あの約束を   作:厨二王子

3 / 28
お爺さんはオリキャラです。
では、どうぞ!


2話 まさかの出会い

 父のチームメイトであり、友人であった本田さんが亡くなってから、親父は少し変わった。

 

「親父、明日は家にいるの?」

 

「わりい、明日も練習なんだよ」

 

「ふーん、体壊さないでね」

 

「……大丈夫だ」

 

 親父は一言俺に告げると、仕事へ向かう。親父は前から家に帰って来るのは少なかったが、本田さんが亡くなってからはさらに少くなった。恐らく本田さんがいなくなって、空いた穴を埋めようとがんばってるのだろう。今日はお爺ちゃんが保育園に向かえに来る予定だ。

 それと、親父がどう思ってるのか知らないが、俺は本田さんの件は事故だと思ってる。まぁ、スポーツで死人がでるなんて少ないわけじゃないしな。

 俺は一人考えながら、保育園に行く準備をする。鍵は親父から預かってるので、戸締まりを確認し、鍵を閉めて、アパートから保育園へ向かった。

 

 

 

 

 

「はーい。今日は皆で絵を描きましょうね」

 

「……」

 

 絵ね……何を描こうか。俺は考えると、今の時間と関係ないが、本田さんがデッドボールを受けた瞬間を思い出す。実際、あの試合はテレビで見ていた。しかし、本田さんには俺と同じくらいの息子がいたと言っていた。トラウマを抱いたり、恨んでなきゃいいんだが……いや、無理な話だな。俺も同じ立場なら、例え事故だと分かっていても同じ事を思うだろう。

 

「亮太くん」

 

「……」

 

 俺が考えることでもないし、まぁいいか。

 

「亮太くん!」

 

「……えっ、なんか呼んだ」

 

「えっ、じゃないですよ。なんですかボーッとして、体調でも悪いんですか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そう……なら、早く絵を描きなさい」

 

「はい……」

 

 俺は先生に言われ、絵を描こうとクレヨンを持つ。まぁ、野球のグローブでも描くか。

 

 俺はやれやれとばかりに、絵を描き始める。その時、何故か先生に睨まれたような気がした。というか可笑しいんだよ、普通は保育園の先生って若くて可愛いお姉さんの筈なのに、ここの教室の先生はおばさん。しかも、三年間ずっと一緒とか…何故だ。

 こうして、退屈な保育園の時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 俺は保育園で待っていると、見覚えのある人物がこちらに来るのが見えた。

 

「おお、お爺ちゃんが向かえに来たぞ」

 

「お爺ちゃん!」

 

 俺のお爺ちゃんである……茂野友蔵だ。

 

「じゃあ、帰るか」

 

「うん」

 

 俺はお爺ちゃんと手を繋ぎ、帰り道を歩き始める。

 

「全く、英毅のやつ…孫の向かえにも来ないとは……けしからん!」

 

「ははは……」

 

 お爺ちゃんはさっきから、親父に対する愚痴を俺に向かって言ってくる。というか、幼稚園児に愚痴って…どーよ?

 そんな時、公園になんか外人っぽい顔の男が見えた。隣には七三分けをしている男の人がいる。んっ?あの人って、まさか…。

 

「ごめん、お爺ちゃん。忘れ物したから取りに戻るね」

 

「そうかそうか、なら速く家に帰ってくるのじゃぞ」

 

「はーい」

 

 今ままで迷惑をかけて来なかった俺への信用力を使い、お爺ちゃんと別れる。俺はその後、あの男がいる公園へと向かって走って行った。

 

 

 

 

 

 俺はその男に気づかれないように、後ろに回り、カバンにしまってあった落書き帳を持って言った。

 

「もしかして、ジョーギブソンさんですよね、メジャーリーガーの。サインください」

 

  そこにはテレビで最近活躍中であり、そして事故という形でも、本田さんの命を奪った男……ジョーギブソンがいた。

 

 俺が一言告げると、ギブソンはベンチに座りなが、こちらに振り向き、笑顔で落書き帳を受け取とる。隣にいた男の人……見た感じ、通訳の人だろう。その人は一応通訳している。

 

 ギブソンはやっぱりメジャーリーガーだけあって、いい体つきをしている。というかでかい。後、風格が違う。これが、メジャーリーガーか……。

 

『君の名前は?』

 

 ギブソンが英語で喋った後、通訳の人が訳してくれる。というか、前世で英語勉強したから、名前を聞く質問くらい分かるんだが……。

 

「亮太だよ」

 

 俺は子供っぽく、自分の名前を答える。するとギブソンは落書き手帳にサインを書き始めた。というか、サイン貰うなら色紙が良かったな。

 俺はギブソンを見る。確かニュースでギブソンは罪を償うために、これから日本で野球を続けるらしい。うーん、見た感じ、やっぱり悪い奴じゃなさそうなんだが……。俺はギブソンがどんな人物か、実際に見て確かめると、昔からお爺ちゃんが言っていたことを思い出し、聞いてみることにした。

 

『野球好きに悪い奴はいない』

 

 お爺ちゃんが毎日言っていた言葉だ。

 

 俺がその質問をすると、ギブソンと通訳の人は目を丸くして驚く。だが、ギブソンは笑顔でその答えを言う。俺はその一言に、ギブソンの野球への思いを感じた。俺はその答えに満足し、ギブソンたちに別れを告げ、家へ帰る。

 

 野球か……今度やってみようかな。

 

 

 

 

 

「不思議な少年でしたね」

 

『……』

 

 あの少年……いや、亮太だったか。最後の質問には、いろいろ驚いた。私はあの亮太の質問を思い出す。彼は最後、英語で質問してきた。

 

『あなたは野球が好きですか?』

 

 あの質問は本当に短い質問のはずなのに、私にはとても大きな意味を感じ、私は笑顔で答えた。

 

『ああ、もちろんだ』と。

 

 ふっ、また彼とはどこかで会えるような、そんな気がする。

  私は彼が去っていった方向を暫く見つめていた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。