LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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ふう……やるだけの事はやったぜ。とりあえず書きたかった事は書いたので後悔はありません。

感想お待ちしております。


闇を断て!!

 

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士とナンバーズの協力によって、ついに転送の魔水晶(ラクリマ)を搭載した装置の破壊に成功したナツたち。

 

 

「うおっしゃぁぁあああ!!!!」

 

 

ナツの歓喜の雄叫びを引き金に、その場にいた面々も一斉に歓喜の声を上げる。笑い合う者やハイタッチを交わす者たちなど、反応は様々であった。

 

 

「やっちゃった…っスね」

 

 

「だね……これでもうあたし達は完全に裏切り者だ」

 

 

「もうギルドには戻れないね……」

 

 

「……後悔しているのか?」

 

 

そんな中、表情の優れないウェンディ、セイン、ディエチのナンバーズの3人。そんな3人に、姉であるチンクが問い掛ける。

 

 

「うーん…後悔してないって言えばウソになるっスけど……ちょっと清々しく思うのも事実なんスよね」

 

 

「あ、ウェンディも? 実はあたしも…何ていうんだろ…ちょっとした解放感っていうか」

 

 

「そう言うチンク姉は…後悔してないの?」

 

 

「む…姉か? そうだな……確かに姉はお前たちより稼働時間が長い分、それだけの時間をギルドで過ごしてきた。当然思うところは多々ある……が、アレを見ていると、そのような事はどうでもよくなってしまった」

 

 

「「「?」」」

 

 

そう言いながら視線を別の場所へと移すチンクを見て、3人もその視線を追った。そしてその先にある光景を見て「あぁ、なるほど」と納得した。その視線の先には……

 

 

「かーっかっかっか!!! 意外とたいした事なかったな!!!」

 

 

「あい!!」

 

 

「テメェ人の苦労も知らねえで何ぬかしてやがんだっ!!!」

 

 

「アンタ1人の力じゃないでしょバカナツ!!!」

 

 

「そうだっ!! アタシらが結界をブチ抜いたお陰だろうが!!! おいしいトコ全部持って行きやがって!!!」

 

 

「……やれやれ」

 

 

「イカれてるぜ」

 

 

「あらあら♪」

 

 

「漢だ」

 

 

そんな会話をしながらも、ナツやティアナを初めとした妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々と大いに笑い合い、喜び合っているノーヴェの姿があった。その表情には一片の後悔の色は見受けられないほど、清々しい表情であった。

 

 

「私たちは戦闘機人のナンバーズとして生まれた事に対して何の疑問も持たずに受け入れ、ドクターの命令通りに生きていた。だがノーヴェだけは、その事に対してずっと苦しんでいた……その苦しみを周囲に吐き出す事もなくずっと溜め込んで……な」

 

 

「だけど今日、ようやくその苦しみを吐き出す事ができた……だよね?」

 

 

「ああ」

 

 

その光景を微笑を浮かべながら見守っているチンクとディエチ。

 

 

「うー…ノーヴェだけズルイっス!!! アタシも混ぜろっスー!!!」

 

 

「あっ!! ウェンディちょっと待って!!!」

 

 

そう言ってウェンディが走り出し、それをセインが追いかける。

 

 

「あ…」

 

 

「……姉たちも行くか」

 

 

「うん」

 

 

そんな2人に続くように、チンクとディエチもナツたちの所へと向かった。

 

 

「とりゃーっス!!!」

 

 

「はっ!? 何で私に飛び付いて…きゃっ!!!」

 

 

「えーいうるさいっス!! あんたのせいでアタシにちょっとしたトラウマが植えつけられたんスからね!!! 責任取るっス~!!!」

 

 

「ちょっ…やっ…どこ触って……ウェンディやめなさ…ひゃっ!!」

 

 

「へぇーこいつウェンディって名前なのか。ウェンディと一緒の名前だな!!」

 

 

