12話 登校初日
「おい、乗ってくか?」
「いいよ、歩いていく」
「そうかよ、じゃあな」
「ああ」
俺は親父と別れると、新しい通学路を歩み始める。
「もう下校時間過ぎてるから、空いてるな。というか、昨日の練習の疲れがまだ残ってるよ。肩が……」
俺はメジャーリーガー宣言してからの今日までの日々を思い出す。北海道に行ってからは、今俺が住んでいる三船に来るまで転入の連続。そのお陰で、俺はボッチに逆戻りした。この三船ではゆっくりできるそうなので、割りと安心していたりする。
さらに俺がメジャーリーガーになると親父に告げたことで、筋トレからバットの素振りまで、親父の指導のもと行われた。しかも、あの親父感動してか、あれ明らかに度が過ぎてただろ。死ぬかと思ったわ。
「まぁ、お陰で力が付いたからいいけど。しかし、この時間じゃ女子高生もいないな……つまらん」
俺は新しい学校生活よりも、女子高生のことを考えていた。
「呼ばれたら、教室に入って来てくれ」
「分かりました」
先生が教室入っていく。分かりますよ、入っていったら、女子たちの歓声が聞こえるんだろ。
俺は変な思いを抱きながら先生の声を聞き、教室に入っていく。
「彼が転入生の茂野亮太だ」
「茂野亮太です。まぁ、気軽によろしく」
俺が自己紹介を終えると、後ろの方に座っているオーシャンズの帽子を被った男子が、反応するが……。
おかしい……歓声がないだと!
俺は一人驚愕しながら、先生に言われた一番後ろの席に座る。そこはさっき俺の名前に反応していた、オーシャンズの帽子を被っている少年の席の後ろだった。
「オーシャンズの帽子ということは、お前オーシャンズのファンなのか?」
「ああ……って、お前、あのオーシャンズのエースの息子だろ。やっぱり、野球に興味があるのか?」
「あるけど……」
野球に関することを聞くと目がキラキラする奴……こいつ、野球バカだな。
「名前は?」
「本田吾郎」
「本田?もしかして、あの本田選手の息子か?」
「えっ、おとさんを知ってるの?」
「昔会ったことあるんだよ。それっきりだけどな」
「そうなのか!」
そして、俺が本田選手と区別するため、吾郎と呼ぶことにした。もちろん、吾郎も俺のことを亮太と呼ことになった。この後、吾郎からの質問攻めにあったが、先生に怒られたことで、それは終わる。次に学級委員決めに移った。
「さてじゃあ誰か、立候補するものはいるか?」
先生の言葉を聞いた生徒たちは、見事に皆黙る。まぁ、普通に考えてやらないわな。
シーンと静まる生徒を見て先生は溜め息をつき、言葉を出そうとするが……。
「はい、先生!」
「なんだ沢村、お前がやるか?」
「いえ、先生。僕は自信がないので小森くんを推薦します」
手を上げた少年は、自分がやるわけではなく、隣にいる気が弱そうな少年を推薦した。
明らかに推薦された少年はやるきが無さそうだ。たく、どこの学校にもいるものだな……こういう奴。
小森を推薦した少年……沢村とぐるなのか、ほかの二人がこれに便乗する。
「小森、いいのか?」
「じゃあ、決めるぞ」
いやいや先生、これで決めちゃいけないでしょ。俺が一人思っていると、吾郎の隣に座っていた女子が声を出す。
「先生、私やります!」
そして、まさかの私やります宣言。度胸あるなぁ~。
「おお、清水立候補するか」
「はい」
勇気ある女子……清水の言葉を聞くと、いじめられた男子である小森は安心した声を出す。
そして、この後吾郎の余計な発言により、吾郎
と清水は二人で痴話喧嘩に発達。
「やめんか!」
先生が大声で、怒鳴る。この流れは……。
「二人は随分と仲が良いようだな。本田、お前が副委員長やれ」
「えーーー!」
こうして、このクラスの副委員長は吾郎に決まるのであった。まぁ、どんまい。
