気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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今回結構強引な設定連結をしますので、肌に合わない方もいらっしゃるとおもいますのでご注意をば。

私、triも見れてないので、この世界線のロイヤルナイツは別人を採用していますのをご了承ください。その分キレイに終われるよう頑張ります。


第17話 授けられる力

 

 太一たちと別れて廊下を歩くおれは無言である空気に耐えるので必死だった。見なくてもブイモンの機嫌が悪いのが後ろ姿でわかる。

 

「ブイモン、さっきのことは」

 

「言うな。しかし例え選ばれし子供もであろうと、デジモンが居なければ何も出来ぬ子供なのだ。その様な力なき者に、これからキミに渡すものを見られるわけにはいかないのだ」

 

 そうおれに向かって言うブイモンの表情は険しかった。どうして力がない者が見てはいけないのだろうか?

 

「我が戦友、アルファモンが、私がテイマーの手で甦る事があれば、そのテイマーに渡せと言われたものだ」

 

「アルファモンが…?」

 

 アルファモンとは、ロイヤルナイツでありながら、ロイヤルナイツの抑止力として存在するデジモンで、その力は他の12体のロイヤルナイツを一手に相手にして対等に渡り合えると言われている程に強力なデジモンである。

 

「ここが宝物庫です。私は外で控えてお待ち致しましょう」

 

「心遣い感謝する、ナイトモン」

 

 ナイトモンに礼を尽くすブイモンは騎士然としていて、先程子供たちに向かって吐き捨てたブイモンとはまるで別人に見える。

 

 宝物庫は、奇跡のデジメンタルが安置されていたあの部屋だった。その部屋の奥で、ブイモンが扉に向かって印を切ると、床がスライドして更に下への道が現れた。

 

 先を行くブイモンのあとに着いていくと、広々とした部屋に出た。

 

 部屋の最奥に台座があり、その上に随分と時代を感じる鉄の箱が置かれていた。

 

「パラディンソードが……」

 

 腰に差しているパラディンソードから二重螺旋を描きながらデジタルコードが立ち上っていき、パラディンソードと鞘が完全にデジタルコードに解けて光の球となると、別の形――大剣でありトマホークにも見える剣。アルファブレイドとなって実体化する。

 

 その柄を握り締めると、切っ先に魔方陣が現れて、鍵の外れる音が鳴り、箱が勝手に開いていく。

 

 ブイモンに首を向けると、ブイモンは頷くだけだった。

 

 箱に近づき、中身にある物をそっと拾い上げる。

 

 黒縁の赤い三角形のペンダントの様な物。これも何処かでみた覚えがある。

 

 そしてペンダントがキラリと光を反射すると、眩い光が放たれて、おれの意識は光の中へ消えた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「ここは……」

 

 目覚めたのは、どことも知れぬ小高い山の山頂だった。何処までも彼方を見渡せる山の上。蒼い空が美しく、白い雲が蒼いキャンパスにアクセントを加えていた。

 

 そんなおれの隣でマントを揺らめかせながら佇む黒い鎧のデジモン。名は聞かずともわかっている。

 

「アルファモン……」

 

「王竜剣は使いこなせているようだな。あの気難しいマグナモンが入れ込むテイマーだけはあるか」

 

 マントをはためかせながら此方に向き直るアルファモン。

 

「我々の力は、それひとつでもデジタルワールドを滅ぼせる力がある。だから力は、それに自覚がある者だけが知るだけで良い。力なき者が、強い力を前にそれを頼るようになってしまえば、力は正しい使われ方をしなくなる」

 

 アルファモンの言うことはわかる気がする。それで太一は1度グレイモンをスカルグレイモンに進化させてしまった事がこれから起こる。

 

 紋章を手に入れ、更なる力を前にして太一は自分だけで戦おうとしていた。強大な敵を前に焦っていたと言う理由があるから仕方がないだろうけど。

 

 それはおれも変わりはないか。おれも何だかんだと言っても、一人で突っ走っている。

 

「勇敢と蛮勇は別物だ。お前のそれは仲間を守る勇敢な行いだ。誇って良い」

 

「あ、ありがとう…」

 

 なんかロイヤルナイツに褒められると自分が凄い事をしていて褒められたと錯覚しそうになるな。

 

 そうしていると、アルファモンが剣指で魔方陣を切ると、その魔方陣がおれの身体に吸い込まれ、胸を守るプレートの形がアルファモンと同じものに変わった。さすがにスーパーロボット的なウィングパーツは着いていないが。

 

「おれの加護をお前に与えた。その力を使えば、完全体とも渡り合える様になるだろう」

 

 加護って、そんな大それた物をおれが貰っちゃっても良いのだろうか。

 