「そんなのどうでもいいから助けなさいよっ!!! ノーヴェもこいつと同じギルドなんだから何とかしなさいよ!!!」

 

 

「あースマン……こいつは1度悪乗りが始まると中々止まらないんだ」

 

 

「イカれてるぜ」

 

 

「ってか何この青いネコ!! チョー可愛いんだけど!!!」

 

 

「あい」

 

 

「何故だろうか……お前とは何だか物凄く気が合いそうだ」

 

 

「奇遇だな、アタシもそう思ってたトコだ」

 

 

「……何故あの2人は早々に意気投合しているのだ?」

 

 

「年齢の割に身長が低い者同士、気が合うのよ♪」

 

 

「漢だ」

 

 

「2人とも女の子だし、漢関係ないと思う」

 

 

先ほどまで敵同士だったとは思えないほど和気藹々と会話を弾ませている妖精の尻尾(フェアリーテイル)とナンバーズの2つの陣営。

 

すると……

 

 

 

《やられたよ……まさか本当に転送装置を破壊されてしまうとはねぇ》

 

 

 

「「「!!!?」」」

 

 

突然聞こえてきた聞き覚えのある声。全員がその声が聞こえた方向へと視線を向けると、チンクが唇を震わせながら口を開いた。

 

 

「マスター…スカリエッティ……!!!」

 

 

そこには無限の欲望(アンリミテッドデザイア)のギルドマスター……ジェイル・スカリエッティの姿が映った魔水晶映像(ラクリマヴィジョン)があった。

 

 

《計算外だよ。転送装置に仕込んでおいた結界はかなりの強度だった、少なくとも魔導士数人では破壊出来ない程に。だがまさか……身内の反逆に遭うとはね》

 

 

「「「!!」」」

 

 

スカリエッティはそう言葉を口にしながらチンクたちにナンバーズに視線を向ける。その視線を受けたチンクたちはその場で萎縮してしまう……1人を除いて。

 

 

《何か弁明があるのなら……聞こう》

 

 

「……あ…うっ……!!!」

 

 

スカリエッティの問い掛けに対して完全に萎縮し、言いよどむチンク。ウェンディ、セインも同様の反応であった。

 

すると……ナンバーズの中でただ1人萎縮していなかったノーヴェが、チンクたちより1歩前に出て口を開いた。

 

 

「弁明はしねえ。今日を持ってアタシらは、無限の欲望(アンリミテッドデザイア)を抜けさせてもらう」

 

 

胸を張り…スカリエッティを見据えながら堂々とそう宣言するノーヴェ。それを聞いたスカリエッティは興味深そうに目を見張った。

 

 

《ほう……面白い事を言うねノーヴェ。ギルドを抜けて、どうしようと言うんだい?》

 

 

「どうもしねえさ。ただ自由に生きる……それだけだ」

 

 

《自由? 君たちは私が作り上げた戦闘機人だ、そんな君たちが私の保護下を離れて自由に生きていけるとでも?》

 

 

「いけるさ」

 

 

スカリエッティの威圧するような視線にもノーヴェは臆する事もなく、そう言い放った。

 

 

「いつまでもアタシらが言われた通りに生きている子供だと思ってんじゃねえぞ。今のアタシはもう、自分で考えて…自分で決めて…自分で生きていける」

 

 

《……その考えた結果が、今回の反逆だと?》

 

 

「反逆なんて大層なモンじゃねえ。ちょっと遅めの反抗期って奴だよ、父親(ドクター)!!!」

 

 

《……………》

 

 

笑みを浮かべながら力強く…真っ直ぐとした瞳でそう言い放つノーヴェ。そしてそれを聞いたスカリエッティはしばらく押し黙り……

 

 

《……ク…ククク……アハハハハハハハハハッ!!!!》

 

 

次の瞬間には、盛大な笑い声を上げた。

 

 

《フフフ……まさか君の口からそのような言葉を聞くとは思わなかったよ。随分変わったじゃないかノーヴェ……いや、変えられたというべきかな》

 

