ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中)   作:ヤママ

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中々話が進まない・・・


更新頻度少なくなると思います。すまぬ。てへぺろ。


そして少年は酒に呑まれる・・・?

ベルは魔石の換金を済ませると、エイナに拳でグリグリされた頭を痛そうにしながらギルドを出ていった。その際、「やりすぎちゃったかしら・・・」と心配そうにベルが出ていくのを見送ったエイナ。それと同時にベルが魔石を換金する量に違和感を覚えていた。

普通冒険者は取った魔石のほとんどを換金し、残った少しを魔石を動力として動く機具に使用する。そう考えるとベルが手元に残しておく魔石はあまりにも多すぎる。ヘスティアファミリアの眷属はベル一人のみだ。規模から考えても精々小さい魔石が2、3個あれば十分だろう。だが彼はとってきた魔石の半分、金額にして8000ヴァリス相当を自分の手に残している。あまりにも必要過多な量。お金に変えてしまった方が良いのは明白。

 

では一体何故?

 

換金以外の用途といえば、魔石を利用したアイテムや武器の作成のみだろう。

しかしベルがそのようなアイテムや武器を使用している様子はない。ギルドで買ったナイフを買ったその日のうちに壊し、彼が現在もつ獲物は自前の華奢な短剣のみ。

鍛冶師のところへ持っていっていくのだろうか?、とも考えたが、ベルからそのような話も聞いていない。

 

「もしやベル君自らアイテムや武器の作成を!?なんてことはあるはずないわよねー。」

 

物好きな冒険者ならするだろうがそこまでの物好きは大体ダンジョンに相当な期間潜り続けている古参の者か、冒険者を辞めたファミリアの者と相場が決まっている。ベルはどれにも当てはまらいのだ。

 

今度ベル君になんで魔石を全部換金しないのかきなきゃね

 

ベルの背中を目で追いながら思うエイナであった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ベルが根城(ホーム)に戻ると、ヘスティアは居らず、

 

「何日か部屋を留守にします。夕食は一人で済ませて下さい。 ヘスティア」

 

と書かれたメモがテーブルの上にあるのみだった。

ベルはせっかくなのでヘスティアと共に豊穣の女主人へ行こうと思っていたが、いないのでは仕方ないと一人で行くことにした。

 

 

豊穣の女主人へ行くと、そこは酒場特有の賑やかさと騒がしさで満ちていた。夜の町に魔石の電灯が周りと比べると騒がしさも相まってか、ベルには一層明るく感じられた。

 

「冒険者さん!来てくれたんですね!」

 

「どうも。朝はお弁当ありがとうございました。」

 

店に入ると、朝に弁当をくれた銀髪の店員がベルを迎えた。弁当が包まれていた布を返すとベルはカウンター席へと座る。その時に店員に「シル・フローヴァです。ようこそ、豊穣の女主人へ!」と自己紹介を受けたため、ベルも自分の自己紹介を済ませた。ダンジョンで食べた摩訶不思議サンドイッチの味を思い出し、量の多いものは頼まないようにと、カウンターのガタイのいい女主人に小皿料理と水を頼もうとおもっていたベル。しかし席に座った瞬間に山盛りのナポリタンと醸造酒、魚の姿揚げがドン!と勢いよく置かれる。美味しそうな匂いにひとまずサンドイッチの再来が来なかったことにベルは安堵した。

 

「あんたが顔に似合わず大食漢だっていうシルの客かい!冒険者にしてはかわいい顔じゃないか!」

 

「・・・かわいいは余計なお世話です。それに大食漢って何の話?」

 

シルを見ると、ベルの顔からスッと視線を逸らす。

あぁこの人の仕業か。

 

「ごめんなさいベルさん。今夜の私のお給金も期待できそうです!」

 

「・・・よかったですね。」

 

ジト目でシルを見ながら食事を進めるベル。おぉ!このナポリタンうまい!

その様子にシルはクスリと笑い「気に入ってくれたみたいですね」とベルを笑顔で見る。

 

「この店、色んな人が集まって、沢山の発見があって面白いでしょう?私つい目を輝かせてしまって、心がうずいてしまうんです。」

 

「結構すごいこと言うんですンね。でも分かります。刺激って大切ですからね。」

 

「ベルさん?なんで遠い目をしているんです?」

 

 

 

ベルは初めて魔術回路を生成する際、魔法陣の描かれた洞窟に閉じ込められ、結局3日間閉じ込められた。食糧はなく、あるのは湧き水のみ。空腹ですぐに動けなくなり、ベルは考えた。ベル・クラネルとは何か。神秘とは何か。魔術とは何か。とにかく考えた。何も考えられなくなるのが怖かったから。そして考え続ける内になんやかんやあって明鏡止水したベルは見事魔術回路を取得した。

だがその後が問題、取得したものだから開けてくれるものだと思っていたら開かない。一向に開く気配がない。しかも外で雨か洪水でもあったのだろうか、湧き水の量が急にまし、洞窟全てが水に満たされるのではないかという勢いで増え始めた。死んでたまるかとその日に生成した調整も済ませていない魔術回路をフル活用して洞窟をぶち破って何とか外へでた。

そして彼が目にしたものは優雅に紅茶を飲む師匠の姿。

 

『あぁクラネル君、魔術回路生成おめでとう。いやぁ、突然雨がかなり降ってきたもんだから助けにいかなくちゃなぁと思いつつも突然お茶のみたくなっちゃってさぁ。お茶葉選んだりお湯の最適温度見てたら無理っぽくなったから諦めてゆっくりお茶呑んでたんだけど、まさか生きているとは!!それにしても出来たとはいえお粗末な魔術回路だねぇ。腕の感覚ある?それに君の今の姿、泥だらけですげぇ汚いよ。悪いけど近づかないでくれるかい?ってクラネル君?だから近づかないでって!ってあれ?何でそんな無表情なの?そして何で魔術回路発動させてんの?ま、待て!待つんだクラネル君!待ってプリーズ!話せば分か『ボコォ』グハァ!』

