ご注文はうさぎですか?~私はあなたあなたは私~ 作:れんにゅう
更衣室での件が収まり、私たちは今お店のホールで自己紹介をしていた。
「では、もう一度...香風 智乃です。春から中学2年生でここの今のマスターの娘です」
うん、落ち着いて良い子そうだね。この子が妹になってくれたらどれだけ私は喜んでしまうのだろう。ああ、可愛いな~。
「コホンッ...次は私だな...天々座 理世だ。春から高校2年生でここでアルバイトをしている」
この人は...うんやっぱりワイルドだね。でもなんというか...お嬢様っぽい雰囲気もするけど...歳もやっぱり私より1つ上だ。まぁ精神は私のほうが上だけど...あれ...歳を足したらもうそろそろ三十路...ううん考えないようにしよう。
「最後に私だね。保登 心愛です。春から高校1年生でここで下宿させてもらうことになっています」
うん。完璧これが普通の自己紹介だよね。そう、普通が一番。
「そういえば、お仕事の手伝いって何すればいいかな?」
「そうですね...リゼさんと一緒にコーヒー豆の袋をキッチンまで運んできてもらえますか?」
「わかったよチノちゃん。リゼさん行きましょう」
「あ、ああ...わかった」
私とリゼさんは倉庫にあるコーヒー豆の袋を運びに行った。
「ここだ、この袋をキッチンに運んでいくぞ」
「大きい袋だと思うけど...重そう...でもやるしかない...」
私は袋に手を掛け持ち上げ.......られたけど、これは普通の女の子には難しいくらいの重量だった。
いや、重すぎだ...え?コーヒー豆ってこんなに重いんだ...私みたいな普通の女の子にはこれはキツイだろう...そう
「リゼさん。これは普通の女の子にはキツイですよね」
私は袋を降ろし後ろをちらりと見ると、慌てて肩に担いでいた袋を降ろすリゼさんの姿が見えた。
いや、これは本当にすごい...もう片方の肩でもう1個持てそうだったよね?すごい力持ちだ...
「え!?あ、ああ!確かにキツイな!無理だ...普通の女の子には無理だ...!」
「ソ、ソウデスネヨネ...」
さすがリゼさん...あなたはすごい女の子だね...うん...
「ふぅ...仕方ないです。小さい袋を運びましょうか」
大きい袋の近くに一回り小さい袋があった。これならなんとか持って行けそうかな。
「よっ...ん..!」
小さくても重い...持っていけそうだけど、これは中々キツイ...
一回袋を降ろし、後ろを見ると...驚くことに小さい袋を両肩に2個ずつ計4個持っているリゼさんがいた。
....あなたはいったい何者?その服の内側にはすごい筋肉が隠れているの?
「小さい袋でも1つ持つのがやっとですね...うぅ重い...」
「え!?た、確かに1つ持つのがやっとだ..1つ...」
リゼさん...近々あなたに筋トレでも教わりたいと思います。
そう心に決め、必死にキッチンまで袋を運んだ。
袋をキッチンまで運ぶ作業から少し時間が経ち、今はお皿を拭いている。
お客さんは、今はいない。少しきが楽になっている。
お皿を拭いているとリゼさんが歩いてきた。
「そうだココア、今お客さんがいないから丁度いい、メニュー覚えておけよ」
「あ、そうですね。ありがとうございます」
メニューを受け取り、開いてみると...そこにはたくさんの種類のコーヒーが書いてあった。
「けっこう多い...覚えるのも一苦労かも...」
よく聞くカフェ・オ・レやカプチーノならわかるけど...グアテマラ・アンティグアやマンデリン・カロシとはなに?そんなの聞いたこともないけど...
「そうか?私は一目で暗記したぞ」
「...さすがです。すごいですね」
何この人...万能過ぎる...!?どこまですごいの...
「ふふ、訓練してるからな。チノなんて匂いだけでコーヒーの銘柄当てられるし」
チノちゃん...あなたもか...このお店にはこんなすごい人ばかりなのか...
「チノちゃんさすがだね。私より大人っぽいね」
「ただし、砂糖とミルクは必須だ」
ああ...今日一番安心した...気がする。やっぱりまだ中学生だもんね。
でも特技があるっていいな...
「はぁ...2人共いいな...私にはこれといって特技がないし...何かあったらな...」
はぁ...これが才人と凡人の差か...
