気がつけばデジタルワールド!?   作:望夢

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なんかデビモン倒したら倒したで文章の沸き上がりの勢いが減りましたな。取り敢えずコツコツ書いていきます。

寂しいから書いてるけど、後書きの劇中ナレーション風のデジモン紹介欄って需要あるんかな?


第15話 束の間の休息

 

 デビモンを倒したおれたちは、漸く本当の意味での安息の時間を手に入れられた。

 

 心の芯から緊張感が抜け、どっと疲れが押し寄せる。

 

 エンジェモンが退化して、パタモンとなってタケルくんの方に向かっていく。

 

 それを見ながら、ひとつの達成感の様なものを感じて一息吐く。

 

 するとマグナモンも光に包まれ、身体が小さくなっていきブイモンとなって、黄金の光がおれのデジヴァイスに吸い込まれた。

 

「感謝する、我がテイマー。キミのお陰で、私は再びこの世に生を受けられた」

 

 ブイモンがおれに近寄りながら声を掛けてきた。

 

「デジモンはデジタマに還るんじゃないのか?」

 

「本来ならば、な。だが我々ロイヤルナイツはそうもいかない。我々の力を奪われない為に、我々は転生ではなく、自らの死後はそのデータを封印していたのだ。いくら我々でも、デジタマから究極体になるまでの間は非力すぎる」

 

 なるほど。そしてマグナモンはデジメンタルに自分のデータを封印していたわけか。

 

「でもおれは、本来ならこの世界に無関係の人間だぞ? おれが居なかったらどうしていたんだ?」

 

「その時は、私は待ち続けるだけだっただろう。本来では有り得ぬ奇跡が、我々を巡り合わせた」

 

 奇跡を味方にしてるロイヤルナイツが言うと安っぽく聞こえるぞ。

 

「これからお前はどうするんだ? ブイモンに戻ってるし。デジメンタルはデジヴァイスに戻っちゃうし」

 

「それは私がキミをテイマーとして認めたからだろう。しかしデジメンタルは先程の戦いで力を使い果たしてしまった。しばらくは使えないことを頭に入れておいてほしい」

 

「ああ、わかった。よろしく、ブイモン。おれのことは有音で良い」

 

「ああ。ロイヤルナイツ、マグナモン――今は退化してしまってブイモンだ。よろしく頼む」

 

 おれはブイモンと自己紹介しながら握手を交わした。

 

 てかロイヤルナイツがパートナーってやりすぎじゃないですかね? いや、ブイモンがおれをテイマーに選んだなら、ガッカリさせないように頑張るしかないか。

 

 おれがブイモンと話している間に、子供たちはゲンナイさんと話していた様だ。内容はあとで芹香に訊くとして。

 

「ありがと、グラニ。お前のお陰で助かったよ」

 

 感謝と労いを込めて、おれはグラニの背を撫でた。

 

「キュアアア!」

 

 グラニは応えるように一鳴きすると、デジタルコードに分解されて芹香のデジヴァイスに戻っていった。

 

「デュークモンでもないのにあのグラニが懐いているとは。変わったテイマーだな、アルトは」

 

 変わり者でスミマセンね。

 

「いや、別に大意はない。騎士として竜に懐かれるのは悪いことではないだろう」

 

 なんか声があの大輔のブイモンと同じだけど、落ち着いて低い声だから違和感あるな。それだけ大人びているというか、退化してもロイヤルナイツであることが大きいのだろうか。

 

 ブイモンと話している間に行われたゲンナイさんとの邂逅。子供たちに更なる敵の存在を告げ、更なる進化があることを提示してゲンナイさんとの通信は終わったらしい。

 

 取り敢えずサーバ大陸に行くかどうかの前に、ムゲンマウンテンを降りて夕食になった。

 

「ふむ。大変美味な食事であった。我がテイマーは戦いだけでなく料理まで得意となると、他の面子に自慢が出来るな」

 

「お粗末さまです。ロイヤルナイツの口に合ってくれて何よりだよ」

 

 デジモン界最高位の騎士集団だから良いもの食っていて口に合わないか不安だったけど、良かった。

 

「そう言えば僕と空君だけ自己紹介してなかったね。僕は城戸 丈」

 

「オイラはゴマモンだよ」

 

