ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中)   作:ヤママ

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ちょい長くなっちゃいました。

次のネタ思いつかないよぉ!(泣)


そして少年は認められる

(あーあ、あのガキ死んだな)

ベルがベ―トを笑ってから、酒場に居合わせた誰もがベルを憐れんでいた。

接する者を強者と弱者に分ける力に固執したロキファミリアの一級冒険者「凶狼(ヴァナルガンド)」として有名なベ―ト。その性格上、因縁を付けられる彼だったが、返り討ちになった者は数知れず。今となってはLv5にもなった彼に喧嘩をしかけるのはよそ者か何も知らない新入りか。この場合後者だろう。

 

「ハッ、トマト野郎じゃねぇか。雑魚が吠えるんじゃねぇよ!」

 

「そういうお前は吠えることしか脳のない犬だな。雑魚だなんだとキャンキャンうるせぇんだよ。」

 

「ゴミをゴミと言って何が悪い!」

 

「いい加減にしろベート!」

 

ベルとベートが立ち上がり、お互いに近づいて睨みを効かせていたところでリヴェリアの一喝が入る。

 

「そもそもミノタウロスを取り逃がしたのは我々の責任だ。それも助けた冒険者を笑い話にして酒の肴にするとは、恥を知れ!」

 

リヴェリアの怒張の篭った言葉はベートだけではなく、ベルを笑ったロキファミリアの面子にも突き刺さり、店は一瞬にして静まり返る。

 

「済まなかったクラネル君。ベートの事は私から謝罪しよう。今回はそれで許して貰えないだろうか?」

 

「なっ!リヴェリア!こんな雑魚に頭を下げるな!」

 

「あんたは黙ってなさい!誰のせいでこうなったと思ってんの!」

 

リヴェリアは椅子に座ったままだが、ベルの方を向くと頭を下げた。その姿に周りの冒険者達が静かに騒ぎ出す。

ハイエルフの王族且つ一握りのlv6冒険者である彼女の頭はそう易々と下がるものではない。喧嘩など日常茶飯事な冒険者ならばあのまま何も言わずに暴れさせても良かっただろうに、それを放って置かないのが彼女の性格なのだろうか。それとも、ベルを傷つけたくない理由でもあるのだろうか。

 

「別に僕は怒っている訳じゃありませんよ。あなた方ロキファミリアが自らの不手際を棚にあげて他人を笑い者にするような集団だとしても命の恩人です。失礼をするつもりはありませんよ。」

 

「今さまに失礼してるんとちゃうか?ヘスティアんとこのガキ。」

 

カウンター席からロキがグラスを口につけながらベルに少々睨みをきかせる。神に目をつけられたとなれば普通は萎縮するものだが、ベルは鼻で笑って返した。

 

「ハッ、まさか。私はロキファミリアじゃなくてそこの狼人個人を笑ったんですよ。」

 

ベルは心底失望したような冷えた瞳でベートを見つける。

 

「あんたは人の事を雑魚だのなんだと力が全てみたいなスタンスでいるくせして剣姫に告白したとき僕を引き合いに出しただろ?いくら酒に酔っているとはいえあんたは自分より弱いと思っている存在を馬鹿にしなくちゃ自分の想いも伝えられない。本当の雑魚はあんたじゃないのか?」

 

ベルの発言に酒場の空気が凍った。

 

ベート・ローガは強者だ。彼が強者となり得たのはロキファミリアの3支柱の一人であるドワーフ ガレス・ランドロック の血へどを吐くような訓練に耐え、何度でも立ち上がったからだ。強くなる為に命令を無視してボロボロの体でダンジョンに潜ったこともある。自分には不相応なモンスターに闘いを挑んだこともある。彼の強者足る所以はそれ相応の経験と精神に基づくものだ。

だからベートは弱者を嫌う。形だけの度胸のない冒険者を。這い上がる覚悟もない冒険者を。覚悟のないものが戦場(ここ)にくるな、と。

そんな彼がベル(弱者)に雑魚と言われたのだ。

 

目の前の身の程知らずにしっかりと自分が強者であると教えてやる必要がある。

 

もはやベートを止められる者は誰もいないだろう。

 

「・・・おい雑魚。表でろ。」

 

「口じゃ敵わないから拳で、か?いいぜ。付き合ってやるよ。」

 

そういうとベルは一旦カウンターへ戻り、先に勘定を済ませる。

 

「ミア母さん、先にお勘定お願いします。」

 

