

 

 

こっそりと息を吐く。

 

何しろ常盤台女子中学と言えば5本の指の1つで優勝候補の一角だ。

 

昨年は同じ5本の指の1つ、長点上機学園に敗れ、屈辱の2位であったものの、Level5が2人に、それに匹敵するのがさらに2人いる。

 

さらに今年は、常盤台中学でも最凶と名高いあの常盤台の番長が総大将に立ち、それを常盤台の秘密兵器と呼ばれる姉が参謀として支える盤石の態勢。

 

単に能力だけのお嬢様集団と思っていたら一瞬で喰われるだろう。

 

正直、何事もなければ長点上機学園であっても勝てる自信がある。

 

対して、アイツの通う高校は特徴らしい特徴も無い無名中の無名。

 

まあ、姉が言うには、常盤台中学にも負けないぐらいの面白い人材は結構いるらしいし、アイツもいる事だから、きっと彼女は敵同士ではあるが応援はするだろう。

 

それでも学園都市の人間なら誰でも、アイツの勝算はほぼ0%だと断ずる筈だ。

 

それなのにどうしてこんな無謀な勝負をけしかけてきたんだろう? と美琴は今でも首を捻る。

 

捻ってから、あの愚兄なら意図なんて何にもなさそうだ、と思考が続く。

 

 

(でも……、)

 

 

番狂わせ(ジャイアントキリング)は起きるかもしれない。

 

Level0だのLevel5だのと言った客観的評価は一切無視して、そう、かつて学園都市最強のLevel5序列第1位を、一方的にその右拳1つで撃ち破った時のように。

 

自分のために、何者にも曲げられない愚直な精神で立ち向かい、姉とどこか後ろ姿が重なるあの頼りがいのある背中を見せて。

 

 

(……、)

 

 

美琴はほんの少しだけ思考を空白にした後、

 

 

(ああ、やだやだ! 何を唐突に照れてんのよ私!!)

 

 

バタバタバタバタ!! と下敷きの団扇でまっかになった自分の顔に風を送る。

 

同じ学校の生徒に今の顔を見られなくて良かった、と思った………が、

 

 

「おや? 美琴さんじゃないですか?」

 

 

「ふぇっ!?」

 

 

獲物に見つかった小動物のように美琴の肩が跳ね上がる。

 

そして、声がした方に振り向いてみると、そこには同じ学校に通う姉――上条詩歌と、

 

 

「む。何でここにいんの短髪」

 

 

修道服を着た銀髪碧眼のシスター少女がいた。

 

それはこちらの台詞だ、と喉元まで出かかったが、すぐに呑み込んだ。

 

詩歌はもちろん、シスター――インデックスの方も始業式の日に愚兄と一緒にいたし、やっぱり応援のためだろう。

 

 

「ふふふ、美琴さんも当麻さんの応援ですか?」

 

 

「え、い、いや! そういう訳じゃなくて! え、っと何ていうか、その……」

 

 

しどろもどろになりながら美琴は後ずさる。

 

 

「し、詩歌さんは何でここに? やっぱりアイツの応援ですか?」

 

 

質問に質問を返してしまったが、美琴はここにちょっと気になってきただけで答えなんてないのだ。

 

あるとすれば……

 

ただ、もし勝ちにこだわっていたらどうしよう?、とか。

 

ううん、やっぱりウチの学校が勝つよね。でもそうしたら、どうしよう? ……何でも言う事を聞いてくれるんだよね…―――って何考えてんのかしら私っ!?、とか。

 

などと、ガラス細工よりも繊細な乙女心の暴走によるものだ。

 

なので、ここでそれに突っ込まれると非常に困るのだが、詩歌はあまり追求しようとはせず、インデックスの方も特に気にせず腕の中の三毛猫と戯れている。

 

そして、美琴の質問にも答えてくれた。

 

 

「はい。当麻さんの応援に。それから強敵の視察、と言ったところですかね」

 

 

強敵?

 

もしかして、詩歌さんはアイツが……

 

いや、まさか……

 

しかし、美琴がそれを訊く前に、校内放送を使ったアナウンスで、選手入場の合図が告げられた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

最初の競技は『棒倒し』。

 

敵対する2組のグループが、それぞれ7mほどの長さの棒を立て、自軍の棒を守りつつ敵軍の棒を倒しに行く、といったシンプルな内容だ。

 

競技に参加するのは高校の1学年分。

 

と、ここまではごく普通の体育祭。

 

だが、ここは能力者の住まう街。

 

『能力』と言う要因が加わる。

 

さらには、全世界放送と言う事もあって、グラウンドの雰囲気や存在感は普通とは大きく異なる。

 

全学生1人1人にクローズアップこそはされないが、それでも緊張するものはする。

 

学生達の馬鹿騒ぎ的な歓声は大きいのに、不思議と身体の中央に、シン……とした緊張感を秘めた静けさを錯覚させられる。

 

 

(ま、つってもあの馬鹿は緊張とかしないんでしょうねー……。それどころか、アイツの場合は平気な顔してサボりそうだからむしろ不安だわ)

 

 

と、美琴は校内放送のアナウンスに促されるように、何気なく校庭へ目を向ける。

 

そこには簡単な柔軟体操にも専門的な匂いを感じさせるスポーツ重視のエリート校。

 

適度な緊張を運動能力に変換できそうな顔つきをしていて、試合慣れしている。

 

彼らは校庭の自陣側に集まり、各クラスに1本ずつの棒を立てていく。

 

この手慣れた感じからすると、この『棒倒し』を結構練習し、作戦も立ててきているのだろう。

 

こりゃまともにやったら大変そうねー、と美琴が首を振ったその時、ふと横合いから、

 

 

「『一寸の虫にも五分の魂』とは言いますが、これは……相手にしたくないですね」

 