っとそういえばチノちゃんはさっきから何をしているんだろう。
「チノちゃん何持ってるの?」
「学校の春休みの宿題です。空いた時間にしています」
えらい...宿題をこんなに真面目にしているなんて...!
せっかくだから見てあげようかな。どれどれ...数学か...
「あ、その答えは128でその隣は367だとチノちゃん」
「.....」
ん?リゼさんがこっちを見てなにか考えてる...何をしてくるのかな...
「ココア、430円のブレンドコーヒーを29杯頼んだらいくらになる?」
ふっ...そんな問題...さっきのメニューを覚えることより簡単だよ。
「12,470円ですよね」
「「...!?」」
これくらい暗算でできないと、大学生だったんだし...私の特技...見つからない...
「う~ん...私にも特技あったらな...」
「(こいつ意外な特技を...)」
特技はないかと探していると、お店のドアが開いた。
「いらっしゃいませ♪」
にこっと笑みを出しお客さんの所に歩いていく。
これでもレストランでバイトをしていた経験があるから慣れている。
「「(あの笑顔は今日一番...)」」
「あら新人さん?」
「はい♪今日から働かせていただくココアといいます♪」
自己紹介をしてお辞儀をする。この人はここの常連さんみたいだね。
「よろしくね♪キリマンジャロお願い」
「はい♪」
キリマンジャロ1つっと...ああ...この感じ久しぶりだな...
「「......」」
「チノ...あれは誰だ?」
「ココアさんです...たぶん」
「人ってああも変わるんだな...」
「あれがココアさんの特技でしょうか...」
「でも何だかんだ言って...」
「ココアさんが一番大人っぽいです」
ん?2人が何かを話している。気になるけどまずは注文を伝えないと。
「一応、接客は大丈夫かも。キリマンジャロ1つお願いします」
「この変わりよう...」
「これはえらいのでしょうか...?」
「...??」
何の話だろう?まぁ、たぶん大丈夫ってことかな。
「ありがとうございました♪」
お店にいた最後のお客さんがいなくなった。そういえば、ここのお店って名前にうさぎが書いてあるけど、これといってうだぎがないような...
「ねぇねぇチノちゃん」
「はい?」
「このお店の名前ってラビット・ハウスだよね?うさぎってものがあんまりないようだけど...うさ耳とか着けたりしないの?」
「うさ耳なんて着けたら違うお店になってしまいます。それにこの落ち着いた感じが良いんです」
「ふーん...リゼさんとかうさ耳つけたらけっこう可愛いと思うけど...」
リゼさんはスタイルも顔立ちも良い。町に出ればモテまくるのは必然...そのリゼさんがうさ耳なんて着けたらどうなると思う...
全国の男の子は可愛すぎて悶え苦しむだろう...
「そんなもん着けるか..........」
なにやら考えている様子...たぶんバニー姿の自分だと思うけど...
そう思っていると...リゼさんの顔はみるみる赤くなっていく。
「露出度高すぎだろ!!」
「うさ耳の話ですよね?」
予想通りの反応だった。この子は意外と恋愛ものでキスシーンとかで赤くなるタイプかな?
「.....」
チノちゃん...君も何を想像しているのかな。お姉さんに話してごらん?話してごらん?でもその赤くなっている様子も可愛いからあえて言わないけど。
「じゃあ、リゼさんなんでラビット・ハウスなんですか?」
「そりゃあ、ティッピーがこの店のマスコットだからだろ?」
ティッピー...確かにうさぎだけど...うさぎに見えない....
「ティッピーはこう...うさぎらしくないというか...なんというか...」
「じゃあ、どんな店名がいいんだ?」
来たねこの質問。私が何を言っても店名が変わることなんてないからこの話題は本当はしなくてもいいんだけど...
暇だからもう少ししてよう。ここはチノちゃんが喜びそうな...
「そうですね、ずばりモフモフ喫茶ですね」
「それはまんますぎるだろ...」
そう思ってしまいますよね?ですが見てチノちゃんを...!
リゼさんがチノちゃんに目を向けると...
