ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中)   作:ヤママ

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あけましておめでとうございます。

友人宅で新年迎えたら風邪を貰ってしまってずっと寝てました。
バイト先に「風邪ひいたんで出れません。」って電話で言ったらめっちゃキレまれました。なんでぇなん?


今回はちょい長くなってしまいました。楽しんでいただけると幸いです。


そして少女たちの絶望と希望

「ふーん、つまりベル君は女の子に会うためにお祭りに来たと。抜け目ないね。」

 

「いや色々端折ってますよねその言い方だと。財布を届けに来ただけですから。それ以外目的なんてありませんでしたから!一体何をそんなに怒っているんです?」

 

「知るもんか!」

 

ヘスティアはベルがシルに財布を届けるために怪物祭(モンスターフィリア)に来た事を知ると急に態度を変えて疑わしい目でベルを見つめる。

「デートしよう!」と誘われ、女が関連する話題を出したら相手の機嫌が悪くなる。相当鈍感な奴でない限り、やきもちをやいていることなど気づきそうだが、不幸なことにベルは鈍感な奴だった。ヘスティアの様子を見ても「僕何か悪いことしました?」と言わんばかりに頭に疑問符を浮かべている。そんなベルを見てヘスティアは思わず溜息をつく。自分はどうしてこんな鈍感に恋してしまったのか、と。

 

「ヘスティア様?何ですその溜息?」

 

「ほっといてくれ・・・」

 

肩を落とすヘスティアの様子に大体の原因は自分であると察したベルは何が悪かったのか聞こうとした。が、話しかけようと出かけた声は、闘技場から聞こえる悲鳴に塗りつぶされた。

女性の声らしき甲高い悲鳴に目を向けるベルとヘスティア。そこには白い体毛で包まれた4mはありそうな巨大モンスター『シルバーバック』が闘技場の入口のアーチにぶら下がっていた。ガネーシャファミリアによって万全の体制で隔離されているはずのモンスターが出てきたことにより周囲は阿鼻叫喚な混乱に陥っていた。そんな中、シルバーバックは目にエスティアを捉えると、歓喜に鼻と上唇を上下させた。

 

『小さな私を捕まえて』

 

自分にそう命じた美の化身の命に報いることが出来る。そうすれば更なる魅了に、寵愛に預かることが出来るだろうと。いざ捕まえんと景気づけにシルバーバックは咆哮をあげる。

 

「グゴォオオオオオオ!!」

 

「・・・ねぇベル君、あのモンスター僕を見ていないかい?」

 

「ヘスティア様、こっちへ!」

 

シルバーバックが地上に降りて一歩踏み出すより前にベルはヘスティアの手を引いて逃げる。逃げる二人をシルバーバックは跳び跳ねるようにして追いかける。ベルだけであれば優にシルバーバックを撒くことが出来たであろうが、隣にはヘスティアがいる。加えてシルバーバックがヘスティアを狙っているとすれば逃げるのは得策ではない。戦闘能力のないヘスティアを守るためにはこの場でシルバーバックを倒すしかない。

 

「ベル君、どうしたんだい!?早く逃げないと!」

 

広場の中央辺り、皆が逃げて無人となった場所で立ち止まるとシルバーバックと向き合うように振り返り、守るようにヘスティアの前に立つベル。

 

「ヘスティア様は下がっていてください。ここであのデカ物を倒します。」

 

「ベル君・・・お願いだ。無事で帰ってきてくれよ。」

 

「もちろんです。」

 

ベルはヘスティアを後ろへと逃がすと、跳躍を繰り返して目の前に飛び降りてきたシルバーバックを睨み付ける。シルバーバックが跳び跳ねた後の地面は芝生が大きく捲れており、その巨体の重量から生み出される破壊力を思い知らされる。

シルバーバックには自分に敵意を向けているのが見るからに矮小で弱々しく思えた。そんな存在が自分の歩みを妨げんとしているのは堪らなく気に食わなかった。

 

「グゴォオオオオオオ!!!」

 

