気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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なんか勢いでメチャクチャなことになっちまったが、後悔してないんだぜ。今回の話はセイバーズ枠として見てください。


第18話 男の激烈超進化 ライズグレイモン!!

 

 ナイトモンの館で一夜を過ごした私たち。あのあと戻ってきた有音君の姿が少し変わっていた。金の縁に全体が漆黒の鎧を纏っていた。そしてどうしてだかその鎧からは強い力の波動を感じた。でも子供たちは特に気にした様子もないし、デジモンたちもそうだったから、私の勘違いだったのだろうか。ただ、ギルモンだけが少し落ち着かなそうにしていたけど。

 

 翌朝。私たちは集まってサーバ大陸に向かうかどうかの議論の続きをしようと思ったけど、有音君チーム――有音君、アグモン、クロちゃん、ブイモンの姿が何処にもなかった。

 

「これからどうするか話すって時に、どこに行ったんだアイツ等」

 

 太一君が少しイラつく様に言う。多分ブイモンの事を引きずっているんだろう。

 

「誰か有音君の行方を知ってる子はいる?」

 

 取り敢えず私が皆に訊いてみるけど、皆首を横に振る。

 

「あっ、アニキさんなら今、ナイトモン様と稽古の最中で館の前に居ますよ」

 

 そこに通り掛かった白いポーンチェスモンが教えてくれた。でもアニキさんって……。

 

「稽古か。終わるまで此方に来ないだろうし、見に行ってみるか」

 

「そうですね。有音さんの強さがどう培われているのか興味がありますし」

 

「でも大丈夫かな? また怒られたりするんじゃないかな」

 

 ヤマト君と光子郎君の意見に、丈君が待ったを掛けた。確かに丈君の懸念もわかるけど、今回は大丈夫な気がする。

 

「ぼくも見てみたいな。有音さんみたいに、ぼくも強くなりたい」

 

「皆で行きましょ。稽古のあとに直ぐに話が出来るもの」

 

 タケルくんも賛成派で、空ちゃんも効率の観点から皆で行くことを提案した。でもそこに横から待ったが

掛かる。

 

「俺は行かないぞ。行ってもまた文句言われそうだからな」

 

「わたしも。太一さんの言うようにわたしたち頑張って来たのに、あんな言われ方されたくないもの」

 

 ブイモンの言葉で、太一君とミミちゃんは自分達の戦いがバカにされたと思っているのかもしれない。

 

 多分ブイモンは謝らないと思うから、今強引に連れていっても余計な不和を生んでしまいそうだ。最年長の私がしっかりしないとならないのに、私にはなにもする事が出来ない。

 

「それじゃあ行きたい人とそうでない人で別れよう。すぐ近くに居るし、時間は先を急ぐほどもないわけじゃないからね」

 

「賛成」

 

「わたしも、丈先輩の意見に賛成」

 

 そこに丈君が代案として各々別れる事を提案した。直ぐにそういう意見を出せる辺り、私よりも丈君はしっかりものなのが、少し自分が情けなく思います。

 

 居残り組みは私と太一君と、ミミちゃんで、他の皆が有音君の所に向かった。

 

「芹香さんは有音の所に行かなくて良かったのか?」

 

「うん。有音君の強さは私も知ってるから」

 

 それに別れる意見を出した丈君もおっかなびっくりと言った感じでも有音君の事を見に行きたそうだったし。

 

「有音さんって、わたしたちとあまり歳は変わらなそうなのに、どうしてあんなに強いんですか?」

 

 ミミちゃんも有音君の強さには興味があるみたいで、私に訊ねてきた。

 

「有音君がああも戦えるのは、デジソウルの力があるからなの。デジソウルがなければ、有音君も普通の子供だと……思う」

 

 ごめん、私と同じ三次元世界出身のはずなのに、セイバーズ枠に片足どころかたっぷり全身浴しちゃってる有音君は、デジソウルを使わなくても普通にデジモンと戦えそうで普通の子供なのかちょっと自信ない。

 

「デジソウルって、デジモンを進化させる為の力なんじゃないのか?」

 

