まあ流れに任せて書きました。
会談から3日後サスロはジンネマンとハルカと3人で、宇宙に上がった。
デギン、キシリア、アストライア他はまだ地球に残り、情勢を見守り地球とのパイプになると決まった。
これは連邦サイドから持ち掛けられ、政情不安に託けてコロニーサイドが不信な動きをしないかと、警戒されての人質の面もあるのかと少し思ったが、今は、そのような事をする気がないジオン側としては特に断る事も無かったので、怪しまれない為に話を受けた。
そしてサスロは直接まずソロモンに向かった。
そこではドズルが、有事に備え軍備を急ピッチで作らせているので、サスロとしてはどの程度の進捗か気になっていた。
そして着くと、ドズル、ミノフスキー博士、テム・レイ等に迎えられ、早速工房に案内された。
そこで見たものは・・・
「こっこれはっ」
サスロは非常に驚いてしまった。
以前のものより遥かに洗練されたMS、その姿はまさに巨大な兵士、それもかなりの強靭な兵士である事が、一目で感じ取れた。
以前の試作機も悪くは無かったが、発展性がない為に1度全てを見つめ直し、徹底的に作り直したのが今回のモデルであった。
地球で見たホバー付きの戦車に対抗する為に、脚にジェットノズルを増設し、機動力を上げる事も考えられており、色々と魅力的な物になっていた。
「ドズル様から地球の兵器の話を聞きまして、機動力の向上をまず致しました。
色々な条件での戦いを想定しランドセルに様々なバリエーションを持たせ、すぐに換装出来る様に改造も致しております。
これにより長距離戦用、高機動用、接近戦用と3つのバリエーションを10分程で切り替える事が出来ます」
「それは凄いっ、必要に応じてこいつを換装すれば一機が二機にも三機も同然になるな」
「更にまだ完全には実用化出来てませんが、これをご覧ください。
5発までの条件付きですが、そこは今後の課題として研究をしていますが、とにかく威力が今までの兵器とは段違いです」
そうしてデモンストレーション動画を見た。
そこには老朽化したムサイが一隻居たのだが、1発のビームがそれを貫き爆発を起こし、あとかたも無くなった。
さすがにサスロも開いた口がふさがらず、
「何という破壊力だ、これは戦艦の主砲に匹敵するのではないか、これをあのモビルスーツが撃ったのか?」
「はいまだ試しておりませんが、連邦のマゼラン級の装甲も貫通致します。
狙いにもよりますが一撃で沈めれる計算です。」
「アニキびっくりしたろ、俺もこいつを始めて見たときにはアニキより驚いたものだ。
各コロニーにモビルスーツ二、三十機程配備し、全部にこの装備を揃えたら連邦もたまげるだろうな」
「ドズルよそれはそれで問題も出るな、個々のコロニーがそれぞれ過剰に武装すればそれはそれで問題だ。
ところでこいつは当然アニキにも見せたのだろ」
「ああ、さすがのギレンアニキもこいつに興奮していたし、何か思いついたようだったが」
これを見て過激な事をしなければと思ったが、そこは直接確認するところだと、頭を切り替え
「博士こいつの問題は今の所、装弾数だけか?」
「もう1つ現状では少し大型過ぎて重力化、つまり地球では使いにくい武器であるのと、大気圏でのエネルギー収束計算を、どのようにするかというのが課題です。」
「そうか、だが博士それはそれで研究者として燃えるのでは無いのか?」
「確かに私もですが、ここにいるテム・レイの方がこの件にのめり込んでまして、近い内に成果を出すはずです。」
「そうか本当に君達の力は我がジオンの誇りだ。
二人とも今後も更なる成果を期待する」
そうしてソロモンをドズルと共に離れ、ギレンに会いに行った。
そうした中、ドズルが一言
「アニキ、地球に行ってからずっと考えていたのだが、どうしても連邦軍人が嫌いになれないのだよ。
個人として接してみたら良い奴ばかりだし、何とか上手くやれないものかな?」
「確かになっ、俺もトレーズ少佐始め色々と親交を深めて来たが、連邦軍人と考えると、非常に良い奴が多いのはわかるな、財界人や政治家も駆け引きこそあれ、そこまでひどい人間は居ないと言うのは俺も感じていた。
ただ個人として良い奴も、群れれば変わるのが人間だ」
「そうなんだな、でも何度も触れ合い今回の事のような事で、対話を重ねればこちらの事も分かってくれる連中が出てくるのでは無いか?」
思っても居ないドズルの本音に兄として少し嬉しくなるが、このままでは済まない事を知っているサスロは、それ以上ドズルに声をかける事は出来ず、沈黙の時間はしばらく続いた。
その頃、月のグラナダには民間船にて次々と連邦兵が観光客に紛れ宇宙に上がっていた。
2日後の地球降下作戦を前に、全ての兵が緊張感に包まれていた。
「でもよ〜こんなスペースノイド頼みの作戦やらなくても俺らで余裕だろ、そもそも奴らのHIVなんかで大気圏突入したら地上に着く前にバラバラになるんでないのか、
嫌だぞそんなのは、戦って死ぬなら本望だが、事故なら浮かばれん」
「モンシアうるさいぞ、そもそもスペースノイドという言い方は虫酸が走る、金輪際、俺の前でその言い方は止めろ。
今回の事に怒り、協力してくれてる人達に何て言いようだ」
「これはバニング中尉すいませんね。でも本音なんで」
「アデル軍曹このバカをさっさと駐屯地に帰らせろ!
