ちょいと体調拗らせてるので、投稿が遅れるかも。
「アニキ、まだ起きないの?」
「うん。疲れてるだろうから寝かせてあげよう」
丈君のタグが反応して、私たちは移動する事になった。いよいよエテモンのグレイモンとの対決と、スカルグレイモンへの暗黒進化が待っている。
移動する時に起こしてと言った有音君だけど、起きる様子がない。はじまりの街の時みたいにぐっすり眠っているから、起こさないで背負っていく事にした。
タグの反応を辿っていくと、中にサッカー場のあるコロシアムに辿り着いた。
私は有音君のお世話もあるから、コートの中に入らないで観客席に有音君を寝かせて膝枕をしていた。
「…ハァ……ハァ…ハァ……」
口から漏れ出す熱い吐息。少しずつコップに注いだお茶を飲ませていく。口で息をしているからすぐ咽喉が乾燥しちゃうもの。
コートの中にボールがあるのを空ちゃんが見つけて、サッカーをしないかと提案している。それに乗る気のヤマト君がチーム分けを子供たちとデジモンたちでやらないかと提案している。
少し休憩したとはいえ、みんな元気だなぁ…。
私だってぴちぴちの18歳女子だけど、サッカーをする元気まではない。あれね、若さってスゴいよね。
「お前ら、こんな時によくサッカーなんてしてられるな! 丈が紋章を見つけたら、すぐ出発するんだから!」
でも太一君はそれをよしとせず、転がってきたボールを遠くに蹴飛ばして、みんなを叱り飛ばしてしまう。
やる気があるのは良いけど、それが空回りして苛立って、当たり散らしちゃうのはダメね。
小学5年生にしては頑張っているけど、気分転換しないとみんな参っちゃうわ。
そう考えると、有音君は見掛けは太一君たちとあまり変わらなくても、根本的に大人なのがわかる。
やる気も十分。重圧にも負けないで立ち向かう姿。リーダー向きのキャラをしている。でも溜め込みすぎて無理をしちゃうから、それをフォローする存在が必要になる。
「ゴメンね。私がその役をしないとならないのに……」
私も、有音君に甘えてしまっている。
ギルモンが一緒に居る。だからなにも怖くないないのに、心細さが抜け切れない。私たちだけで、ファイル島で黒い歯車に操られていたグレイモンを倒せていたら、またなにか変わっていたのかもしれない。
でも、私たちは出逢ってしまった。
それが運命だというなら、私はその運命に感謝したい。
それはいけないことかもしれない。でも、私の全てを委ねられる相手が出来た。それはとても幸せなことだと思う。だから私は有音君を守りたい。一緒に居たい。
『アーッハッハッハッハッ! あちきってグレート?』
大音量の音楽と共に、コロシアムのオーロラビジョンに映し出されたのは、マイクを持ったエテモンだった。
「いやーっ、出たー!!」
ミミちゃんが叫びながら丈君が居るゴールの方に走っていく。それにみんなも続いて、ゴールの前に集まってしまう。
あれ? 確かあれって罠だった気が…?
そう思った瞬間に、ゴールネットが倒れてみんなを捕らえてしまった。唯一私たち一行と、食べ過ぎで倒れてしまった太一君のアグモンだけは無事だったけど。
『つーかまえた、捕まえた!』
「こんなんで捕まえたつもりかいな。あでででででで!!」
『あら、無理しない方が良いわよ? そのゴールのネットには高圧電流が流れてるんだから』
ただのネットだと思って突き破ろうとしたテントモンが感電した。やっぱり有音君が起きてないと細かいところまでフォローが回らない。確かこの次はエテモンのグレイモンが出てきたはず。
『本当はあちきが直接あなたたちを始末したかったけど、あいにく今遠くに居るの。ほら、アイドルって忙しい仕事じゃない?』
いやそんなん知らんがな。あと確か私たちが何処に居るかわからないからあちこち宛もなく探し回っていた様なイメージが。