「私もあまり良くわからないんだけど。極めていけば究極体とでも渡り合える力らしいの」

 

「……そんな化け物染みた強さの力を使えるヤツを基準に、俺たちの事を考えて欲しくないってんだまったく…!」

 

 確かに有音君の強さは、デジソウルを使えない私たちには到底届かないものだと思うけど。ブイモンが言いたいのは、そういう強さだけじゃないと思う。

 

「有音君は化け物じゃないよ。自分が傷ついても、私の事を守ってくれる凄い子だよ」

 

「あ、いや。そういう意味で言ったんじゃなくて」

 

「太一さん、今のはデリカシーがないと思うなー」

 

「だからそういう意味じゃないって言ってるじゃないか」

 

 わかってるけど、有音君を化け物って言われたのがちょっとカチンと来ました。まだ小学5年生でも、言って良い事と悪い事もあるよ。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 朝起きたおれは、三日前の様に朝起きて木剣で素振りをしていた。少しずつの積み重ねが、おれの強さになることを信じて。

 

「精が出るな、有音」

 

「ナイトモン…?」

 

 素振りを一段落したおれに声を掛けてきたのは、大木の様な木剣を担いでいるナイトモンだった。

 

「男子三日会わずば刮目して見よ。完全体のメガドラモンを退けた実力。私にも見せてもらおう」

 

「あれはおれひとりの力じゃ出来なかった。仲間が居たから勝てたんだ」

 

 そう言いながら、木剣を構えるナイトモンに向けておれも木剣を構える。

 

「よろしくお願いします」

 

「うむ。何処からでも掛かって来ると良い」

 

 余裕綽々のナイトモンだが、それはナイトモンがおれよりも圧倒的に強いからだ。

 

 正眼に構えた木剣を右下に長し、左肩から前に出る様に駆け出す。

 

 ナイトモンが向かって左から右へ横に木剣を振るう。身長差から太刀筋は斜めになる。

 

 斬撃をジャンプして避け、通り過ぎる木剣を踏み抜き、更に跳躍する。

 

「はあああああーーーっ!!」

 

 そのまま左凪ぎに木剣を振るうが、ナイトモンの腕に当たる前に、右から切り返しの刃が迫る。

 

 木剣を振るった勢いを利用して、その場で身体を地面と水平になりながら回転して、ナイトモンの木剣の上を転がりながらやり過ごす。

 

 そして通り過ぎるナイトモンの木剣を握る手に、おれの足をぶつける。

 

 完全体のナイトモン相手にただの蹴りは意味がないのだが、ナイトモンとの稽古は相手の身体に触れることだ。つまりこれでノルマはクリアである。

 

「ほう。三日前では目では反応できるが身体が着いていけない速さで挑んでみたが。この短期間で更に腕を上げたようだな」

 

「そいつはどうも……っ」

 

 とは言え一歩間違えたら木剣に撥ね飛ばされていた攻防だ。心臓がバクバクして胸が痛くて仕方がない。

 

「では速さを上げるぞ……!」

 

「っしゃ、来いっ!!」

 

 おれはナイトモンの言葉に気合いを入れて、その電光石火でありながら重い一撃を凌ぐ為に全神経を集中させた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 オイラは今、クロと一緒にブイモンと向かい合っていた。ブイモンがオイラたちを鍛えるって言って、こうなった。

 

「手加減なしで来い。今のお前たちの実力を知りたい」

 

 そう言いながら構えるブイモンとクロ。オイラはどうすれば――。

 

「イク、ッ――!!」

 

 地面を蹴って凄い速さでブイモンに走っていくクロ。とてもオイラには真似は出来ない。でもオイラにもやれる事はある!

 

「《ベビーフレイム》!!」

 

 オイラに出来るのは、ブイモンの邪魔をして、クロを戦い易くする事だ。

 

「前衛と後衛。自らの技量を自覚しての役分けか。悪くないな」

 

 ブイモンはなにかを言いながらオイラのベビーフレイムを拳で打ち払った。って、えええっ!?!?