「私は武之内 空。パートナーはピヨモンよ」

 

「よろしくねー」

 

「おれは桜木 有音。有音で構わないよ。パートナーはアグモンとブイモンで、ポーンチェスモンは旅の仲間だ」

 

「私はロイヤルナイツ、マグナモン。今は退化してブイモンだが、よろしく頼む」

 

 決戦前の自己紹介の時に居なかったふたりに自己紹介をする。ブイモンに関しては名前だけじゃなくロイヤルナイツを付けるのは、騎士としての矜持があるからだろうな。

 

「よろしく。マグナモンって、あのデビモンを倒した金ぴか鎧のデジモンだろう? マグナモンが居れば海の向こうの敵に勝てるかな?」

 

「悪いけど、さっきの戦いで力を使い果たしてしまったらしくて、しばらく進化出来ないらしい」

 

「そうなのか…」

 

 マグナモンの力は確かに強力だが、あれは子供たちのデジヴァイスから聖なる力を集め、相手が暗黒の力の塊だったから出来た力だろう。エテモンはウィルス種だけど、その力は本人の物だから聖なる力や暗黒の力があまり関係ないんだよなぁ。

 

 でもそう考えたら今後ブイモンはどう戦う気だ? 進化してエクスブイモンとかブイドラモンになるのか?

 

「それでサーバ大陸に行くという話だが、その前にナイトモンの館に寄らせてほしい」

 

「ナイトモンの館?」

 

「我が友、ロードナイトモンの住居だ。今は留守にしているようだが、アルトに渡したいものが置いてある」

 

「おれに?」

 

 丈君にブイモンが提案した。どうもなにかをおれに渡したいらしい。

 

「サーバ大陸となれば、ファイル島よりも強いデジモンたちも多い。確実な準備を行ってから行くべきだ」

 

「あ、いや。まだ行くって決まったわけじゃないんだけど」

 

「だがこのままファイル島に居るわけにもいかない。今は良くても、放っておけば暗黒の力が再びこのファイル島にまでやってくるだろう」

 

「うっ、それもそうだよね……。やっぱりサーバ大陸行くべきなのかな」

 

「そんな急ぐ必要もないさ。今はゆっくり休もう」

 

「そうだね。今日のところは休むか」

 

 原作ならエンジェモンを失ったタケルくんの言葉でサーバ大陸行きが決まったけど、ここだとまだみんなまだ迷っている。ある意味余裕があるとは思いたい。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 翌朝。まだサーバ大陸に行くかどうかは決まっていない。私たちはブイモンの提案でナイトモンの館というところに向かうことになった。

 

「わぁあ! みんな、機関車が止まってるよー!」

 

 通り道の始まりの街にて、タケルくんが機関車が止まってると声をあげた。

 

「ファイル島に機関車なんて走ってたんだな」

 

「普通の機関車じゃないわ。この子はロコモンっていうデジモンだよ」

 

 意外だったという風に言うヤマトくんに、私はこの機関車がデジモンであることを教えた。

 

「でも昨日は見なかったよね?」

 

「あなた方が選ばれし子供たちですか?」

 

「うわっ、喋るのかこのデジモン。機関車なのに?」

 

「丈ってば、このロコモンはデジモンだって芹香が言ったじゃないか」

 

「いや別に喋るのが悪いんじゃなくて、クワガーモンやシェルモンみたいに喋らないデジモンも居るからさ」

 

 確かに丈君の言うことも最もね。喋らないデジモンも居るから、明らかにメカメカしてるロコモンが喋って驚くのも無理ないのかな。

 

「デビモンの暗黒の力で起きる異変で運行を見合わせていたのですが、あなた方のお陰で、私も仕事に戻れます。感謝の代わりといってはなんですが、私に乗りたいときは申してください。何処へでも無料で送って差し上げます」

 

「へぇ、SLデジモンの旅か、そりゃ良いな」

 

「まだ皆さん疲れも残っているかもしれませんからね。ありがたいです」

 

「SLなんて何時ぶりかしら? 早く乗りましょうよ!」

 

 ロコモンの申し出に太一君と光子郎君、ミミちゃんが喜んでいた。そりゃぁ、無料で乗せてくれるのはスゴく助かるよね。

 

