気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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ちょいとデジタルワールドについて勝手な妄想設定が入ってきます。そして切りどころわからずにぐだくだ長くなりました。すまそ。


第5話 黎明の記憶 アルト、怒りの鉄拳!

 

 ナイトモンに稽古をつけ始めて貰ってから3日目。デジタルワールドに来てからは5日目となる今日。

 

 ポーンチェスモンの抱き心地に、ベッドに入ったあとは直ぐに寝落ち出来た目覚めはかなり良好だった。良好すぎてまだ日の出辺りの時間に起きてしまうというかなり健康的な朝を迎えた。

 

「さすがに居ないか……」

 

 ちょっと無理してベッドに連れ込んだからな。お陰でよく眠れた。

 

 二度寝するのも勿体なくて身体を起こす。アグモンは床で寝そべって寝ている。ふかふかのベッドは落ち着かないんだとか。

 

 部屋を出て館の中を見て回る。夜勤のコテモンやポーンチェスモンと擦れ違いに会釈する。

 

 だいたいの構造は把握していても、見てない場所の方が多い館の中を探検感覚で見て回る。既に朝食担当のデジモンたちが食事を作り始めていた。

 

 倉庫に行くと、鍛練で使っている木剣が目に入った。まだ2日しか使っていないのにかなりボロボロになっている。

 

「ここは……」

 

 次は初めて入る部屋だった。

 

「スゴいな……おい」

 

 電気を点けると、眩しいほどに光を反射する金貨や銀貨の山。

 

「これ、旧い五百円玉じゃん」

 

 いや、旧いって言っても、リアルワールドじゃまだ1999年で現役だったか。

 

 探してみれば、旧札もいくつも見つかる。

 

「盗るんじゃない。両替、両替だから」

 

 リアルワールドが1999年なら、2015年からこのデジタルワールドに居るおれの金はほぼ使えない為、財布の札束は全部両替させてもらった。これでリアルワールドに行くことになったとしても、金には困らないとも思う。

 

「あれは……」

 

 両替を終えたところで、部屋の一番奥に、台座の上に置かれた物体に目が行った。

 

 光輝く硬貨や宝石の山の部屋の中で異彩を放つそれは、縦に四角い箱の様に角張った物体だった。元々は金なのだろうか? しかし今は大部分が霞んでしまって鉛色の様になってしまっている。

 

「どっかで見たことあるんだよなぁ……」

 

 記憶の片隅に引っ掛かる既知感。だが頭を捻っても思い出せない。

 

「それは、遥か太古のデジタルワールドを駆け馳せたロイヤルナイツの1体の持ち物だと聞かされている」

 

「ナイトモン…」

 

 後ろからの声に振り向けば、ナイトモンが歩み寄ってきた。

 

「マグナモンというデジモンの力を封じ込めてあると、ロードナイトモン様から聞いたことがある」

 

「ロイヤルナイツの、マグナモン……」

 

 ナイトモンの説明を聞いて、記憶の中の引き出しが繋がった。

 

「奇跡のデジメンタル――……」

 

 思い出せば、確かにアニメに出てきた奇跡のデジメンタルと瓜二つだった。

 

「知っているのか? アルト」

 

「なんとなく、だけどな」

 

 ……というのはウソだ。ホントはガッツリと知っている。太古のデジタルワールドにて繁栄した進化形態。『アーマー進化』。

 

 デジモンはその経験や環境によって異なるデジモンに進化することもある。

 

 アグモンを例に上げれば、グレイモン、ジオグレイモン、さらにはティラノモンといった風に。

 

 だが、アーマー進化は経験などに左右されず、決まったデジモンに進化することが出来る進化形態なのだ。

 

 その為のアイテムがデジメンタルなのだ。

 

「結構軽いんだな……」

 

 デジメンタルは持ち主と定められた人間でないと持ち上がらないという性質がアニメにはあったが、全くそんなこともなく片手で持てそうな程軽かった。

 

「ば、かな……。今までロードナイトモン様でなければ触れることすら出来なかった物を軽々と……」

 

「へ……?」

 

 後ろにいたナイトモンが心の底から驚いたと言わんばかりに声を震わせながら言葉を紡いだ。その目は驚愕に見開かれていた。そんなナイトモンの姿は今まで見たことはなかった。