 

「《ポーンスピア》――!!」

 

 クロがブイモンに向かって木の槍を突き出した。

 

「だが甘い」

 

 ブイモンはクロの突き出した槍に手を添えて横に逸らすと、クロに向かって拳を突き出した。

 

「ウッッッ」

 

 するとクロは力なく崩れ落ちた。

 

「ク、クロ!?」

 

「……加減を間違えたな」

 

 ブイモンはそういうとクロを担ぎ上げて、少し離れた木の根本に運ぶと戻って来る。

 

「さて、少々予定狂いだが。続きをやるぞ」

 

「ぅっ…」

 

 クロが一発で伸びちゃったのに、オイラがひとりでブイモンに勝てるわけない……。

 

「どうした? この程度で臆病風に吹かれたか? そんな程度の心構えしかないのなら、有音のパートナーなど辞めてしまえ。彼は私が居れば十分だ」

 

 ブイモンの言葉に、オイラはなにも言い返せなかった。オイラは臆病で、弱虫の勇気のないデジモンなんだ。

 

 自分ひとりじゃ戦えないズルいヤツなんだ。

 

 だったら、ブイモンの言う通り――。

 

「せやああああああ!!」

 

「くぅっ! やるようになった!」

 

 オイラの耳に、アニキの声が聴こえた。アニキの雄叫びが。

 

 アニキはオイラと違って、何者にも立ち向かう勇気がある。

 

 そうだ。オイラは最初はただ助けてくれたアニキに着いていけばご飯をくれると考えていただけだった。

 

 でも、クワガーモンとの戦いの時、アニキはこんなオイラの為に命を張ってくれた。

 

 オイラは、そんなアニキの姿に憧れたんだ。少しでもアニキみたいに、勇気のあるデジモンになりたくて、アニキと一緒に旅をすることに決めたんだ!

 

「オイラは、アニキみたいに強くてカッコいいデジモンになりたいんだ!!」

 

 身体の中から、力が溢れ返ってくる。アニキみたいに、相手が恐くても、オイラも戦うんだ。これからもアニキと一緒に旅を続けるために、ブイモンを見返してやるんだ!!

 

「アグモン進化――グレイモン!!」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「有音さんのアグモンが」

 

「またひとりで進化した」

 

 アグモンからグレイモンにひとりで進化したした姿に、光子郎は驚き、タケルが既にその事がありながらも、確認する様に呟いた。

 

「ブイモンのヤツ、結構容赦がないんだな」

 

 クロを一撃で伸したブイモンに、ヤマトは少し恐さを感じていた。スパルタという域を超えているのではないかと。

 

「《メガフレイム》!!」

 

 グレイモンがメガフレイムを放つが、ブイモンは真っ向から大きな火球に突っ込んでいく。

 

「《ブイモンヘッド》!!」

 

 ブイモンは頭からメガフレイムを突き抜けると、グレイモンの足元でしゃがみ込む。

 

「《ブイモンパンチ》!!」

 

 そして撃ち出された弾丸の様に飛び上がると、グレイモンの顎をアッパーカットで打ち上げた。

 

「自らの力で進化出来る点は評価しよう。だが――」

 

 ジャンプしてグレイモンの顎を打ち上げたにも関わらず衰えない勢いでグレイモンの頭よりも高く飛ぶブイモン。

 

「体格の小さな相手に自分の身体を大きくするのは隙をカバー仕切れなくなる。これはその授業料だ」

 

 ブイモンは前回りに身体を回転させながら踵落としをグレイモンの頭に放つ。

 

「ぐああああっっ」

 

 そのまま地面に叩き付けられたグレイモンはアグモンへと退化してしまった。

 

「あ、あそこまでやるのか普通……」

 

「オイラ、ブイモンのこと少し恐くなってきたかも」

 

「わたしも……」

 

 徹底した手加減なしの追撃にドン引きの丈。デジモンたちもブイモンを恐がる目で見ている。空も言葉はないが、明らかにやり過ぎのブイモンを険しい目で見ていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ナイトモンとの打ち合いはより一層激しさを増していた。アルファモンの加護を貰ったからか、目で見えていれば、身体が動いて行ってくれる。

