リズのアトリエ 麻帆良の錬金術師   作:マックスコーヒー

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《前回を読み飛ばした人のための20時間目のあらすじ》

リズのアトリエ、前回の3つの出来事!

 一つ 地底図書室で夕映は気絶していたリーゼロッテを発見
 二つ リーゼロッテは夕映のおデコの怪我に気づき治療
 三つ 二人は名前で呼び合う仲になった!



21時間目「毟る少女」

side:リーゼロッテ/図書館島・地底図書室

 

 私は明日菜さんの赤くなっている所に触れた。敏感になっているみたいで、触れた瞬間に明日菜さんの体がはねた。

 

「……ん! リ、リズちゃん」

 

 涙目になった明日菜さんは必死に痛みを堪えているみたい。

 

「あ、痛かったですか? やさしく、するね?」

 

「う、うん。大丈夫……ありがと」

 

 今度はできるだけ優しく、ゆっくり丁寧に私は打ち身に効く軟膏を明日菜さんの腕に塗りこんだ。

 

「……なんか、声だけ聞いてるとなんかエロいアルね」

 

「うむ、口の中が砂糖が溢れてジャリジャリになりそうなほどの甘々な情事でござるな」

 

「ジョージ? ウィーズリーさんとこの双子の一人ですか?」

 

「そこの武闘派2人+バカネギ! うるさいわよ!」

 

「シュチュエーションを想定するなら、ちょっぴり耳年増でイケナイ事に興味があるリズさんが、元気系だけど好きな人の前では途端に借りてきた猫のように大人しくなるアスナさんを、おっかなびっくりではあるものちょっとづつ開発する……といった感じです? 確かパルの薄い本にそんな感じのヤツがあったです」

 

「開発?」

 

「コラー! 夕映ちゃん! こ、子供にそんな事を教えるなー!」

 

 夕映ちゃんの中で私はそんなキャラだったのかぁ。パルという人が誰の事かわからないけど、中学生の目に触れるような所にそんな物(薄い本)を置かないで! 健全なナントカの育成に悪影響だから!

 

 ……私は師匠のコレクションを始めて見た時は、ショックで1週間連続でその悪夢を繰り返し見た。私の時は、男×男だったけど。

 

 

 

《その時の様子》

なんだこの本? タイトルは『笹×斑な本』? やたら薄いけど……。少女マンガっぽい絵柄だなぁ。表紙はなんかかっこいい男の人が抱き合ってるけど。ちょっと読んでみよっかな……。

……はわっ、にゃぁぁぁぁぁぁ!

 

 

 

 あれは私の中での3大トラウマの内の1つになった。あの後で元になった漫画も読んだ(師匠に無理やり読まされた)けど、ホモが苦手な女子だっているんです! 私は至ってノーマルなんです!

 

「そのへんにしときー。治療してるアスナとリズちゃん以外は、水浴びせーへん?」

 

「「「「さんせー(でゴザル・アル)!」」」」

 

 

 

 

 さて、この辺で状況を整理しよう。

 

 学園長の陰謀でバカレンジャーの勉強会に強制参加。以上!

 

 どうしてこうなった! どうしてこうなった!

 

 しかも私は丸々2日気を失っていたらしく、テスト開始まであと20時間ほどしかない。良くて一夜漬けコース、悪くて図書館島から脱出できなくてテストすら受けられない。いや、さすがにその辺は学園長がなんとかしてくれるかな? むしろ『学園長のせいで図書館島からでられませんでしたー! えへ☆』とか言えばテスト免除にならないかな?

 

 むしろその方向で――

 

「キャー」

 

 ――って、え? 佐々木さんの悲鳴?

 

「大変やー、アスナ! リズちゃん!」

 

「どうしたの? このか!?」

 

「まきちゃんが! とにかく、こっち来て!」

 

 私たちがネギ先生と合流しながら、4人で地底図書室の大広間にはゴーレムが全裸の佐々木さんを鷲掴みに! ゴーレムのスペックにもよるけど、一般的なゴーレムの握力なら普通の人間なんかトマトをグチャっと握り潰す位簡単に……ん? でもたしかゴーレムの中の人って学園長だから、そんな事しないだろうし。

 

 でもなんか引っかかるなぁ。

 

「ネギ君ー! 助けてー!」

 

「まきちゃーん!」

 