 

そう言うと同時にスカリエッティの魔水晶映像(ラクリマヴィジョン)越しの視線は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々へと向けられる。

 

 

《……まぁいい。装置が破壊され、君たちが寝返ったところでこちらの勝利は変わらない》

 

 

「どういう意味だ!!?」

 

 

《そのままの意味だよ。こちらの陣営にはまだ、悪霊の札(デーモンカード)のギルドマスターがいるのだからね。彼の実力は六魔将軍(オラシオンセイス)のマスターゼロと比べても遜色ない。現在はそちらの氷の造形魔導士と、エース・オブ・エースの相手をしているようだが》

 

 

「グレイさんとなのはさんが!!?」

 

 

「なのはも来てたのか!?」

 

 

「チッ……あいつら、ケガ人のクセに無茶しやがって……」

 

 

スカリエッティの言葉にティアナとハッピーが驚愕し、ヴィータが呆れたように毒づく。

 

 

《それ以外にもこちらには切り札がある。君たちの勝利は絶望的と言ってもいいね》

 

 

「……へっ」

 

 

《?》

 

 

すると、ナツが突然口元に笑みを浮かべたのを見て、スカリエッティは疑問符を浮かべる。

 

 

「あんましあいつらを見くびんじゃねえぞ」

 

 

スカリエッティを見据えてただ一言だけ、そう言い放った。

 

 

《…………フッ》

 

 

それを聞いたスカリエッティは一瞬だけ目を丸くしていたが、それ以上は何も言わずにただ目を伏せながら笑みを浮かべる。

 

そしてそれを最後に魔水晶映像(ラクリマヴィジョン)は消失した。

 

 

 

 

 

「ククク……面白い…やはり面白いよ妖精の尻尾(フェアリーテイル)。私の期待は間違っていなかった……ならばこちらも切り札を投入するとしよう。彼らがアレにどう立ち向かい対処すのか、楽しみだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第九十八話

『闇を断て!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オォォォオオオオ!!!」

 

 

ガキィィイイン!!!

 

 

グレイが雄叫びを上げながら振るった氷の大剣が、ゲイルのデカログスと衝突し、甲高い金属音を響かせる。

 

 

「フン」

 

 

それに対しゲイルは鼻で笑うと、グレイの大剣を押し返す。そして……

 

 

爆発の剣(エクスプロージョン)!!!」

 

 

ドゴォォォオン!!!

 

 

「ぐあぁぁあああ!!!」

 

 

地面に剣を叩きつけると同時に爆発を起こし、その爆風でグレイを吹き飛ばした。

 

 

「グレイ!! くっ……」

 

 

それを見たなのはは歯噛みしながらレイジングハートを構える。

 

 

「ディバインバスター!!!」

 

 

そしてゲイル目掛けて強力な砲撃魔法を放つ。

 

 

「無駄だ」

 

 

そう言い放ちながら、ゲイルはデカログスを構えると同時に、デカログスの形状が変わる。

 

 

封印の剣(ルーン・セイブ)!!!」

 

 

そのまま形状の変わった剣を縦一閃に振るうと、何となのはのディバインバスターが真っ二つに斬られ、二つに分かれた砲撃はゲイルの横をすり抜けて壁に衝突して消滅する。

 

 

「魔法を斬り裂いた!!?」

 

 

封印の剣(ルーン・セイブ)は物質を斬らん代わりにいかなる魔法をも斬る事ができる対魔法用の剣」

 

 

そう言いながらゲイルは再びデカログスの形状を変え……

 

 

音速の剣(シルファリオン)!!!」

 

 

「きゃああああっ!!!」

 

 

音速の剣で一瞬でなのはに接近し、彼女を数回斬り付けた。

 

 

「アイスメイク〝(プリズン)〟!!!」

 

 

「む?」

 

 

するとその瞬間、グレイが造り出した氷の檻がゲイルを閉じ込める。

 

 

「捕まえたぜ!!」

 

