気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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取り敢えず今回は特になにもないですが、我が家のアニキ(笑)の犠牲者がふたり出ます。こんなんねぇわって言われるかもしれませんが、私は後悔してない。


第19話 希望の覚悟 動き出す子供たち

 

 ギガドラモンを退けた私たちは遅めの朝食と言う名の昼食を食べていた。

 

「ほら、もう悪さするんじゃないぞ?」

 

「ぐるるるる…」

 

 頭に湿布を貼ったデビドラモンが、頭を下げて、有音君に撫でられながら、おにぎりで餌付けされていた。

 

 まさかの手懐けしちゃいましたよ有音君。

 

「わかった、わかったから。くすぐったいからやめなさいってば」

 

 デビドラモンに顔を舐められている有音君。さっきまで戦っていた相手なのに気心許しすぎじゃないかな? がぶーって食べられたりしない?

 

「あのデビドラモンは既に戦意喪失。有音を敵わない相手として認め、服従しているから噛まれはしないさ」

 

 おにぎりを食べながら、ブイモンがそう言った。それって叩きのめしたから尻尾振ってるってことだよね。

 

「まぁ、有音に服従しているだけだから、無闇には近寄らない方が良いぞ。噛まれるからな」

 

 なんというか、有音君ってホント規格外だよね。

 

 誰よりも早く完全体にパートナーを進化させちゃうし。敵だったデジモンは手懐けちゃうし。デジモンのことはなんでも知ってるし。

 

「それで、そろそろサーバ大陸に行くか行かないかの話だけど」

 

 昼食が一段落したところで、丈君が切り出した。

 

「俺は行く方に賛成だな。このままじっとしていても、うちに帰れる保証もないしな」

 

「でも、あのデビモン本人が自分よりも強いデジモンが居るって言ってたんだぞ? デビモンを倒すのにも苦労したオレたちで勝てるのか?」

 

 太一君が先に進む意見を出し、ヤマト君が慎重論を説く。この二人は良くケンカするけど、丁度良いレベルで互いに相性が良いんだよね。なんだかこういう友達は私には居ないから羨ましい。

 

「その為の紋章とタグ。それがあればテントモンたちがもう一段階進化できる。ゲンナイさんはそう言っていましたね」

 

「イッカクモンよりもう一段階上。有音さんがやった様に、完全体への進化ってやつか」

 

「紋章があれば、わたしたちももっと進化して空を守れるわ!」

 

「完全体かぁ。ぼくが完全体になったらどうなるんだろうなー。やっぱりライズグレイモンみたいになるのかな?」

 

「おれも気になるなぁ。でもどんな姿になってもヤマトはおれたちが守るよ!」

 

「ああ。いつもありがとな、ガブモン」

 

 有音君が完全体のライズグレイモンの強さを見せたからか、完全体に対する興味と期待はみんな大きい。 

 

「でも、恐いデジモンがいっぱい居るんでしょ?」

 

「そうかもしれないけど、ブイモンの言う通り、私たちがファイル島に居続けても、デビモンより強い暗黒の力を持ったそのデジモンがここに来るかもしれない。いずれは戦わないとならないかもしれないわ」

 

 やっぱりデビモンの言葉が響いているのか、子供たちの意見は纏まらずにいた。デジモンたちは基本的には子供たちの意見に着いていくだけだから除外するとして、ブイモンは何も言わずに子供たちを見ているだけだ。私は有音君に着いていくだけだし、有音君も多分子供たちに着いていくだろうから、子供たちの方針が決まらないとやっぱり先へは進まないだろう。

 

「行こうよ!」

 

 そんな纏まりのないみんなの中に声を掛けたのはタケルくんだった。

 

「ぼく、戦うのはいやだけど。でも思うんだ。戦わないと、守れないものがあるって!」

 

 タケルはみんなの心に語りかける様に声を張り上げる。そんなタケルくんの視線は、デビドラモンとじゃれている有音君を見て、その小さな手を握り締めながら、再び子供たちに向けられる。

 

