銀雪のアイラ ~What a Ernest Prayer~   作:ドラケン

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亀裂 ―трещина―

 

 

────くるくる、クルクル、狂狂(くるくる)イアイア(来る来る)と。

────歯車が廻転(まわっ)ている。世界が廻天(まわっ)ている。悲劇が回転(まわっ)ている。

 

 

 回れ、回れと唄う者どもが居る。虚空に浮かぶベールの彼方に。くぐもった太鼓の下劣な連打と、呪われたフルートのか細く単調な音色の中で躍り狂う、痴れ果てた異形の輪舞の最中で。いいえ、いない。居るとしたら、あれは居てはいけない。

 酩酊と混濁の坩堝。逆巻く渦潮。ああ、ここは混沌の玉座。這い寄るよう嘲笑う。嘲笑いながら、妬み、見下ろしながら見上げ、引きずり込むように突き落とす。宇宙の窮極の泡立つ深淵で、深遠で、神苑で。

 

 

────さて。さて、親愛なる人間の皆様方。

────さて。さて、蒙昧なる人間の皆様方。

 

 

 漆黒の影は笑う。白い影と共に。

 

 

────ええ、そうでもあるでしょうし、そうでない事もあるでしょう。つまり、そういうことですね。

────ええ、そうでない事もあるでしょうし、そうでもあるでしょう。つまり、そうではないですね。

 

 

 三角型の耳と、長い尻尾を揺らめかせながら。二つの影は、笑い続けるのだ。

 

 

────本当に、本当に。可愛いわね、白い仔兎ちゃん。見ていて飽きないわ。うふふ。

────本当に、本当に。可愛いわね、黒い日本狼さん。見ていて飽きないわ。あはは。

 

 

 慈しむように、見詰めて。嘲るように見下して。黒い猫と白い猫は、揃ってしなやかに。足下に侍る数多の猫、猫、猫。地球の猫も居れば、土星の猫どもも。どれもが、酔い痴れたように二つの影に甘えていて。

 そのすべてが、彼女たちの兵士。そのすべてが、彼女たちの信徒。

 

 

────さあ、回しましょう。我らが父にして母なる《大いなる渦(ルー・クトゥ)》を。誰にも、誰にも邪魔はさせない。

────黄金の薔薇十字にも、黒の王にも。碩学の王にも、虚空を走る雷電にも。黄衣を纏う王にも、回る道化師にも。誰にも、誰にも。

 

 

 その全てからの礼讚を浴びながら、四つの黄金瞳を爛々と嗜虐に輝かせながら。白い猫と黒い猫は、揃って────

 

 

────────ニ ャ ア オ

 

 

 双子の猫女神は、笑うのだ────────

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

──光が見える。薄緑色の、優しい光。染み入るように静かで、綺麗な光。

──ああ、覚えてる。この光は、そう。現象数式(クラッキング)の光。

 

 

「う────」

 

 

 ひどく重く感じる瞼を、精一杯持ち上げる。目に入った像はひどく歪み、渦を巻いているよう。渦、世界の渦。回転する流れ。それは、何か────不吉なものを想起させる。

 それはそう、先程まで見ていた、悪夢を思い返させて。だけどもう、その内容は思い出せなくて。その代わり、額を覆う冷たさが心地よくて。

 

 

「……目が覚めたか、仔兎(ザイシャ)

「あ……ハヤト、さん?」

 

 

 ようやく、まともになった視界。その端に映った影。躍り狂う道化師じゃない、静かに佇む狼のような、極東のおサムライさま。

 その右手、武骨な、傷だらけの、ひんやりとした。その右手の掌が、わたしの額に添えられていて。

 

 

「あ────ありがとうございます、あの、現象数式」

「気にするな」

 

 

 短くぶっきらぼうに。一言、そう言って。ハヤトさんは手を離す。少しだけ、名残惜しかったけれど。

 

 

