リズのアトリエ 麻帆良の錬金術師   作:マックスコーヒー

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22時間目「メラすら使えない少女の戦い」

side:明日菜/図書館島・地底図書室

 

 

 腕の怪我をリズちゃんに診てもらっていた所、木乃香が大変な事になってるって言ってたから、広間の方に行ってみると、本当に大変な事になっていた。せいぜいバカネギがまた誰かの服をひん剥いたとかそんな感じだと思ってたのに。

 

 魔法の本があった部屋でリズちゃんに色々指示していた石像――コソコソ小声で話してたみたいだから内容までは聞き取れなかったけど――が、まきちゃんの胴体を掴んでいた。

 

「佐々木さん! ぼぼ僕の生徒をいじめたな! いくらゴーレムだろうと許さないぞっ!」

 

 あ、これはマズイ感じかも! バカネギのやつ、まきちゃんが捕まってることで頭がいっぱいで、魔法バレとか気にせずに攻撃用の魔法とか使いそう! ここは止めておかないと……!

 

 でも、今は魔法使えないって言ってたし、大丈夫だよね?

 

「ラス・テル・マ・スキル。光の精霊11柱! 集い来たりて敵を射て! くらえ、魔法の矢!」

 

 ま、まほーの……や? うわー、そんなダイレクトな名前の魔法使わないでよ! あーもー! 後でフォローするのは私なんだから。

 

 あ、でも魔法の矢とやらは出てこなかった。こういうの何て言ったっけ? 昨日、国語の勉強で出てた気がする。えーと、不幸中の再来?

 

 なんか違うな……って、そんなバカな事を考えている場合じゃない! えっと、そういえばリズちゃんも魔法とか知ってる人だったよね? なんか、魔法でなんとかできないか聞いてみよう!

 

「リ、リズちゃん! なんかリレミト的な魔法知らない?」

 

 聞きながら後ろに振り向くと、なんか気持ち悪いくらいのニヤニヤ顔のリズちゃんがいた。

 

「フヒッ。な、何です明日菜さん?」

 

 笑い声もなんか気持ち悪いし。治療してもらっていた所からここまでに、いったい何があったんだろ……。

 

「いやー、私は今、すっごく気分が良いんですよー♪ 追加報酬……、じゃなかった。ちょっと良い事があったんですよ! いやー、ダメ元でも交渉してみるもんですねー」

 

「そ、そう? ……いや、その、良かったわね。リズちゃんはここから脱出できるような魔法とかない? リレミトとか。あ、いや、その前に まきちゃんをなんとか助け出さないと」

 

「私は錬金術師だからルーラとかリレミトとかは無理。そもそも、魔法っていってもそんなにアバウトなファンタジー魔法はないよ。だいたい近所の洞窟から脱出する時のMPと、大魔王の棲むラストダンジョンから脱出する時のMPが同じってのは今考えても変よねー」

 

 難しそうな表情で考え込むリズちゃん。魔法っていっても、万能じゃないのね。

 

「それから、クイズ出題の仕事を貰った『クライアント』に聞いたんだけど、ここから地上まで歩くとなると、図書館迷宮になってて、3日は掛かるらしいわ」

 

「み、3日!? テストに間に合わないじゃない!」

 

「うん。だから、滝の裏にある緊急時はエレベーターを使えって言ってたけど……、滝の場所ってわかる?」

 

 リズちゃんに言われて、少し考え込む。この2日間、この地底図書室を探索してみたけど滝なんてあったかなー? うーん。

 

「あ! 食料品を探す時に見かけたかも!」

 

「では、目的地は決まりですね……、あとは佐々木さんをどうするかですが……」

 

「ふふふ。リレミトどころかメラも唱えられないような、戦えない錬金術師の戦い方ってのを見せてあげますよ」

 

 芝居がかった台詞と動作でクルリとリズちゃんは振り返った。そして、みんなに聞こえるように大声を出して告げた。

 

「図書館島防衛用のロボットが暴走したと学園長から連絡がありました!」

 

 衝撃の新事実をみんなに公表した。十中八九あのゴーレムは魔法関連の産物なんだろうけど、それを強引に誤魔化してる!? 学園長からっていうのもブラフかな?

 

「「「ええ!? 学園長から?!」」」『え? ワシ?』

 

「クーフェイか長瀬さん! 武術が得意と聞きましたが、あのロボットの首の裏側に文字が書いてあるはずです! そこに石を思いっきり投げて下さい!」

 

 リズちゃんはあのデカブツの弱点を知ってるけど、自分ではその弱点をつけないから、他の出来る人にお願いしたって事かな? よくわからないけど。

 

 なんか頭良さそうな戦い方よね……。こんな知識を持ってるのに、なんでテストの点数は悪いんだろ。むしろ、そっちの方ばっかりに知識が偏ってて、普通の知識が疎かになってるってこと?

 

「文字アルか? あんまり暗器の類は得意では得意ではないアルよ~」

 

「ふむ。投擲武器には心得があるでゴザル。拙者が請け負おう。ニンニン」

 

 すでに展開について行けてない私とネギ。木乃香と夕映ちゃんは、なぜか指揮を執っているリズちゃんに熱い視線を送ってるし、要救助の対象のはずの まきちゃんはゴーレムの手の中でウトウトし始めてる。なかなかにカオスな状況ねー。

 

「ゴーレ……じゃなかった。あのロボットは外からリモコン操作しているんですが、その文字の部分が電波を受信するアンテナになってるんです!」

 

「なるほど」

 

「できれば頭文字のEの文字を潰して下さい! クーフェイさんは制御から離れたロボットが倒れる時に佐々木さんが押しつぶされないように確保して下さい!」

 

「委細承知之助でゴザル!」

 

「了解アル!」

 

 なんかよくわからないけど、話がまとまったみたい。

 

 あれ? でも、この戦い方って、昨日見せてもらった錬金術となんら関係ないよね?

 

 

 

 

 

 バトル開始後、くーふぇと楓ちゃんは、リズちゃんの指示を聞きながらゴーレムと戦っている。まきちゃんは……ゴーレムがまきちゃんを持ってる方の手でガードする度にブン回されてるから、気絶してる。

 

「クーフェイさん! 次に右から大振りパンチが来たら、そのまま左にさばいて下さい! その隙に長瀬さんは6時方向から狙撃を!」

 

「おお! 連携攻撃というのは香港映画みたいでかっこいいアルね!」

 

 リズちゃんが言ったとおり、右からのパンチを放つゴーレム。そして、その重さの乗ったパンチをやすやすと くーふぇは受け流した。

 

 すると、ゴーレムの右手が地面の触れた瞬間になぜか電気みたいなのが見えた。地面に突き刺さった右手は、地面の中の何かがひっかったのか、ゴーレムが引き抜く動作をしても引き抜けずに、決定的な隙が出来た!

 

「ほほう、音無殿の指南は的確でゴザルな……ハッ! っと、防がれたでゴザル。申し訳ござらん」

 

 楓ちゃんがクナイでゴーレムを攻撃するも、すんでの所でガードされてしまう。ああ、あとちょっとだったのに!

 

「いえ、問題ありません。まだチャンスはあります! 次は――」

 

「あ、あのー、僕は何をすれば」

 

 そんな中、おずおずとネギが空気も読まず、指揮を執っているリズちゃんに話しかけてきた。


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