どけ。退いても殺す。退かなくても殺す。

シルバーバックはベル個人に、自分達よりも脆弱なたった一人の人間に殺意を向ける。顔を近づけ、咆哮をあげての威嚇。しかしベルが怯むことはない。それどころかシルバーバックを殺さんとする敵意が更に増す。その敵意にシルバーバックの中に恐れが生まれた。

自分が、劣っていると判断した相手にたった数秒で恐れを抱いてしまった。その事実を否定せんとしてシルバーバックはベル目掛けて左腕を降り下ろした。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

ベルの行動は早かった。

シルバーバックの拳をバックステップで避ける。その後すぐにシルバーバックの腕についた鎖が、腕が降り下ろされた勢いに任せてベルを傷つけんと襲いかかる。シルバーバックが意図したかは分からないが、結果としてステップした後の僅かな硬直を狙われる形となり、今度は避けることが出来ない。

 

「ベル君!」

 

ヘスティアはベルを案じて思わず声をあげる。小さな体のけん属にあの巨体の攻撃を受け止めきれるのだろうか。ヘスティアの脳裏にベルが打ち付けられる姿が浮かんでしまう。

しかしそんな不安は、すぐに払拭されることとなる。

 

「ふんっ!!」

 

魔術回路を発動させたベルはなんと鎖を受け止めたのだ。あまりの予想外な事態にシルバーバックはもちろん、ヘスティアも固まってしまった。

しかしこれで終わりではない。

 

「でえぇぇぇりゃぁぁぁぁ!!!!」

 

ベルは続けて鎖をその手に持ち、なんと繋がれたシルバーバックを半円を描くようにして振り回し、地面に打ち付けた。

 

「もういっちょぉぉぉ!!!!」

 

しかも一回では終わらず、二回三回と続けて体格差が4倍近くあるシルバーバックを叩きつける。

シルバーバックは白目を剥き、気絶している。もはや戦闘能力はないだろう。後はそのうちやって来るであろうガネーシャファミリアの者に任せればいいかと思い、ベルはヘスティアの元へと戻る。ヘスティアは先程のベルの行動がかなり荒唐無稽であったからだろうか、驚愕と言うより放心状態に近い苦笑いでベルを迎える。

 

「ヘスティア様、終わりました。」

 

「ベル君、ステイタスの更新をしている僕が言うのもなんだけど君は本当にlv1なのかい?」

 

「何言ってるんですか?」

 

ヘスティアの純粋な疑問にベルも疑問で返す。何かおかしいことしただろうか?、と首をかしげるベル。

一方ヘスティアはベルの実力への無自覚さ、魔術の強力さに危険を感じていた。

人間の倍あるモンスターを投げ飛ばすなど、レベルのある冒険者であろうとなかなか出来ることではない。ましてやベルはlv1の冒険者。もしステイタスの『力』がSに届いていたとしても、出来るとは考えにくい。実際ベルのステイタスで現在Sを上回っているのは『魔力』EXのみである。これは恐らく魔術によるところが大きいだろう。そうすると、自然とベルには疑いの目が向けられるだろう。

レベルに見合わぬ能力を持つということは嫉妬と偏見の対象になりかねない。事によってはベルへの嫌がらせや闇討ち、他ファミリアによる引き抜きが起こるであろう。

しかしベルにそんな事を気にする様子は無いようにヘスティアには見える。ベル自身、魔術は秘匿するものである、とヘスティアに説明しているにも関わらず、シルバーバック撃退については緊急事態なので仕方ないが、ロキファミリアとの喧嘩の際には酔った勢いとはいえ使っていた。自分から厄介事を運んできているようにしか思えない。

 

『・・・結局のところベル君は脳みそ筋肉なんだろうな、僕がしっかりしなきゃ。』

 

決意を新たにしたヘスティアであった。

 

「それよりベル君、せっかくだからあのモンスターの魔石貰ってしまおうよ。ベル君がやっつけたんだからさ。」

 

「それもそうですね。それじゃ、サクッとヤってきます。」

 