──辺りを見回す。豪華な調度品に、シャンデリア。わたしが寝ているのも、信じられないくらいふかふかのベッド。

──まだ微かに回って感じる頭でも分かる。ここは、うん、多分。

 

 

「あの、ここは」

「俺が()()()部屋だ。悪いが、連れ込ませてもらった」

 

 

 ああ、やっぱりと頭痛がひどくなる。立ち上がったハヤトさんが、黒髪を靡かせて立った窓際。燻らせる煙管の紫煙の、その先に見える赤の広場。その見渡す展望。

 

 

──ホテル、メトロポール・モスクワ。最上階、プレジデンシャル・スイートルーム。

──帝政ロシア時代には、各国から招かれた国賓や貴賓が滞在されていたお部屋。一泊だけでも、わたしが五度、人生で稼ぎ出す金額でも足りるかどうか。そんなお部屋で。

 

 

「あ、あの……わたし、あの後……どうなったんでしょうか……?」

 

 

 だから、話題を換えたくて。覚えていない、ウォッカを飲んでしまった後のこと、聞いて。若干渋くなったハヤトさんの表情に、不吉なものを感じながら。

 

 

「……あの後、暫くは黙って座っていた。最初はなんともなかった」

 

 

──ほっと、胸を撫で下ろす。なんだ、良かった。ハヤトさんがあんな顔をするから、何かしでかしたのかと。

 

 

「……だが、直後だ。いきなりケラケラと大声で笑い始めた」

「え────?」

 

 

 そして、唐突なそんな言葉に。思わず、声を漏らしてしまって。

 

 

「しかも、給仕が持ってきたロシア風餃子(ペリメニ)を手掴みで食い始めた。実に楽しそうにな」

「な────」

 

 

──次に、顔が熱くなる。嘘、嘘ですよね? そんな、わたしが、そんな?

 

 

「極めつけに、俺のベフストロガノフを皿ごと奪って食い始めた。勿論、手掴みで。流石にこれはまずいと、捕まえて此処まで運んできた次第だ」

「あ────あぁ…………」

 

 

──最後にはもう、酔いのせいなのかなんなのか分からない寒気と吐き気まで感じて。いっそ記憶ごと吐いてしまえたらどんなに楽だろう。

──お父さん、お母さん、ごめんなさい。アンナは女としてだけではなく、人間としても死にました。やっぱり神の嫁になります。いえ、きっと神も酒乱の嫁なんて要りませんよね、はい、山奥に籠って魔女(バーバ・ヤガー)になります。先立つ不幸をお許し下さい────

 

 

「……大丈夫か?」

「う、あう……ごめんなさい……ごめんなさい……」

「……気にするな、と言った。俺は、楽しかったぞ」

 

 

 そんなことを考えていると、いつの間にか。音もなく歩み寄っていらしたハヤトさんの右手が、わたしの背中を優しく擦ってくれて。

 そんな資格なんて、ないのに。彼は優しくしてくれて。

 

 

「まるで、あの日々のように。試衛館や八木邸のように。騒がしくて、乱雑で。懐かしかった」

 

 

 どこか、遠い日々を。帰れない昔を懐かしみ、噛み締めるように見詰めていて。その瞳には────

 

 

「ハヤトさん────」

「……すまん。忘れてくれ」

 

 

──後悔とも、諦念ともつかない、不思議な色を浮かべていて。

──でも、それはすぐに消えて。後には、自嘲するような呟きしか聞こえなくて。

 

 

 また、胸を締め付けられる。ああ、わたしは、どうして。

 どうして、こんな気持ちに────。

 

 

「…………そろそろ、二十三時か。もう帰らねば、同居人が心配するだろう」

「あっ────はい」

 

 

 言われて、壁に備え付けられた柱時計を見る。チク・タク。チク・タク。振り子の音を刻み続けるその時計を。

 確かに、二十三時を指している時計を。見詰めて────

 