 

へ? と詩歌の視線のその先――当麻達の陣に目を向ける。

 

先ほども述べたように、当麻達の学校はパンフレットで見る限りだが、進学校でも何でもない、本当に個性のない『極めて一般的な学校』だ……と思っていたが、

 

 

 

そこに、本物の猛者達がいた。

 

 

 

はい……? と美琴は思わず自分の目を疑ってしまう。

 

その一団は妙な威圧感を放っているくせに、野次や騒ぎの1つも起こしていない。

 

無言のまま、威風堂々と上条当麻を中心に校庭に立つ彼らの表情は、スポーツ選手とかではなく、幾つもの戦場を潜り抜け、決死の覚悟を決めた歴戦の兵士達のそれだ。

 

所々に立てられた棒倒しの棒が、兵団の持つ旗印か何かに見える。

 

もうこれは、テレビカメラによる緊張感がどうのと言う次元ではない。

 

彼らの頭の中には、ただ目の前の敵を完膚なきまでに叩き潰すとしか、考えてはいないだろう。

 

ドゴゴガガガガガガ、と彼らの周りから妙な効果音が鳴り響く。

 

3ケタ単位の能力がぶつかりあって空気を震わせる音だ。

 

 

(い……、)

 

 

余りの異様なテンションを前に、美琴は思わず叫びかける。

 

 

(……一体何なのよあの覚悟!? アイツ、こんなトコでなんて無駄なカリスマ性を発揮してんの! ま、まさかマジで勝ちに行く気な訳!? アンタ私に勝って罰ゲームで一体何を私に要求するつもりなのよーっ!?)

 

 

実際には小萌先生のエピソードが全軍に伝わった結果なのだが、美琴にそんな事が分かるはずがなかった。

 

 

 

 

 

競技場 校庭

 

 

 

入念にストレッチを開始している相手側――赤組に対し、当麻達――白組は誰も一言も発する事なく、ただ赤組を睨み付けていた。

 

あくまでも競技のつもりでいる赤組に対し、白組は合戦にでも臨むかのような心構えで相対する。

 

赤組の学生には不幸な事だが、彼らの担当の教師は決して踏んではならない虎の尾を踏んでしまったのだ。

 

当麻達が非常にお世話になっている月読小萌は生徒想いの熱血教師で、彼女が担当するクラスはもちろん学年、それどころか学校全体で多大な人望を持っている。

 

その彼女を泣かせてしまったのだ。

 

さらに、常盤台の学生、上条詩歌に見る目がないと否定された事は妹を誰よりも誇りに思っている愚兄の逆鱗に触れた。

 

 

(さて、そろそろか)

 

 

競技開始のアナウンスと共に、相手側から一斉に、水、火、土、風、雷、氷、その他色々の攻撃の手が放たれた。

 

対して、白組は当麻を先頭に砂塵を巻き上げながら突撃。

 

どうやら、自軍の棒を死守する役と相手の棒を引き摺り倒す役に分かれているらしい。

 

よって、後者側の特攻隊長である当麻は競技開始を合図と共に、真っ先に敵陣を目がけて魁となって走っていく。

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

叫び声を上げながら襲いかかる異能の嵐を右手一本で迎え撃つ。

 

当麻の右手には<幻想殺し>と言う力が備わっており、異能であるならば、神様の奇跡でさえも無効果にする。

 

だが、所詮、効果範囲は右手1本。

 

しかし、右手1本で十分だった。

 

火炎か爆発系の能力を使って作られた爆圧を、さらに圧力計の能力で弾丸上に加工した爆圧弾。

 

当麻は荒れ狂う弾幕の中を突っ切りながら、無意識に能力の波動を捕らえる前兆の感知で危険を察知し、ありとあらゆる能力を食らい尽くしていく。

 

それに加えて、味方から<念動能力>を主体とした砂の槍の援護。

 

スポーツの名門校に通う学生ですらも足元に及ばない運動能力を持つ当麻は陣営までの距離およそ80mを一気に詰めていく。

 

その止める事の出来ない鬼神の如き上条当麻の威圧に相手校は僅かに怯む。

 

あれはどうすれば止まるのだろうか、と。

 

このままだと全体の士気にかかわる。

 

相手校が、猛烈な進撃を食い止めようと全軍の意識が、上条当麻に集中する。

 

が、それは囮だった。

 

 

「今っ!!」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

結論から言うと、当麻達は競技に勝った。

 

いくら当麻が圧倒しようとも1人で何十人もの能力者に守られている棒を倒す事などできるはずがない。

 

なので、当麻の特攻に気を取られている内に奇襲の準備を整え、そして、吹寄制理の指揮の下、持てる能力の全てを地面に放って土煙を巻き上げて、敵軍の視界を奪い、電撃戦に出たのだ。

 

この作戦の都合上、不幸にも先に突っ込んでいた当麻は敵軍の攻撃+背後から味方の奇襲と非常にスリルある体験をしたそうだが、並外れた緊急回避能力によって擦り傷程度で済んだ。

 

そうして、戦場から帰還した猛者達は、その手で勝利をもぎ取った事も、怪我した事も全く気にも留めずに選手用出入り口から校庭に出る。

 

と、半分涙目の小萌先生が救急箱を抱えて待ち構えていた。

 

 

「ど、どうして皆、あんな無茶してまで頑張っちゃうのですかーっ! <大覇星祭>は皆が楽しく参加する事に意味があるのであって、勝ち負けなんてどうでも良いのです! せ、先生はですね、こんなボロボロになった皆を見ても、ちっとも、ちっとも嬉しくなんか……ッ!!」

 

 

何か訴えていたが、兵士達は多くは語らず、三々五々と散って行った。

 

 

 

つづく


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