「ロコモン。おれたちはトロピカルジャングルに向かいたいんだけど、どれくらいかかる?」

 

「トロピカルジャングルですね。私の運行はファイル島を時計回りにぐるりと一周するので、夕方から日の入り前の到着になります」

 

「ありがとう。おれはまだ本調子じゃないからロコモンに乗せていって貰いたいけど、みんなはどうしたい?」

 

「「「「「ロコモンに乗るー!!」」」」」

 

 そりゃ歩かなくて目的地まで行けるんだから、満場一致で乗るよね。

 

「わかりました。出発まで一時間ありますので、やり残した事があればその間に済ませておいてください」

 

「わかった。ありがとうロコモン」

 

 有音君がロコモンにお礼を言うと、みんなが自然と集まった。

 

「ってことで、出発まで一時間だとさ」

 

「私、まだ疲れてるからロコモンの客車で寝たいかなぁ」

 

「もう、ミミったら」

 

「特にやることもないから、各自自由で良いんじゃないかしら? あまり遠くに行かなければ」

 

 という空ちゃんの提案で、みんな自由時間になった。

 

 私はギルモンと一緒にのんびりと木陰に座って過ごすことにした。

 

「一先ず、お疲れさんで良いのかな?」

 

「有音君…」

 

 有音君が湯気立つコップを両手に持って近寄ってきた。

 

「有音君こそ。メガドラモンをひとりで倒しちゃったんだもの。本当にお疲れ様」

 

「芹香がリアライズさせたグラニが居たから勝てたんだ。ユゴスブラスターがなかったら、止めを刺せなかった」

 

「ユゴスブラスターって、撃てたんだ、あの子」

 

 ユゴスブラスターはアニメだけの後付け装備だと思っていたけど。

 

「テイマーズ好きの芹香がリアライズさせたからじゃないかな? いやホント、マジ助かりました」

 

 そっか。私、有音君の役に立てたんだ。なんだか嬉しいな。

 

「うっ、に、苦いぃぃ」

 

「砂糖しかなくてね。大人の味って奴かな?」

 

 そう言いながら普通に黒いコーヒーを流し込んでいく有音君。私の方が歳上なのに、なんか悔しい。

 

「有音君はクロちゃんやブイモンに混ざらなくて良いの?」

 

「デジソウルがスッカラカンのままでね。軽く素振りするくらいで遠慮しとくよ」

 

 もうポケモンの『こうそくいどう』とか『でんこうせっか』並みのスピードで動いているクロちゃんとブイモンの周りを囲んで、子供たちのデジモンがスゴいものを見ているかの様に食い入ってみていた。

 

「ロイヤルナイツか。ギルモンも、ちゃんとデュークモンにしてあげられるのかな?」

 

 ひとつ間違えたら、メギドラモンに進化してしまう。そうなったら、ギルモンがギルモンのままでいてくれるのか、すごい不安になる。

 

「デジモンの進化は、周りの環境からも影響を受ける。テイマーの芹香の心も大事だけど、ギルモンは周りを良い仲間に囲まれてるから、例えメギドラモンに進化しても大丈夫さ」

 

「そうかな……」

 

 疑いもなく大丈夫だといえる有音君が羨ましい。その根拠を語られても、私は不安でいっぱいのままだ。私なんかがテイマーでごめんね、ギルモン。

 

「ギルモン、しんかしてもセリカのともだち!」

 

 そんな不安を吹き飛ばしてくれるように、ギルモンは私に言ってくれる。

 

「ありがとう、ギルモン」

 

 私はそれが嬉しくて、ギルモンを抱き締めた。

 

「ぐぎゅるっ、セリカ、くるしぃ…」

 

「あっ、ごめん…」

 

「……胸が大きいのも悩みものだな」

 

 有音君、それセクハラって言うんだよ。

 

 そんなこんなで一時間を過ごした私たちは、ロコモンに乗ってファイル島一周の旅に出た。

 

 

 

 

to be continued




ロコモン
完全体 データ種

ネットワーク内の情報を如何に速く運ぶかを生き甲斐にするSLマシーン型デジモン。ファイル島では交通の生命線を担っている。しかしロコモンが走ると空間の歪みを生んでしまうため、適度に休憩を挟みながら運行している。

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