 

「あ、ですけど、あの、先生たちに」

 

 

 非礼をお詫びしないと。そう思ったことを、ハヤトさんはちゃんと察してくださって。

 

 

「彼等もここに滞在している。ならば、帰る前に会いに行けば良い」

 

 

 燻らせていた煙管を灰皿に打ち付けて、灰を捨てて。向けた視線の先、半開きのドアの向こうに────

 

 

「お気付きでしたか。非礼を詫びなければならないのは我々ですかね」

「ごめんなさいね、気になってしまって……」

「も、申し訳ありませんでした」

 

 

 そう、申し訳なさそうにイヴァン先生とカチェリーナさん、そしてアレクセイ君がいらっしゃった。

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 深夜に差し掛かる時刻。でも、《黒い雪(チェルノボグ)》は止まない。いいえ、むしろ、夜闇に紛れて何処からか。

 決まっている、空の上。モスクワを覆い尽くす、あの黒雲から。止めどなく、誰かの流す涙のように降り続いて。

 

 

 わたしとハヤトさん、イヴァン先生とカチェリーナさん、そしてアレクセイ君の三人で歩く路上を、今も。今も、塗り潰していて。

 

 

「あの、先生、カチェリーナさんにアレクセイ君。もう、この辺りで大丈夫ですから」

「そうかい? だが、無理を言って付き合ってもらった手前ね」

「そうよ、遠慮しないで。私たちに出来ることなんてこんなことくらいだし」

「はい、そうですよ」

 

 

 ヌギルトゥルさん────ハヤトさんの機関二輪車を停めたままにしている赤の広場へと向かうために、チアトラリニ通りからノーヴァヤ広場を抜けて、イリンカ通りへ。まだ、ウォッカで少しふらつくけど。後は赤の広場に抜けるだけ。そんなところまで見送っていただいてしまって。

 先生は無理を言ったと言うけれど。それを言うなら、約束の写真も満足に撮れていないのにこんな体たらくを晒したわたしの方が、恐縮の極みで。

 

 

「……それにしても、兄貴の奴。見送りもしないで」

 

 

──だから、唐突に。イヴァン先生がそんなことを口にした時。わたしは、転びそうになったところをハヤトさんに抱き止められたながら赤の広場に入ったところで。

──だから、結論から言うなら。わたしは、その間のことは知らない。ここから先は、誰か他の。

 

 

 例えば、視界の端で踊る道化師であるとか。若しくは────全てを俯瞰し、嘲り続ける双子の女神であるとか。

 若しくは、第四の壁の向こうから見ている貴方がた。そんな、()()の視点であるとだけ、言っておこう。

 

 

「ごめんなさい、イヴァン。あの人は、そう言う人だから」

 

 

 にこりと、憤るイヴァンに笑いかけたカチェリーナ。でも、その瞳は寂しげで。ああ、まるで────さっきの誰かみたいに。

 

 

「だがな、カチェリーナ。家長として、兄貴には果たすべき責任と言う奴があるだろう。それすら果たせずに、何が────」

「ええ、代わりと言ってはなんだけれど、私から謝るわ。ごめんなさい、許してね────ヴァンカ?」

「……君はやはり、卑怯だよ────カーチャ」

 

 

 その眼差しに、イヴァンは続けるべき言葉を失って。不承不承といった具合に口を閉じて。

 

 

「まあまあ、兄さんに義姉(ねえ)さん。それより、早く帰りましょう。あまり長いこと外にいると、噂の《人狼部隊(スペツナズ)》のお世話になりかねませんし」

 

 

 アリョーシャの言葉は正しい。此処はソヴィエト機関連邦の首都、モスクワ。指導者ヨシフ・ヴィッサリオノヴィチ・スターリンの膝元である。このような深夜に動いているものがあれば、それを反動分子として処刑することなど容易いにもほどがある。