「ぼくたちは選ばれし子供なんでしょ? どうして選ばれたのかはわからないけど、パタモンたちの住む世界が暗黒の力でめちゃめちゃになっちゃうかもしれないなら、恐いけど、戦うよ!」

 

 一番最年少のタケルくんがしっかりとした意志で言い切ったことに、子供たちは面食らった様に呆けていた。

 

 カッコいいけど、タケルくんが有音君の影響を受け始めてるのが、私は不安です。具体的には3年後の賢ちゃんを一方的にボコボコにしちゃわないか不安です。

 

「タケルの言う通りだな。確かに海の向こうには、デビモンより強い敵が待っているかもしれない。だけど、俺たちが選ばれてこの世界に来たのはきっと意味があるはずだ」

 

「デジモンたちの世界を救う。そんな大それたことをオレたちが出来るかどうかはわからないが」

 

「初めから敵わないかもしれないと考えるよりも、勝つ方法を考える事が建設的ですね。その為のタグと紋章もあると言いますし」

 

「私たちしか居ないのなら、私たちがデジモンたちの世界を守らなくちゃ!」

 

「……わたし、恐いけど。タケル君が頑張って勇気を出しているんだから、もうちょっとだけ頑張ってみる!」

 

「行こう、サーバ大陸へ。敵は強いかもしれないけど、僕たちだけじゃない、ゴマモンたちも一緒だ」

 

「太一たちはぼくたちが守ってみせる!」

 

「ヤマトの不安は、おれたちが振り払う!」

 

「空の願い、わたしたちが叶えてみせる!」

 

「わてらも強くなる可能性がまだまだあるさかい。最初から諦めたらあきまへんわ」

 

「仕方がない。丈はオイラが守ってやるよ」

 

「ミミが行くなら、わたしも何処へでも着いていくわ!」

 

「ボクも、タケルと一緒に戦うよ!」

 

 さすがは希望の紋章を手にする子。タケルくんの一言で、みんなの心に希望が生まれて、心が一つになった。

 

「それじゃあ行こうぜ! サーバ大陸へ!!」

 

「「「「「おおーっ!!」」」」」

 

 太一君の声がみんなの意志を纏め、みんなの声が一つに合わさり、サーバ大陸へ向かう事が決まった。

 

「フッ、手間の掛かる子供たちだ」

 

「ギルモン、ずっとセリカといっしょ!」

 

「うん。これからもよろしくね、ギルモン」

 

 そして私たちの行くべき道も決まった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「そうか。サーバ大陸へと渡るのだな」

 

「ああ。色々と世話になった。ありがとう、ナイトモン」

 

「ファイル島を平和にしてくれた勇敢な子供たちと出逢えて、私も光栄だ。また何かあれば、気兼ねなくこの館を訪ねてくれ」

 

「そうさせてもらうよ」

 

 ナイトモンとの面識が一番強いおれが代表して、ナイトモンに礼を言う。

 

「それと、クロのこともよろしく頼む」

 

「案ずるな。あの子は強い子だ。2、3日すれば、直ぐに動けるようになるだろう」

 

 ブイモンとの稽古で重い一撃を喰らったクロは、意識は戻ったが、とてもではないが直ぐに旅に出られる容態ではなかった。それ故、先に色々とやりたいことを片付けてしまってから改めて合流することになった。

 

 ホエーモンと出逢うかもしれないとはいえ、出逢わないかもしれない。保険を掛けるためにおれたちは動き出す事に決めた。さすがにホエーモンでも5日は掛かる海の旅をイカダで行くほどのバカはやりたくはない。

 

 その為に、ファクトリアルタウンのアンドロモンのもとを訪ねることになった。あそこならちゃんとした船の一隻くらい造れるだろうと。その為のプログラムを、今光子郎君に作って貰っている。

 

「それじゃあ、達者で」

 

「「「「「ありがとうございました!」」」」」

 

「君たちの旅路に、幸あらんことを」

 

 ナイトモンや館のポーンチェスモンやコテモンに別れを告げ、おれたちはロコモンの駅へ向かって歩きだした。

 

「ねぇ……、有音さん。そのデジモンいつまで着いてくるの?」

 