腰のアゾット剣を取り出し、気絶したシルバーバックの頭に突き刺そうとするベル。しかし振り下ろされるはずの剣は、突如その場で発生した大きな地震によって中断される。そして大きな何か、恐らく揺れの原因が地下を這いずり回り、今自分のいる辺り、シルバーバックの真下で止まったことを感じると魔術回路をフルに活動させ、大きく後退する。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

 

それと同時に大きく地面を割り、声ならぬ絶叫をあげ、蛇のように茎の長い植物型モンスターが毒々しい花と花の中央部に捕食のための獰猛な口を大きく開かせて登場した。

 

「グゴ!?グ、ゴ、ガァァァァァ!?!?!?」

 

植物型モンスターはその大きな口で生きたままシルバーバックを丸のみした。茎の部分をシルバーバックが通っていく姿が盛り上がっていて分かったが、数秒しないうちにみるみる内にその盛り上がりが小さくなっていく。ベルは植物の口から垂れているよだれが土や芝生を溶かしているのを見て思わず構えを整える。

 

『あんな溶解液に触れたら一たまりもないぞ!?』

 

ベルは口に注意してアゾット剣を構える。念のため内ポケットにしまった水月霊液(アグミス・ローグラム)を取り出そうとしたその時だった。

 

「! ベル君! 横!」

 

ヘスティアの警告に反応して防御の体勢をとろうとするベルだが間に合わず、植物の何本もある触手の一本が強くベルの脇腹を叩きつけた。その衝撃にベルの意識と体は大きく飛ばされ、地面を2回ほどバウンドした。

 

「っベル君!起きろ!起きるんだ!寝ている場合じゃないぞ!」

 

ヘスティアは植物の攻撃を受けてから起き上がらないベルの体に呼びかけながら走って向かう。しかしその間にも植物はゆっくりと、しかしヘスティアより速く触手をベルへと伸ばす。ヘスティアの脚では触手より先にベルにたどり着くことは叶わない。たどり着いたとしても触手からベルを守る術も無い。

ヘスティアの心にベルを失ってしまうので、という不安がよぎる。ベルがいない根城(ホーム)、一人きりでソファーに座る自分の姿。

 

『嫌だ嫌だ嫌だ!!僕には彼が必要だ!失いたくない!!ずっと一緒にいてほしい!!』

 

しかしいくら心で叫んでもヘスティアに出来ることは呼びかけること、祈ることのみだ。超越存在(デウスギア)でありながら、祈ることしかできないとは何たる皮肉であろうか。

 

「ベル君お願いだ起きて!!言ったじゃないか!僕をひとりにしないって!!目を覚ませーーー!!!」

 

だがベルが目を覚ますことはない。

その代わり、一級冒険者の吹かせた風が触手を細切れにして歩みを退けた。

 

「大丈夫?」

 

ロキファミリア団員、アイズ・ヴァレンシュタイン以下四名がベルとヘスティアを守るように登場した。

 

 

――――――――――――――――

 

 

『■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!』

 

「この鳴き声って、さっきのモンスター!?」

 

「まだいたんかいな・・・っ」

 

ベルとは別の場所で植物型モンスターを討伐したアイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤの4人。レフィーヤは脇腹に触手の一撃を喰らい、その状態で精神力を通常よりも消費する召喚魔法を使用した。ティオナ、ティオネは武器を所持しておらず、アイズはロキから渡された拾い物の剣を装備している。とてもじゃないがもう一度あの植物型モンスターを倒せるとは言い難い状態だ。加えて討伐のために必要なのはレフィーヤの召喚魔法であるが、そのレフィーヤは脇腹を抑え、治療が必要な状態である。

本来ならば他の冒険者などに討伐を任せればよいが、一級冒険者である彼女らが手こずった相手を他の冒険者が処理出来るとは考えにくい。それに一級冒険者などホイホイいるわけはなく、黄昏の館へ戻り、フィンやリヴェリアに救援を要請する時間もない。

ロキは無理をさせることを承知で彼女らに苦渋の選択を下した。

 

「・・・みんないけるか?」

 

「うん。大丈夫。」

 

「あの糞花くらい何匹来たって倒せるわ!」

 

「い、いけます!」

 