 

「小賢しい」

 

 

それに対してゲイルは、再び形状の変わったデカログスを振るった。

 

 

重力の剣(グラビティ・コア)!!!」

 

 

その剣の一太刀はとても重々しく、氷の檻をいとも容易く粉々に砕いた。

 

 

「くそっ……厄介な剣だぜ」

 

 

「うん、剣1つ1つの性質が違いすぎて追いつけない」

 

 

グレイの毒づいた言葉に、起き上がったなのはが同意する。

 

 

「けど、やるしかねえよな」

 

 

「当然。ヴィヴィオを助ける為に…ね」

 

 

そう言うと、グレイとなのはは再び氷の大剣とレイジングハートを構える。

 

 

「おおおおらぁ!!!」

 

 

そしてグレイはゲイルに突撃し、氷の大剣を振るう。

 

 

「何度同じ事をやろうと無駄だ」

 

 

ゲイルはそれを悠々とデカログスで防ぐ。しかし……

 

 

「同じじゃねえさ」

 

 

「!?」

 

 

そう言うと同時にグレイは片手を地面に叩きつけるように置き……

 

 

氷欠泉(アイスゲイザー)!!!!」

 

 

「ぐおぉぉおお!!?」

 

 

地面から間欠泉のように噴出した氷の塊に、ゲイルは防ぐ術なくそれを喰らい、後方に吹き飛ばされる。

 

 

「今だなのは!!!」

 

 

「うんっ!!!」

 

 

グレイの呼びかけに頷くと、なのはは先程グレイが造り出した氷の塊に砲撃を入れて粉々に砕く。すると、その砕けたいくつもの氷の欠片がなのはの魔力を帯びて彼女の周囲に浮遊する。そして……

 

 

「スターダストフォール!!!!」

 

 

その氷の欠片が、まるで流星群のようにゲイルへと向かって行く。

 

 

「くっ……!! 真空の剣(メル・フォース)!!!!」

 

 

地面に着地したゲイルは、真空の剣によって発生させた突風で、向かって来る氷の流星群を吹き飛ばそうとしたが……

 

 

「(防ぎ切れん……!!!)」

 

 

それでも全てを吹き飛ばすことは叶わず、残った氷の流星群がそのままゲイルへと降り注いだ。

 

 

「ぬぐあぁぁああああ!!!」

 

 

それを喰らったゲイルの断末魔が響き渡る。しかしそれでも、ゲイルは倒れない。

 

 

「ぬぅ……やってくれるなガキども……!!」

 

 

「まだまだこれからだぜ」

 

 

「このまま押し切って、あなたを倒します」

 

 

グレイとなのはの言葉に対し、ゲイルはニヤリと口元に笑みを浮かべた。

 

 

「いいだろう。オレも全力で貴様らを叩き潰してやる」

 

 

「返り討ちにしてやるよ。行くぞ、なのは」

 

 

「うんっ!!!」

 

 

その言葉を最後に、戦いはさらに激化した。

 

 

爆発の剣(エクスプロージョン)!!!!」

 

 

「アイスメイク〝(シールド)〟!!!!」

 

 

「エクセリオンバスター!!!!」

 

 

重力の剣(グラビティ・コア)!!!!」

 

 

氷雪砲(アイスキャノン)!!!!」

 

 

真空の剣(メル・フォース)!!!!」

 

 

「アクセルシューター!!!」

 

 

「アイスメイク〝槍騎兵(ランス)〟!!!」

 

 

双竜の剣(ブルー=クリムソン)!!!!」

 

 

片側が全力で攻撃すればその攻撃を全力で防ぎ、全力で反撃すれば全力で防がれる。その攻防はまさに一進一退であった。

 

しかしその一進一退の攻防も……やがて終わりを告げる。

 

 

「ここまでやるとは予想外だ……ならばとっておきを見せてやろう」

 

 

そう言うと同時に、ゲイルはデカログスを構える。

 

 

「空・重・連携……アースグラビティ!!!!!」

 

 

ズドォォォオオンッ!!!!