 

「っ、なんだ…?」

 

 ナイトモンの姿に釘付けになっていると、手の中が暖かくなっていった。

 

 手にデジソウルが宿り、奇跡のデジメンタルからは黄金の輝きが放たれていく。

 

 視界がデジソウルの白と、デジメンタルの黄金に覆われていく。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 それはまだ、生まれて間もないデジタルワールド。

 

 人間がパーソナルコンピューターを造り、PC間での情報交換――つまりはネットワークを作り始めた頃。

 

 デジモンたちは生まれたばかりで、なにも知らない無垢な生き物だった。

 

 だが、データの中に存在するバグが時として、デジタルモンスターであるデジモンに悪影響を及ぼし、デジモンの中に悪が生まれた。

 

 悪ある所に正義あり――。

 

 デジモンたちは悪に対抗する為に正義に進化する者も居た。

 

 悪と正義の戦いは闘争心を生み、両者は互いを倒すために際限無く進化していく。

 

 そして正義と悪は幾度も滅ぼし合い、破壊と再生は繰り返され、何時しか戦わずとも生き抜く術を見出だそうとする者も現れ始めた。

 

 ウィルスに対するワクチン、ワクチンに対するデータ、データに対するウィルス――。

 

 人間の社会が発展する中、何倍もの速さで発展を続けるデジタルワールドに何時しかそんな三竦みの関係さえ出来始めた。

 

 だが、その全てさえも破壊しようとするデジモンが現れ、デジタルワールドは崩壊の危機すら迎えようとして居た。

 

 それを救ったのが、ロイヤルナイツの始祖と言われる1体のデジモンだった。

 

 純白の鎧を身に纏い、白い一対の翼を持つ人形のデジモン。

 

 インペリアルドラモン・パラディンモード――。

 

 白き聖騎士によって救われたデジタルワールド。だがまた何時しか強大な悪が生まれるかもしれない。

 

 その時の為に、インペリアルドラモンはデジタルワールドを統轄するイグドラシルの協力によって自身の志を受け継ぐ者、ロイヤルナイツを組織した。

 

「おれにこれを見せて、どうする気だ。――マグナモン」

 

 ふと気づけばそこはさっきの部屋だった。

 

「大丈夫か? アルト」

 

「あ、あぁ、うん。なんともない……」

 

 しかし手元にあったはずのデジメンタルは消えてなくなっていた。

 

「っ、デジメンタルが……」

 

 足元に落とした覚えも無い。辺りを見回しても何処にもない。

 

 だが上着に着ているコートの内ポケットの中が光っているのを見つけて手を突っ込む。

 

「デジヴァイスが……」

 

 デジヴァイスの画面が光輝いていて、ドット絵の奇跡のデジメンタルが表示されていた。

 

 つまりデジヴァイスの中に奇跡のデジメンタルが入ってしまったというのか? いやマズくないかこれ。

 

「ナ、ナイトモン……」

 

 ぐぎぎぎぎと、錆びた人形の様に首を回してナイトモンに助けを求めた。いくら心優しいナイトモンでもこれは怒られるだろう。

 

「これもマグナモンの導きだろう。ロードナイトモン様しか触れられなかった物を触れる事が出来たきみは、なにか特別なのかもしれない」

 

 取り敢えずは怒ってはいないようだが、なにやら壮大な勘違いが生まれてしまいそうな雰囲気になってきている。

 

「デジメンタルについては私からロードナイトモン様に伝えておこう。きっとわかってくださるはずだ。それと、私は出掛けてくる故、昼間の鍛練は休みとする」

 

「え、あ、うん。わかった…」

 

 ナイトモンの口添えが貰えるのは有り難いが、このまま奇跡のデジメンタルを持ち歩くことになりそうな風で話が進みそうで大丈夫なのだろうか? 一応ロイヤルナイツの持ち物だというものを赤の他人に渡しても。

 

 だがなにかを言って話をややこしくもしたくないため、部屋を出ていくナイトモンを見送ることしか出来なかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ナイトモンが急に出掛けてしまった為、手持ち沙汰になったおれは、ポーンチェスモンたちに稽古相手になってもらっていた。

 

「前進あるのみーっ!!」

 