悪条件であるにも関わらず、物怖じせずに立ち向かう気満々の眷属にロキは頼もしさを感じて小さく笑う。

 

「ありがとうな。でも無理はせえへんように。特にレフィーヤ。」

 

「は、はい!」

 

「うちはガネーシャんとこの子供ら連れて来るさかい、それまで頼むわ。」

 

「分かりました。でもガネーシャファミリアが来る前に倒しちゃってもいいんですよね?」

 

「・・・・ブ、ハッハッハッハ!!!!ええで!かましてき!んでもってガネーシャから色々と迷惑料もらうとしようか!!」

 

ニヤリと人の悪い笑みを浮かべて聞いてきたティオネにロキは一瞬目を見開きつつも大爆笑して言葉を返す。言葉を受けた4人は頷くと植物型モンスターの鳴き声の方向へと飛んで行った。

 

「みんな・・・怪我だけはせえへんようにな・・・」

 

見送るロキの表情は悪神らしからぬ子供の無事を祈る母親のようであった。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「レフィーヤ、さっきと同じように私たちであれの気を引く。その間に魔法の詠唱、いける?」

 

「はい、いけます。」

 

レフィーヤはイエスと答えるが、先程別の植物にもろに受けた攻撃は治療を必要とするものだった。無理はさせられない。加えて後ろにはベルとヘスティアの護衛を必要とする状態でいる。短期決戦で終わらせるしかない。

 

「ティオナ、アイズいくよ!」

 

「「了解!!」」

 

ティオネの合図で植物に攻撃を開始するティオネ、ティオナ、アイズの3人。それと同時にレフィーヤは詠唱を始める。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

魔法に反応して植物は触手をレフィーヤに向けるがそれを阻む3人の一級冒険者の打撃、剣撃。何人たりとその撃を止めることは叶わないだろう。もちろん、現にレフィーヤへと向かおうとする触手全てが3人によって断ち切られている。

 

[吹雪け、三度の厳冬 我が名はアールヴ]!!!

 

レフィーヤの召喚魔法の詠唱が終わったことを確認した3人はそれぞれ退避を始める。

4人は先程倒した植物型モンスターと同種の個体であると思っていた。そのためレフィーヤの詠唱さえ終われば勝利したも同然だった。しかし、

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『そうは問屋は卸さないんだよねぇこれが。私の為のクラネル君弄りなんだから。部外者にどうこうさせないよ。』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その油断が仇となった。

植物は中心の大きな花の口を大きく開けると叫び声と共に魔力を集中させた。そこにはエネルギー体が出現した。

 

「何あれ!聞いてないわよ!」

 

「魔法を使うモンスター!?」

 

「レフィーヤ!」

 

もう既に離脱態勢に入っていた3人には植物を止めることもレフィーヤの守りに入ることも出来ない。レフィーヤの魔法が植物の魔法を打ち破ることを祈るしかない。

 

[ウィン・フィンブルヴェトル]!!!

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

レフィーヤの魔法発射と同時に植物のエネルギー体も発射され、両者が激突した。

起こる突風、魔力の波、肌を震わせる衝撃波

このままでは押し負ける。そう思ったレフィーヤはこれが最後とばかりに残りの精神力を全て使いきる勢いで魔法に力を込める。

 

「こなくそぉぉぉぉ!!!!」

 

普段の彼女なら絶対に言わないであろう汚い言葉遣い。それほどこの一撃にかけていて、又余裕がないことが(うかが)い知れる。強大な魔力のぶつかり合いは、爆発する形で収束した。

爆風により土ぼこりが舞い、視界がぼやける。4人全員が構え、視界が晴れるのを待つ。そして見えてきた植物型モンスターは、

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

「そ、そんな・・・!!!」

 

レフィーヤの精神力のほとんどを使った魔法を受けたにも関わらず無傷でその巨体を存在させていた。

レフィーヤの魔法が通用せず、決定的一打を封じられたアイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤの4人。頼みの綱が切れた以上、後ろで倒れているベルと寄り添っているヘスティアを護衛しつつ撤退するしかない。

 

