気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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話も進まないので話数も進まない感じで、次回はピッコロモンと出会えたらいいなぁって思います。

やっぱりデジモン相手にだと戦闘が単調になりやすいのは、相手が人型とかでも対人戦にはならないからかなぁって思います。


第33.75話 有音の苦悩

 

 コカトリモンとの戦いから一夜が明けた。とはいえ、昨日の夜に起こった芹香暴走事件の所為で眠るに寝つけなかった。また何か起こるのではないかと警戒して、みんなの居るベッドルームから離れたVIP用とかの豪華な寝室に芹香を運び込んで寝落ちするまでその眠る姿を見守っていたからだ。

 

 だから時間にして数時間程度だけ寝たおれは特に芹香に異常が無さそうなのを確認して、芹香を抱えてみんなの寝ているベッドルームまで運んだ。どんな部屋でも使いたい放題のため、皆各々個室に入って一夜を過ごしている。だから特に周りを気にする必要もなく、芹香を部屋に連れて、あらかじめ敷いていた布団に寝かせる。

 

 多少アグモンとギルモンの寝息が煩いかもしれないが、芹香も熟睡しているから平気だろう。

 

「朝帰りか」

 

「なんだ。起きてたのか」

 

 声が聞こえて、声を掛けるとむくりと起き上がるブイモン。寝起きが良いのもロイヤルナイツとしての賜物なんだろうかね。

 

「今起きた。ふむ、これは、昨夜はお楽しみでしたね。とでも言えば良いのか?」

 

「お前ホントにデジモンか?」

 

 ブイモンのマジなんだかボケなんだかわからない言葉にツッコミつつ、立ち上がる。

 

「なんだ。寝ないのか?」

 

「今から寝ても一日を潰しそうだから、動いている方が良い。来いよ、メシ食べるだろ?」

 

「ああ、頂こう」

 

 本当は少し眠いのだけれども、もう普段なら起きているような時間だ。それに頭はスッキリしているため、横になってもゴロゴロするだけになりそうだ。だったら普通に起きて、眠くなったら昼寝くらいすればいいやという考えのもと、おれはブイモンを連れてキッチンに向かうために部屋を出た。

 

「あれ? タケルくん」

 

「おは、よう……有音…さん……」

 

 まだまだ非常に眠そうなタケルくんがパタモンを抱っこして多少ふらふらしながら歩いてきた。服装は寝巻着ではなく、ヌメモンの着ていた水兵服だ。一応ここは砂漠だし、おれのコートは暑すぎるから枕元にメモと一緒に置いておいたのだが。

 

「タケルくん、コートは暑いから脱いだ方が」

 

 なのにマントを羽織るみたいに肩にコートを掛けて第2ボタンだけ止めて落ちないようにしている。

 

 おれも中学二年の時に学ランとかで同じことやってたなぁって思いつつタケルくんにコートを脱ぐ様に言うのだけど。

 

「ううん。大丈夫…!」

 

 元気で明るい笑顔を向けられると無理に言えないんだよなぁ。ヤマトに怒られなきゃ良いけどなぁ……おれが。

 

「ていうか、眠いならまだ寝てても大丈夫だよ?」

 

 デジヴァイスで時間を確認すれば、まだ朝の5時半を少し過ぎた辺りだ。小学生のタケルくんには早すぎる朝起きだ。

 

「ううん……有音さん、これから朝の鍛練でしょ? ……ぼくも一緒にやりたい……」

 

 そうは言ってもタケルくんは眠そうな顔をしている。昨日今日で身体は全快しても炎天下に晒されて減った体力は回復しきっていないんだろう。

 

「取り敢えずこれからおれたちは朝メシだ。一緒に食べる?」

 

「うん……」

 

 そう返事をするタケルくんからパタモンを預かって、ブイモンに任せると、おれはタケルくんを背負ってキッチンに向かった。

 

 キッチンに行って冷蔵庫から適当に食材を引っ張り出す。食パンをフライパンで焼きながら目玉焼きと、ホウレン草とベーコンのソテーを作る。あとはホットミルクか。他には冷蔵庫にあったハンバーグのネタを焼いて、ソースとケチャップで適当にタレを作る。

 

 朝から目玉焼きハンバーグとソテーに食パンか。ちと豪華にし過ぎたかもしれないけど、生物は積極的に使わんと勿体ないからなぁ。

 

 料理を作り終わって、キッチンから見えるカウンター席に料理を運ぶ。

 