 

 

そして次の瞬間……頭上からの強力な重力波が、グレイとなのはを襲った。

 

 

「あぐっ!!? か…体が……重い……!!!」

 

 

「ぐあっ!! ま、まさか……2つの性質の剣を同時に使えるのか!!?」

 

 

上から降り掛かる重力の前に、倒れ伏しながら驚愕するグレイ。

 

 

「その通り。こんなのもあるぞ」

 

 

そしてゲイルは再びデカログスを構え……

 

 

「爆発剣舞……デスペラードボム!!!!」

 

 

ズドドドドドドドドッ!!!!

 

 

「ぐあぁぁぁあああああ!!!」

 

 

「きゃあぁぁああああ!!!」

 

 

爆発の剣を振るうと同時に、グレイとなのはに無数の爆発が襲い掛かった。

 

 

「ぐっ……くそっ……!!!」

 

 

体中ボロボロになりながらも、何とか体を動かすグレイ。

 

 

「あ…うっ……!!!」

 

 

「なのは!!?」

 

 

しかしなのはの方は、呻き声を上げるだけで起き上がる気配はない。それを見たグレイは、すぐさま彼女の後頭部を持ち上げて体を少し起こさせる。

 

 

「え…えへへ……ゴメン…大丈夫だよ。ポーリュシカさんに貰った痛み止めの効力が…切れてきただけ……」

 

 

「それ大丈夫じゃねえだろ!!!」

 

 

強がるなのはを一喝したあと、グレイはなのはの体をそっと寝かせてから、ゆっくりと立ち上がる。

 

 

「あとはオレに任せて、お前は休んでろ」

 

 

「でも……」

 

 

「安心しろ、お前のヴィヴィオを救いたいという想いは……オレが受け継ぐ。必ず勝って、ヴィヴィオを助け出す!!!」

 

 

「グレイ……」

 

 

そう言い放つグレイの背中を……なのはは眺める事しかできなかった。

 

 

「女はリタイアか?」

 

 

「あとはオレ1人で十分だって事さ」

 

 

「減らず口を……だがまぁいい、ここまでオレと戦えたのは貴様らが初めてだ。そんな貴様らに敬意を表し、デカログスの最終形態で葬ってやろう」

 

 

そう言うと、ゲイルが手にしているデカログスの形状が変わり始める。だが今までとは違い、何やら不気味なオーラのようなモノがデカログスに集まっていく。

 

 

 

「魔剣……ダークエミリア」

 

 

 

その剣は見るからに禍々しく、黒く輝く刃には邪悪な闇が取り巻いていた。

 

 

氷聖剣(コールドエクスカリバー)

 

 

そんなゲイルに応える様に、グレイも氷の大剣を造り出す。

 

 

「(もう魔力も残り少ねえ……今のオレに出切る事は、この剣に全ての魔力を込める事だけだ!!!)」

 

 

そう胸の内で叫ぶと同時に、氷の大剣を構えるグレイ。

 

 

「……行くぞ」

 

 

「来い」

 

 

両者共に力強い眼差しで互いの姿を見据え、それぞれの剣を構える。

 

 

そして……

 

 

 

「「オオォォォォォォオオオッ!!!!」」

 

 

 

轟くような雄叫びと共に両者の剣が──激突した。

 

 

ズドォォォオオオオン!!!!