「4200ヴァリスだよ。それと悪いことは言わない。謝っときな。相手はlv5の冒険者だよ。」

 

「あら、そうだったんですか?まあいいや、それならそれで。どこまで通用するか試すだけです。」

 

ベルとベートが店内から出ていく。それを見送った客の大半が見物が出来たと言わんばかりに店から出ていく。皆ミアに「食い逃げしたら承知しないからね!」と釘を刺されていたが。ベルのことが心配なのか、シルも外へと飛び出す。

 

冒険者達が出ていき、寂しくなる店内。アマゾネスのティオナが警告するように声を低くして口を開く。

 

「いいの団長?あのままにしたら相手の子死んじゃうよ?」

 

「ベートだってそこら辺は弁えているだろうさ。それより彼がアイズが助けた冒険者だったか。報告で聞いていたより随分血気盛んな性格じゃないか。」

 

「酒は人を変えるっちゅうことやな。」

 

「でも言ってる場合じゃないね。ティオナ、ティオナ様子を見に行ってくれないか?」

 

「分かりました団長。いざってときは、」

 

「力ずくで止めればいいのね!」

 

よく分かっているじゃないかと言わんばかりにフッ、と笑うフィン。するとアイズが立ち上がり「私も行く。」と一言言うと、ずんずんと先に外へと歩く。

 

「待ってよアイズ!」

 

「あ、アイズさんが行くなら私も!」

 

アイズを追ってティオナ、ティオネ、レフィーヤが出ていく。その姿を見送るフィン。だがその表情は芳しくない。リヴェリアも似たような表情をしている。

 

「どうしたんじゃ2人ともそんな顔しおって。あの程度のトラブル、昔はよくあったじゃろ。」

 

「いや、そうじゃないんだ。どうも悪い予感がしてね。」

 

「私もだ。あの少年からは口では説明出来ないが何か特別なものを感じる。」

 

リヴェリアはベルを治療していたときのことを思い出していた。部屋へと運び、ポーションと魔法で治療を始めた際に彼の右腕と背中が鈍くエメラルド色に光り、魔法が無効化(レジスト)されかけたのを。最も無効化(レジスト)されたのは、たった一瞬だったのでリヴェリア自身気のせいだろうと報告はしなかったが。

リヴェリアは考える。

もしあの無効化(レジスト)がスキルからくるものであれば、彼はレアスキル保有者ということになる。

だがあのときのエメラルド色の光はどう説明する?あれもレアスキル?だが一人で、しかもlv1の冒険者が2つもレアスキルを持っているとは考えられない。

 

「何やリヴェリアもフィンも、そんな渋い顔して。大丈夫やって。ベートだってダンジョン遠征で疲れとる。後で変に面倒くさいことにはならへんやろ。」

 

ドチビと会ったときのいじりネタが出来てわいはおもろいけどなー、と続けるロキ。

 

それですめばいいのだが。そう思うフィンの危険を知らせる親指は微かに震えていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

豊穣の女主人の前には多くの人がたむろしていた。冒険者だけではなく、通りかかった一般ピープルもなんだなんだと群れに突っ込む。

「いいぞー凶狼(ヴァナルガンド)!!ガキをなぶっちまえ!」

「坊主!お前が一発でも入れれば大勝なんだ!頼むぜ!」

どうやらベルがベートに一発でも攻撃を決めるかどうか、賭け事をしているようだ。

様々なヤジが飛び交う中、その中心にベルとベートが約8m程離れて立っている。

 

「覚悟はいいか身の程知らず。俺を雑魚呼ばわりしたことを後悔させてやる!」

 

「ギャンギャンうるせぇって言っただろ。折角あんた好みのやり方に付き合ってやるんだ。能書き垂れてないでさっさとかかってこい。」

 

「lv1の分際でぇぇぇ!!!」

 

売り言葉に買い言葉。

ベートは一瞬にして距離を縮め、その推進力を利用して左フックをくり出す。彼の主装備のメタルブーツで攻撃してこなかったのは手加減か、酔っているとはいえそれくらいの理性は残っているからか。

普通であれば当たり、一撃でつくはずの決着。決して越えられないレベル差。

しかしベートの拳は、ベルの左腕によって防がれ、しかもベルは吹っ飛ぶことはおろか、地面をめくらせつつも足をしっかりと地面とつけて踏ん張っている。

 

「なっ!」

 

ベートは驚愕する。いくら無意識下で手加減していたとはいえ、自分の一撃は確実にlv1冒険者など簡単に装備ごとほふるものだ。それをベルは腕一本で防いだのだ。

 

一体なぜ!?どんな手品を使いやがった!!