「うぉっ!?」

 

 一応決闘方式の一対一なのだが、ポーンチェスモンは数が揃うと完全体ですら手がつけられないデジモンであり、さらにロイヤルナイツのロードナイトモンに仕えるナイトモンの騎士団の配下であるからか、成長期という枠内に収まらない強さを持っているのだ。

 

 しかし戦い方が真っ直ぐ突っ込んでくるという一辺倒である為、ナイトモンの剣戟を見てきた目は、辛うじてポーンチェスモンの攻撃に追い付いて行ってくれる。

 

 それでも切り返しの速い突撃は、一瞬でも気を抜けば直撃は免れないだろう。

 

「突撃あるのみやーっ!!」

 

 しかし全力で突撃しまくるのはかなり疲れるのか。5分程度を凌げば、別のポーンチェスモンが交代して再び突撃してくる。

 

 その突撃を木剣で捌いていく。ナイトモン相手だと、敵に立ち向かう術を習い。ポーンチェスモン相手だと、敵の攻撃から身を守る術を習い。この3日間、素人の付け焼き刃ながら攻防のいろはを教えて貰った。

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」

 

 ポーンチェスモンの突撃を捌くだけで、あまり動かないから身体的には余裕が残るが、一瞬でも気を抜けない状況に、集中力的にかなり疲れは貯まる。

 

「アイテ、ツカマツル……」

 

「次はお前か、クロ」

 

 ナイトモン騎士団の中でも一二を争う腕前と聞くクロとの手合わせは今日が初めてだ。

 

「イク」

 

「っ!?」

 

 嘗めていたわけじゃないが、クロの動きは他のポーンチェスモンと比べて段違いだった。

 

 まだ動きを追えていたポーンチェスモンたちだったが、クロの初動は目が追い付けなかった。

 

 攻撃する為に一瞬動きを止めた時に、既に懐に入っていたクロを初めて認識する。

 

 クロが最初に動くときになにも言わなかったら、今頃仰向けで伸びていただろう。

 

「《ポーンスピア》――!」

 

 木で出来た槍を突き出してくるクロ。

 

 その攻撃を無理矢理身体を捻って避ける。そのまま勢いを利用して木剣を回、身体を転しながら横凪ぎに振るう。

 

 だがクロはジャンプすることで此方の攻撃を避けた。

 

「《ポーンバックラー》――!」

 

「くっ」

 

 おれの頭より高く飛び上がったクロは、落下しながら木の盾を構えながら突撃してくる。

 

 バックステップでそれを避け、着地の瞬間を狙って斬りかかるも、それは木の槍で受け止められてしまった。

 

 ポーンチェスモンたちも強かった。でもクロはさらに強いというか、突撃一辺倒の他のポーンチェスモンたちとは違う、武器を巧みに使う戦い方をしてくる。

 

 確かに、騎士団で一二を争う腕前というのに納得のいく強さだ。ナイトモンに稽古をつけて貰っていなかったら、最初の一撃ですら反応できなかっただろう。

 

 間合いを一旦開けて仕切り直す。気を引き締めて、クロと対峙する。

 

 基本的にリーチの短い剣で、リーチの長い槍に勝つには、相手よりも3倍強くなければならないらしい。剣道3倍段の考え方だったか。

 

 相手よりも間合いが不利の時の考え方の一説だったはず。

 

 だが、デジモンとして小柄のクロと、人間として大身長差から大柄になるれおれとだと、腕の長さでどっこい辺りか。

 

 しかし戦い慣れしているクロと付け焼き刃の自分とではその戦闘能力は考えるだけ無駄だろう。

 

 守ったら負けるな、これは。

 

 木剣を両手で下段に構える。クロも、おれが攻めに転じるのを感じて盾を構えた。

 

「いくぞっ!」

 

「ウケテタツ」

 

 地面を押し蹴り、一気にトップスピードで駆け抜ける。下段からの斬り上げでクロの盾を弾き、そのまま上段からの振り下ろしで一撃を加える考えだった。

 

 だが、クロにだけ集中していたおれの視界に、何かが飛び込んできた。

 

「っ、ぐあああああ!!!!」

 

「ッゥゥゥゥ!!」

 

