気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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先に進まない。ひたすら先に進まない。でも切りどころが良いから切るしかないんだ。1話サックリ読むのには5~6000字、行っても7000字くらいまでがこういうネット小説はちょうど良いらしいので。

年内の書き納めにしては果てしなくどーでも良い内容且つ独自解釈してるところもあるので、何か間違っていそうなら活動報告の質問版まで一報ください。


第33.875話 有音先生のアーマー進化講義

 

 コカトリモンの豪華客船で二泊三日を迎えた朝。私たちは砂漠を進む船の姿を見送った。

 

「あーあ。もう少し休んでいたかったなぁ…」

 

「仕方ないわよミミちゃん。あの船もエテモンの仲間のものだったもの。2日もフカフカのベッドで休めて美味しいものもたくさん食べれたことに感謝しましょ」

 

「それはわかってますけどぉ~」

 

 まだ未練が残る視線を向けるミミちゃんを空ちゃんが宥める。

 

 あの船もエテモンのネットワークに繋がっていて、それが3日も同じ場所に停泊していたら不審がられると言った有音君の言葉で、みんな重い腰を上げて一時の贅沢から身を降ろした。

 

 船を自動で動かし、適当にまた航海を続けてもらう。異変に気づいてエテモンが船に向かえばラッキーである。

 

「さて、どこに向かったら良いんだ?」

 

「船で得た地図によれば、この一帯は砂漠と荒野でなにもないらしいですね。西に2日ほど歩けば街がある様ですけど」

 

「紋章も集めなけりゃならないからな。一先ずその街に行って情報を集めるっていうのはどうだ?」

 

 気持ちを切り替えて目的地をどうするか切り出した太一君に、光子郎君がパソコンをタイピングしながら答えて、ヤマト君が意見を出す。行動方針は子供たちに任せるとして、私はブイモンと一緒に周囲を警戒している有音君に視線を向ける。

 

「ん? どうかした芹香?」

 

「う、ううん! なんでもないなんでもない。あははははは…!」

 

 声を掛けられた私は慌ててなんでもないと言って乾いた笑いで誤魔化しながら顔を反らした。

 

 自分の頬が朱いのがわかる。……だって、あれだけトチ狂った私を相手にしてもいつも通りなんだもの。しかもいつも通り無防備で私に接して来るんだもの。

 

 ……ごめんなさい。頂いちゃいました。頂いてしまったのです。だって我慢の限界の私の目の前に鴨がネギを背負って食べられるのをまな板の上で待機している状態なんだよ!!

 

 お酒に盛りました。有音君だと普通の量じゃ効かなそうだったから結構ドバーッと。

 

 私も酔いたかったからちょびっと盛ったけど、私が我慢できなくなって襲いました。そのあとどうなったのかは今は思い出してはならない。そんなことしたらマトモに有音君の顔が見れなくなる。

 

「……ちゃんとしなよ? 子供たちの前なんだからさ」

 

 すぐ背中で発せられた有音君の言葉。大分小さくても、背中合わせだから聞こえた声に、少しだけ頭が冷える。

 

「大人のおれたちがしっかりしなくちゃならないんだからさ」

 

「……うん。ごめんね、有音君」

 

 こんなところでも助けられて。しかも私は色々とヒドイ事をしたのに相変わらずいつも通りに接してくれる有音君。自分が情けなく思うと同時に、あれが大人の余裕なんだなぁって、離れていく背中を見送る。 

 

「あ、あれ? これって」

 

 そんなことを思っていると、ミミちゃんの困った様な声が聞こえてきた。

 

「ミミちゃんのタグが!」

 

「え? え? なんで? ちょ、引っ張られてる!?」

 

 空ちゃんの声にみんなの視線がミミちゃんに集まる。

 

 ミミちゃんのタグが光って、勝手に服の中から現れると、そのまま引っ張られていく様に動いて、首からタグを下げているミミちゃんも一緒に引っ張られていく。

 

「僕の時と同じだ。ミミ君のタグが紋章に反応しているんだ!」

 

「ということは、ミミさんの紋章がこの近くにあるってことだね」

 

「しかもご丁寧にタグが案内してくれるらしいな。行ってみようぜ」

 