「その力を正しく使えると、おれが判断したからだ。でなければこの様なことはしない」

 

 それもそうか。なら、有り難く使わせて貰うとしよう。

 

「おれたちに出来ることはあまり多くはないが。お前にはロイヤルナイツが味方に居ることを忘れないで欲しい」

 

「それは有り難いことだけど、どうしておれが」

 

「お前が選ばれたからだ――」

 

 その言葉を聞くと、急に意識が遠退いて行った。その中でアルファモンがおれに向けた視線は、何処か後悔のある目をしていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「これで、本当に良いのだろうか……」

 

 姿を消した彼の居た場所を見ながら、おれは呟いた。

 

「それがイグドラシルを破壊した我々の進むべき道だ。我々はもはや、実体を伴ってデジタルワールドに干渉は出来ないのだから」

 

「オメガモン」

 

 先程まで彼が居た場所にはいつの間にかオメガモンが佇んでいた。

 

「アポカリモンとの戦いで力を使い果たした我々は、しかし再びヤツの復活を前にして、やれるだけの準備を進めてきた」

 

「だがあれではあまりにも」

 

「彼は我々を恨むだろう。だが、その恨みも甘んじて受けよう。デジタルワールドをアポカリモンから守る為には、彼の力が必要だ。再び我等四騎士を集わせる為に」

 

「デュークモンは言っていた。初めから存在を否定された命などはないと……。だがっ」

 

 かつて自身に言われた言葉。産まれてきた意味はなんなのか。自分が生きていて良いのか。それを問うた時があった。

 

 だがデュークモンは、おれに命の意味を教えてくれた。

 

 なのに自分は、そのくれた答えに背くことをしている。それがデジタルワールドを救うためでも、それしか出来ない自分の無力さが腹立たしい。

 

「選ばれし子供たちに任せることは出来ないのか!?」

 

「彼らの物語りは、所詮は物語りでしかない。だが、彼らの生きる今は現実なのだ。そう都合良く事が運ぶならば、我々もなにもする事もなく静かに眠ると言う選択肢もあっただろう」

 

「だが、暗黒の力は物語りの様に生易しい物じゃない」

 

 オメガモンに変わって新たに声を掛けてきたのは、白い鎧に白い翼を持ったデジモンだった。

 

 ロイヤルナイツの始祖――インペリアルドラモン・パラディンモード。

 

「今は彼等を見守ろう。そして時が来た時には、彼の怨嗟を受け止めよう」

 

 おれたちは佇みながら、空を見上げた。雲の切れ目の向こう。彼等の姿を見守るだけしか、おれたちには出来ない。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「戻って来た……?」

 

 気づいたらおれは鉄の箱の前で突っ立っていた。

 

「用向きは終わった様だな」

 

「多分……」

 

 手に持っていたあのペンダントみたいな物は紐で首から下がって鎧の内側に入っていた。

 

 アルファブレイドもパラディンソードと鞘に戻っていた。ただ意識すれば、またデジタルコードに解けそうになるから、いつでもアルファブレイドは使えそうだし、頭の中にはアルファモンが切った魔方陣の使い方が浮かんで来た。

 

 この辺りもあとで確認しないとならないな。

 

「あまり気に入らないが、キミが生きる為だ。我慢しよう」

 

「ブイモンはアルファモンが嫌いなのか?」

 

「嫌いだな。あんな訳もわからないヤツは」

 

 きっぱりと言い切るブイモンの顔にはハッキリとした嫌悪感が浮かんでいた。屈辱的だとも感じる。

 

 これはブイモンの前だとアルファモンの話はしない方が良いな。

 

「戻るぞ。明日からはその力に慣れる為に特訓を始めなければならないだろう。今日はもう休んだ方が良い」

 

 でもおれに対しては普通に優しい気遣いをしてくれる。on/offがキッパリしているのは、人生経験の成せる技なのだろうか。

 

 おれはブイモンのあとに着いていこうとして、1度振り替えると、頭を下げた。何故だか、そうしたかったからだ。

 

 

 

 

to be continued…




アルファモン
究極体 ワクチン種

ロイヤルナイツでありながら、ロイヤルナイツの抑止力として存在する聖騎士型デジモンである。その力は強力で、更に特殊能力『アルファインフォース』によって、過ぎ去った結果を引き寄せる事ができる。自分が攻撃した『結果』を相手にぶつける為、攻撃された側は何もわからずに最後の一撃のみしか認識する事ができないという恐ろしい能力だ。必殺技は魔方陣から光の剣を抜き相手を貫く『聖剣グレイダルファー』である。ロイヤルナイツの中でも特に能力の高い四騎士の一人でもある。

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