宇宙に住む人に不愉快な思いをさせるだけだ」
「わかりましたよ中尉殿、でもこいつも不安をかき消す為にこんな事言ってるのを分かって下さい。」
「分かっている、だが今はムダ口を叩くなら、武装の再チェックをして万全の準備をしとけ」
このような会話があちこちで聞こえ、月に住む人の中に、少なからずわだかまりが残る事になった。
その頃、サイド3ではギレン、サスロ、ドズルで今後の事を話しあい、当面地球への支援をしつつ計画を進める事になった。
中東の指導者の一人と話をするという話は、ギレンも一緒で月からレーザー通信で行う事で話はついた。
今回の戦争の落とし所はイスラム軍を壊滅させて、アッサム王子を捉えタリバン一派を首謀者として、裁きを受けさせその後、こちらとパイプを持つ指導者が国の運営をするようにする。
中東の富裕層に税を課し少しでも復興に回すというところだろうと考えた。
考えがまとまると3人は直ぐに月に向かったのであった。
ギレンとサスロは中東の指導者との話し合い、ドズルは降下作戦を前に連邦へ陣中見舞とこちらからも少数ではあるが部隊を派遣する事にし、その見送りも兼ねている。
月に着くとそこはもう出撃を、4時間後に控え全ての兵が、戦闘準備に入っていた。
先に着いていたマツナガ特務中尉、シュタイナー大尉率いる、中隊もすでに準備が終わり、それぞれが物思いに更けていたが、ザビ家の三兄弟を見かけるや、皆がこちらに注目した。
今回、派遣した兵はドズルが選抜したジオンの中でも優秀な兵で構成されており、その中には後に異名を持ちと言われる人物もいた。
そしてギレン、サスロが一言ずつ激励をし会談のために去るとそこからは、ドズルのやたらデカイ声での言葉が響き渡っていた。
「全くあいつはもう少し品格とか権威とか身につけられないものだろうか?
あれでは一司令官位にしか使えんぞ」
「アニキ、あいつはもしかしたら司令官として常に前線に出たいと思ってるのではないだろうか」
「ザビ家の者としてそれでは困るのだが、あいつはそれ以外考えてなさそうだな」
「まあ軍事全般をそつなくあいつが仕切れるなら、それで良いが、まあそれは先の話として、今日の会談だがまずは俺が話をし、アニキが気になる所を指摘するという形でどうだろうか、俺の気がつかない所もアニキなら気がつくだろ、逆ならわからない事が多いだろうからどうだろうか」
「良かろうではお前のお手並み、まずは後ろから見させて貰おう」
「それにしてもアニキ、例のモビルスーツかなりの出来だな、正直驚いたあいつが量産されれば、連邦にも勝てそうな気になるな」
「まあある程度想定した場所での戦闘なら、かなりの戦力であるのは間違いないが、まだまだあれだけで倒せる程連邦は甘くあるまい」
「まあな本当に戦うとなれば、国力の差、地球への適応力など課題は多いな、ただ宇宙での戦いという限定条件なら良いところ行きそうだな」
「それには少なくとも艦船が300隻モビルスーツが1,000機は欲しいところだな、サイド3だけではその戦力を作るのは、かなり国民に負担を掛ける事になるから、どうした物かな」
「どちらにせよ、今は友好的に関係を築けそうだから、崩さないようにし、力を貯める時だと俺は思うぞ」
「そうだな」
ギレンも国力の問題など色々思案をして、計算を立てているのでサスロもそれ以上は言わず、グラナダ市中心部の施設に入って行った。
「こちらにどうぞ」
ギレンとサスロが通された部屋は10人分の大きさの会議室で、モニターが3つそれぞれの前に並び正面には大きなモニターがあるという作りであった。
一通りの説明を受けると、部屋の中から人は居なくなりギレンと二人になった。
しばらくすると、モニターが付きオバマ大統領、ゴップ大将と後ろにトレーズ、見慣れない人物がそれぞれ映った。
オバマが一言切り出し
「皆さんお忙しい中、時間を作って頂きありがとうございます。
さていきなりですが、今回の事の落とし所を話し合いたいと思いますが何か思うところある方おられますか」
「ちょっとお待ちください、今日初対面の方がおられますので、まずは自己紹介をお願いできますか?」