『だーから、今回はスペシャルなゲストを用意したの。誰だかわかる?』
「知るかそんなこと!」
画面越しでもこれから起きることが楽しみで仕方がないという様子のエテモンに、太一君が苛立った声で返した。
『んもう、そんな怒っちゃやーよ。カルシウム足りてないんじゃないの?』
「んだと!?」
「よせよ太一。相手の挑発に乗ってどうする」
カリカリしている太一君をおちょくって、余計にカリカリする太一君をヤマト君が窘める。
『さーて、ゲストもお待ちかねの様子だし、早速登場してもらいましょ。イエ~イ♪イエ~イ♪イエーーイ♪』
エテモンの上機嫌な声と共に、コートを囲む石積の壁を壊してれたのは、黒い首輪の様なものをしたグレイモンだった。
「ぐ、グレイモン!?」
一番驚いているのは太一君だった。今まで苦難を乗り越えてきたパートナーと同じデジモンが敵として出てきたから驚きも無理はないかも。
『驚いてくれたようね。ううん、なんて憎いあちきの演出。さぁ、イッツ・ショータイム!』
「ギュアアアアア!!」
相手は既にヤル気満々なのを見せるように、エテモンのグレイモンは近くにあったサッカーゴールを踏み潰して咆哮を上げた。
「アグモン、進化だ!」
でも直ぐに気を持ち直した太一君は、ゴールの外に居る自分のアグモンに叫んだ。
「アグモン進化――グレイモン!!」
太一君のアグモンがグレイモンに進化する。
サッカーコートの中に、2体のグレイモンが睨み合う。
「グオオオオオ!!」
「ウオオオオオ!!」
エテモンのグレイモンが真っ直ぐに太一君のグレイモンへ向かっていく、それを正面から受けて立つ太一君のグレイモン。
2体のグレイモンが組みついて力比べになる。力は互角らしく、太一君のグレイモンが頭突きをするけど、硬い頭の殻はカキンッと甲高い音を立てて、結局2体のグレイモンはどちらも怯んでしまう。
そこにいち早く体勢を立て直したエテモンのグレイモンが、尻尾で太一君のグレイモンの脇腹を強かに打ち付けた。
怯んだ隙を突いて、エテモンのグレイモンが追撃に体当たりで太一君のグレイモンを吹き飛ばした。
吹き飛ばされた太一君のグレイモンは高圧電流が流れるゴールネットに接触して倒れ込んだ。やっぱり見るからに太一君のグレイモンの動きが鈍い。あれじゃ嬲り殺しになっちゃう。
「セリカ!」
そんな様子を見ている私に、ギルモンが声を掛けてきた。
「ギルモン、たたかう! アルトならたたかう!」
そうね。有音君だったら一番に飛び出して戦っているわよね。
「わかったわ。行きましょ、ギルモン!」
「うん!」
私はブレザーを脱いで畳むと、枕代わりに有音君の頭の下に敷く。
「二人とも、有音君をお願い」
「言われずともアルトは我々が守る。早く行け」
「頑張って、セリカ! ギルモン!」
私はブイモンとアグモンの声を背に、私はギルモンを連れてコロシアムの観客席を駆け降りる。
「そこまでよ!」
「ギルモンのともだち、これいじょうきずつけさせない!」
コートに降りた私は声を張り上げ、ギルモンも私に続いて声をエテモンのグレイモンに向けて張り上げた。
『あ~ら、途中乱入なんて無粋ね。ま、そっちのグレイモンちゃんは歯応えがないから、あなたたちは歯応えあるかしら?』
「私たちを甘く見ないでちょうだい!」
私のデジヴァイスから光が溢れ、デジタルコードがギルモンの身体を包み込んでいく。
EVOLUTION_
「ギルモン進化――グラウモン!!」
カードを切らずに進化したギルモン。これもデュークモンがくれた力のお陰なの? でも今はそんなこと気にしてる場合じゃない。
「いっけええええっ、グラウモーーン!!」
「グゥゥゥルゥアアアア!!」
雄叫びを上げながらエテモンのグレイモンに駆けていくグラウモン。それを向こうは力で勝負するみたいね。だったら――!
