ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中) 作:ヤママ
本当はもっと進むはずだったのに・・・
今回はステイタス更新の前のみです。
次回エイナと豊穣の女主人やります。
迷宮都市オラリオの街はずれ。
かつては街の拠点だったのだろうか、神殿の名残を残す列柱が崩壊した状態で放置されている区画。その区画の中にある、廃墟の様な教会が一つ。本来教会を彩るであろうステンドグラスは割れ、信者のために用意された長椅子は埃を被り、中には壁に立掛けているものもある。
そんな寂れた教会にベル・クラネルは何の抵抗もなく入り、腐りかけた木の教壇を通ると、地下室への階段を下りていく。
「神様、ただいま帰りました。」
「うんにゃーー!!お帰りベル君!今日は随分遅かったじゃないか!心配したよ!」
ベルにダイブするように抱き着く少女?女性?が一人。
ベルを迎えたのは彼の所属するファミリアの主神『ヘスティア』
家の炉を司り、家庭生活の守護神とされる彼女は、容姿だけ見れば美人なロリ巨乳であり、引くて
又、天界にいた当時、悪神として「暇だから戦争しようや!」とやんちゃしていた
そんな彼女が娯楽を求めて下界へと降りてきた訳だが、しばらくは友人である鍛冶を司る神『ヘファイストス』のファミリアに厄介になっていた。
しかしファミリアを作ることもせず、ただただ日々を浪費していくヘスティアに業を煮やしたヘファイストスが彼女を追いだしたのだ。遂に一文無し、宿無しになった神は明日の生活も見えないホームレスになってしまった。
本格的に眷属探しを始めなくてはいけなくなったヘスティアだが、そう簡単に冒険者志望の者が見つかる訳でもなく、途方に暮れていた時に現れたのが、同じくファミリア加入のために途方に暮れていたベルだった。
お互いがお互いを救いの手としてwinwinな関係で結成された『ヘスティアファミリア』
それに一人しか眷属がいないので、自然と接する機会も多く、お互いに今日あった出来事を話し合ったりを毎日している。2人はまさに
「はい。実は・・・・・」
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「えーーーーーー!!!ミノタウロスに立ち向かった挙句気絶してロキのところで世話になっただってーーー!!!」
「ま、まぁ要点をまとめればそうですけど・・・」
ベルの話にヘスティアはかなり頭痛がしていた。
ミノタウロスを7階層まで運んだのはロキファミリアの失態であり、もしベルが撤退を選んだうえでミノタウロスに襲われてしまい、ロキファミリアの治療を受けたということであったなら、その気はなかったとしてもlv1冒険者に
だが今回は、レベル差のあるモンスターに対してベルが望んで戦いを挑み、経緯はどうあれロキファミリアで治療を受けたとのこと。ヘスティアとしてはたった一人の眷属が世話になったので、感謝してもしきれないが、いかんせん相手が因縁のあるロキでは話は別だ。
ロキのことだろう、確実に次会った時に何か言ってくる・・・!
(まぁそれは僕の問題だ。何とか対処するとして、問題は・・・)
目の前でまだ言い訳しようとしているベル君だ!!