 

 だがそれでも無理をして追い付いて行っている為、身体が悲鳴を上げ始めていた。

 

「ッ――!?」

 

 殺気を感じて、おれはナイトモンとの間合いを放す。ナイトモンもそれに気付いていた。

 

「なんだ……!?」

 

「《ジェノサイドギア》!!」

 

 遥か空の上からミサイルが撃ち込まれた。

 

「くっ」

 

 巻き上がる噴煙。爆風に耐えながら、攻撃してきた主を探した。ジェノサイドギアならば、放つデジモンはギガドラモンのはずだ。

 

 3体のデビドラモンを引き連れて空から現れた青紫の肌と機械の翼を持つメガドラモン――その強化体のギガドラモンである。

 

「くそっ、デビモンの置き土産か!?」

 

 肌にバリバリと感じる殺気に、狙いはおれだと悟る。

 

「誰か芹香を呼んできてくれ! ナイトモンは子供たちの守りを頼みたい」

 

「心得た。無理はするなよ」

 

「無茶はしても無理はしてないつもりさ」

 

 おれはナイトモンに子供たちの守りを託し、ブイモンの方へ駆けていく。相手は完全体と成熟期3体だ。子供たちのデジモンならデビドラモンは相手に出来ても、ギガドラモンは先ず相手には出来ない。だから子供たちの守りをナイトモンに任せ、芹香にグラニを出してもらい、またユゴスブラスターをブチ込んでやればギガドラモンは倒せるはずだ。

 

「アグモン!」

 

「ア、アニキ……オイラ…」

 

 悔しそうに地面に伸びているアグモン。多分ブイモンに叩きのめされたんだろう。

 

「悔しさを感じてる暇があるなら立て! その悔しさをアイツらにぶつけてやれ!!」

 

 地面に降り立つデビドラモン。ギガドラモンは様子見か、上空で旋回している。舐めやがって。

 

 おれはナイトモンとの稽古で触れる度に募ったデジソウルを右手に練り上げる。

 

「デジソウル――チャージ!!」

 

 デジソウルを込めたデジヴァイスをアグモンに向ける。

 

「アグモン進化――ジオグレイモン!!」

 

 デジヴァイスから放たれた光に包まれて、アグモンがジオグレイモンに進化した。

 

「アニキ、オレ……」

 

「ブイモンに何言われたか知らないけどさ。悔しかったらまた立って挑めば良いんだ」

 

 自信の無さげなジオグレイモンに向けて、おれは言葉を掛ける。

 

「何度も負けるかもしれない。勝てないかもしれない。挫折して諦めたくなるときもある。それだって良い。だけど――」

 

 敵は待ってくれない。デビドラモンは低空飛行で此方に向かってきている。

 

 おれはデビドラモンに向かって駆け出す。自信の無いジオグレイモンを鼓舞する為に。パートナーのおれが見せてやらなくちゃな。どんな時でも、守るものがあるなら引いちゃならない男の背中ってヤツを!!

 

「男にはな。どんな状況でも、自分の心を奮い立たせて戦わなくちゃならないときがあるんだよ!!」

 

 真正面からデジソウルの宿る拳でデビドラモンの頭を殴り付けて叩き落とす!

 

「アニキ、オレは……オレはっ!!」

 

 残りの2体のデビドラモンがジオグレイモンと子供たちの方に向かっていく。

 

「ウオオオオオーーー!!!!」

 

 雄叫びを上げながら、ジオグレイモンはデビドラモンと真正面から組み合って受け止めた。

 

 残りの1体が子供たちの方に向かうが、どうして子供たちのデジモンは進化しないの!?