「良し。先ずはミミちゃんの紋章探しで決定だな」

 

「勝手に決めないでよ! もー! わたし紋章なんて欲しくないのにぃ~!!」

 

 紋章が近くにあるとわかって俄然行く気のみんなにミミちゃんが叫ぶ。そうは言ってもゲンナイさんはタグと紋章は惹かれ合うと言っていたから、嫌でも紋章は手に入ってしまうだろう。

 

 私は動き出したみんなから一歩下がった位置で歩く有音君に一旦歩調を合わせて質問する。

 

「ねぇ、ミミちゃんの紋章って」

 

「純真の紋章。バカデカいサボテンが花を咲かせてその中から出てくるんだけど」

 

 バカデカいサボテンね。――普通に近くにあるわね。目視一キロ程度かしら。そして影も見えてるから蜃気楼でもない。

 

 私たちは目的地がわかっているから良いけど、なんだかんだ子供たちはタグに導かれるしかないから。20分くらいはけて巨大なサボテンまで辿り着いた。

 

「大きなサボテンね~」

 

「アタシもこれくらい大きなサボテンになれたらなぁ」

 

 巨大サボテンに対して感想を言ったのはピヨモンとパルモンだった。確かにかなり大きい。あの豪華客船くらいは確実に大きいから地上8階建てはあるのかな?

 

 確かにサボテンが花を咲かせて、中から紋章の刻まれた石板が現れて、緑色に光ながら小さくなっていって、ミミちゃんのもとに降ってきた。たぶんタグに収まったんだろう。

 

「これで3つ目か。でも確かゴマモンとパルモンが超進化するのって、現実世界でだったっけ?」

 

「yes、正解。だから当分先かな」

 

 答え合わせに全問正解した子供を褒めるような口調で微笑む有音君。

 

 確かに細かいことは忘れてるけど、印象的な部分は私もちゃんと覚えてるもん。

 

「おーい、有音ー!」

 

「なんだー?」

 

 太一君が有音君の名前を呼んで手招きしている。なにかあったのかな? そう思いながら私は小走りで太一君のもとに向かう有音君のあとに着いて行った。

 

「有音は俺の紋章の意味を知ってただろ? ミミちゃんの紋章の意味とかわからないかなって」

 

「ああ。そういうことか」

 

 何故呼ばれたのかわかった有音君が、ミミちゃんが嫌そうに摘み上げる紋章を一目見るだけで口を開いた。

 

「それは純真の紋章だ」

 

「純真…?」

 

「つまり何事にも素直で純粋な心であれって意味かな? ミミちゃんらしいとは思うよ」

 

「わたしらしいって言われても…」

 

 確かに何事にも自分の思うことに素直なミミちゃんの為にあるべき紋章だ。いや確か紋章は子供たちの為に作られたはずだから、その紋章も子供たちの為に在るわけだよね。

 

「あ、ちなみに僕のも何かわかりますか?」

 

 そう言って有音君に自分の紋章を見せる丈君。なんだか有音君が鑑定士みたいなことになっている。

 

「丈君のは誠実の紋章だ」

 

「誠実か……僕には合わないんじゃないかなぁ」

 

「丈、『せいじつ』ってなんだ?」

 

 誠実という意味を言われて苦笑いする丈君に、ゴマモンが質問した。確かに誠実っていう言葉とか普段はあまり使わないから意味がわからない時もあるよね。

 

「真面目で真心のあることって意味かな?」

 

「私利私欲を交えずに真心をもって人や物事に対する意味って言葉だ。つまりは自分の損得抜きにして相手を思いやったり、物事を解決するって感じかな」

 

「ふーん。なんだ、普通に丈向きの紋章じゃんか」

 

「そ、そうかなぁ…」

 

 丈君の説明により細かく詳細な意味を付け足した言葉を有音君から聞いたゴマモンが納得したように頷いて、丈君にはピッタリだと口にするけど、当の本人は余りしっくり来ていない様子だ。

 

「それにしても、やっぱり物識りですね、有音さんは」

 

「デジモンに関係する事だからさ。紋章もデジモンに関係するアイテムに刻まれているんだ」

 

「そういえば。コカトリモンを倒した時に使った、デジメンタルも。あの時芹香さんは『勇気のデジメンタル』って言ってましたよね」

 