「申し訳ございません、ゴップ大将はお会いした事がありますよね、では右手のモニターに居られるのはイランの次期大統領のフセイン外相です。
そしてフセインさんから見ると右のモニターの二人は、右からギレン・ザビさんとサスロ・ザビさんです。
サイド3だけでなく、他のコロニーにも力の及ぶ実力者です。」
そうしてお互い社交辞令の挨拶も終わり、話に戻って行った。
正直このような四者会談だとは、思っていなかったため、サスロも切り出しにくく思っているとフセインが口を開いた。
「まず今回の事は本当に申し訳なく思っております。
我らがもう少しタリバン派に対し厳しく注意をしていれば、いきなり核を使うという手段を、取らせないで済んだのではないかと、本当に後悔を致しております。
中東の民皆があの様な過激な者たちではなく、平和を望んでいる者がとても多い事をご理解して頂き、その上で良き落とし所を示して頂けたらと思います。」
するとオバマが
「確かにせめて使う事か、後3時間早くわかっていたら、結果は違ったでしょうね。
確かにあなた方のしでかした事により世界中での被害は小さくありません。
ですがいつまでも戦争をするわけには行きませんので、その辺りをきちんと話し合いましょう。
ゴップ大将何かご意見ありませんか」
「今回の事は戦争云々ではなく、無差別大量殺人と私ども軍としては捉えております。
核で受けた傷には核で行うか、軍を侵攻させ全てをねじ伏せ、主謀者、実行犯全て処分した上で自治権を剥奪し連邦政府の管理下に置き、富豪の財産を没収し復興支援に当てるという所ですな」
フセインもそれには意を唱え
「確かに私どもは大変な事を致しました。
しかし今の条件をとなりますとイスラム軍は最後の一人まで戦うと言うでしょう、地下に潜り何処までも戦おうとする連中がきっとかなり出ると思います。
それはテロ行為という形で行なわれるでしょう。
その様な事にはしたくありませんので、どうかもう少し譲歩願えませんか」
「今回の被害を考えるとゴップ大将の言い分も分かります戦争にもルールはあるのですが、今回はそれも守られていないので報復は必要ですね。
しかしフセインさんの言うようにゲリラとして色々なテロ行為を続けられるのは困りますね。
さて困りましたね、コロニー代表の御二方は何かご意見ありませんか」
その様な問いかけがあったので、サスロが予定通り話をした。
「まずタリバン派の戦力を叩き、その後各地を制圧し武装解除させて降伏を促し、戦犯者には国際法廷にて裁判を受けさせます。
その後自治権は二、三年間無くし連邦の指導の元に新しい政府を作り再建し、新たな税を作りそれを復興支援金にするという所でどうですか」
するとオバマから質問があり
「興味深い意見ですね。
所で税と言いますが、どの様な形をと考えてますか?」
「富裕層から多く取る形でしょうね、年に200億ドル位は出させるべきだと私は考えます。
それでも復興支援に使うお金の4割程度にしかなりめせんが、貧困層から取るとそれはまた新たな争いごとの種になりますからそこのさじ加減は大切でしょう」
「確かにサスロさんの意見は聞くべき所が多いですが、フセインさんはどう考えますか」
「サスロさんの考えは現実に私どもの立場を考えてもらえて出して頂いたのは分かりますが、税の事は難しいのではと思います。
富裕層の人間はお金への執着心が強く、反発が凄く考えられます」
とフセインが話をした時にギレンがついに口を開いた。
「やりもせず最初からムリだと言ってては、何も出来ないのでは、まずは自分がそれを出来るかでは無く、それが正しいかどうかを判断しそれが正しければ、それを叶える為にはどうしたら良いかを考えるのが、政治家としての貴殿の仕事で、それさえ出来ないなら、今後の国の統治など任せられず、ずっと連邦政府の元で管理されれば良いのではと私は思うが、皆はどうお思いで?」
一同そこまで言われたら何も言えなくなり、その場にはある種の緊張感が漂っていた。
ややしばらくしてフセインが
「確かにギレン殿とサスロ殿が出された案にある事は、私どもに課せられた贖罪であり義務でありますから、それは命懸けでもやらなければならないとダメなことですね、
