学校の六時間目、俺は教卓の前にいて、今クラスの視線を集めていた。この時間は将来の夢を発表をする時間で、俺の出番が回って来たのだ。
「俺の夢はメジャーリーガーになることです!!」
俺は自信満々に自分の将来の夢を発言した。皆は俺の発言に一応、驚いている。沢村は小さい声で、美女に囲まれて生活することだと思ったなんて言っていたので、後でしばかなくては……。
俺は吾郎のリアクションが気になったのでそちらを見てみると、何やら手元を見てにやけていた。
……何だ?
俺は吾郎の行動に首を傾げながらも、発表が終わり、自分の席に向かって行った。
六時間目が終わり学校が終わると、吾郎に呼ばれ、俺を含むいつもの面子が屋上に集まっていた。
「どうしたんだ吾郎、今日も練習か?」
皆が集まると、呼び出した吾郎以外の気になっている俺たちを代表して、沢村が口を開いた。
「いや今日はな、これのことで集めたんだ」
「チケット?」
「そう、アメリカ行きのな」
「「「……」」」
一瞬、この場が静寂に包まれる。そして……。
『なにーーー!!』
吾郎以外の三人の声が重なった。
「アメリカといえば、やっぱうまい食い物が……」
「色々な観光スポットも……」
「それにアメリカン美女もな。というか、絶対吾郎はそんな意図でチケットを出したんじゃないと思うぞ」
「亮太の言う通りだ。これはだな……」
すると、吾郎はチケットを貰った経緯を話し出した。このチケットはギブソンから貰ったものらしい。本来はあの美しき桃子さんと行く予定だったが、彼女が仕事で行けなくなり、チケットが一枚余ったそうだ。
「それに行けば、WBCの試合も見れるんだ」
「ほう~」
「すごいね、吾郎くん」
俺は感嘆の声を上げ、小森もまた驚きの声を上げた。ちなみに、清水と沢村はまだ自分の世界に入っている。
「ということで、亮太か小森。一緒に行こうぜ」
「「待て待て待て」」
吾郎が俺と小森に笑顔で提案してくると、尽かさず清水と沢村が突っ込みを入れた。
「何で、亮太と小森だけなんだよ!」
「そうよ、そうよ」
「いや、やっぱり野球知識あるやつと行きたいし、亮太なんかメジャーリーガーになるのが夢だしさ」
「そうだよね。僕の事はいいから、吾郎くんと亮太くんで行ってきてよ」
「ありがとな、小森。じゃあ……」
「「そんなぁ~」」
清水と沢村はなんとか自分たちにもチャンスをと土下座をし始めた。というか、当事者を置いて事態がどんどん進んでいくな……。
俺はこのままでは馬鹿二人が納得しないと思い、ある提案をした。
「じゃあさ、やっぱ小森にも悪いし、くじ引きで決めない?」
「いいのかよ。憧れのメジャーリーガーを生で見れるんだぜ」
「それは小森も一緒だろうし、そこの馬鹿二人も納得しないだろ。じゃないと、コイツらぐちぐち言ってくるぜ」
「確かに……」
吾郎は渋々納得すると、紙とペンを用意してアミダくじを作った。
「行けるのはたった一人……」
「緊張するな……」
「おー、ゾクゾクする」
「うまい、料理……」
「じゃあ、ジャンケンで勝った人から好きなところを選びな」
『おう』
俺たちはそれぞれお互いの方法で気合いを入れて、ジャンケンに臨んだ。
『最初はグー、ジャンケン……』
「おー、今アメリカが見えたような気がする」
「いや、見えねぇよ。アホ」
俺は練習中に変なことを言っている、沢村に突っ込んだ。
「何で清水がアメリカに行くんだよ」
「仕方ないよ。アミダで決まったんだから……」
小森も優しく沢村に声を掛けた。
「なんか俺はこんなことになるような気がしてた。つーか、あいつら二人でアメリカとか……絶対に何か縁があるぜ」
「そこ、何をボサッとしてる!」
『すいませーん』
あのアミダから一週間後の土曜日、俺たちは練習にも関わらず、吾郎とアミダでアメリカ行きを勝ち取った清水はアメリカへ旅立った。正直、行きたかった思いもあるが、やっぱりアメリカに行くのはメジャーリーガーに挑戦するときだと自分に言い聞かせて、俺は今日の練習に臨んでいた。
本来土曜日に練習はなかったのだが、あのサッカークラブからこのグラウンドを勝ち取ったお陰で、土曜日も日曜日同様に練習をすることができるようになった。
「しかし、暑くなってきたな」
「夏が近いからな。まっ、帰りにアイスでも食べながら、帰ろうや」
「それいいアイデアだよ!」
「はぁ、本来アメリカへ行けるはずが、アイスか……」
俺の提案に小森は元気よく賛同するが、沢村は溜め息を吐いた。
……こいつ、いい加減ムカつくな。
俺は沢村のケツを蹴飛ばして、練習に戻った。
練習が終わり、俺と沢村、小森は三人で横に並びながらアイスを買うべく、コンビニに向かっていた。
「しかし、お前も野球始めて、大人しくなったな~、いじめッコ」
「うるさいな……反省したんだよ」
「あはは……」
沢村は俺の言葉に面白く反応する。小森は苦笑いしていた。そして俺はそういえばと思い出す。
「沢村、お前の親父さんはあの後どうなったんだ」
「んっ、ああ。やり過ぎたって反省してたよ」
「そうかそうか。それは良かった」
「たく……」
この会話の後も、楽しい会話をしながらコンビニに向かった。すると、コンビニの入り口に何人かの人影がいるのが見える。俺は思わず、そこから少し離れたところで立ち止まった。
「うわ不良だぞ、あれ……」
「別のコンビニに行こうか、亮太くん……って、どうしたの亮太くん?」
小森は動かなくなった俺を不思議に思いながら、声を掛ける。しかし、俺は返事をしない。俺は自身の美少女レーダーが反応し、硬直していたのだ。
そこには二人の不良と、女子高生の姿があった。
ということで、亮太くんはアメリカへは行けず、オリジナル展開です。後、ここからの話はとあるフラグです。正直、結構無理矢理なのでそこは黙認してくると、嬉しいです。次は速くて今週、最悪来週には投稿します。