 

混乱するベ―トをよそにベルの空いている右手でストレートを繰り出す。しかしそこは第一級冒険者。即座に対応し、バックステップで避ける。よく見るとベルの右腕と背中が鈍く光っている事に気付くベ―ト。恐らくあれが自分の攻撃に耐えた手品の種なのだろうと推測する。しかしどんな効果があるのか?しばらくは様子見に徹するか。

 

「おいテメェ、どんな手品を使いやがった?」

 

「・・・何のことだよ?」

 

「しらばっくれんな。4レベル分の差の拳を受けて平気でいられるわけねぇだろ。その右腕と背中が手品のタネか?」

 

「もしそうだとしてどうすんだ?怖気づいたか?告白がクッソ下手くそなチキン野郎。」

 

「・・・決めた。テメェはぶち殺す。精々命乞いするんだなぁ!!!!」

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ねぇあれヤバくない?そろそろ止めるべきかな?」

 

攻防を見ていたティオナは驚愕と心配の入り混じった表情で横にいるティオネとアイズに話しかける。

 

「まだ大丈夫でしょ。それに相手の冒険者もまだやる気みたいだし。」

 

「あの光る腕、気になるね。レアスキルかな?」

 

ティオネは腕を組み、見定めるように勝負を監視する。アイズはアイズで強くなるための資料集めと言わんばかりに白髪の少年の右腕と背中を真剣に見つめる。

 

「アイズはぶれないねー。でも本当に何だろうね?体が光るスキルなんて聞いたことがない。魔法かな?ってレフィーヤ?どしたの?」

 

ティオナの声にティオネとアイズがレフィーヤを見る。少年を見てブツブツと何やら呟いている。アイズが肩を叩くと「うひゃあ!」とすっとんきょんな声をあげて顔を上げた。

 

「大丈夫?」

 

「あ、アイズさん!?はい!大丈夫です!?」

 

「どうかしたレフィーヤ?何だか考えてたみたいだけれど。あの子について何か分かった?」

 

「え、ええ、まぁ。上手くは言えませんけど・・・。あの子のあれ、多分魔法なんですけど魔法じゃないです。」

 

レフィーヤの含んだ言い方に3人は耳を傾ける。

 

「どういうこと?」

 

「私もよく説明出来ないんですけど、あの子のは私たちの魔法と比べてもっと繊細っていうか小さいっていうか・・・」

 

「あーも!分からないよ!分かるように説明して!」

 

「ティオナ、落ち着いて。レフィーヤ、ゆっくりでいいから。」

 

ティオナが我慢の限界、というよりも頭が沸騰しそうになっているようだ。そんなティオナをアイズが抑え、レフィーヤを促す。

 

「は、はい。感じる魔力の波が違うんです。いつもより工夫している感じ。」

 

「うーん。それでもよく分からないわね。大体私達はその魔力の波ってのを感じないし。アイズは?」

 

「・・・何となく分かるかな。レフィーヤみたいに波は感じないけど。」

 

「本当ですか!アイズさんと一緒ですね!」

 

喜ぶレフィーヤを見て小さく微笑むアイズ。

だがレフィーヤは同時に魔法使いとして、一抹の興味を抱かずにはいられなかった。少年から感じられる魔力は自分が経験してきた魔力とは明らかに違った。エルフのレフィーヤやハイエルフのリヴェリアが先天的に会得、血族から伝授されてきた先天的な魔法とも、冒険者となってから覚える後天的な魔法とも違う。ならば少年の使用したのは何なのか。どちらにも属さないとなると自分達の知らない第3の魔法になるのか。

結論を決めるには早計だが、その可能性は高いだろう。何せ大きなレベル差を補うだけの術があの右腕と背中には詰め込まれているのであろうから。

レフィーヤはアイズと同じように少年の動きに集中する。腕、足、胴、口そのすべてを捉えんとして。もはや危なくなったら止めに入るという役割など頭にはなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ベルとベートの攻防が再開した。

ベートは先程と同じように瞬発力を駆使してフックをくり出す。それを見通していたベルだが、予測可能回避不可能であると割りきり、先程と同じく防御に徹する。

 

Hervir el stand,mi sangre(沸き立て、我が血潮)