「カードスラッシュ――高速プラグインB!!」
「《プラズマブレイド》!!」
グレイモンよりも身体がスリムなグラウモンなら、パワーで勝負するよりもスピードで掻き回した方が戦い易いはず。
「グオオオオオ!!」
でもエテモンのグレイモンはその頭の角でグラウモンの腕の刃を受け止めてしまう。
『あら、見た目は強そうだけど、そこまでパワーはないようね。グレイモン、その赤トカゲもやっておしまい!』
「人のパートナーをバカにしないで!!」
「ギュアアアアア!!」
「ぅっ、ぐぅ、うわあああああ!!」
エテモンのグレイモンが鍔迫り合いのまま、グラウモンを押し出しで突き飛ばしてしまう。
「きゃああっ、だ、大丈夫!? グラウモン!」
突き飛ばされたグラウモンは私の傍まで吹き飛ばされてきた。そんなグラウモンに私は声を掛ける。
「う、ぎゅるっ、あのグレイモン、結構強い…!」
『当たり前でしょ? あちきがサーバ大陸で見つけてきたお気に入りよ? あんたたちみたいな貧弱インスタントとは鍛えが違うのよ!』
そういえば、サーバ大陸のデジモンは、同じデジモンでもファイル島のデジモンより強かったっけ。
「だったら、さらに進化するだけよ!! グラウモン!」
「うん! グラウモン、アルトの分もセリカと一緒に戦う!」
立ち上がるグラウモンと一緒に、私はエテモンのグレイモンの前に立つ。
「そうよ、私は有音君の分まで頑張らなくちゃならないんだから!」
『なーにわけのわからないことをほざいてるのよ。先ずはあんたから始末してあげるわ! メガフレイムで片付けちゃいなさい!』
「グルルル……ッ」
エテモンのグレイモンの口から、炎が漏れ出す。
「セリカ!」
「大丈夫」
恐いけど、でも有音君はこんな恐怖といつも戦ってたんだよね?
「カードスラッシュ!!」
私は腰のカードケースから一枚のカードを取り出して、デジヴァイスにスラッシュする。そのカードは面も裏も青いカード。
「――マトリックス・エヴォリューション!!」
MATRIX
EVOLUTION_
「グラウモン進化――メガログラウモン!!」
ブールーカードの力で、グラウモンが完全体のメガログラウモンに進化した。
「グラウモンが進化した……完全体…?」
メガログラウモンの姿に呆気になる太一君。パートナーを完全体に進化させたいと強く想う太一君の前で、あっさりとメガログラウモンに進化させてしまったことはちょっと悪いと思うけど、私は、有音君の分まで戦わないとならないの。だから、そんな小さなことを気にしていられない。
「《メガフレイム》!!」
「う、ぐっ」
「くっ…! メガログラウモン!」
エテモンのグレイモンがメガフレイムを放ち、メガログラウモンが身体を挺して私を守ってくれる。その爆風を耐えながら、私は親友に声を掛ける。
「ボクは大丈夫。セリカは?」
「私も平気。行くわよ、メガログラウモン!」
「わかった!」
成熟期同士ならまだしも、完全体のメガログラウモンは、グラウモンよりも力強い体格になって一回り巨大化している。さらに上半身はメタルボディに身を包まれていて、確かあれもクロンデジゾイド製だったはず。なら、もうメガログラウモンが負けるわけは何処にもない!
『ムキーーッ!! こんな場面で進化するなんてエンターテイメントをわかっちゃいないわね! だったらあちきも本気出しちゃうんだから!』(パチンッ
エテモンの小気味よい指鳴らしで、エテモンのグレイモンが出てきた後ろから更なるデジモンがやって来る。
「グガガガガガガッ」
「ッ!? あ、あれって…」
「うそやろ!? あれスカルグレイモンやないか!」
テントモンの言葉を耳に認識しつつも、その現れたデジモンの姿に呆気に囚われるのは今度は私の方だった。まさかスカルグレイモンまで飼い馴らすなんて、どうかしてる。
「くっ、うわあああああああ!!!!」
「ウゥェアアアアアアアア!!!!」
私は我を取り戻して、気を引き締める為に雄叫びを上げる。それに合わせてメガログラウモンも雄叫びを上げる。
「はあああああああ!!!!」
「うわあああああああ!!!!」
背中のスラスターを全力で噴射して、メガログラウモンはエテモンのスカルグレイモンに向かっていく。
「ギュアアアアア!!!!」
「ウェアアアアアアア!!!!」
メガログラウモンとエテモンのスカルグレイモンが取っ組み合って力比べをする。メガログラウモンの方が体格は良いのに、力比べで互角になるなんて!
『アーッハッハッハッハッ! 所詮あんたたちなんてその程度のなのよ。さぁ、グレイモンちゃん、そこの生意気な小娘から始末してあげちゃいなさい』
「グオオオオオ!!」
メガログラウモンがエテモンのスカルグレイモンに向かった事で、フリーになってしまったエテモンのグレイモンが私に向かってくる。
「芹香さん、逃げてください!」
「ダメっ!!」
光子郎君の言葉に、私は自分に言い聞かせる様に叫ぶ。私が弱腰になったら、それがメガログラウモンにも伝わってしまう。だから、私は逃げちゃ行けないんだ!