 ミミちゃんが少し恐がりながら、一番後ろを歩くおれの隣をのしのしと歩くデビドラモンを見ながら言う。

 

「こいつはもう悪さはしないと、おれの拳に誓ったからな。みんなのことも襲ったりしないさ。なぁ、デビドラモン?」

 

「ぐるるるる…」

 

 おれの言葉に応える様に頭を下げるデビドラモン。見かけはワルの竜だが、懐かれたら意外とかわいいぞこいつ。犬みたいで。何処まで着いてくるかは、こいつの気分次第だからわからんけど。

 

「でもデビモンの手下なんだろ? 信用出来るのか?」

 

 まぁ、太一の言いたいことはわかるけどさ。

 

「男はな。拳に誓ったら何処までも信じるものなのさ。だからおれはこいつを信じる」

 

 じゃれてくるデビドラモンの頭を撫でながら、おれは太一に言い返す。……なんかキザっぽくって恥ずかしいなコレ。やっぱりシラフじゃアニキみたいな台詞は吐けんなおれは。

 

「ひゃああああ、アニキ、カッケェ!」

 

 頭の上に乗せているコロモンの言葉に顔が熱くなっていく。恥ずかしいからやめちくれ。

 

 ロコモンの駅に着くと、少ししてロコモンがやって来る。

 

「またお会いしましたね、みなさん」

 

「また世話になるよ、ロコモン。ファクトリアルタウンまで乗せていって欲しい」

 

「了解しました。新しい客車を最後尾に連結しますので、どうぞそちらにお乗りください」

 

「サンキュ、恩に着るよ」

 

「いえいえ。あなた方のお陰で私はこの生き甲斐の仕事に戻れたのです。感謝してもしきれない恩をこの程度でしか返せませんが、困った時は何処へでもお乗せいたしましょう」

 

「大袈裟すぎだよ。ま、好意は有り難く貰っとくよ」

 

 はじまりの街からこのトロピカルジャングルに来た時のように、おれたち一行は一番後ろの客車を貸し切りにして乗り込む事になった。

 

「うわぁ!! 前よりも豪華ー!」

 

 この前はまだ普通の客車だったが、今日のはどこぞのVIPが乗りそうな豪華な客車になっていた。キッチンにバーに、トイレにシャワー完備。この中で普通に生活出来るぞ。

 

「い、良いのかしらね? こんなに豪華な客車に乗っちゃっても」

 

 ミミちゃんは嬉しそうに客車に乗り込むが、空ちゃんが若干引き気味に苦笑いを浮かべていた。

 

「中の物は自由にして構いません。どうぞおくつろぎください」

 

「それじゃ、遠慮なく~♪」

 

「みんなー! ジュースもいっぱいあるわよ!!」

 

 ロコモンの言葉にるんるん気分で客車に乗る太一と、ミミちゃんは既に冷蔵庫を物色していた。

 

「お前はまだ着いてくるか?」

 

 さすがにデビドラモンは大きすぎるので、客車には乗せられないから訊いてみたのだが。

 

「クゥン……」

 

 なんかそんな捨てられそうな犬みたいな声出すなよ。お前仮にも成熟期の邪竜型デジモンやろ。

 

「わかった。わかったからそんな拗ねるなよ」

 

「グルゥア!!」

 

「うわっ、だから舐めるなって言ってるだろ…!」

 

 おれが折れると、犬みたいに顔を舐めてじゃれつくデビドラモン。マジでこいつウィルス種としての誇りとか何処に行ったし! 2回も頭ぶっ叩いたからおかしくなってるんじゃないかと心配になる。

 

 取り敢えずデビドラモンは、客車の屋根に座って移動する事になった。

 

 トロピカルジャングルを出発し、おれたちはロコモンに乗ってファクトリアルタウンへと向かった。

 

 

 

 

to be continued…




コロモン
幼年期Ⅱ 属性なし

ボタモンから進化する成長期より一つ前のデジモン。幼年期Ⅰが赤ちゃん枠であるなら、幼年期Ⅱは幼稚園くらいの子供と言えるだろう。口から泡を吐くことで攻撃するが、同じ幼年期でなければ先ず通用はしないだろう。

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