「うわぁ! 美味しそう!」

 

 すっかり起きたパタモンが若干ハシャギながら目の前の料理を見つめている。タケルくんはまだ眠そうに船を漕ぎ始めたので、仕方がないなぁと内心思いつつ、軽い身体を持ち上げて先におれが座って、その膝の上に乗せる。特になにというわけもなく、若干身体を預けてくる様子すらある。それを見ながら自然と笑みを零しつつ。

 

「平和だなぁ」

 

 そう染々思った。

 

「何時までも続くわけでもないがな」

 

「わーってるよ、んなこたぁ」

 

 というやり取りもしつつ、タケルくんがちゃんと起きて食事が終わった頃には朝日も顔を出していた。

 

「よーっし、軽く運動するぞー!」

 

「「はーい!」」

 

 おれの宣言に元気よくタケルくんとパタモンが返事を返してくれる。うん、ヤマト君や。このかぁいい弟くんを私に譲ってはくれないかね?

 

 先ずは軽く身体を解す為に柔軟体操。寝ている間に固くなった筋肉を適度に解したら、腕立て伏せとスクワットを10回の2セット。筋力を付けるのが目的じゃないから軽くで十分だ。それでも最近直立しながら腕立て伏せが出来るようになったのは少し嬉しい。昔はどう頑張っても出来なかったけれど、今は身体の重心が意識すれば何となくだがわかる様になってきたし、腕も自重を支えられるくらいには力を付けてきている。

 

 タケルくんも真似しようとはするけど、まだ小学2年生の7歳児。腕立てだってプルプルと震えながら3回くらいがやっとだ。特に鍛えてるわけじゃないからそれは仕方がないのに、タケルくんはスゴく泣きそうな顔をする。

 

 うーん。タケルくんも男の子だから悔しいのはわかるけどね。まだ小学校低学年で身体が出来上がってないタケルくんの身体を無理に鍛えても怪我する元だ。

 

 タケルくんの真似をするパタモンが隣で4回腕立て伏せやってへばっているのも効いているんだろうな。なんだかんだ同い年の兄弟みたいな関係してるしな。タケルくんとパタモンって。

 

「始めるが。良いのか?」

 

「ああ。遠慮なく頼む」

 

 ブイモンからフレイドラモンに進化したパートナーに向けて、おれは言葉を返しつつ構える。

 

 おれが構えるのに合わせてフレイドラモンも構える。

 

 昨日の動きを見て、ブイモンが格闘戦特化なのは嫌でもわかることだ。ブイモンの時よりもさらに格闘戦能力が上がっているフレイドラモンと稽古すればさらにおれは強くなれると確信した。

 

「――――ッ」

 

「フッ――」

 

 フレイドラモンが甲板の木床を蹴り、一瞬姿が見えなくなる。だが同時にバックステップで後ろに下がれば相対速度が近付き、フレイドラモンの姿も認知出来る。

 

 突き出された右の拳に手刀を作った左手を叩き付けて逸らす。だがその防ぎ手を読んでいたフレイドラモンの拳は抵抗することなく逸らされた。その腕が再び引き絞られながら、フリーだった左の拳が突き付けられる。

 

 その左の拳に、手甲を着けた右腕をぶつける。鋼鉄の爪と装甲が火花を散らしてぶつかり弾ける。

 

 左の拳と入れ替わる様に再び襲い来る右の拳を首を反らして躱す。頬に浅く擦り傷が出来るが意に介さずにフレイドラモンの懐に潜り込み、左の拳をガラ空きの腹に打ち込む。

 

 だがフレイドラモンはいち早く反応し、身体を向かって左に反らして躱すと、目の前にはフレイドラモンの膝の鎧の黄色で一色になる。

 

 わざと重心を崩して床に倒れることでフレイドラモンの蹴りを避け、足が通過したのを確認しながら床を受け身の要領で叩いて身体を起こす。そのまま後ろ回し蹴りを放つと、フレイドラモンの肘鉄と蹴りを放つ左足が激突する。

 

「ぐっ…!」

 

 だがそこは体格差から来る力負けをしておれだけが吹き飛ばされた。

 

 だがそれでも上手く受け身を取ってフレイドラモンに向き直りつつ勢いを殺さずに腰を落として大きく広げた両足と左手を床に添えた三点でバランスを取りながら後ろに滑って間合いを開ける。

 

「ハッ――」

 