 正におれとクロが激突する瞬間に、両者の間の地面が爆発し、その衝撃と爆炎、弾けた石の礫をモロに受けてしまった。

 

 衝撃で吹き飛ばされたおれとクロ。何事だと周囲を警戒する騎士団のデジモンたち。

 

「ぐあああああ!!」

 

「無念っっ!!」

 

「うわあああああ!!」

 

 騎士団のデジモンたちを吹き飛ばしながら現れたのは、戦車型のデジモンだった。

 

 下半身を戦車の車体。上半身は人型だが、グレイモンの様な恐竜型に近い身体に、両腕は機関砲、頭は主砲と一体化しているデジモン。タンクモンである。

 

「アニキぃーーっ!!」

 

 騎士団のデジモンたちと一騎討ちを見ていたアグモンが慌てて駆け寄ってくる。

 

「アニキ、大丈夫!?」

 

「全身バキバキに痛いけどな」

 

 アグモンに支えられて上半身を起こす。咄嗟に腕にデジソウルを纏って防御したから、大した怪我はしていないが、頭とかに石がぶつかったのか、かなり頭がフラフラする。

 

「クロは、どうした…?」

 

「ワタシハ、ブジ……」

 

 そう言いながらやって来たクロは、木の盾がボロボロだった。咄嗟に防御出来たのか、身体に土埃が着いているくらいで元気そうだった。

 

「でも、なんでタンクモンが……」

 

「イツモハ、ファクトリアルタウン……オカシイ」

 

 クロの言葉の通りなら、あのタンクモンはファクトリアルタウンに居るデジモンで、ギアサバンナエリアからミハラシ山を越え、迷わずの森を抜け、この館のあるトロピカルジャングルまで随分な距離を移動してきたことになる。

 

 とはいえ、このファイル島の地形が、おれの記憶する地形と変わっていなければの話だが。

 

 両腕の機関砲から銃弾を放つタンクモンを前に、訓練用の木の盾や槍で武装していたポーンチェスモンたちは攻撃を凌ぐので手一杯だ。

 

「《サンダーコテ》!!」

 

「《ファイヤーメン》!!」

 

 コテモンたちは負けじと反撃に移るが、電気や炎を纏う斬撃も、タンクモンの装甲の前にはまるで効いていない。

 

「くそっ……」

 

 ポーンチェスモンやコテモンたち、ナイトモン騎士団が戦っているのに、自分だけ寝ていられず、立ち上がるが、まだ頭がフラフラして均衡感覚が戻って来ないで膝を着く。

 

「アニキ!」

 

「ムリ、ダメ……」

 

 アグモンとクロに支えられて、倒れることはないが、それでもこのまま見ているわけにはいかない。

 

「《ポーンスピア》!!」

 

「《ポーンバックラー》!!」

 

 果敢に木の武器で挑むポーンチェスモンたち。だが、鉄対木ではどうすることも出来ずに、武器は無惨にも壊れていく。

 

 そんな攻撃とは言えない攻撃を受けるタンクモンは、機関砲で周りの騎士団を追い払いながら、頭の主砲を館に向けて狙い定めた。

 

「ヤバい! アイツ、館を撃つ気だ!」

 

「「「「「――!?」」」」」

 

 おれの言葉に、騎士団全体に驚愕が走る。

 

 館は、ロードナイトモンの物である前に、騎士団の家でもある。それが壊されようとしているのを前にして、なにも感じないはずがない。

 

「《ハイパーキャノン》!!」

 

 タンクモンの頭の主砲から弾頭が発射された。

 

 それは一直線に館へと向かっていく。

 

「ッ――!!」

 

「っ、クロ!!」

 

 それを見たクロが飛び出して駆けていく。

 

 館に向かう弾頭の先に身を飛び込ませ、木の盾を構えて。

 

「クロぉぉぉぉーーーーっ!!!!」

 

 爆発と共に砕け散る弾頭。爆炎の中から投げ出されるクロの身体。

 

 地面を蹴り飛ばして、クロの身体を受け止める。

 

「おいクロ! しっかりしろ、クロ!!」

 

 ぐったりとしているクロに呼び掛ける。黒焦げになった身体が、そのダメージの大きさを物語っていた。

 

「……あ、ると……」

 

「クロ……」

 