「yes、空ちゃん大正解。デジメンタルには次の紋章が刻まれてその力に対応している。『勇気』、『友情』、『愛情』、『純真』、『知識』、『誠実』、『光』、『希望』、『奇跡』、『運命』、『優しさ』。これらのデジメンタルを使うには、その紋章に見合った心と資質の持ち主でないと使えない。ていう感じで良いのか? ブイモン」

 

「ああ。概ねその通りだ」

 

 私がデジヴァイスを片手に見本になるカードを作る間に、実際にデジメンタルを使っているブイモンに言質を取る有音君。

 

「なら、俺が勇気の紋章の力を使えるようになったら、アグモンも勇気のデジメンタルで進化出来るのか?」

 

 という疑問を口にする太一君の言葉に有音君は間を置かずに首を横に振った。

 

「出来なくはないかもしれないけど、可能性はほぼゼロだ」

 

「どうして?」

 

 まぁ、確かに02だと太一君は勇気のデジメンタルを持ち上げられなかったし、デジメンタルが使えないんじゃ、アーマー進化も出来ないものね。

 

「デジメンタルで進化できるのは限られたデジモンだけだからだ。古代種というデジモンの末裔だけがデジメンタルを使えるからだ。ここに居るブイモンと、そしてタケルくんのパートナーのパタモンが種族として古代種の末裔だ」

 

「ぼ、ボク!?」

 

「へぇ、パタモンってスゴいデジモンなんだねぇ」

 

「ちぇ、つまんねーの」

 

 いきなり名前を呼ばれてビックリするパタモンと、そのパタモンに感心するタケルくん。なるほど、アーマー進化にはそういう理由があったんだ。それだとアルマジモンとホークモン、テイルモンもその古代種っていうデジモンの末裔ってことなのか。となると種族としてアグモンは古代種の末裔じゃないからアーマー進化は無理だってことになるわけね。

 

「でも可能性がゼロじゃないってどういうことでしょうか?」

 

 さすが知りたがりの光子郎君。気になる疑問にはとことん切り込むね。

 

「確かに古代種の末裔じゃないけど、遺伝的に繋がっていて、例えば太一やうちのアグモンが古代種のデータを種族としてじゃなく、遺伝子として持っていたら、勇気のデジメンタルでフレイドラモンに進化するっていう可能性がある」

 

「なるほど、そういうわけですか」

 

 ああ。なるほど、そういう意味なら確かにデジメンタルで進化できる可能性があるわけか。

 

「あー、だからどういう意味なんだ? もう少しわかるように説明してくれ」

 

「はぁ、呆れた。今の物凄くわかりやすいことだったでしょうに」

 

 でも太一君は頭にたくさん?を作って首をかしげている様子に、空ちゃんが溜め息を吐いた。

 

「まぁまぁ。……そうさな。おれはデジメンタルを使える。でも太一は使えない。ここは良い?」

 

「あ、ああ」

 

「んで、おれのお祖父ちゃんもデジメンタルを使える力があるとする。おれと太一は生まれも違う他人同士だけど、人間という括りは同じ。あとはおれのお祖父ちゃんと太一の両親の家系に血の繋がりがあったとしたら、太一にもデジメンタルを使えた可能性があったかも知れないっていうこと。OK?」

 

 うん。例えとしてはわかりやすい。古代種との種族としての繋がりはなくても、遺伝子が繋がっていればデジメンタルを使えたかも知れないっていう話しだけど。太一君には難しかったかな?

 

「な、なんとかわかった」

 

「ホントに~?」

 

 頭から煙が出ていそうな太一君に疑いの目を向ける空ちゃん。空ちゃんと太一君って結構仲良いよね。私たちみたいに。

 

「つまりあれだろ? 大昔にデジメンタルを使ってたデジモンと、アグモンが血が繋がっていたらデジメンタルで進化出来たっていう話だろ? ちゃんとわかってるってば」

 

「おお、エライエライ。先生は太一君に花丸をあげよう」

 

「なんか少しイラッて来たからそのキャラ止めろ」

 

「せっかく親切に話したのにひでぇ生徒だぜ」

 

 と、やれやれと息を吐くと、有音君は続きを話し始めた。

 

