side:リーゼロッテ/麻帆良学園中央駅
なんとかたどり着いた麻帆良学園。
もうへとへとだ。
「うー、あー」
もう、うめき声しかでない。
迎えの先生を待つことにした私は、駅前に荷物を下ろし、キョロキョロとあたりを見渡した。
おのぼりさんっぽくてなんかイヤだけど、実際本当に九州の片田舎から出てきた田舎者だし、別にどうでもいいや。
駅は結構豪華でおしゃれな感じ。駅前のお店もいい感じで、結構楽しめそうだ。
……お金があれば、ね。
財布を開いてみると、一万円札と五千円札と二千円札と千円札が……、なんと、一枚も入っていない!
無論五百円硬貨がいっぱい入っているわけでもない。
というか、五百円硬貨も入ってない。百円も入っていない。
なんとか入ってた五十円玉。
てな訳で、現在の私の全財産五十三円。
すげぇ、財布開いてパッと見で所持金確認できる!
最後の二桁硬貨をつまみあげて、中央の穴から迎えの先生を探してみた。
うん、あれだ、私超痛い子っぽい。
そんな罰当たりなお金の使い方をしたせいか、道行く見知らぬ女の子にぶつかってしまう。
制服は中等部ので、頭頂部からアホ毛が2本延びた、メガネのナイスバデーさんだった。
胸に顔、ぶつかった。柔らかかった。
自分の胸を見た。そこには山も谷もなく、ただただ、平原が広がるだけであった。
……巨乳は敵だ。
「あ、ごめんなさい!」
つい、自分から謝ってしまった。ぶつかったのは相手なのに。
「こちらこそすいま……、えっと、えっと」
どうやら私の桃色の髪の毛とか、青い瞳とか白い肌を見て、外国人認識したらしく、
「あ、あいむそーりー?」
お世辞にも流暢とはいえない英語で謝った。
そして、一礼してそのまま走り去って行った。
いや、私、日本語喋ってたよ! ニホンゴ、ツウジテタヨ!
むしろ、英語とか苦手科目だし!
「はぁ、まあいいや」
気をとりなおして五十円の穴から先生探しを再開することにする。
ビっと五十円を持った右手を目の前にかざす。
うん、よく見える! だって五十円無いから!
……ぶつかった拍子に落としたようだ。
必死に探したけれど、見つからなかった。
私の全財産……、さ、三円……。
「うー、あー」
もう、うめき声しかでない。
side:ネギ/麻帆良学園中央駅前
真っ赤なコート、真っ赤なコート。
僕は駅前で待ち合わせをしているはずの転校生の『リーゼロッテ・音無』さんを探していた。
「音無さーん! リーゼロッテ・音無さんはいませんかー!」
駅舎の中にいるのかもしれないので、見に行ってみることにする。
すると、目当ての音無さんではないけど、見知った顔を見つけた。
「お、ネギじゃない。何してるのこんな所で」
「あ、明日菜さん!」
「たしか、休みなのに学校の用事で出勤って言ってなかったっけ?」
「ええ、今日は転校生さんの道案内をするように学園長先生にたのまれたので」
「あー、なるほど。でも、その肝心の転校生はどこ?」
「今探してるんですけど、なかなか見つからなくて。待ち合わせは間違いなくここなんですが」
「ふーん」
「そういう明日菜さんはどうしたんですか? 制服まで着て」
「うん、パルのやつが部活で学校に行くのに、画材持っていくの忘れたらしくて」
「なるほど、その為にわざわざ。明日菜さんは本当に友達思いなんですね~」
「ば、馬鹿。そんなんじゃないわよ。持って来たら食券くれるって」
「あはははは」
「せっかくだし、手伝ってあげるわよ」
「え、でも早乙女さんに悪いですし」
「使うのは昼からって言ってたし、別にいいわよ」
「そうですか、でも」
「はいはい、ゴチャゴチャ言わない! 人の好意は素直に受け取っておくものよ!」
「そ、そうですか? でしたらお願いします」
「それに、どんな人か気になるじゃない?」
僕は写真を明日菜さんに見せ、特徴の『赤いコート』を着ている事を伝えた。
すると、明日菜さんは少し怪訝な顔をした。
「ん?」
「どうしました?」
「もしかして、アレ?」
明日菜さんが指差した先には荷物の山があった。
それだけなら問題無かったんだけど、その荷物の下敷きになった赤い布が見えた。
よく見ると人の足も確認できた。
どうやら人が荷物の下敷きになっているようだ。
「わー! わー! は、早く助けないと!」
十分後、明日菜さん及び駅員さんの助けもあって、なんとか救出できました。