学校が終わり、放課後になると吾郎が元気よく、話掛けてくる。
「亮太さ。この後リトル見に行くんだけど、一緒にいかね?」
「いいよ。俺もまだ決めてないし」
「OK、じゃあ、行こうぜ」
俺の言葉を聞くと、俺たちはさっそくリトルを見に行くことにした。
校庭に出ると、沢村とその他が誰かの上履き……いや、小森の上履きを蹴り合っていた。
そして、小森が必死に自分の上履きを追っていた。……屑だな。
すると、吾郎が動いた。吾郎は蹴られていた上履きを取り、小森に渡す。
「あっ?何だよ」
沢村がキレる。おお、怖い怖い。
そして、吾郎は沢村を含め、いじめっ子である一人の上履きを強引に奪った。
「俺も混ぜてよ」
吾郎の行動から、あいつが何をやるのか予想がつく。よし、俺も混ざるか。
「吾郎、パス」
「おう」
「なっ!?」
吾郎は俺の声を聞くと、その上履きを俺の方に投げる。俺は片手でそれをキャッチした。
「ナイスー、じゃあ今度はこっちから、行くぞ」
「おお」
今度俺は、蹴って吾郎のもとへとばす。すると、俺の蹴った上履きは、見事に吾郎の足下へ向かった。
「よっしゃー、このままシュート。なんてな」
そして、吾郎のボレーが決まる。吾郎に蹴られた上履きは円を描き、校庭にあった池に落ちた。
俺は吾郎のもとに向かって行き、ハイタッチをする。
「「イエーイ!」」
「うー、僕の上履きが……」
いじめっ子の一人が、自分の上履きが池に落ちて悲しんでいると、沢村がこちらに来る。
「テメーラ、本田に茂野って言ったな。いい根性してんじゃねぇか。この沢村に喧嘩売って、楽しい学校生活が送れると思ってんのか?」
「今日のクラス替えで、そんな希望は捨てました」
「いやー、根性だけが売りでして」
吾郎と俺は笑顔で、沢村に言葉を出す。
「ちっ、テメーら次あった時、覚えてろよ。行くぞ、小森!」
「……」
小森は一瞬、こっちの方を見てくる。しかし、直ぐに沢村たちの方に付いて行った。
「なんだよ、あいつ」
「まぁ、いいじゃないか。それより、リトルの方行こうぜ」
「そうだな」
気を取り直した俺たちは、吾郎に連れられリトルに向かって行った。小森か……今度話してみるかな。
「これから行くリトルは、三船ドルフィンズっていうリトルなんだ」
「へー」
リトルね。まぁ、ガチガチじゃなければいいんだが。ちなみに、横浜リトルは前に少し覗いて来た。いやー、スパルタなので、却下したが。後、コーチが男だったし。
「たぶん、そこにするかな。家近いし」
「そうか。そういえば、亮太ってどこのポジション希望?」
「外野」
「へー。やっぱり肩とか強いのか?」
「自信はあるぜ。ちなみにバッティングもな」
「俺はピッチャーなんだ。今度勝負しようぜ」
「そのうちな」
ピッチャー……ね。ピッチャーといえば、親父と涼子を思い出すが、果たしてどんな球を投げるのやら。まぁ、本田選手の息子だし、やっぱ速いのかなー。
吾郎と会話していると、目的地であるグラウンドについた。しかし、小さいな。まぁ、このくらいの方が落ち着くが……。
すると、吾郎のもとへ結構年をとったおっさんが近付いてくる。
「もしかして……吾郎くんかい?」
「うん、やっと四年生になったよ。おじさん」
「そうか、そうか。もう、あの君が四年生か」
おじさんは嬉しそうに吾郎を抱いている。感動の再会ってやつか。
その後、周りにいた子達が吾郎についておじさんに聞く。おじさんはあの本田選手の息子なんだぞと言うも、周りの子には伝わらなかった。というか、まだ俺の親父の方が伝わる気がする。
そんな中、階段の方から見たことのない集団が現れた。
……面倒くさい、臭いがするぜ。
暫く、こんな感じで進んでいきます。リトル編はそんなに原作と変化はないです。少しまたフラグは立てるかも。