気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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筆が乗ったので書き上げました。とりあえず騎士の館篇は終わり、本格的に原作に関わる路線になります。

ちなみに主人公の今の強さは一対一だとギリギリで成熟期デジモンに嫌がらせの一撃を入れられる程度です。アグモンとコンビなら、一般的な成熟期デジモンなら普通に倒せます。


第6話 踏み出そう 次の一歩を

 

 デジタルワールドに来てから6日目の朝。おそらく今日の夜に、デビモンによってファイル島はバラバラになるだろう。

 

 朝食を取りながら、今後の身の振りを考えていた。

 

 このトロピカルジャングルから近場で子供たちがやって来るのは、はじまりの街、オーバーデル墓地、あとおそらくはダイノ古代境。

 

 朝起きて適当にファイル島の地図を描いて状況を整理したが、子供たちは迷わずの森辺りからシーラ岬辺りに出てシェルモンと戦い、竜の目の湖でシードラモンと戦い、ミハラシ山辺りでメラモンと戦い、ギアサバンナのファクトリアルタウン辺りでアンドロモンと戦い、おもちゃのまちでもんざえモンと戦い、フリーズランドでユニモンと戦い、今日はムゲンマウンテンに登ってデビモンの罠に掛かると。

 

 そう考えると、子供たちはファイル島を時計回りに冒険していることになる。

 

 今日1日でムゲンマウンテンへ行けるかナイトモンに訊いてみれば、強行軍的なスピードでないと辿り着けないという。正直無理して敵と対峙して、いざ疲れました戦えませんでは話にならない。

 

 となると、あまりやりたくないが、分断された子供たちの誰かと合流した方が、後の戦いに余力を残すなら合理的だろう。

 

 問題は何処と合流するか。先ほど上げた3ヶ所には、はじまりの街にはタケル、オーバーデル墓地には丈と空、ダイノ古代境辺りには光子郎とミミ。

 

 そう考えると、やっぱり小さな子供のタケルの元に行った方が良いのだろうか。

 

 他も子供たちだけとはいえ、二人一組でデジモンも着いて居るから危険ではあるが、ある意味心配もないだろう。でもタケルのパートナーデジモンのパタモンはまだ進化出来ない。

 

 物語りとして考えるなら無事に終われるのだが、やっぱりこの世界の今は現実で、何が起こるかなんてわからない。

 

 やっぱり大人としては一番か弱い子供のことを気にしてしまう。余計なお節介になるかもしれないが、はじまりの街に向かうか。

 

 朝食を終えたあとは荷造りをして、ナイトモンの所へ行き、はじまりの街に向かうことを伝えた。

 

「そうか。このファイル島の危機になにも出来ず、申し訳ない」

 

「気にしなさんな。稽古をつけてくれただけでも十分に助かった。あなたは、あなたの使命を果たしてくれ。……今日まで短い間、お世話になりました」

 

 ナイトモンに改めて礼を言い、頭を下げる。この騎士の館での数日は短いものだったが、とても充実した日々だった。

 

 いつになるかわからないが、また来たいとも思う。

 

「これは私からのせめてもの餞別だ。今後の役に立てて欲しい」

 

 そう言って渡されたのは、秘伝の薬と、その作り方のメモ、さらには立派な細身の長剣と右手用の手甲だった。

 

「この剣と手甲はクロンデジゾイドで鍛えた物だ。その切れ味と頑丈さはこのナイトモンが保証しよう」

 

「ナイトモン、まさか昨日はこれを」

 

「うむ。これをファクトリアルタウンへ造りに行ったのだが。きみには我が騎士団を救ってくれただけでなく、我が使命である館の守りも代わってもらってしまった。その大恩をこの程度の代物でしか返せないことを、申し訳なく思う」

 

「いや、そんな。これだけスゴい物をくれるだけで有り難いよ」

 

 手甲はサイズもぴったり、剣も鞘に付けられたベルトで腰の脇に差す様に固定する。なんか一気にファンタジーな剣士になった気分だ。 

 