 事実、既に完全に包囲されていると彼等は気付きようもない。《心理迷彩》を廉価に量産した《視覚迷彩》を纏い、静音駆動(ステルス)をしながら建物の影と言う影。或いは屋根の上にまで犇めく数十から百にも及ぶ深紅のゴーグル。手に手にカラシニコフ突撃銃やドラグノフ狙撃銃、または対戦車榴弾砲(コルネット)コサック刀(シャスカ)を携えた人狼達が彼等を処刑しないのは、一重にハヤトから。

 

 

 彼等のボスである《日本狼》から、『三人がメトロポールホテルに帰還するまで見送れ』との指示があったからに他ならない。そうでなければ、既にこの区画は剣林弾雨。三人は跡形もなく、路上の赤い染みと変わり果てていよう。

 

 

 そうして、彼等がゆっくりと。ホテルに帰りつくまで一片の隙もなく、気づかれることもなく護衛して。常日頃、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、辺りを包んでいた静かな過剰戦力は何処へともなく消え去ったのだ。

 

 

「それじゃあ、イヴァン兄さん、カチェリーナ義姉さん。また明日」

「ああ、また明日」

「ええ、また明日ね」

 

 

 先に自室に消えたのは、アリョーシャ。屈託なく手を振りながら笑うと、足早に。後に残された二人の男女は、困ったように。

 

 

「……部屋までは送らせてくれ」

「でも、悪いわ」

「兄貴の悪態なら、心配要らない。慣れてるさ」

 

 

 笑いあって、足を進めるのだ。

 

 

────終わりの始まりへと。ああ、そうとも。

 

 

 視界の端で踊る、黒い道化師の嘲笑から目を背けて。

 

 

────踊れ、踊れ、ロシア舞踊(ベレツカ)を。我が救済を受け入れたもの達よ。

 

 

「あら────部屋のドアが」

「不用心だな、兄貴の奴────」

 

 

 僅かに開いた、目的地のドア。そこに。その、陥穽に。

 

 

「────────」

「────────」

 

 

 静かな言葉が漏れ出す、道化師の劇場へ。そこで、繰り広げられる────

 

 

「グルーシェンカ、ああ、俺の愛する女────」

「────ドミトリー、ああ、私の愛する貴方」

 

 

 破滅劇(グランギニョル)の観客として────饗せられたのだ。

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 帰り着いたわたしたちを待っていたのは、とても、とても、直視に耐えるものじゃない光景だった。

 

 

「────そのぬるくて気の抜けたビールのあんまりの不味さに、俺はつい、ウェイターに怒鳴りつけたんだ。『おい、なんだこのビールは! 一週間前に来たときは出来立てのビールを出してくれたろ!』ってさ。そしたらウェイターの奴、泡を食いながらこう言ったんだよ、『ミスター、神に誓って、そのビールは一週間前と同じものです!』ってさ!」

「あははははは! ほ、本当に()()()()()()()()()()を出した訳だ、その店!」

 

 

 幾つものウォッカの空瓶が転がるテーブルを挟んで。完全に出来上がったヴァシリ兄さんと。

 

 

「くふふ、じゃあ、私が聞いたアネクドートね。ある夫婦が同じベッドで寝ていたんだけれど、夜中に飛び起きた奥さんがこう言ったの。『大変、旦那が帰ってきたわ!』って。しばらくして奥さんは寝惚けていたことに気づいたんだけど、隣を見ても旦那が居ない。おかしいなと思っていると、旦那が叫んだのよ。『おい、お前! さては浮気してるな!』って。クローゼットから出てきながら!」

「アッハハハハ! 旦那の隠れる手並みの鮮やかさも浮気の産物だろっての!」

 

 

 同じく、完全に出来上がったリュダが、大笑いしながらアネクドートを披露し合っていると言う、地獄のような光景だった。

 

 