「モフモフ喫茶...!!」
「気に入った!?」
チノちゃんも女の子...そうゆうのに興味があるんだよね。中学生らしくて可愛いよ。
「ん?リゼさん何しているんですか?」
リゼさんがコーヒーの入ったコップに何かを入れていた。
「これか?これはラテアートだよ。カフェラテにミルクの泡で絵を描くんだよ。こんな風に...」
カフェラテの表面には綺麗な模様が描いてあった。
「これがラテアート...テレビで見たことありますけど、実際、間近で見たのは初めてですね」
「この店ではサービスでやってるんだ、描いてみるか?」
「絵なら任せてください。町内会の小学生低学年の部で金賞とったことがあるので」
「それはすごいのか...?」
たぶんつっこまれるだろうと思って先に言った。でも絵なら少しは得意かもしれない。
「まぁ、手本としてはこんか感じに...」
そう言い新たにコップが3個出てきた。そこにはハート、猫の顔、四葉のクローバーが描いてあった。
ん?手本ってこれけっこう難しいと思うんだけど...
「上手ですね。すごいです」
「そ、そんなに上手いか...?」
「はい、すごいですよ。リゼさんって絵上手いんですね」
「い、いや...それほどでもないよ...」
あ、これは...そうだせっかくだから...
「よかったらもう1つ作ってもらえませんか?」
「しょ、しょうがないな...特別だぞ...!」
ふふ、思ったとおり。それにしても本当に上手い...やっているところを見て勉強しよう。
「本当ですか?ありがとうございます」
「やり方もちゃんと覚えろよ?」
「わかってますよリゼさん」
さて、どんなものなのかな。この目でじっく....り...
「ふっ!うぉぉぉぉぉぉぉぉー!」
そこには、すごい入れ方でミルクをコップに入れ、高速で絵を描いていくリゼさんがいた。
「できたっ!!」
そこには戦車が描いてあった。え、戦車?
「やっぱり上手ですね...」
うん、確かに上手...上手なんだけど...真似できない。
「全くそんなに上手くないって!」
「いえ...上手を通り越して人間業かどうか悩むところですね。さて、私もやってみましょう...」
できるきがしないけど...あんがい何とかなるかもしれない...
「頑張れ」
さて、頑張ろうかな。
「.....はぁ..中々難しい...イメージ通りと違う...」
「どれどれ.....!?」
ラビットハウスだからうさぎを描こうとしたけど、曲がっちゃったりして上手に描けなかった。
「(か、かわいい!!)」
「リゼさん...笑わなくても...あ、チノちゃんも描いてみる?」
「私もですか?」
チノちゃんってどんな絵を描くんだろう...匂いでコーヒーの銘柄を当てるんだからきっとすごいのができるはず。
そしてチノちゃんがラテアートを始めた。
「確か、チノの描くラテアートって...」
「できました」
どんなのができてるのかな....きっと...すごいの....が...
「「.......」」
「どうしました?」
「な、なんだろう...この敗北感...可愛さでは負けてないと思うんだけど...何かで負けている気がする...」
うん...チノちゃんの絵の能力が大体わかった気だするよ。
「ココア...チノの絵は...私たちの絵と一緒にしちゃあ...」
「はい...わかってます...」
「どうしたんですか...?」
こうして私の初日のお手伝いは終わった。大変だったけどその分楽しいことなどがあって良い1日だった。
「お疲れ様チノちゃん、リゼさん」
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
お仕事が終わり、私たちは更衣室で着替えをしている。やっぱり初日は疲れるね....
「ココアは今日からこの家出寝泊りするんだよな?」
「はい、そうですよ。チノちゃん今日の夕食よかったら手伝うよ?」
「いえ、1人でできますから大丈夫ですよ」
「さすがに年下の子1人で作らせるのは...私の心が...」
野菜を切ったりするくらい手伝いたいけど...だめかな?
「2人でやればはやく夕食ができると思うけど」
「大丈夫です。今日来たばかりで疲れているココアさんに手伝わせるわけには...」
「これくらい大丈夫だよ?」
「ですが...」
「(楽しそう...)」
ん?どこからか視線が...気のせいかな?
とにかくなんとしても夕食の手伝いをしないとね。
「じゃあな」
「お疲れ様でした」
「リゼさん気をつけて帰ってくださいね」
リゼさんが帰り、私たちは夕飯作りを始める。けどまだ手伝う許可をもらえていないんだよね...
チノちゃんがエプロンを着始めた。
「夕飯はシチューでいいですか?」
「あ、なら野菜を切るの任せてよ」
「いえ、大丈夫です」
「そ、そう?」
う~ん...ここまで断られるとは...仕方ない今日は引いておこうかな。でもすることがなくなった...