 弱々しいが、返事を返してくれたクロに胸を撫で下ろす。

 

「動けるヤツは負傷者を館に運んで治療しろ! タンクモンはおれたちが倒す!!」

 

 おれがそう叫ぶと、騎士団は統制の取れた集団として動き始めた。

 

 クロを他のポーンチェスモンに任せると、おれはタンクモンと対峙する。

 

「よくも仲間を、クロを傷つけてくれやがったな……」

 

 固く拳を握り締めるおれの腸は煮えくり返っていた。

 

「倒される覚悟は出来てるだろうなぁ!! タン公があああっ!!」

 

 地面を押し蹴り、タンクモンに向かって駆ける。

 

 タンクモンは腕の機関砲で迎撃してくるが、銃口が向けられた所で、横にステップを踏み、射線から外れれば攻撃は当たらない。

 

 ポーンチェスモンたちの突撃に比べれば、タンクモンの狙いは遅すぎる。

 

「おおおおおりいぃぃやああああっ!!!!」

 

 振りかぶった右の拳で、タンクモンの車体を殴り付ける。

 

「グアアアアア!!」

 

 殴られたタンクモンは、叫びながら数mを擦り下がった。デジソウルを纏った拳は、鉄の感触を伝えながら、確かな手応えと共に、タンクモンを後退させたのだ。

 

「アグモーーーンッ!!」

 

「オーケー、アニキッ!!」

 

 おれが叫ぶと、その意図が伝わったのか、アグモンは此方に走ってくる。

 

「デジソウル――チャージ!!」

 

 おれはデジソウルをチャージしたデジヴァイスをアグモンに向ける。デジヴァイスから放たれた光が、アグモンを包み込む。

 

「アグモン進化――ジオグレイモン!!」

 

 進化の光から現れたジオグレイモンがタンクモンと激突する!

 

「これは、アニキと、クロと、騎士団のみんなの分だあああっ!!」

 

 ジオグレイモンはそう叫びながら、タンクモンの顔面に強烈な右ストレートを放った。

 

「ガアアアアアア!!!!」

 

 強烈な拳を受けたタンクモンは、その勢いによって180度スピンターンをした。その背中が見えたとき、黒い歯車が見えた。

 

「まさかあれが、デビモンの黒い歯車か…」

 

 それを確認すると、タンクモンは体勢を建て直して、ジオグレイモンに主砲の照準を向けた。

 

「《ハイパーキャノン》!!」

 

「《メガフレイム》!!」

 

 二つの必殺技がぶつかり、強烈な爆風に吹き飛ばされそうになるのを耐えながらジオグレイモンに叫ぶ。

 

「ジオグレイモン! タンクモンの背中の黒い歯車を狙え! そうすれば戦いも終わるはずだ!!」

 

「わかった。アニキ!」

 

 返事をしたジオグレイモンは爆煙の中に突っ込んでいった。

 

「《ホーンインパルス》!!」

 

 ジオグレイモンは身を屈めて、タンクモンの車体の下にその角を差し込むと、ちゃぶ台返しよろしく一気にカチ上げた。

 

 仰向けに引っくり返されたタンクモンは直ぐには立ち直れず、ジオグレイモンの前で背中を見せてじたばたしている。

 

「《メガバースト》!!」

 

 ジオグレイモンの放った一撃が黒い歯車に直撃して、黒い歯車は粉々に破壊された。

 

 その光景を見納めて、気を抜いたおれも背中から地面に倒れ伏した。

 

 頭の揺れが限界の上に、どっとした疲れが身体を襲って、その場で寝てしまった。

 

 後に聞いた話だと、タンクモンはファクトリアルタウンからこのトロピカルジャングルまで強いデジモンを探しにきた所で記憶が途切れているらしい。おそらく黒い歯車を身に受けた影響だろう。

 

 ナイトモンに館を守ったことに感謝され、その日は大事を取って休むことになった。

 

 クロも、秘伝の薬のお陰で大事に至ることはないと聞いたときは、とても安心した。

 

 デジタルワールドに来て5日。そろそろデビモンが動き始める頃だろう。

 

 アグモンを進化させる度に倒れてしまう自分が果たして子供たちの役に立てるか不安な夜を過ごしたのを追記する。

 

 

 

 

to be continued…


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