 

「は、腹が減ってまんねや……」

 

「し、進化出来ないぃ……」

 

 館の夜飯はかなり早い。多分7時くらい。更に今は多分稽古を始めてからそれなりに経って9時か10時だ。12時間経てば腹空いて当たり前か。先に朝飯食べてて良かったのに、悪いことをしちゃったな。

 

「カードスラッシュ――超進化プラグインS!!」

 

 EVOLUTION_

 

「ギルモン進化――グラウモン!!」 

 

 最後の1体は、芹香のギルモンが子供たちの前に飛び出て進化したグラウモンが止めてくれた。

 

「芹香!」

 

「お腹空いてるかもしれないけど、頑張ってグラウモン!」

 

「ぎっりゅるるる、グラウモン、セリカの力ある。だから負けない!!」

 

 恐らくカードの力で無理に進化したのだろう。早めに決着を着けないと。

 

「ぐぅっ!!」

 

「ジオグレイモン!?」

 

 お腹が空いてるのはジオグレイモンも一緒だった。完全体に匹敵するパワーのあるジオグレイモンがデビドラモンに推され始めた。

 

「負けるなジオグレイモン! お前の力なら押し返せる!!」

 

「ぐぅぅぅぅぅああああ!!」

 

「ギュアアアアアアアア!!!!」

 

 ジオグレイモンが雄叫びを上げると、デビドラモンも張り合う様に雄叫びを上げて張り合う。

 

 だがずるずるとジオグレイモンが競り負けている。

 

「だ、ダメだアニキ、オレの力じゃ」

 

「諦めるな!」

 

「うぐぅ…っ、ッ――!? アニキ後ろ!!」

 

 ジオグレイモンの悲鳴の様な叫びで振り向けば、後ろでデビドラモンがおれに噛みつこうとしているのが目に入る。

 

「テメェはもう少し寝ていやがれKY野郎ッ!!」

 

 おれは振り向きながら、再びデジソウルの宿る拳でデビドラモンの頭をぶった叩いて黙らせる。今良い所なんだから邪魔すんな!!

 

「アニキ…、すげぇ……」

 

 おれは呆けてるジオグレイモンに向かって振り向きながら叫ぶ。

 

「お前の身体には、おれのデジソウルが流れてるんだ! この程度で力負けするような柔じゃ無いはずだろ! 男の火事場のド根性見せてやれ、ジオグレイモン!!」

 

「アニキ……。ウオオオオオオオーーーッッ!!!!」

 

 今までで一番大きな雄叫びを上げると、ジオグレイモンはデビドラモンを押し返し始めた。

 

「《ギルティクロー》!!」

 

「くっ、アイツもKYなことしやがって!」

 

 ギガドラモンが上空から相撲しているジオグレイモンとデビドラモンのもとへ、右手のクローを突き出しながら向かっていく。今のジオグレイモンにはどうすることも出来ない。

 

「上から来るぞ、ジオグレイモン!」

 

「ぐっうっうっうっ、ダアアアアアアアリャアアアアアアッッ!!!!」

 

 ジオグレイモンはデビドラモンの身体を持ち上げると、急降下して来るギガドラモンに向けて投げつけた。

 

「ギシャアアアアアアア!!!!」

 

 ギガドラモンのクローがデビドラモンの胴体を貫いて、デビドラモンの上半身と下半身が泣き別れし、データの粒子となって消えた。

 

「なにやってる! 避けろジオグレイモン!」

 

「オレはっ、逃げない!!」

 

 急降下してきたギガドラモンと、ジオグレイモンが衝突し、凄まじい衝撃が地鳴りとなり、噴煙を上げる。

 

「ジオグレイモン!!」

 

 噴煙はジオグレイモンをすっぽりと隠してしまっている。その様子はわからない。

 

 一抹の不安が胸を過る。

 

「《メガフレイム》!!」

 

「ギシャアアアアアアアア!!!!」

 

「ジオグレイモン!」

 

 顔面にメガフレイムの直撃を喰らったギガドラモンが地面を転げ回る。右目の辺りが焼け焦げていた。

 

 おれはジオグレイモンの無事な姿に、歓喜の声を上げた。

 

「《メガバースト》!!」

 

 ジオグレイモンから放たれた必殺技がギガドラモンの身体を吹き飛ばす。だが止めには届かない!