「でも神様?僕、後少しのところで倒せたんですよ?テンションマックスで覚悟完了して『さぁ!迎えうつぞ!』ってところで剣姫の横取りですよ!?信じられます!?」
「僕はlv1の君がミノタウロスを倒せると思ったベル君の神経が信じられないよ・・・」
「そんな!?でも魔術もあるし勝てるかな、と。」
「それは驕りというものだよ。ベル君。」
ベルはファミリアに加入するにあたって、ヘスティアに何故冒険者になりたいのか、なって何を成し遂げたいのかを聞かれたため、ベルは語ったことがあった。
祖父の死を認めた自分の弱さのこと、もう繰り返さんとコブリンの群れに飛び出したこと、自分に魔術を伝授したクソ師匠に不本意ながら憧れ、近づきたいと思っていること、そして信じる勇気を力の無い人達に、信じることが出来なかった昔の自分を克服するために教え伝えたいこと。
その際、魔法とも違う、オラリオの
「確かに君の持っている能力は他の人には無いものだ。万能なレアスキルみたいなものだと思う。でもだからって無茶していいことにはならないよ。」
「・・・神様。でも僕は!」
「でももへったくれもあるか!!!」
ベルの「でも」が引き金となり、ヘスティアは大声でベルを怒鳴った。その目は微かに揺れている。
「ベル君、君が強くなりたい理由も分かる。二度と自分と同じ思いをさせたくないという君の思いは確かに尊いだろう。でもね、」
諭すように、子守唄を歌うように
「君は僕の唯一の眷属だ。ベル君がいなくなったら僕は寂しいよ。お願いだベル君。僕を置いていかないで。僕を、一人にしないでおくれ。」
息子に語る母のように、母に甘える子供のように、愛を思う恋人のようにヘスティアはベルに伝える。その目に涙を微かに流しながら。
だがそれでも・・・
「ごめんなさい。神様。」
彼にも譲れないものがある。
「それでも僕は、強くなりたいんです。」
かつての自分のために。自分と同じ思いをしているかもしれない誰かのために。
それが
「強くなるために無茶もします。危険な目に遭うと思います。でも、」
きっと僕が目指すものは、無茶とか危険をおかさないとたどり着けないものだから
おじいちゃんの話を思い出す。どんな理由があろうと女の子を泣かせちゃいかん。
神様の顔を見る。涙を浮かべ、目元は赤く震えている。あぁ、僕今すごく悪いことしてるんだろうな
「安心して下さい、神様。僕は神様を残してどこかにいったりなんかしません。」
神様にこんな表情させているのは僕だけど
「信じて下さい。僕のことを。神様に信じてもらえているって思うだけで、僕は強くなれますから。」
神様にはいつも笑顔でいてほしいから
「だから泣かないで。ヘスティア。」
ベルはあやすようにヘスティアの頭を撫で、人差し指の背で涙を拭った。
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「全く、ひどいやつだなベル君は。」
「すみません・・・」
ヘスティアはベルの撫でをしばらく受けると、泣き止んだようで、顔をあげる。その目は充血し、目の周りは腫れていた。
女の子を泣かせてしまった事実にベルは罪悪感にさいなまれる。
(こんなのおじいちゃんの教えじゃなくたって悪いことって分かるよ・・・!)
だがヘスティアがベルに向けた表情は笑顔だった。それもこれまで見たことない程のとびっきりの笑顔。後ろで光が見えた気もしたくらいだ。
(あれ?僕神様が喜ぶようなことしたっけ?むしろ最低なことしか言ってない気がするんだけど?)
「ベル君。確かに君には何を言っても無理そうだね。そこは諦めるよ。」
「えっ?」
ベルとしては、意外どころではない反応だった。なんなら自分を止めんとヘスティアが
「なんで・・・」
「君の言ってることは正直バカとしか言いようがないよ。要するに無茶はするけど気合いでなんとかするってことだろう?」
「そりぁ、まぁ・・・」
まさにその通りだが、もっと言い方があってもいいのではないだろうか。
「でも『あなたが信じてくれれば』なんて言われちゃ、僕も主神冥利に尽きるってものさ。」
「神様・・・」
自分の話を無茶で馬鹿と知った上で『信じる』と言ってくれた。ベルは自然と胸から熱いものが流れるのを感じた。
「ヘスティア」
「えっ?」
「さっきはヘスティアって名前で呼んでくれた。」
枕を抱きしめ、体育座りでベルを上目遣いに見るヘスティア。その姿は神ではなく、一人の恋する乙女である。
「あ、あの、ええっと、それはその、思わずノリでっていうか、自分でも自然と出ちゃったっていうか・・・」
ヘスティアの突然の変貌にベルは戸惑った。
目の前の神様は一体だれだ?僕の知ってる神様じゃない。それになんでこんなに見ててドキドキするんだ・・・?
「次からも名前で呼んで。」
「え!?え!?えーーー!?!?!?」
「・・・ダメ?」
▼ヘスティアの小首を傾げながらのおねだり攻撃!
▼普段とのギャップにベルはいっぱいいっぱいだ!
「ハ、ハイ。ヘスティアサマ。」
「『様』はいらないんだげど、まあいいか!さぁベル君!今日はバイト先からもらってきたじゃが丸でパーティしよう!今夜は君を寝かさないぜ!」
「オ、オテヤワラカニ」
この後普通にステータス更新して寝た。
ステイタスの詳細に関しては次回前書きにでもつけときます。正直よく考えてない。
でも一応考えているのは
魔力EX(いまがlv1だから)
スキル 憧憬一途(憧れているのは、師匠の魔術使う姿全般。特に月随霊液)
魔術回路とかは自前のものなのでスキルとか恩恵には含まれません。今のところは。