 足首と手首に力を入れてフレイドラモンに向かって跳び出す。さらに踏み出すために右足で木床を強く蹴って加速する。

 

 床の上を滑空する様に近付き、渾身の右ストレートを放つ。

 

 だがそれをフレイドラモンは掴み、そしておれが突っ込んでいく勢いも乗せて巴投げを放たれた。

 

「ぐあっ」

 

 船の壁に背中から叩きつけられ、肺の中の酸素が飛び出していく。

 

「ゲホッ、ゲホッ、エホッ」

 

「す、すまない。やり過ぎた」

 

 すまなそうに頬を掻きながら近づいてくるフレイドラモンに首を振る。

 

「いや。本気でやってくれって言ったのはこっちの方だ。さすがロイヤルナイツ」

 

 フレイドラモンの差し出すてに捕まって立ち上がる。背中がヒリヒリするが問題ないな。

 

「だ、大丈夫なの!? 有音さん」

 

「ああ。心配ないよ。おれは結構頑丈だから」

 

 心配して駆け寄ってくるタケルくんに問題ないと言いつつ。内心では顔を顰めたい程の痛みを放つ頭痛を噛み殺す。

 

 別に打ち所が悪いだとかそういうのじゃない。ただ単に、慣れない高速思考による反動だ。

 

 考えてみてくれ。半月前くらいまで普通の生活をしていた人間が、ロイヤルナイツの経験があってさらに格闘戦特化のデジモンと殴り合えるなんて普通じゃないだろう?

 

 第1手でフレイドラモンの拳を防いだ時から、普段の3倍近い速さで思考していたからフレイドラモンの動きにも対応が追い付いていたのだ。でも投げられる一瞬前にそれも限界で思考速度を落とした瞬間に負けた。

 

 アルファモンの力を応用したもんだが。まだまだ究極体の力を扱うには、己の身は未熟だということだ。

 

 本当なら地道に強くなるしかないんだろうが、あいにく此方にそんな時間はない。

 

 対処方法ならあることにはあるが。出来るなら多分使わない方が良いだろう。ただでさえ身体は今の状態でギリギリなのに、身の丈に合わない力を使っても身を滅ぼすだけだろう。

 

 オメガモンの言っていた言葉の意味。普通に成長するだけでは限界を感じる。それを解決するのにさらなる進化をしなければならない。

 

 人間が進化なんて簡単に出来るわけがない。

 

 デジモンだって、本来は豊富な経験と、時には環境にも左右されるが、時間を掛けて進化するのだ。

 

 デジヴァイスで進化するパートナーデジモンがある意味特別なのだから

 

 進化か――案外、芹香辺りに頼んでカードを切って貰えば進化できたりしてな。って、そりゃ希望的観測過ぎだ。

 

 芹香……かぁ。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや。なんでもない。もうワンセット頼む」

 

「ああ。良いだろう」

 

 フレイドラモンになんでもないと答えつつ、おれはまたタケルくんに離れているように言い渡して先程のスタート位置に歩く。

 

 その間にふと昨日のことを思い出して、指先で唇に触れる。

 

 カードの力か、それとも芹香がまた闇を引き寄せたかはわからないが。あんな狂気的な告白なんぞされたことがないからどう反応したら良いのかわからない自分が居る。

 

 狂気的でも、それが本心だというのは目を見ればわかった。確かに狂っていても、あの時の芹香は確実に自身の意識を持って、自身の意思で言葉を紡いでいた。

 

 別にそれを気持ちが悪いだとかとは思わない。狂気に満ちていてもあれは純粋なものだったから。

 

 本当にそうでありたいと願う想いの籠った言葉だったから。でなけりゃ、告白しながら泣かないだろ。

 

 涙を流してまで告白されたら、朴念仁でない限りその本気さは伝わるだろう。

 

 それに今はフリーでも中学や高校で女の子とは付き合った経験はあるから、芹香の言葉が本気なのもわかる。

 

 ただ、あそこまで純粋な気持ちを向けられたことがないから戸惑いもあって尚且つ躊躇もする。

 

 ただでさえ依存度が天元突破しているのに、これで安易に応えてしまえば、あいつはおれしか見れなくなる様な気がしてならない。

 

 デジモン相手に生身で挑む命知らずのバカタレだぜ? おれは。

 

 死ぬ気は更々ないけども、いつ死なないとも限らないのに、そんな純粋なあいつの告白に応えて完全依存されてみろ。

 