細かい事は色々擦り合わさねばなりませんが、了承致しますので、その線で話を進めて頂けませんでしょうか」
サスロがオバマの方を向き
「大統領如何ですか、私どもの提案にフセインさんは乗りその線で調整してもらえないですか」
「私の一存ではなんとも言えない内容ですが、ゴップ大将、軍部としては如何ですか」
「私としては兵達の意気込みなど、並々ならぬものを感じてます。
特に日本軍は被害の大きさからも、かなりの戦力を出して徹底的に戦う姿勢を示しています。
そちら側を納得させる材料なども考えると、もう少し何か条件を出して貰えなければ、難しいのではと考えられます」
「確かにあの国がここまで戦争に乗り出すのは、第二次世界大戦以降初めてですからね、それでは日本や他の被爆国を説き伏せれたら、今回の条件でということでよろしいかな」
「後はどの段階で降伏するかという事ですが、それについては実際に作戦を立案している、トレーズ少佐から話がある様です」
「それでは申し上げます、まずはタリバン派や過激派の兵をトルコ側の国境付近に配備してください。
そこへ私どもも主力を配し、撃破致します。
のちに国を纏めるのに大事な者は、バクダッドに集めておいて下さい。
作戦が始まりますと多方面からの攻撃になりますので、周りの街も何処が安全かなどは、正直分かりませんが残りの兵をバクダッド周辺に配し逃げて来る、タリバン派や過激派を拘束してください。
そしてこちらが押し寄せた時点で、降伏というのがよろしいかと思います」
「分かりましたその様に指示を出します。こんな事言うのは何ですが、なるべく略奪や虐殺は抑えて頂けますか。
そして私どもが被爆された国へ出来るのは、石油を優先的に渡す事と、企業をこちらに誘致し有利な条件で取引を促す事くらいですがそれでは如何ですか」
「まあ日本に関しては関税の引き下げや石油の輸出で良いでしょう、南米や北米には労働者を出すという事で手を打ちましょう。
ゴップ大将それでよろしいですな」
「大統領がその様に仰るなら、私どもに異論はありません、虐殺などもなるたけない様に促します。」
「ありがとうございます。では早速周りを説き伏せますので宜しくお願いします。
そしてギレン殿、サスロ殿本当にありがとうございます。
この恩はいつかお返し致します。
私どもでお役に立てることが、あればいつでも力をお貸ししますので言ってください。」
そうしてフセインのモニターが消えて、いつの間にかゴップも居なくなり、オバマとトレーズが映っていた。
サスロがたまらず
「何だかお二人に良い様に使われた気がするのは、気のせいですか?」
「お二人には本当に感謝しております。全てこちらの思い通りの内容です。
これも貸しにしといてください、近い内にこれはお返し出来るはずですので、楽しみにしておいてください」
何かオバマが不敵な笑みをしていたのが、気にはなったがこの程度は想定内であった二人は、トレーズを見て、
「これで予定通り戦争も、早期で終わらせれそうだな、
再来月には延期になった結婚式も行えそうだが、トレーズ少佐間違いないですな」
「何か皮肉がたっぷりと入ってる様ですが、そうですねその予定で大丈夫だと思います」
「信じてますよ、とりあえずこの後、作戦は始まりますと中々連絡を取りにくいと思います。
後の話は戦争が終わってから致しましょう。
ではまた近い内に」
そう言いこちらから通信を切り、今回の会談は終わった。
いよいよ戦争が起き沢山の人が死ぬ事になる事の裏でこの様な話が成されている不条理をおもい、虚しくなるギレンとサスロであった。
一方、ドズルはこれから戦いに行く、将兵にグラナダ名物月面ピザを振舞っていた。
地球降下までは、まだ時間がある為にドズルなりの部下への労いであった。
こうした事を自然にやり一緒に輪の中に入る事が出来るのは、ドズルの生まれ持った才能であり、皆から慕われる男であるのが当然の男であった。
しばらくして出撃時間になり、皆に一言声をかけ見送り、全員の無事の帰還をドズルはいつまでも宇宙を見ながら祈っていた。
さてさて戦争をどの様に描くか、いや描けるのかそこが問題です。