Peso, endureciéndose(重量、硬化)

 

魔術回路が再び鈍く光り、ベルの体を強化させる。その耐久は第2級冒険者の防具に迫る。しかしベートはlv5 の第1級冒険者。加えて彼は肉弾戦を好む。さらに狼人の持つ鋭い爪が確実にベルの体を傷つけていく。

打撃による打撲、爪による擦過傷。腕を振り抜くだけで摩擦熱が起きそうな程のラッシュ。ベルの体力は削られていく。

観戦していた者達ももはやいいようになぶられるベルを見物にしているのみだ。

しかしベルの目から闘志は消えていない。足をしっかりと地につけ立ち、頭部を守るように両腕を構えている。

 

「おいおいどうした!守っているだけじゃつまらねぇぞ!」

 

ベルの腹部に重い一撃がきた。続けて二撃、三撃。ベートのフックが鳩尾に入った。

 

「ーーーーーガバッ!!」

 

いくら強化しているとはいえ、人である以上格上相手に急所を殴られては耐えられるものではない。ベルは思わず膝をついて胃液を吐き出す。

 

「あーあぁ、あれだけたんか切っておいてその程度かよ。みっともねぇなぁおい。」

 

崩れるベルを見てベートが吐き捨てた。

ベルはまだ吐きそうな不快感をなんとか抑え、顔をあげてベートを見上げる。

その表情はいつも通りの弱者を嫌う、酒場で自分を雑魚と罵ったときと同じだった。

 

ーーーふざけるなよ。

 

ベートが背を向けて去っていく。彼の先にはロキファミリアのメンバーが何人かいた。

 

ーーーーーまだ戦える。戦わなくちゃならない。

 

シルが人をかき分けてベルの側へと駆けつける。しかしベルに彼女の声は届かない。

 

ーーーーーーーベル・クラネルは強くなくちゃいけない。勇気を紡ぐために。捨てた思いに報いるために

 

まだ強化されている肢体。気合いをいれるために右腕で胸を思いきり叩くと、太鼓のように音が響き、ベート達も振り向く。

 

ーーーーーーーまずは僕を雑魚と呼んだお前を

 

ベルはしっかりと二本の足で立ち上がる。その目にベートだけを捉えて。

 

ーーーーーーー認めさせる!!!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一方ベルを見ていたロキファミリアのメンバーは驚愕していた。

冒険者とは元来危険に挑む職業であるが、必ずしも全ての者が絶対的に敵わない相手にも物怖じせずに向かっていく訳ではない。

それもそうかもしれない。命がかかっているとなればそれ相応の準備をし、無理をせずに帰ってくるものなのだろう。敵わない相手からは大人しく逃げることが利口である。

しかしそれでは成長は出来ない。どんなに惨めだろうと、泥まみれだろうと、歯を食いしばって立ち上がって来たものにこそ恩恵はlvやステイタスの上昇などを授けるものだ。例に漏れず、今ベルの姿を目に写しているベート、ティオネ、ティオナ、アイズ、レフィーヤもそれを体験している。

だからこそ、5人は直感的にベルを見て理解することが出来た。

 

こいつは必ず自分達に追い付く

 

ベルのアイズへの「横取り発言」を思い出したティオナは確信する。この子は強い。ミノタウロスを狩ろうとしたのも頷ける、と。

ベルの視線がベートだけに注がれているのに気がついたティオネはベートに話しかける。

 

「ご指名みたいね。あの子まだやるつもりよ?どうするの?」

 

「・・・・それ相応に迎えるまでだ。」

 

さっきまでの見下す態度から一転、ベートは獲物を狩る目をしていた。そう、ベルを一人の敵として認めたのだ。

数歩進み、頭から血を流し、そこらじゅう傷だらけのベルとの距離がある程度になるとベートは立ち止まる。

 

「おいテメエ。名前は?」

 

「・・・ベル。ベル・クラネル。」

 

「そうか。俺はベート・ローガだ。覚えておけ。」

 

あの凶狼(ヴァナルガンド)が自分から名乗ったぞ!

 

観戦していた冒険者や一般ピープルはどよめくが、一部の腕の立つ者や観戦していたロキファミリア勢から言わせればそれは当たり前の流れ。

 

ベートは一瞬でベルの左に移動し、右足を大きく振り回し、彼の主装備たるアイアンブーツをベルに振りかざさんとする。

 

(この時を待っていた!)

