気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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ナイトと来ると黄金の鉄の塊で出来たナイトと、騎士ガンダムが最初に浮かび上がる私です。


第3話 仕いの騎士 ナイトモン

 

「ここは……」

 

 目が覚めたら知らない天井だった。

 

「知らない天井だ……」

 

 いやネタかましてる場合じゃない。

 

「アグモン! っ、いってえええ!!」

 

 おれの記憶だと、ジオグレイモンがクワガーモンにトドメを刺した所で途切れている。

 

 アグモンが心配になって飛び起きると、身体全身から稲妻が走った様な激痛が神経に殺到した。

 

「オキタ……」

 

「んあ?」

 

 痛みに悶えていると、アグモン以外の声が聞こえた。

 

「ナイトモン、ホウコク……」

 

 部屋を出ていく後ろ姿は、黒くて、西洋風の鎧の兵士みたいな姿のデジモンだった。それにしても、ナイトモンか。

 

「つくづく不思議だよなぁ……」

 

 このファイル島はデビモンによって支配されかけたが。アンドロモンやもんざえモンの様に完全体デジモンも存在している。それにあの黒いデジモンの言うナイトモンも確か完全体デジモンだったはず。

 

 ファイル島に居る完全体デジモンが徒党を組めば、いくら強いとはいえ、成熟期デジモンであるデビモン程度倒せそうな気がするが、それだと物語が成立しないから野暮なんだろうか?

 

「アニキぃーーっ!!」

 

「うわっ!! ちょ、いたっ、アグモン、痛いっ」

 

 そんなことを考えていると、アグモンが抱き着いて来て、身体の痛みで考え事どころではなくなってしまった。

 

「アニキ、よかったぁ。目を覚ましてくれたよぉ」

 

 涙目になりながら頭にたんこぶを作って離れるアグモン。痛みに我慢できなくなったおれのゲンコツによるものだ。

 

「目が覚めた様だな。私の名はナイトモン」

 

 アグモンの一方的な感動の再会が終わると、機会を見計らっていたデジモンから声をかけられた。

 

 全身を西洋風の騎士甲冑に身を包むデジモン。ナイトモンだ。その後ろからはさっき部屋を出た黒いデジモンも入ってきた。

 

「ああ。おれは有音。あなたがおれたちを助けてくれたのか?」

 

 ナイトと名に恥じぬ紳士的な振る舞いに、自然と敬称を口にしていた。

 

「私ではなく、礼ならばあのポーンチェスモンに言ってあげてくれ。あの子が君たちを見つけ、私に知らせたのだ」

 

「そうか。ありがとな」

 

「………………」

 

 ナイトモンに事情を説明され、礼を言うと黒いポーンチェスモンはナイトモンの後ろに隠れてしまった。

 

「すまない。この子は少し恥ずかしがり屋でね」

 

「別に気にしないさ。それよりナイトモン。あなたに聞きたいことがある」

 

 詫びれるナイトモンに気にするなと手を振り、おれはナイトモンにアグモンにした質問と同じことを話した。

 

 アグモンが意外にも引きこもり属性だった為、完全体のナイトモンならば、ファイル島のこともある程度知っていると思ったからだ。

 

「ふむ。ダークマスターズについては私は聞いたことはないが。デビモンの事に関しては心当たりがある」

 

 ナイトモンの話によれば、ここ最近、ムゲンマウンテンから放たれる黒い歯車にデジモンが取り憑かれて凶暴化しているということだ。レオモンに事態を収集するための協力を要請されたが、ナイトモンも己の勤めがあるため、やむ無く断ったのだという。

 

「ファイル島の危機であることは承知だが。私は騎士として、主の命を違えるわけにはいかなくてな」

 

「ちなみにその主はどうしたんだ?」

 

 ナイトモンが主と呼ぶデジモンだ。少なくとも完全体ではあるだろう。完全体のデジモンが増えてくれれば、まだ幼い子供たちをわざわざ危険に晒すこともない。最悪、おれとアグモンが矢面に立って戦うまでだが。

 

「我が主、ロードナイトモン様はファイル島を出ている。今は何処に居るかはわからないが」

 

 まさかの究極体デジモン、しかもロイヤルナイツに属するデジモンの名前が出てきた事に驚いた。同時にデビモンの悪運の良さに頭が下がる。もしここにロイヤルナイツがやって来ればそれこそデビモン程度は一捻りだろう。