何かないかと考える昼の時にせっかくだからと私、チノちゃん、リゼさんをラテアートで描いたのを写真でとっていたのを思い出した。
せっかくだから待ち受けにしようかな。あ、けっこう似合う...チノちゃんに見せてみよう。
「チノちゃんちょっといいかな」
「はい、なんでしょうか」
「これどうかな」
野菜を切るのを止め、私のほうを向くチノちゃん。目の前に携帯を出して待ち受けを見せた。
「これ...」
「さっきね密かに作ってたんだ」
「私たち...」
「そうだよ、可愛くできたと思うんだ」
「.....」
喜んでくれたかな、作った甲斐があったみたいだね。
待ち受けを見せていると、廊下の方から音がした。気になりそっちの方を向くとドアが開き男の人が入ってきた。
顔立ちや年齢から見て...チノちゃんのお父さんかな?
「こちら父です」
「君がココアくんだね。」
....けっこうイケメンな声をお持ちで...さすがチノちゃんのお父さん。
「この家も賑やかになるね。今日からよろしく」
「は、はい。お世話になります」
「こちらこそ、チノをよろしく」
「はい、任せてください」
うん、良い父親だ。イケメンでこんなに優しいなんて...羨ましい。
「それじゃ」
「は、はい」
チノのお父さんがそのままお店のほうに行ってしまった。
「あれ?お父さんも一緒に食べないの?」
「ラビットハウスは夜になるとバーになるんです。父はそのマスターです」
「バーか...なんかかっこいいね」
バー...私も一度行ってみたいと思ったな...あの大人の雰囲気がちょっと好き。
え?なんか裏世界の情報を提供してそうでかっこいいとかは.....思ってないよ?
「そろそろかな?」
「もうすぐです」
シチューがぐつぐつといい匂いを出している。ああ...お腹がもっと減っちゃうよ。
「なんかこうしていると家族って感じだね」
「家族ですか?それを言うなら姉妹の方が近いですよ」
「え?でもチノちゃん見たいな可愛い子が妹なんて私には勿体無いよ」
確かに、チノちゃんが妹だったらどれだけ嬉しいことか...こんなに可愛い子が妹なんて...幸せすぎて死んでしまう。
「そんなことないですよ...こ、ココア...お姉ちゃん....」
少し照れながらそう言ってくるチノちゃん。うん...可愛い。もう一度...可愛い。
「ふふ、ありがとチノちゃん。そろそろ出来上がるねお皿に入れようか」
「....はい」
ん?何かチノちゃんが膨れてるような...はやくシチュー食べたいのかな?
「チノちゃん?」
「なんでもありません...」
「...??」
こうして夕食が出来上がり、その後は食べ終わって一緒に食器を洗ったりした。
「ふぅ...あとはお風呂か。先に入っていいよチノちゃん」
「いえ、ココアさんは疲れていますからココアさんからで...」
「私は...まだ慣れてないから時間かかると思うし...それだとチノちゃんが可哀想だから」
「「.....」」
チノちゃんも私も一歩も譲らない...なんだろうね。さて、どうしようかな。
「な、なら...その...一緒に入りませんか...?」
「一緒に?いいの?今日あったばかりの私と入るのはさすがに...」
私も初めて会った子と初日から一緒のお風呂は...いろいろと緊張する。ましてやチノちゃんは中学生そうゆうのに抵抗を感じ始めるお年頃だ。
「だ、大丈夫です...たぶん」
「んー...それじゃあせっかくのお誘いだし入ろっか一緒に」
「はい...!」
こうして初日の...一緒のお風呂を体験した。お風呂では荷物がまだ届いてないからチノちゃんの部屋で一緒に寝ることになったり寝るときにいろいろおしゃべりする約束をした。
「ふぅ...夜風が気持ちいい...」
こうして、夜風に当たっていると生前のことや家族のことを思い出してしまう...なら夜風に当たらなければ良いと思うのだが...なぜだか当たらなければならないと自分自身が深く思ってしまっているのだ。
みんなは元気だろうか...思っても仕方ないことだがやはり心配になってしまう。
「ココアさん...(またあの顔をしている...)」
「あ、チノちゃん...風が気持ちいいね。この町はとてもいいところだよ」
「...そう...ですか」
「うん、私ね...この町に来てよかったと思ってるよ。チノちゃんやリゼさんに会えたり、それにこれからもっといろいろなことがありそうでね」
「そうですね...ココアさん...これからよろしくお願いします」
「うん、私こそよろしくねチノちゃん」
その後はおしゃべりタイムで夜遅くまでチノちゃんと楽しいお話をしていた。
ココアのキャラが安定しなくなってきているのは気のせいでしょうか...もう少し慎重に書かないと...