「なにからなにまで、本当にありがとう。ナイトモン」

 

「礼には及ばない。もしなにか困ったことがあれば、何時でも立ち寄ってくれ。我が騎士団、その時は全力で助けになろう」

 

「ああ。その時は、よろしく頼むよ」

 

 ナイトモンと握手をして、おれはナイトモンの部屋を出る。

 

 あとは適当に挨拶回りをしながら、館の外に出る。

 

「なんか、あっという間なのに、長く居た感じがするね」

 

「ああ。またいつか、ここに戻ってこよう。次は、もっと強くなってさ」

 

「そうだね。アニキみたいに、オイラ、もっともっと強くなるよ!」

 

「ははっ、期待してるよ、アグモン」

 

 そろそろ出発しようとした時、館の扉が開き、クロが駆け寄ってきた。

 

「マッテ……」

 

「おいおいクロ。病み上がりなんだから無理するなよ」

 

 タンクモンの攻撃から館を庇ったクロは酷いケガをしていた。いくら秘伝の薬があるからといって、今日一日は安静にしていた方が良いはずだ。

 

 中々見つからずに別れを言えなかったが、それだから態々見送りに出てきてくれたのかと思ったが、槍と盾を背中に背負って、風呂敷を括り付けた木の枝を肩に担いでいる姿は、とても見送り人の格好ではなく、モロ旅人の格好に見える。

 

「ワタシ、イク……アルト、ツヨサ……マナブ」

 

「って、良いのか? おれたちの旅は危ないし、第一オマエ、騎士団どーするんだよ?」

 

 ナイトモン騎士団の中でも一二を争う腕のクロの強さは、昨日の手合わせでも十分に伝わった。心の弱さだって、身を挺して館を守った勇気も十分にあるはずだ。

 

 クロがおれから学ぶことなんてなにもないぞ。

 

「ワタシ、ツヨイ……メイワク、ナラナイ」

 

 確かにこの中だと素の強さはクロの方が上だろう。でも一応はおれも戦えるし、いざとなればアグモンも進化出来る。

 

 クロの強さは心強いが、それでナイトモン騎士団の戦力が低下してしまって万が一があっては元も子もない。

 

「連れていってやってくれ。アルト」

 

「ナイトモン?」

 

 クロの同行に返事を出せないおれに、ナイトモンが声をかけてきた。

 

「このポーンチェスモンは、我が騎士団でも強いデジモンだが、逆に騎士団の中しか知らない。世界を見て、さらに強くなれると私は思っている」

 

「ダカラ、ツレテッテ」

 

 騎士団を統括するナイトモンと、本人のクロからそう言われては断る理由もない。

 

「わかった。よろしく、クロ」

 

「ヨロシク、アルト、アグモン」

 

「わーい! わーい! 仲間が増えた増えた! 楽しい旅になるぞー♪」

 

 無邪気に喜ぶアグモンと、旅の仲間に加わった黒いポーンチェスモンのクロを連れて、ナイトモンや騎士団のデジモンたちに手を振りつつ、おれは濃厚な数日を世話になった館から歩み出す。今、本当の意味でのおれたちの旅が始まった気がする。

 

 長い長い旅路。苦しいこと、辛いこと、悲しいこと。たくさんあるのかもしれないけれど。

 

 嬉しいこと、楽しいことがあることも信じて、ファイル島の土を踏み締める。目指すは選ばれし子供たちとの合流。その一歩ははじまりの街。そしてデビモンとの戦い。

 

 不安はある。だけどそればかり気にしても仕方がない。今は明るい未来を信じて歩くしかないさ。

 

「ん? なぁに、アニキ?」

 

「ナニカ、アッタ……?」

 

「いんや。なんでもないよ」

 

 アグモンとクロが居る。もしかしたら他にも仲間になるデジモンも居るかもしれない。そう考えると、少し胸がワクワクする辺り、おれもまだまだガキだな。

 

 

  

 

to be continued… 


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