 

 

その瞬間に塔全体に響き渡るような衝撃が起きる。

 

 

「アァァアアアアアア!!!!」

 

 

そんな中、グレイは渾身の力で氷の大剣を押すが……

 

 

ピキッ…

 

 

「!!」

 

 

その氷の大剣に、亀裂が入った。そしてそれを見たゲイルがゆっくりと口を開く。

 

 

「当然の結果だ。デカログスは我が闇の力の全てを注ぎ込み、鍛え上げられた剣……貴様の即興で造られた氷の剣とは訳が違う」

 

 

「くっ…そぉ……!!!」

 

 

ピキピキピキ……

 

 

ゲイルの言葉に対してグレイが歯噛みしている間にも、氷の大剣の亀裂はどんどん広がっていく。

 

 

「グレイ……!!」

 

 

そんなグレイの背中を見守っていたなのはは、何やら意を決したような顔つきになる。そして何と、何を思ったのかグレイに向かってレイジングハートを構える。

 

 

「受け取ってグレイ……私の想いを……!!!」

 

 

そしてなのはは、レイジングハートの先端に集束した魔力を……

 

 

ズドンッ!!!

 

 

「がっ!!!?」

 

 

グレイの背中に打ち込んだ。

 

 

「なにっ!!?」

 

 

予想外の出来事に、ゲイルも驚愕する。

 

 

「……援護のつもりだったのだろうが、味方に誤射してしまうとは……無様だな」

 

 

呆気ない幕切れに、皮肉を込めてそう言い放つゲイル。しかし……

 

 

「誤射なんかじゃねえ」

 

 

「!?」

 

 

背中を打ち抜かれたハズのグレイがそう言葉を口にする。そして次の瞬間……

 

 

「オォォォオオオオオ!!!!」

 

 

「なっ!!?」

 

 

先程まで満身創痍だったグレイの魔力が、一気に跳ね上がった。

 

 

「(ま…まさか……!!! あの小娘……砲撃魔法を介して、自分の魔力を小僧に受け渡したのか!!?)」

 

 

それを見たゲイルは目を見開きながら、先程のなのはの砲撃の意味を考え付く。

 

 

「オオオオオオオオッ!!!」

 

 

グレイが雄叫びを上げると、氷の大剣が淡い桜色に輝き、刀身に入っていた亀裂が段々と修復されていく。

 

 

「受け取った魔力で持ち直したか……だが結局は何も変わらん!!!!」

 

 

ゲイルはそう言い放つと、ダークエミリアを握る手にさらに力を込める。

 

 

「ダークエミリアの闇の力の前に……砕け散るがいい!!!!」

 

 

剣だけでなく、ゲイル自身までも包み込むような強大な闇を放出しながら氷の大剣を押し返していくダークエミリア。しかし……

 

 

「ぐっ…おおおおらぁっ!!!」

 

 

「!!?」

 

 

グレイも負けじと力を込め、ダークエミリアを押し返そうとする。そして先程までとは違い、氷の大剣にはヒビ1つ入る事がなかった。

 

 

「何故だ!!? 何故砕けん!!!?」

 

 

ありえないと言わんばかりに叫び、驚愕するゲイル。そんなゲイルに対し、グレイはゆっくりと口を開く。

 

 

「砕けるかよ……今この剣に込められてんのはオレの魔力だけじゃねえ。

 

なのはの魔力が…想いが…そして、あいつの決して折れる事のねえ不屈の心が込められてんだよ!!! テメェの闇ごときで砕けるほど…弱い心じゃねえ!!!!」

 

 

ピキッ……

 

 

再び響くひび割れる音。それはグレイの氷の大剣ではなく、ゲイルのダークエミリアから響いた音であった。

 

 

「バ…バカなっ!!!? こんな事が……!!!?」

 

 

その光景に目を見開いて驚愕するゲイル。

 

 

「あいつの不屈の心は……どんな闇をも断ち切る──

 

 

 

──希望の光だ!!!!」

 

 

 

バキィィィイイイイン!!!!

 

 

次の瞬間……ダークエミリアの刀身が粉々に砕け散った。

 

 

「……………!!!」

 

 

信じられんと言わんばかりに驚愕し、言葉を失うゲイル。

 

そしてグレイはそのまま氷の大剣をゲイルへと向かって──

 

 

 

 

 

氷星剣(コールドスターセイバー)!!!!!」

 

 

 

 

 

──振り下ろしたのであった。

 

 

 

 

 

つづく


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