「セリカッ!!」
エテモンのスカルグレイモンを抑えるメガログラウモンの叫び声が聞こえる。私の目の前にまで、エテモンのグレイモンが迫っている。
「ぅっ、くぅぅ…!」
私は、逃げては行けない状況と、逃げ出したい気持ちで板挟みになりながらも、その場から動かない。動けない。一歩でも退けない。私が退いたら、メガログラウモンが危なくなる。
……そっか、だから有音君もギルモンも、私がいくら言っても退いてくれないんだ。やっぱりわたしって、バカだなぁ。
「メガフレイム――」
「うおおおおお!!」
エテモンのグレイモンがメガフレイムを放とうとしたところに、横から太一君のグレイモンが体当たりでエテモンのグレイモンを吹き飛ばした。
「グレイモン!?」
「良し、良いぞグレイモン!」
私の声と、太一君の声が重なる。助けてくれたの?
「グオオオオオ!!」
「ぐぅっ!!」
でも、直ぐに立ち上がってきたエテモンのグレイモンは、太一君のグレイモンに体当たりを遣り返して、その身体を突き飛ばしてしまう。そのままエテモンのグレイモンは、太一君のグレイモンの頭を足で何度も踏みつける。
やっぱり今の太一君のグレイモンに、エテモンのグレイモンの相手は荷が重すぎる。
なら、今の内にエテモンのスカルグレイモンを倒して、それから太一君のグレイモンを助けよう。それまで頑張って。
「メガログラウモーーン!!」
「セリカ――ッ」
デジヴァイスを通して、メガログラウモンの心が伝わってくる。私の無事を心配する心と、私の危機を救えなかった悔しさ。でも私は大丈夫。それよりも、わかってるよね? メガログラウモン。
「うん。こいつを倒して、グレイモンを助けるんだ!」
「そうよ。だからそんなガリガリホネ標本なんて速攻でブッ倒すのよ!!」
デジヴァイスで、私たちの心が強く繋がっていく。
「はああああああ!! ダブルエッジ!!」
「うわあああああ!!!!」
私が叫びながら腕をクロスして、外に向かって振り払うと、メガログラウモンも雄叫びを上げながら両腕の斧のように大きくなったメタリックの刃でエテモンのスカルグレイモンに斬り付ける。
「進化するんだグレイモン! 有音や芹香さんに出来るなら、俺たちだって完全体に進化出来るはずだ。進化出来る自分の力を信じるんだ!」
自分のグレイモンに向かって叫ぶ太一君。でも勇気の紋章は全く輝いていない。早くエテモンのスカルグレイモンを倒して、太一君のグレイモンを助けないと。
「《グラウンド・ゼロ》!!」
「っ、マズい!」
エテモンのスカルグレイモンが、その背中に背負うミサイルをメガログラウモンに放った。メガログラウモンはまだ腕を振り抜いた姿から立ち直れていないのに。
「カードスラッシュ――攻撃プラグインA!!」
私のスラッシュしたカードの効果で、メガログラウモンの胸の二つの砲門にエネルギーが充填されいく。
「アトミックブラスター!!」
「ウゥゥルェアアアアアア!!!!」
メガログラウモンの胸から放たれたビームが、エテモンのスカルグレイモンのミサイルを撃ち落とした。
でも無理な体勢で放った一撃の反動と、攻撃同士がぶつかった衝撃でメガログラウモンはこちらにまで飛ばされてきた。
「うっ、ぐぅぅぅっ」
さらにデジヴァイスを介して、メガログラウモンが受けたダメージが痛みとして私にフィードバックされる。
「メガログラウモン…」
「ぅっ、ま、まだ、行けるっ」
立ち上がるメガログラウモン。私も痛みを堪えて立ち上がる。
デジヴァイスを通して、私とメガログラウモンがより強く繋がっていく。
「あんなヤツに負けない」
「ボクは、みんなを守りたい」
デジヴァイスから鼓動が聞こえる。私たちの心が一つになるのに呼応するかの様に。
「ボクは、負けたくない!」
「私は、有音君の分も戦わなくちゃならないの!」
メガログラウモンが光に包まれて、ギルモンに退化する。でも、ギルモンの身体からはメガログラウモン以上の力を感じる。
「シュラララララララ!!」
身体に焦げ痕を作りながらも、エテモンのスカルグレイモンはまだまだ戦う様子だ。
「ギルモン、アルトのぶんまでがんばるって、セリカとやくそくした!」
「ギルモンは、私の分まで戦ってくれる。でも、それじゃダメ…!」
私とギルモンは互いに見つめ合うと、どちらからともなく手を繋いで、エテモンのスカルグレイモンに向き直る。
「ギルモンたち、まだまだつよくないけど――」
「私たち、まだまだ強くないけど――」
デジヴァイスが、眩しくて温かいオレンジ色の光を放ち、私たちの姿が包まれていく。
「私たちはふたりでなら――」
「ギルモン、セリカといっしょなら――」
更にデジヴァイスからの光が強くなって、一緒にギルモンの心を強く感じられるようになる。
「「もっともっと、強くなれるんだ――!!」」
私とギルモンの心のボルテージが最高潮を迎えて、一つに合わさっていく!
