リズのアトリエ 麻帆良の錬金術師   作:マックスコーヒー

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4時間目「少女と643号室の住人たち」

side:リーゼロッテ/女子寮:明日菜・このか部屋

 

 

 私は今、神様に仏様に八百万の神々に、感謝したい。

 

 久々に食べた気がするお米。

 

 ふっくら炊きたてで、ほんのりと甘みがあるようでいて、おかずの邪魔をしない絶妙な按配。

 

 メインデッシュは豚肉のしょうが焼き。

 

 ジューシーな豚と香ばしい醤油の香りがたまらない。しょうがの風味も絶妙だ。

 

 おっと、忘れてはいけない、キャベツの千切り。

 

 育ち盛りの私としては、肉に目が行きがちではあるけれど、何事もバランスが大事。

 

 均一にきざまれており、グリーンが非常に目にも鮮やかだ。

 

 最後に日本人ならコレ! 味噌汁だ。(DNA的にはドイツ人だけど)

 

 豆腐とワカメのみのシンプルな具ではあるが、カツオダシがしっかりと利いて深い旨みがある。

 

「ありがとう、そしてありがとう。そして、ご馳走様でした」

 

 手をあわせて、いろんな人や物に感謝した。

 

 

 

 さて、大借金持ちの私がなぜこのような素晴らしいご飯様をいただいているかというと、学園長室で空腹に倒れた私を見かねたネギ君が、自室につれてきてもらい、同室の女の子に頼んで作ってもらったからだ。

 

 

「ええ食べっぷりやなぁ」

 

 で、その素晴らしい夕食を作ってくれた女の子が台所の片付けが終わったのか、戻ってきた。

 

「大変おいしゅうございました」

 

「あはは、そんなかしこまらんでええで?」

 

 長い黒髪に神仏を連想させる柔和な笑顔。

 

 私にはまさしく女神のように見えた。

 

 ネギ君の話によると、先ほどの妖怪じみた学園長先生の孫なんだそうだ。

 

 なるほど、こっちの方が『孫』か……。

 

「うちは『近衛木乃香』。これからよろしゅうな?」

 

「あ、えと、その『リーゼロッテ・音無』です。長いのでリズと呼んで下さい」

 

 なぜかカチコチに緊張した私。

 

「ほな、リズちゃん。うちのことは木乃香って呼んでもええよ」

 

「え、あ。こ、木乃香……さん」

 

「木乃香でええのに」

 

 少し残念そうな木乃香さん。物憂げな表情もまたグッと来るものがある。

 

 

 

 ネギ君がいなくなっていたと思ったら、どうやら外にもう一人の同居人を探しに行っていたらしく、元気で活発そうなツインテールの女の子を連れてきた。

 

「ほら、アスナさんも挨拶してください」

 

「わかった、わかったから」

 

 お風呂に行っていたらしく、ほんのりと上気した肌が色っぽい。

 

「お、元気になったみたいね」

 

 どうやら私に面識があるらしい。けれど私の記憶には会ったことも見たことも無かった。

 

「えっと、どこかでお会いましたっけ?」

 

「あー、あの時は気を失ってたからね」

 

「駅で倒れてた音無さんを運ぶのを手伝ってもらったんです」

 

 うっわー、えらい恥ずかしい所をみられてしまったなー。

 

「あー、えっと、その説はどうもご迷惑をおかけして、真に……」

 

「ストップ! いや、急にかしこまらないでよ。なんかやりにくいわよ」

 

 彼女はちょっとムスッとした表情で私をにらんだ。

 

「そ、そうですか? うー、あー」

 

 少し失礼にならない程度にフランクな感じで……

 

「た、助けてくれて、ありがとね」

 

「うん、それでOK! 私は神楽坂明日菜、よろしくね」

 

 ニコッと笑った神楽坂さんの笑顔はとても好感が持てた。

 

 ネギ君といい、木乃香さんといい、神楽坂さんといい、ここは皆良い人ばっかりだ。

 

 そして、ふと、ニコニコとしている 木乃香さんを見てあるアイディアが思い浮かんだ。


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