 

「君の話を信じるならば、デビモン討伐に力を貸してあげたいのだが、私には主よりこの館の留守を御守りする命を受けている。故にこの場を動くことが出来ない。すまない」

 

 おれはファイル島の異変を聞くとデビモンを倒す為に力を借りられないかナイトモンに提案したのだが、そう言った返事を返されることも予測はしていた。

 

「いいさ。あなたにもあなたの事情があるんだからさ」

 

 共に戦う協力は得られなかったが。ならばと、この場から動かないで出来る協力を提案してみた。

 

「ナイトモン。ロイヤルナイツに仕えるあなたに頼みたい。おれを鍛えてほしい」

 

 ダメ元で頼んでみる。これから先を戦っていくのには、ぶっつけ本番というのは危険すぎる。クワガーモンの時はなんとかなったが、デジソウルの使い方も身に付けていかなければならないと思っている。

 

「ふむ。この場から動けぬ故のせめてもの助力。このナイトモンが引き受けた」

 

 おれの提案をナイトモンは快く受け入れてくれた。

 

 完全体デジモンであり、しかもロイヤルナイツのロードナイトモンに留守を任されているナイトモンはとてつもなく強いはずだ。

 

 デビモンが動き始めているなら、あまり期間は取れない為、3日間鍛えてもらうことになった。何故ならば、デビモンが動いているということは、選ばれし子供たちもデジタルワールドに来ている可能性も高い。

 

 子供ばかりの彼らを少しでも安心できる為にも、大人が同行した方が良いだろう。

 

「そういうことだ。お前はどうする? アグモン」

 

 おれの指針が決まったところで、アグモンにも声をかける。アグモンは別におれのパートナーデジモンというわけじゃない。一食の恩は充分返してもらっている。

 

 選ばれし子供たちと行動を共にするのだから、これからはデビモンだけでなく、海を渡った先にあるサーバ大陸ではエテモンやヴァンデモン、さらには究極体デジモンたちが頭を張るダークマスターズとも戦うことになるだろう。

 

 そんな険しい戦いに、本人の意思なしで連れていくほど、おれも鬼畜じゃない。

 

「オイラ、オイラもアニキと行くよ! アニキみたいに男を磨きたい!」

 

「クワガーモンなんて比じゃないデジモンともわんさか戦うんだぞ。それでも来るか?」

 

 おれはアグモンの目を真っ直ぐ見て問い掛ける。少し目線が揺らいだが、それでもアグモンは首を縦に頷いた。

 

「アニキと一緒なら、オイラ何でも出来る気がするんだ。だから連れてってよ、アニキ!」

 

 おにぎり三つで随分好かれてしまったみたいだけれど、アグモンの言葉は素直に嬉しかった。

 

「それじゃぁ、これからヨロシクな。アグモン」

 

「うん! よろしく、アニキ」

 

 グ~……

 

 アグモンと固い握手をしたところで雰囲気をブチ壊す腹の音が鳴った。

 

「すまんナイトモン。なにか食べるのある?」

 

 昨日の夜、バイトに行く前に食べてからなにも食べてない所為で、おれの空腹は限界だった。

 

「ハハハ! よし、今から用意しよう。腹が減っては戦は出来ぬからな」

 

「すまん…」

 

 俯きながらおれは謝罪する。めちゃめちゃ恥ずかしいぞこのシチュエーション。

 

 ともかく、その後は食事をして1日を体力の回復と身体の療養に専念することになった。

 

 クワガーモンの攻撃を受けて結構ボコボコにされたおれの身体だが、古から伝わる秘伝の薬をナイトモンが用意してくれた為、1日で全快とは言わずも、多少筋肉が引き攣る程度で打撲等の痛みは全くなかった。

 

 古のデジタルワールド、ナイトモンが仕えるロードナイトモン属するロイヤルナイツが全盛期の頃。

 

 絶えず強力で危険なデジモンと日夜戦っていた時代の秘薬だそうな。短い期間でも傷を癒してまた直ぐに戦える様にする為に特化した薬だとか。

 

 そんなスゴい薬を使ってしまって良いのかナイトモンに聞いてみたが、材料は現在のファイル島でも手に入るため心配ないと言うことだった。

 