「おっ、お帰り~、アーニャ。こんな夜遅くまで、随分お楽しみでしたね~?」

「ちょいと、隊長~。部下の妹に手ぇ出さないで下さいよ~。上司なのに弟とかやり辛いっすよ~」

 

 

──なんて、口々に。笑いながら。ああ、頭が痛いったらもう…………

 

 

 はあ、と溜め息を吐いた音が重なる。勿論、わたしとハヤトさんの。

 

 

「ほらほら、リュダ。明日も碩学院があるでしょ?早く切り上げて寝ないと」

「おい、ヴァシリ。お前、明日は非番じゃないだろう。さっさと帰るぞ」

「えー、せっかく盛り上がってきたのに~」

「そうっすよ~、折角リュダちゃんとも打ち解けてきたところなのに~」

 

 

 ぶーぶーと文句を口にするリュダからグラスを取り上げて。同じように、ハヤトさんもヴァシリ兄さんからグラスを取り上げて。

 千鳥足のリュダを抱き止めて、部屋に運ぶために。やっぱりハヤトさんも、ヴァシリ兄さんを外に運ぼうと肩を貸したところで。

 

 

「あ、兄がご迷惑をお掛けして、ごめんなさい」

「気にするな。こちらこそ騒がせて悪かったな」

 

 

 都合、真正面から見詰め合うような形になって。夜の闇を溶かしたような黒髪と、血の色の瞳を真正面に。

 とくん、と。心臓が一つ、拍を外した気がして。

 

 

「それじゃあ、おやすみなさい、ハヤトさん」

「ああ────また会おう」

 

 

 去り際に、掛けられた一言。何か、大事なことを。大切な言葉を口にするように。

 

 

「────アンナ」

「っあ────……」

 

 

 紡がれた言葉、わたしの名前。見送る背中、ただそれだけの事に。わたしの心臓は、意味もなく、早まって────

 

 

「じゃあな、リュダちゃん! また来るから!」

「は~い、楽しみに待ってますよ~、ヴァシリさん!」

 

 

 そんな余韻も、酔っ払い二人にかき消されて。もう一度、溜め息を溢したのだった。

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

「────ごめん、兄さん。部屋の鍵、兄さんに預けたままだったよ」

 

 

 そうしてアリョーシャがその部屋の前に辿り着いた時、カチェリーナの姿はそこにはなかった。居るのはただ、俯いているイヴァン・フョードロヴィチ・カラマーゾフのみ。

 

 

「アリョーシャ。何故だろうな」

「え────?」

 

 

 唐突なそんな言葉に、彼はただ、首を傾げるのみ。開け放たれた兄夫妻の部屋には誰もおらず、ただ、がらんどうの部屋が広がるのみで。

 

 

「────神さえいなければ、全ては、うまく行くのに。何故、人は、神にすがるのだ、アリョーシャ?」

「え────に、兄さん?」

 

 

 不穏な台詞を口にした彼に、イヴァンに、寒気と怖気を感じながら。それを、受け入れる────

 

 

「────()()()()()()()()()()()

「兄────さん?」

 

 

 歪んでいく。捻れていく。世界が? いや、彼の認識が。この世ならざる者達のために、ぐにゃりと。ぐちゃりと。不可逆の変質を伴って。

 ごとりと、ぐちゃりと。不可逆の再生を伴って。足元に蠢く影、黒いソレ。()()()()()()()()()()ソレに、気付くことはなくて。

 

 

『────────────悪い子だ』

 

 

 白く歪んだ、仮面のような()()()()()()()()()()()()()()()を伴って。イヴァンの顔に。覆うように、現れて────

 

 

────恐怖のカタチ。恐怖の似姿を象って。ああ、それは、白い眼差しを。亀裂より覗く、()()耀()()()()()()()()()()を伴って。

 

 

『────悪い子だ、アリョーシャ』

 

 

 イヴァンの顔を、覆い尽くすように。現れた、白い仮面のようで────


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