「佐々木さん! ぼぼ僕の生徒をいじめたな! いくらゴーレムだろうと許さないぞっ!」

 

 おお、さすがは男の子! でも、秘匿原則があるから、一般人がわんさかいる状況で魔法は使えないし、どうやって対処するんだろ。言い方からして、中の人が学園長だってわかってないみたいだし。

 

「ラス・テル・マ・スキル。光の精霊11柱! 集い来たりて敵を射て! くらえ、魔法の矢!」

 

 って、堂々と詠唱しちゃったよこの子! どーすんの!? しかも、なんか不発だし。まぁ、不発なのは結果オーライで良かったけどさ。

 

「ま、まほーの……や?」

 

 皆さん呆れてらっしゃいます。あーあ、どうすんのこの空気。

 

 うん、あれだ。そっとしておこう。

 

 そういえば、学園長への無線機って生きてるのかな? 水に落ちちゃったから壊れてるかもしれないけど。壊れてたら弁償……はしなくてもいいよね? 水に落したのは学園長だし。

 

 試しにベルトについたバッテリー兼親機のスイッチを入れてみる。耳の子機に軽いデジタルノイズが走る。大丈夫っぽい?

 

 小声でマイクに向かって学園長をコールする。すると、すぐに返答が帰ってきた。

 

『この状況は色々マズイ。ノリと勢いで誤魔化すから、出口へ誘導をするのじゃ』

 

「あの――」

 

『問答は勘弁してくれんかの? ネギ君の魔法バレとかもあるんじゃが、全裸の佐々木君をずっと握ってるのは色々と……の?』

 

 あー、さっきの違和感ってそれかー。あのどでかい図体の、いかにも鈍重な造りの石ゴーレムが佐々木さんを捕獲してるって事は、捕獲できるような位置までばれないように接近する必要があるわけで。

 

 ばれないようにするには視線や体の向きを観察しなければならないわけで。普通の状態なら問題ないけど、佐々木さんは全裸なわけで。

 

 いくら孫と同い年の子供で、枯れてる学園長といえど、その行為だけ見れば立派な覗き行為である事は明らかだよね?

 

『枯れてるとは失敬な! ワシはこれでも現役――』

 

「女子中学生に平然とセクハラしないで下さい。あと、無許可で友好的な人の思考を読むのは魔法使い的にタブーじゃなかったですっけ?」

 

『フォ?』

 

「あー、これは立派な魔法使い(マギステル・マギ)じゃなくて、立派な覗き魔(マギステル・ヘンタイ)ですね。いやー、極東最強の魔法使いが、その最強の力と権力を使って自分の孫と同い年の女の子を無理やり……とか、ちょっとしたスキャンダルですよ?」

 

『フォ!? もしかして、依頼料ケチったの根に持ってるの?』

 

「いえー、そんな事はないですよー。貴重な錬金術のレシピブックを数冊貸し出してくれるというのは、非常にありがたかったですしー」

 

『その割に笑顔が怖いんじゃが』

 

「でも、欲を言えば現金がほしかったかなーって。レシピだけあっても、材料が無いとなんにもできないですしー。逆なら自前の知識で色々研究できますよ? 貸し出しって事は知識とレシピの写ししか手元に残りませんし。その上、拘束時間が3日目ですよ? 当初の契約では3時間で済む仕事だと仰っていましたよね? 当然、残業代でますよね?」

 

 かの天才は仰った。毟れるだけ……毟る……!

 

『じゃ、じゃが、そのおかげで勉強できたんじゃないの? 少数指導で学力アップ! って感じで』

 

「話をそらさないで下さい。どこかのゴーレムが雑な落し方したせいで、目が覚めたのはさっきですよ? 丸々2日気絶してたんですよ? あー、首が痛いなー、鞭打ちかもしれないなー」

 

『どこの当たり屋じゃよ……。君、なんかこの2日間で性格変わってない?』

 

 そういえば、私って地底図書館に2日間も気を失ったのに、おなかすいてないし、のども渇いてないのはなんでだろ? 普通だったら2日間も寝てたら体がダルくなるはずだけど、そんな事はなかったし。むしろ調子がいい位だし。

 

 んー。ま、いっか。




※アンケートのご協力、ありがとうございました。
 イラスト掲載派が多数でしたので、文章の流れが不自然でない部分に挿絵として挿入したいと思います。

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