 

回し蹴りのような隙の大きい攻撃は一瞬ではあるが相手を視界に捉えられない時間がある。ベルはベ―トのアイアンブーツを見てから大技は踵落しか回り蹴りか目星をつけていた。どちらも予備動作に時間を要する技だ。

そのうちの一つが今自分にかけられんとしている。この好機を逃がす手はない!

 

時間自制御(タイムアルター) 二倍速(ダブルアクセル)!!」

 

瞬間、ベルの周りの世界は遅れる。

すぐさまベ―トの懐に潜りこむとまずはお返しとばかりに左腕でボディに突き刺すようにフック。ベ―トは予想外のベルの動きに対応できず、もろに鳩尾に拳を食らい、苦悶する表情となる。そのまま右ストレートを決めようとするが時間自制御(タイムアルター)お決まりの世界の修正による体へのフィードバックを受け、心臓へのダメージで意識を失いかけるベル。

ベ―トはその隙を見逃さず今度は左足で回し蹴りをし、ベルを高く空中へと浮かせる。

幸か不幸か、ベ―トの蹴りのおかげで意識を引き戻されたベルは自分が今空中にいて、下にはベ―トが体勢を低くして構えているのが分かった。

 

「認めてやるよベル・クラネル。お前は雑魚じゃねえ。引導を渡してやる。」

 

そういうとベ―トの周囲には彼の脚を中心に炎が渦巻く。気高く、力を求め、諦めを知らない魔力の炎。その炎はベルを飲み込まんと意志を持ってベルを睨み付ける。

 

「その程度の炎じゃ僕の信念は燃やせない。」

 

Hervir el stand,mi sangre(沸き立て、我が血潮)

Encuentro mágico , preparación de liberación(魔力集結、解放準備)

 

ベルは右腕を後ろに引き、左腕を伸ばして自身の下にいるベ―トに狙いを定める。右腕に自信に流れる魔力の全てを集結させ、魔術回路もフル稼働である。バチバチと筋組織の神経に漏電し、針を通したような痛みを感じるが、そんなものはこの一騎打ちにおいてはまったくの問題ではない。無視してさらに魔力を流す。

 

 

落下するベルめがけてベ―トが炎を従わせて跳ぶ。

地面を蹴った瞬発力に任せて右足を突き出し、ベルを蹴り穿つつもりだ。

一方ベルは最も自身の拳が最大威力で当たる距離まで来るようにベ―トを迎え撃つ。

2人の距離が4m、2mと近づいていく。そして残り一メートル、お互いに勝負を決めんと気合の入った声が響く。

 

「ハティ!!!!」

lanzamiento(解放)!!!!」

 

瞬間、ベルの腕は魔力解放による加速度の上昇を得た右ストレートを、ベ―トは炎を纏わせたアイアンブーツによる加速の増した蹴りを互いにぶつけ合う。

響く衝撃波、伝わる炎の熱、肌をピリピリと刺す魔力の波。

二人の力のぶつけ合いは一瞬では終わらない。魔力、精神力の続く限り、その一撃で互いをつぶさんとしている。

 

「オラアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!」

「バンカアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

響く雄たけび。男の意地。冒険者としての矜持。一歩も譲らぬ信念。

 

衝撃波、炎の熱、魔力の波を次第に強くなり、周囲の建物に被害を出しそうになったところでティオナとティオネが止めに入ろうとするが、突如全てが止み、ベルとベ―トの攻防が爆発で終わる。

 

 

立ちこむ煙。誰もが煙を払って結果を待ち望む。

 

 

 

 

そして煙が晴れ、立っていたのは目立った外傷の無い銀髪の狼人、lv5冒険者、凶狼ベ―トローガ。

その横で、うずくまるように傷だらけのlv1冒険者ベル・クラネルが特に右腕を、皮が剥がれ血まみれの状態で倒れていた。




Q.魔術って秘匿すべきものじゃないの?

A.ベル君酔ってたし使ったの身体強化だけだしギリOKかな?って(汗)

Q.色んな人に見られたら神秘性が下がって威力とか効果下がるんじゃ?

A.神様が横歩いている世界だがら神秘性についてはノーコメントで。
  メンゴ!よく考えてない!

次回
またベル君はロキファミリアでお世話になるよ!

因みにヘスティアはヘファイストスにナイフ造って!って頼んでるとこです。主神が頭下げてる時に喧嘩やらかすベル君。ほんと畜生ですわ

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