 

「ダメだ…、力が……」

 

「くそっ、根性じゃ限界か……!」

 

 寧ろ良く頑張ってくれている方だ。だがギガドラモンを倒せるデジモンは、ナイトモンしか残って無いだろうが、ナイトモンとて飯は食っていないだろうし、おれの相手で動きまくったからギガドラモンの相手は辛いはず。

 

 グラウモンはデビドラモンを倒したみたいだが、ギルモンに退化してしまった。

 

「……ジオグレイモン!!」

 

「アニキ…」

 

 おれはデビドラモンを2回も殴って眩しい程に輝くデジソウルを見ながらジオグレイモンに叫んだ。

 

「進化だ! おれがお前を進化させてやる!! だから――」

 

 身体中からデジソウルを練り上げて、更に右手に集中させる!!

 

「あのメカドラゴンに一撃カマしてやれ!!」

 

 デジヴァイスを左手に、デジソウルが集中して太陽の様に眩しく輝く右手を添える。

 

「デジソウル――フル、チャージ!!」

 

 ジオグレイモンに進化する時よりも更に眩しく力強い光が、デジヴァイスからジオグレイモンに向けて放たれた。

 

「うぅっ、アニキの力が、オレの中に流れ込んでくる!!」

 

 ジオグレイモンは光に包まれて、その光はジオグレイモンのからだを作り替えていく。

 

「ジオグレイモン進化――ライズグレイモン!!」

 

 光の中から現れたのは、ジオグレイモンが完全体に進化したライズグレイモンだった。

 

 左腕をクロンデゾイド製の巨大なリボルバーにして、機械の鎧が胸と頭と尻尾の先を包み、背中には機械の翼を生やした、メタルグレイモンとはまた違ったグレイモン系サイボーグ型のデジモンだ。

 

「いっけええええーーーッ、ライズグレイモン!!」

 

「うおおおおおーーー!! 《ソリッドストライク》!!」

 

 痛みに呻きながらも体勢を立て直そうと起き上がったギガドラモンを、ライズグレイモンが左腕の巨大なリボルバーで殴り飛ばした。

 

「やったれえええええーーーッッ」

 

「《トライデントリボルバー》!!」

 

 ライズグレイモンが右腕を左腕に添え、3発の弾丸を連続発射した。

 

「グルゥゥアアアアアアアアアアア――!!!!」

 

 1発が核弾頭並みの威力のある弾丸が、3発も連続で叩き込まれたギガドラモンは断末魔を上げながら爆炎の中に消えた。

 

「ぅぅ……ぁぅ…」

 

 ライズグレイモンは小さく呻き、片膝を着くと、コロモンにまで退化してしまった。

 

「コロモン!!」

 

 おれは慌ててコロモンに駆け寄って、その身体を抱き上げた。

 

「へ、へへ、やった…よ。アニキ…」

 

「ああ。見てたよ。お前のカッコいい姿。腹一杯、飯食べような」

 

「うん……」

 

 おれはコロモンを優しく、でも力強く感謝の想いも込めて抱き締めた。

 

「うわっ」

 

「ア、アニキ……?」

 

「はは、おれも燃料切れみたいだ」

 

 激しい鍛練の後に戦闘。身体中からデジソウルを練り上げた所為か、膝から砕け落ちて尻餅を着いてしまった。

 

 あーあ、カッコつかないなこれは。

 

「へ、ヘヘヘヘヘヘ」

 

「フッ、はは、あははははは」

 

 戦いが終わって一安心したからか、おかしいほどに笑いが込み上げて来て、しばらくおれとコロモンは笑い続けた。

 

 

 

 

to be continued…




ライズグレイモン
完全体 ワクチン種

特徴的な左腕のクロンデジゾイド製巨大リボルバーが武器のグレイモン系サイボーグ型デジモン。そのリボルバーの弾丸は1発が核弾頭並みの威力を持つ。頭や胸、尻尾の先がサイボーグ化し鎧を纏っている。背中のウィングスラスターにより、巨体に似合わぬ機動性も持つ。必殺技はそのクロンデゾイド製の銃身の限界耐久で高速3連射を放つ『トライデントリボルバー』である。

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