 たぶんあいつ、おれが死んだら自分も死ぬぞ。

 

 それはダメだ。それだけはいけない。確かに芹香のことは嫌いじゃないし、頼りになる戦友だ。

 

 だから今のままでいないとならない気さえする。これ以上の境界線を越えたとき、互いにダメになる予感がする。

 

 問題はおれが何時まで芹香のことを去なして、且つ理性を保てるかだ。

 

 ――昨日は酒も入っていたからかなりギリギリだった。あいつの中から暗黒の力を感じなかったら喰われていたし、喰っていたかもしれない。

 

 いやおれだって普通に性欲ありますから。仙人とか賢者じゃないんだから。ホント、何時まで保たせられるかなぁ。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「はぁ……」

 

 まだギルモンもアグモンも寝息を立てている部屋で、私は溜息を吐く。

 

「私のヘタレ……有音君のバカ…」

 

 なにもかも覚悟完了して突撃したのに、有音君は応えてくれなかった。そしてカードの力に頼った私自身を深く軽蔑した。

 

 いつの間にか手にしていたリリスモンのカード。いつから手の内にあったかわからない。でもドレスに着替えて部屋を出るときにカードをスラッシュしたのは覚えている。

 

 そこからはまるで夢を見ているかのように思考がふわふわしていた。なにも怖くない。今ならなんでも出来そうな自分が居た。身体が軽くて、あんなに心が気持ち良く言葉を紡げたのは初めてだった。

 

 狂っていて支離滅裂でも、すべて常日頃から私が心の何処かで想っては募らせていたものをすべて吐き出していく気分だった。

 

 だから素面になっている今、どうしてあんなことをしたのか少し悔いてもいる。やっぱり私じゃだめなのかな。

 

「ふぅ。良い汗かいたなぁ」

 

「飛ばし過ぎだ。それでは身体が保たんぞ」

 

「でも今の限界もわかってきた。その範囲内だったら、無茶は出来る」

 

「無茶はするが無理はしないタイプか。厄介なヤツだな」

 

「お褒めに預り光栄だね」

 

「褒めてなどいない」

 

 有音君とブイモンの声が部屋の中に入ってきた。慌てて目を閉じて寝ているフリをする。何でそんな事をしたのかわからないけども、今の私じゃ有音君と向き合えない。

 

「おれは一旦寝るけど、ブイモンはどうする?」

 

「私は特になにもないからな。そうさな。この船を探検でもしてこよう」

 

「意外と子供っぽいところもあるのな」

 

「言っていろ」

 

 そう会話を終えたらしいブイモンが部屋を出ていく音は聞こえてきたけど。何故か足音が私の方に向かって来る。って、ええ!?!? 

 

「まぁ、まだ寝てるみたいだし、構わないかな?」

 

 そう言いながら私の布団に入ってくる有音君。一応私に背中を向ける様に入ってきたけど。あれ? どうして有音君が私の布団に入ってくるの?

 

 気になってチラリと目を開けると、もうひとつの布団にはアグモンとギルモンがメチャクチャな寝相で寝ている。確かにあの中には私も入れないなぁ……。

 

「……何時になるかわからないし。どう応えたら良いかまだ良くわからないけど」

 

 そう独白するというよりも私に聞かせる様に言葉を紡ぐ有音君。もしかして起きてるのバレてますか?

 

「お前のことを嫌っていないことは確かだよ。芹香」

 

 そう言いながら背中を私に押し付けてくる有音君。

 

 ……私はその言葉を聞いて、有音君の足に自分の足を絡めて、腕を回して抱き着く様に身体を密着させた。

 

「……重い…」

 

 そう言う有音君だけど、私の足や腕から逃れずにそのまま動かない。

 

 シャンプーの香りに混じって感じる有音君のお日様の様な香りを肺一杯に取り込みながら私は思った。

 

 そんな殺し文句みたいな台詞。アナタの事がもっと好きになっちゃうよ。有音君……。

 

 

 

 

to be continued…




取り敢えずなんだかんだで有音は芹香のことは好きでもまだ友愛とか親愛とか、背中を預ける領域。それでも結構芹香に対しては素で接しています。

芹香は狂ってるけど純愛みたいな感じかなぁ。だから病む愛であってヤンデレとは少し違うかもしれないけどそうでもなかったりする微妙でわかりにくい。

たまにはデジモン紹介なしでも良いかな?(ネタがないだけ。

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