「というわけだからデジメンタルを使う進化はブイモンの他はパタモンしか出来ないのさ」

 

「なるほど。しかし、そこまで種類があると中には相性の合わない、又は使えないデジメンタルとかもありそうですね」

 

「良いとこ突くねぇ、光子郎君。確かにデジメンタルはすべての物が適合するわけじゃない。進化出来ても相性が合わないデジメンタルもあるけど、そこは資質と心が関わるから、同じブイモンでも個体は違えば心も違う。相性の合うデジメンタルも少しは変わるとは思う。あとはテイマー持ちのパートナーでもまた変わるかな? パートナーデジモンはテイマーによって進化の方向性も変わってくるからね。グレイモンとジオグレイモンみたいにね」

 

「なるほど。では――」

 

 ああ、なんかもう私たちはおいてけぼりっぽいからあとは有音君と光子郎君だけにしてあげよう。

 

「パタモンも有音さんのブイモンみたいに進化出来るのかな?」

 

「うーん。どうだろう?」

 

 アーマー進化が出来るかもしれないという言葉にタケルくんは釘付けらしい。純粋に有音君に近付きたいタケルくんだから、今は有音君だけの特別な進化に興味あるみたいね。

 

「パタモンが相性が良いのはコレ。希望のデジメンタルで進化するペガスモンっていうデジモンだよ」

 

 敵に塩を送るっていう発想が頭に出てくる自分に内心自己嫌悪しつつ、私はみんなに見えるように2枚のカード――ペガスモンと希望のデジメンタルを見せる。

 

「すごーい、お馬さんだ!」

 

「へぇ、こんなデジモンに進化するんだな」

 

「翼も生えてるってことは空も飛べるんだ。良いなぁ」

 

 カードを見せてはしゃぐタケルくんと、なるほどと頷くヤマト君。そしてペガスモンが空を飛べることを羨ましがるガブモン。キミも究極体になったら空を飛べるようになるんだよっと思いつつ、私はカードをタケルくんに手渡す。

 

「はいコレ。良かったらどうぞ」

 

「ホントに!? わーい! ありがとう芹香さん!」

 

「良かったなタケル。ありがとうございます、芹香さん」

 

「フフ、喜んでもらえて良かったわ」

 

 頭を下げるヤマト君にそう言いながら私は笑みを浮かべた。あんな純粋に喜んでもらえるなら、カードの1枚2枚どーってことないわ。それに必要ならまた作れば良いし。

 

 取り敢えず紋章は回収出来たから、次は紋章の情報を集めに街に向かうって話があったからそういう方向でみんな歩き始めたけど。

 

「ただ例外なのは奇跡のデジメンタルと運命のデジメンタル。この二つはどんなデジモンでも相性が100%なんだ。例えばうちのブイモンとやんちゃ坊主のブイモンが居たとして、デジメンタルの相性が違っても、この奇跡のデジメンタルを使うことが出来れば同じ強さのマグナモンに進化できる。まぁ、個体経験値の差で強くもなるし弱くもなる。あくまでも表面的なスペックだけ同じってだけ。アーマー進化はその名の通り、デジメンタルという武具を纏って進化する様なやり方だから、同じ武器でも使い手が違えば強さも変わる理屈が通用するわけさ」

 

「なるほど。アーマー進化とは奥深いものみたいですね」

 

 有音君の講義によって光子郎君の知識が満たされていく。アーマー進化の秘密も結構喋っているみたいだし、紋章の数も教えちゃったし、コレは結構後々響きそうな気がする。でも仕方がないよね。たぶんこの世界においてデジモンに関する広辞苑を自称出来そうな有音君が近くに居るんだもの。知りたがりの知識の紋章の持ち主になる光子郎君には1の質問で10を超える知識が返ってくるんだもの。

 

 それは将来デジタルワールドを研究する立場になる光子郎君を後押しすることになるんだろうなぁ。

 

 

 

 

to be continued…




 オリキャラ同士のベッドシーンなんて二次創作に需要なんてありゃせんでしょ? 芹香がリリスモンだったら多分本気だして書いてたかも。

当時小学生の私でもエンジェウーモンは色々刺激強かったなぁ……。フェアリモン辺りなんかもうアウトやんけあれ。

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