「ティオナは魔術使いと女神さまを運んでレフィーヤと撤退!私とアイズは殿(しんがり)!いいわね!」

 

ティオネは素早く指示を下す。

聞いた3人はそれぞれの役割をこなそうと動こうとするが植物が伸ばしていた触手の全てを突然地中に刺し始めたことにより、全員の目は触手に集中させられた。今度は何だ、下から攻撃を仕掛けてくるのか、と全員が身構えるが、触手が攻撃を加えることはなかった。代わりに、4人とベル、ヘスティア、そして植物を取り囲むようにして触手によってドームが造られる。

 

「逃げ道を封じられた!?」

 

目覚めよ(テンペスト)

 

アイズが剣に風を纏わせて触手の壁を切り裂かんとする。しかし触手は先ほどと同じ物とは思えないほど固く強固なものとなっており、逆にアイズの剣は折れてしまった。

 

「アイズさんの剣が・・・」

 

「・・・逃がさないつもりみたいねあの糞花。」

 

4人の中で最も強いアイズは剣を折られてしまい、ティオナ、ティオネは武器がない。魔法使いであるレフィーヤは魔法発射に必要な精神力をほとんど使い果たしてしまった。そして逃げ道は封じられ、恐らく外からの救援も触手に阻まれ来ないだろう。圧倒的に絶望的な状況である。打開するためには植物型モンスターの本体と思われる中央の一際大きい花を倒すしかないだろうが、この状態では出来ないと言えよう。4人の頬を汗がつたう。

 

そんな絶望的な状況に圧倒されてか、レフィーヤは背後から自分へと迫る触手の群れに気づくことが出来なかった。

 

「! レフィーヤ! 後ろ!」

 

アイズの声を聞き、後ろを向いた時にはもう遅く、レフィーヤは体中をしめつけられ、触手は例に及ばず、首もしめつけていった。

 

「ガ、ガ・・ア・・ァ・・・ァ」

 

「レフィーヤ!今助ける!持ちこたえなさいよ!」

 

レフィーヤがしめつけから逃れようとするほどしめつけは強くなっていくばかり。アイズ、ティオナ、ティオネが助けに行こうとするが、3人も触手が迫り、それぞれ処理するので手一杯だ。

ティオナとティオネは自慢の馬鹿力で地面に次々とクレーターを作る勢いで、アイズは剣が折れたというのに魔法だけで迫りくる触手を次々と切断しレフィーヤの元へと急ぐ。しかし触手の猛攻は止まることなく、むしろ数は増えていくばかり。道のりは激しく遠くなっていく。

やがてレフィーヤにも限界が来た。首から離さんとして触手を掴んでいた両手の力が抜け、ダランと下ろされる。その姿を見て3人の目は見開かれ、手は震え始めた。

 

「こんの・・・!邪魔くさいのよ糞花ぁ!!どけぇ!!!」

 

「くそ!!なかなか減らない!!」

 

「レフィーヤ!あきらめちゃダメ!レフィーヤ!!!」

 

 

まだ間に合う!今助ければまだ間に合う!!

3人はさらにギアを上げるが、あと一歩、あと一歩のところで触手の波を防ぎきれない。せめてもう一人、もう一人いてくれれば・・・!

 

 

 

 

 

Hervir el stand,mi sangre(沸き立て、我が血潮)

Slice()

 

 

 

 

呪文と共に、魔石の輝きを持った液体が3人歩みを妨げる触手とレフィーヤをしめつける触手を跡形もなく細切れにした。

突然のことに驚きつつも背後の声に振り向くと、背中と右腕、そして右手に持つ黒いナイフをエメラルド色に鈍く光らせた魔術師、ベル・クラネルが周囲に踊る水を従わせて悠然と立っていた。

 

「ご迷惑おかけしました。お手伝いします。」




次回は

植物撃破
ベル君の魔術に関してロキがヘスティアに突っ込む
フレイヤと師匠の対面←これだけ本当に書くかちょい考え中

の予定です。

因みに植物は師匠によってちょい強化されてます。だからエネルギー体の発射(破壊光線)も出来ます。

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