MATRIX
EVOLUTION_
「マトリックスッ、エヴォリューション――!!」
眩しく光を放ち、力強い鼓動を感じるデジヴァイスを胸に抱いて、ギルモンの存在が一つになることを受け入れる。
「ギルモン進化――!!」
私とギルモンの存在が一つになって、それは新たな力へと進化を果たし、聖なる騎士をここに呼び覚ます!
「デュークモン!!」
紅いマントを肩に靡かせ、白い鎧に身を包み、ギルモンの顔を模した額宛を着ける聖騎士デジモン――デュークモンへと私とギルモンは進化した。
「芹香さんが、デジモンになっちゃった……」
「完全体よりも更に上の進化……。芹香さん、いつのまにこの様な事が出来るように…」
タケルくんと光子郎君の呆気に囚われる声を背に、私たちはエテモンのスカルグレイモンに相対する。
「肉体が滅びてなお、闘争心によって戦い続ける生ける屍よ」
『あなたに怨みはないけど、私たちはあなたを倒して、仲間を助けないといけないの!』
「その骸を、我が聖槍によって浄化してくれる!」
『私とギルモンの前に立った不幸を呪いなさい、スカルグレイモン!』
私たちは右手に聖槍グラムと、左手に聖盾イージスを展開して、エテモンのスカルグレイモンに向かって駆け出す。
「《グラウンド・ゼロ》!!」
『「《ロイヤルセーバー》――!!」』
聖なる力を宿した槍で、エテモンのスカルグレイモンが放ったミサイルを両断すると、そのまま一気に槍を、エテモンのスカルグレイモンの胸に突き刺した。
「ギュアアアアアアアーーー!!!!」
痛みに悶えるエテモンのスカルグレイモンを蹴り飛ばして、槍を引き抜きながら盾を構える。
『これで終わりよ!!』
「おまえの呪われし身体、我が聖盾によって浄化する!!」
盾に聖なる力が充填され、優しくも清く力強い光が視界を照らすほどに高まっていく。
『「《ファイナルエリシオン》!!」』
「ギュアアアアアアア―――!!!!」
聖なる光の中に、エテモンのスカルグレイモンが消えていく。
光が晴れたそこには、もう何も残ってはいなかった。
『ふぅ…。なんとかなったわね。あとは太一君のグレイモンを』
「ッ、セリカ、あれを見ろ!」
『え? …あ、あれは……』
デュークモンが映す視線の先、そこには空が暗黒に染まり、そこからもたらされた光が太一君のグレイモンを包み込んで、スカルグレイモンへと暗黒進化してしまった光景だった。
くっ、間に合わなかった…。
「ギュアアアアアアアーーーー!!!!」
今倒したばかりと同じで、でも違う雄叫びが、私を嘲笑うかの様に胸に響いた。
to be continued…
スカルグレイモン
完全体 ウィルス種
全身骨の恐竜標本の様なデジモン。肉体は滅んでいても、闘争心だけで動き続けるアンデッド型デジモンだけあって、その強さとしぶとさは侮れない。必殺技は背中に背負った有機態系ミサイルを放つ『グラウンド・ゼロ』だ。
テントモンがその存在を知っていた事から、もしかしたらファイル島にも居たのかもしれない。