 

これが彼の記念すべき師匠を殴り始めた日となった。

 

(まぁ今思えばあれも刺激だよな。いい思い出、いや、思い出したら殴りたくなってきたな・・・)

 

「ベルさん?大丈夫ですか?なんだかこれ以上ないってくらい顔が歪んでますけど・・・」

 

「へ?あぁいや。何でもないですよ。何でも。」

 

「ご予約のお客様、ご来店にゃ!」

 

猫人の店員の大きな声に目を向けると、大人数の団体がぞろぞろと入ってきた。先頭の細身で目の細い神が小人族やエルフ、ドワーフに獣人と様々な種族を従えている。そのなかに知った顔が3、4人いるのを見つけてベルは思わず口を開けてしまう。

 

(げっ、ロキファミリア。それに剣姫もいる。)

 

「ロキファミリアさんはうちの常連なんです。主神のロキ様がいたくここを気に入られたみたいで。ってベルさん?」

 

(リヴェリアさんがいるのはいいとして、あの狼人とアマゾネス2人もいる。まぁここはカウンターの奥の席だし向こうからは見えない。あの人達がいなくなるまで待つか。)

 

「ベルさん!私の話聞いてます?」

 

それまでうつむいてロキファミリアとの非接触方法を考えていたベル。声に顔をあげると頬っぺを膨らませてベルを軽く睨むシルの姿。

 

「あぁ、すみませんシルさん。ちょっとボーッとしてました。」

 

「もうベルさんったら!もう酔ったんですか?」

 

「いえ、さすがに醸造酒一杯では・・・というか僕まだ14なんであまり酒は・・・」

 

「そう言いなさんな!14でそれだけ飲めれば立派さ!さぁ飲んで食って金を落としていきな!」

 

ベルの言葉にカウンターの女主人が空になったグラスにさげ、醸造酒とソーセージを置く。

 

「いやおかみさん!頼んでないですよ!」

 

「遠慮しなさんな!それと私の事は『ミア母さん』って呼びな。そう言われているからね。」

 

ベルは苦笑いで返すとソーセージをつまみに醸造酒を飲む。強引ではあるけど酒場の雰囲気が嫌いではなかったベル。それに何より美味しかったので、食欲が進み、グラスは空となりほろ酔い状態だった。

ロキファミリアいつ帰るかなー。ミア母さん、サラダと醸造酒お願いします。

なんだいよく飲んでよく食うね!本当に大食漢じゃないか!気に入った!一杯はサービスしてやるよ!

 

 

「そういえばアイズ!あの話皆にしてやれよ!」

 

ロキファミリアの面子も酔いがまわったのだろうか、あの狼人が全員に聞こえるようにか、酔いのせいか、大声で語り始めた。

話を聞く限り、17階層で仕留め損ねたミノタウロスを7階層で見つけた際、ある駆け出しが棒立ちでミノタウロスと対峙していたとのこと。アイズがミノタウロスから助けたものの、その冒険者はミノタウロスの血を浴びて真っ赤なトマトの様になったそうだ。

 

ーーー考えても僕のことだな。

 

「しかもそのガキ、気絶したくせに自分で仕留められたとか抜かしやがってよぉ!雑魚でもあそこまでいくと笑えるぜ!」

 

ロキファミリアの一団からどっと笑いが溢れる。

・・・ベルの持ったグラスの取手部分がミシリと音をたてて壊れそうになっていた。

 

「なんやそういう話やったんか?わてはてっきりヘスティアんとこのガキがアイズたんにちょっかい出したもんかと。」

 

んなわけあるかぁ!逆にそっちの剣姫が僕の獲物を横取りしたんだろうが!

 

ベルは喉まできていた言葉を飲み込んで醸造酒を一気に飲み干す。

ミア母さん!おかわり!

あんまり飲み過ぎるんじゃないよ。

 

「例えばだアイズ、もしあのガキに言い寄られたらどうする?俺とあのガキ、どっちをとる!?」

 

「ベート、何言ってるかわかるかい?相当酔ってるね」

 

「うるせぇ黙ってろ」

 

おや?なんだか話が可笑しな方向に流れてるぞ?

ベルはバカにされた不満を一旦おいて集中して聞き耳をたてた。

 

「お前は雌としてどっちに尻尾ふってめちゃくちゃにされてんだ?」

 

見ると狼人の方はかなり真剣な表情で剣姫を見て問いかけている。

真面目な顔でゲスい告白をしている狼人の姿がツボに入ったベルは口を抑えて笑いを我慢している。

 

「そんなこと言うベートさんだけはごめんです。」

 

「クッ、フフッフハ、アーハッハッハッハハッハ!!ヒーヒー!フラれてる!フラれてやんの!人の事だしに使っておいて!ダッセェなおい!アッハッハッハッハ!!!」

 

「うるせぇぞ!外野が口出しするんじゃねぇ!っててめぇは」

 

ベートの視線の先には、奥のカウンター席で自分を指差ししてゲラゲラ笑っているほんのり頬の赤い白髪の少年が。

 

「ハッ、トマト野郎じゃねぇか。雑魚が吠えるんじゃねぇよ!」




ベル君の口調が変わったのは14歳なのに4杯も飲んで酔っぱらったから。

次回
酒に酔ったベル君とベ―トでも戦わせるかな。どうしよう・・・

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