 そんなナイトモンの好意に甘えつつ、おれはナイトモンに稽古をつけてもらう事になった。とは言え、喧嘩馴れもしていないごく一般人のおれが付け焼き刃で何をしても仕方がない為。先ずは相手の挙動を見切る目を身につける事から始まった。

 

 ナイトモンの振るう木剣が目の前スレスレを過ぎ、風圧が髪の毛を吹き上げる。

 

 少しずつ剣の挙動や速さに慣れると、スピードが上がったり、動きが急に変わったりとする。

 

 さすがは完全体デジモンか。クワガーモンみたいに単調で本能的ではなく、研鑽を積んだ末の技と言うべき動きに、目を着いていかせるのでやっとだった。

 

「うわっ!?」

 

 しかもただ避けるだけではたったの3日では成果は現れ難いとし、木剣を振るうナイトモンに触れるという課題も出されている。

 

「どうしたアルト、その程度の動きでは私の間合いには踏み込めやしないぞ!」

 

 こっちも木剣を持っているが、ナイトモンの巨木のそれに比べたら木の枝程度の大きさしかない。力と武器の強度を比べたら、ナイトモンの攻撃を正面から受けるのは不可能だ。普通ならな。

 

「うおおおおおーーー!!!!」

 

 だがおれは、デジソウルを木剣に纏わせることで、強度の問題を解決していた。

 

 デジソウルにどんな力があるかわからないが、デジモンを進化させるだけのパワーがあるなら、それを同じデジタル情報で構成されているデジタルワールドの物にも通用するんじゃないかと試してみた成果だった。

 

 試しに岩を殴ってみると、木剣ではなく岩が欠けるくらいには強度が上がっていた。

 

 雄叫びを上げながら、木剣を振るい、ナイトモンの振るう木剣の腹を叩きつけて軌道を逸らす。

 

 バキンッ

 

「くうっ!!」

 

 しかし、ナイトモンの木剣に触れた瞬間、力のベクトルが急に変わり、こちらの木剣を弾き返されてしまう。

 

 木剣を握る右腕から衝撃が電撃の様に奔る。デジソウルで強化をしていてこれだ。生身で受けていたらとんでもないだろう。

 

 衝撃を受けて座りの悪い肩を気にしつつも、木剣を構え直した所で、ナイトモンが剣を降ろした。

 

「今日はここまでとしよう。これ以上はきみの身体が壊れてしまう」

 

 肩を気にしているのを見抜けられたのか、ナイトモンから稽古の終わりを告げられた。正直右手が痺れてあまり力が入らない為、丁度良い終わりだった。

 

「ポーンチェスモン。彼を介抱してやってくれ」

 

 そうナイトモンが言うと、アグモンと一緒に稽古を見ていた黒のポーンチェスモンが救急箱を持っておれの方にやって来た。

 

「カイホウ、……シャガム」

 

「ああ。ごめんな」

 

 ポーンチェスモンとおれとじゃ、身長差があって、おれが座らないと治療しにくいだろう。

 

 あぐらをかいて座ると、手際よく擦り傷に薬を塗ってくれる。

 

「中々筋が良い。大成して行けば我が騎士団に欲しいくらいだ」

 

「世辞でも嬉しいよ。ありがとう、ナイトモン」

 

 ナイトモンはロードナイトモンに仕える騎士だが、ナイトモン自身も騎士団を持っている。ポーンチェスモンやコテモンで構成されている騎士団で、おれを治療するポーンチェスモンも、騎士団の一員であり、騎士団でも一二を争う腕の持ち主だとか。

 

「お、マッサージまでしてくれるのか。ありがとな」

 

「チャントスル、アトキケン……」

 

 この黒いポーンチェスモンはカタコトで言っている意味が今一読み取りにくいが、おれがナイトモンに弾かれた右腕をマッサージしてくれながら言うと、だいたい意味がわかる。放っておくとあとで後遺症が出るから、今のうちにちゃんとした治療をするという意味だろう。

 

 言葉だけだと足りなくても、身動きが主語と述語を兼ねているのだろう。中々かわいいデジモンである。

 

「ウルサイ、ヨケイ……」

 

「いでっ、ちょ、ごめんて。謝るから優しくしてくれ」

 

 からかったと思われたのか、手に力を入れるポーンチェスモンに謝りながら懇願する。意外にもかなり力強いですよこの子。

 

 あと晩ご飯のデジタケの炭火焼きはかなり旨かったのを追記する。

 

 

 

 

to be continued… 


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